成り代わりナツは無条件でモテたい 作:雨天
「ナツ、大丈夫?」
ルーシィの心配の声が遠く聞こえる。
列車の移動速度と目の良さが最悪の噛み合わせをして脳を直接揺すられているような錯覚を覚える。
自分は動いていないという体との違和感も作用している。
「ナツは乗り物に乗るといつもこうだから気にしなくて良いよ」
「気にしてくれて良いんだぜ」
「どっちよ。大変な体質してるわねアンタも」
「これは滅竜魔法の仕様上仕方ない不具合と言いますか…要は仕様なんです」
「結構な弱点じゃない?移動する度に戦闘不能になるって」
「だから、ナツもどうにかしようと試してはいるよ。魔法で三半規管を強化する方法を探してるくらい」
「割と真面目に弱点なのね」
逆に言えば、滅竜魔導士に出会ったら乗り物に乗せれば勝てるということでもある。
まあ、滅竜魔法は
「乗り物酔いさえ克服できれば俺は最強に近付くのに…」
「まだまだ道は遠そうだね」
そんなやり取りがありながら列車は進み、マグノリアへと到着する。
列車を降りた俺達は休憩を挟みながらギルドへと戻って来た。
ルーシィがギルドの大きさに感嘆の声を漏らす。
「わぁ…大っきいね」
「ようこそ
ハッピーがルーシィを歓迎する。
俺はギルドの玄関を潜って中に入る。
「ただいまー!!!」
「ただー」
「ナツ、ハッピー、おかえりなさい」
帰還した俺達をミラが出迎えてくれた。
俺に火竜の噂話をしてくれた仲間が酒を飲みながらボラの件を話す。
「ボラを捕まえたんだって?お手柄じゃねえか。新聞に載って─」
「テメェ!!火竜の情報嘘じゃねえか!!」
「うごっ!」
俺は思いっ切り蹴りを喰らわせる。
蹴りを受けた仲間が思いっ切り吹っ飛んでいった。
「あら……ナツが帰って来ると早速店が壊れそうね。うふふ」
「壊れてるよー!!」
蹴りの余波で机がぶっ壊れたのは必要経費だったと言わせて貰おう。
嘘の情報流すのは許さねえ。
「ナツが帰って来たってぇ!!?テメェ……この間の
「グレイ……アンタ、何て格好で出歩いてるのよ」
「はっ!!しまった!!」
グレイがパンツ一丁で勝負を仕掛けて来る。
グレイはそれでも勝負を諦めるつもりはないようだ。
「服着てから来いよ。恥ずかしい奴だな」
「ナツに見下された!?」
「下らん。昼間っからピーピーギャーギャー、ガキじゃあるまいし、漢なら拳で語れ!!!」
「邪魔だ!!」
「ぐおおおお…!!」
「玉砕された!?」
喧嘩に混ざろうとしたエルフマンを吹き飛ばす。
ルーシィが驚愕の表情を浮かべた。
エルフマンが威勢良く喧嘩に割って入ったのに簡単に吹っ飛んだからだろう。
「ナツゥー!!!」
グレイが拳を構えて突っ込んでくる。
俺は馬鹿正直に受けることなくひらりと避けて、避ける際にグレイのパンツを脱がす。
「真っ裸で恥ずかしくないの?」
「テメェが脱がしたんだろ!!返せコラ!!」
「ぶふっ!粗末なもんぶら下げて走ってら」
「誰が粗末じゃ!!」
そうして騒いでいると樽で酒を飲んでいたカナの堪忍袋の尾が切れる。
「あー五月蝿い。落ち着いて酒も飲めないじゃないの。あんたら良い加減に……しなさいよ…」
「アッタマきた!!!」
「ぬおおおおお!!!」
「困った奴等だ」
「掛かって来い!!!」
俺は両手に炎を纏わせる。
カナもグレイもエルフマンもロキも魔法を構えた。
しかし、それが発露することはなかった。
「そこまでじゃ、やめんかバカタレ!!!!」
「あら…居たんですか?
「マスター!!?」
マスターのマカロフが魔法で巨人化して現れたのだ。
その覇気に全員が動きを止めた。
そしてそれぞれ渋々引き下がる。
マスターは全員が引き下がったのを確認すると巨人化を解く。
みるみる内に小さくなり、最後には小柄の老人が残った。
マスターはルーシィを歓迎すると二階の手摺りの上に登る。
「ま〜たやってくれたのう貴様等。見よ、評議会から送られて来た文書の量を」
マスターはそう言うと一つ一つフェアリーテイルが起こした問題を読み上げていく。
「先ずは…グレイ。密輸組織を検挙したまでは良いが…その後街を素っ裸でふらつき、挙げ句の果てに干してある下着を盗んで逃走」
「いや…だって裸じゃ不味いだろ」
「先ず脱ぐなよ」
「エルフマン!!貴様は要人護衛の任務中に要人に暴行」
「男は学歴よ、なんて言うからつい…」
「カナ・アルベローナ。経費と偽って某酒場で飲むこと大樽15個。しかも請求先が評議会」
「何してんの…」
「ロキ…評議員レイジ老師の孫娘に手を出す。某タレント事務所からも損害賠償の請求が来ておる」
「それは良くない?個人の恋愛の範疇でしょ」
「アルザック、レビィ、クロフ、リーダス、ウォーレン、ビスカ、etc…貴様等ぁ…ワシは評議員に怒られてばかりじゃぞぉ……」
マスターは俯いてプルプル震える。
「だが」と言葉が続く。
「評議員などクソ喰らえじゃ。良いか…理を超える力は全て理の中より生まれる。魔法は奇跡の力なんかではない。我々の内にある気の流れと自然界に流れる気の波長が合わさり初めて具現化されるのじゃ。それは精神力と集中力を使う。いや、己が魂全てを注ぎ込むことが魔法なのじゃ。上から覗いてる目ん玉気にしてたら魔道は進めん。評議員の馬鹿共を恐れるな。自分の信じた道を進めい!!!それがフェアリーテイルの魔導士じゃ!!!」
ギルドの皆が雄叫びを上げる。
マスターの言葉は仲間達の胸に刻まれ、ルーシィもその様子に感動したようだった。
◇
「じゃあナツが火竜って呼ばれてたのか!?他の街では」
「確かにオメエの魔法はそんな言葉がピッタリだな」
「ナツが火竜ならオイラはネコマンダーで良いかなぁ」
「マンダーって何よ…」
俺はミラが作った料理を話を耳に挟みながら掻っ込む。
ルーシィが俺達のいるテーブルへと近寄って来た。
「見てナツ!フェアリーテイルのマーク入れて貰っちゃったぁ!」
「良かったなルーシィ」
ルーシィはニコニコと嬉しそうに頷いた。
俺達のやりとりを見て仲間達が羨む。
「お前あんな可愛い娘どこで見つけて来たんだよ」
「良いなぁ〜ウチのチーム入ってくんねえかなぁ」
「自分で見つけて来い」
俺はそう言って席を立った。
「ナツ、どこ行くんだ?」
「仕事。金ねえからな」
「報酬が良い奴にしようね」
俺とハッピーが
「くどいぞロメオ。貴様も魔導士の息子なら親父を信じて大人しく家で待っておれ」
「だって…三日で戻るって言ったのに、もう一週間も帰って来ないんだよ……」
「マカオの奴は確か、ハコベ山の仕事じゃったな」
「そんなに遠くないじゃないか!!探しに行ってくれよ!!心配なんだ!!!」
「冗談じゃない!!!貴様の親父は魔導士じゃろ!!!自分のケツも拭けねえ魔道士なんぞこのギルドにはおらんのじゃ!!!帰ってミルクでも飲んでおれい!!!」
「馬鹿ー!!!」
「おふ」
マスターがロメオに顔面をパンチされている。
ロメオは泣きながら去っていった。
「……ハッピー、行くぞ」
「あい!」
俺はハッピーを連れてロメオの後を追った。
ロメオに追い付いた俺は、大粒の涙を流すロメオの頭を撫でた。
「探してくれるの?」
「おう。仲間を助けねえギルドはギルドじゃねえ」
そうして俺はハコベ山に向かうことを決めた。
◇
「でね!!あたし今度ミラさんの家に遊びに行くことになったの〜♡」
「下着とか盗んじゃ駄目だよ」
「盗むかー!!」
俺は乗り物酔いでダウンして横になっている。
ルーシィとハッピーのコントを聞き流しながら、到着するのを待つ。
不意に揺れが止まる。
俺は起き上がって状況を確認した。
「着いたのか?」
「す、すんません…これ以上は馬車じゃ進めませんわ」
「何これ!!?」
馬車の外は猛吹雪であった。
ルーシィが驚愕を露わにする。
「幾ら山の方とはいえ、今は夏季でしょ!!?こんな吹雪おかしいわ!!!」
俺達は馬車から降りて徒歩で目的地に向かう。
「寒っ!!!」
「そんな薄着してっからだよ」
「アンタも似たようなもんじゃない!!!」
「そんじゃ、オラは街に戻りますよ」
「ちょっと帰りはどうすんのよ!!」
「騒がしい奴だな…」
「あい」
俺は寒がるルーシィに持って来ていた毛布を渡す。
「ありがと。あたしはホロロギウムの中にいるわ。開け!と、時計座の扉!」
時計型の星霊が現れ、ルーシィはその中に収まる。
ルーシィが疑問を投げ掛ける。
「マカオさんはこんな場所に何の仕事をしに来たのよ!?と申しております」
「知らねえでついて来たのか。凶悪モンスターバルカンの討伐だ」
ルーシィが顔色を悪くする。
そしてホロロギウム越しに言葉を伝えて来る。
「あたし帰りたい、と申しております」
「はいどうぞ、と申しております」
「あい」
そんなふざけたやり取りをしながら俺達はマカオを探すのであった。