近衛刀太inネギま   作:けるるんくっく

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雪平あやか微改造(魔改造ではない)計画。


お嬢様×功夫×ギリギリショタ

12月に入り、夕暮れの時間がすっかり早くなった放課後。

 

トータが用務員の仕事を終え、ツナギのポケットに手を突っ込んで学園の広場を歩いていると、前方の木の上から「ハッ!」という小気味いい掛け声が聞こえてきた。

見上げると、超包子の中国拳法娘、古菲が枝の細い足場の上で片足立ちになり、見事なバランスで型の練習をしていた。

 

「お、古菲じゃねぇか。何してんだ?」

「お、トータアルか! 見ての通り、修行アルよ!」

 

古菲はひらりと軽い身のこなしで太い枝へと飛び移り、木の上からトータを見下ろしてニカッと笑った。

 

「そういえばトータ、この前、校舎の壁をピョンピョン跳び回って移動してるのを見たアルよ。人間離れしたすごい身のこなしアルな! だから気になってたアルが……トータ、お前、『気』はどのくらい扱えるアルか?」

「き……?」

 

トータは首を傾げ、周辺の木々を見回した。

 

「木を使う? いや、俺は用務員だけど、ガーデニングとか植木の手入れの趣味はねぇぞ?」

「違うアル! 植物の『木』じゃなくて、体の中に流れる生命エネルギーの『気』アルよ! 頓珍漢なこと言わないでほしいアル!」

 

古菲が木の上でずっこけるようにツッコミを入れた、その時だった。

 

「あら、古菲さん。こんなところにいましたのね」

 

きらびやかな縦ロールの髪を揺らしながら、ツカツカと歩いてきたのはクラスの委員長、雪広あやかだった。

 

「お、あやかじゃねぇか。どうしたんだよ」

「トータさん、あなたに用はありませんわ。私は古菲さんを探していましたの。……ちょうど良かったわ、古菲さん、あなたに少し伝えておかねばならない用事があって――」

「まぁまぁ、用事の前にちょっと待つアル! 今、トータに大切な『気』の話をしようとしていたところアルよ!」

 

古菲がそう言って話を遮ると、あやかは不満げに眉をひそめたものの、「き……?」と、その言葉に引っかかったように足を止めた。

 

「『気』……? 東洋の武術などでよく言われる、あの気功の類かしら? どんなものですの?」

「お、委員長も興味があるアルか? ――って、もしかしてトータ、本当の本当に『気』のことを何も知らないアルか?」

「おう、サッパリだぜ!」

 

トータが胸を張って答えると、古菲は呆れたように息をつき、木からひらりと地面に降り立った。

 

「しょうがないアルな。よし、二人ともちょっとそこに座るアル。基本的なところから、じっくり教えてあげるアル!」

 

古菲に促され、トータとあやかは広場のベンチに並んで腰を下ろした。古菲はその前に立ち、先生のように人差し指を立てて話し始める。

 

「いいアルか。まず『気』っていうのはね、生きている人間や動物、すべての生命が体の中に持っている『生命のエネルギー(生命力)』そのものアル! 血液の巡りや呼吸と一緒に、今も二人の体の中をぐるぐると流れているアルよ」

 

「生命のエネルギー……」あやかが真剣な表情で耳を傾ける。

 

「そうアル。これは生まれつきの才能とか、特別な血筋なんて一切関係ないアル。生きてさえいれば、誰の体の中にも等しく存在している力アルよ。ただし、普段はみんな無意識に垂れ流しているだけだから、それを正しい呼吸法と厳しい武術の鍛錬によって『自覚』して、自分の意志でコントロールできるようにするのが、うちの郷里の拳法や気功の技術アル!」

 

「へぇー! じゃあさ、その『気』ってやつを自由に操れるようになると、一体何ができるんだ?」

 

身を乗り出すトータに、古菲はニヤリと不敵に笑って、指を一本ずつ折っていった。

 

「できることは、大きく分けて四つあるアル!

一つ目は【身体能力の爆発的な強化】。脚に気を集中させれば、風みたいに速く走ったり、ビルを飛び越えるような大ジャンプができるアル。

 

二つ目は【攻撃の強化】。拳や指先に気を込めて放つ『発勁(はっけい)』という技アルな。これを使えば、硬い岩を粉々に砕くこともできるし、相手の表面を傷つけずに、衝撃だけを体の中に直接染み込ませて内臓から倒すこともできるアル」

 

「うお、すっげぇ……!」トータの目が輝く。

 

「三つ目は【防御の強化】。全身の皮膚や筋肉に気を巡らせて、肉体を鋼鉄みたいに硬くする『硬気功(こうきこう)』アル。これが極まれば、鋭い刃物で斬られても傷一つつかないし、高いところから落ちても平気になるアルよ。

 

そして四つ目は【気配察知】。相手が発する生命力の動きを五感を超えて感じ取る技術アル。これができれば、目をつぶっていても相手の攻撃をすべて避けることができるアル!」

 

古菲の詳しい説明を聞いて、トータは完全に大興奮状態だった。あやかもまた、そのあまりにも具体的で超人的な技術の話に、驚きを隠せない様子だった。

 

「百聞は一見に如かずアル! 今からその三つ目、硬気功を実際に見せてあげるアルよ!」

 

そう言うと、古菲は再び木の一番高い枝――ゆうに校舎の三階の高さはある場所まで一瞬で駆け上がった。

 

「えっ、古菲、あなたそんな高いところから……っ! 危険ですわ!」あやかが立ち上がって声を上げる。

「ハァァァァ……ッ!!」

 

古菲が短く鋭い呼吸をし、全身に気を巡らせる。

そして、躊躇なくその高所から真っ逆さまに飛び降りた。

 

「きゃあああっ!?」

 

あやかが思わず悲鳴を上げて両手で目を覆う。

だが、古菲は空中で見事に一回転すると、地面に対して両足で真っ直ぐに着地した。

 

ドオォォン!!

 

凄まじい衝撃音が響き、広場の土が派手に舞い上がる。

しかし、古菲は何の痛みもなさそうな顔で、すっと立ち上がった。その足元の地面は、衝撃でうっすらとクレーターのように凹んでいる。

 

「これが硬気功アル! 足の裏に気を極限まで集中させて、着地の衝撃を完全に無効化したアルよ!」

「す、すっげえええええええーーーっ!!」

 

トータはベンチから飛び起き、目を限界まで見開いて大声を上げた。

 

「自分の体一つでこんなスゲェことできるなんて……! 古菲、あんたマジで格好いいぜ! 本物の達人じゃねぇか! 俺もそれやりたい! 今すぐその修行、教えてくれよ!」

 

トータが拳を握って古菲に詰め寄ろうとした、その時だ。

 

 

「――絶対にダメですわ!!」

 

 

あやかが、それまでの呆然とした様子から一転、鋭い悲鳴のような大声を上げてトータのツナギの肩を後ろからガシッと掴んだ。その顔は、恐怖と心配で真っ青になっている。

 

「ちょっとトータさん!あなた、自分が何を言っているのか分かっていますの!? あんなビルから飛び降りるような真似、体の小さい(12歳くらいに見える)のあなたがやろうとしたら、着地した瞬間に全身の骨が粉々に砕けてしまいますわよ!」

 

「えーっ!? でも古菲は平気だったじゃん!」

 

「古菲は特別な鍛錬を積んでいるからですわ! 記憶もない、見た目もまだ小さいあなたが、そんな危険なことに首を突っ込むなんて、この学園の委員長として、何より一人の……お、お姉さんとして、絶対に許可できませんわ! 怪我をしたらどうするのです!」

 

あやかはトータの体を自分の背中に隠すようにして、必死に古菲から引き離そうとする。死産で弟を亡くしているあやかからすれば、目の前の小さな少年(に見えるトータ)が、命に関わるような危険に身を晒すなど、生きた心地がしないほど恐ろしいことだった。

しかし、トータはあやかの手を優しく振りほどくと、真っ直ぐな目で彼女を見つめ返した。

 

「心配してくれてありがとな、委員長。でもさ、俺、自分の体一つでこんなに強くなれる方法があるなら、どうしても知りたいんだ。危ねぇかもしれないけど、逃げずにやってみたいんだよ」

「トータ……」

 

その迷いのないピュアな瞳を見て、あやかはハッと息を呑んだ。この少年が、一度言い出したら絶対にテコでも動かない頑固さを持っていることを、この二週間で彼女もよく理解していた。

あやかは深く、大きなため息をつき、額を押さえた。

 

「……はぁ。本当に、仕方のない男の子(子)ですわね……。分かりましたわ」

「お、やらせてくれるのか!?」

 

「勘違いしないで頂戴。どうしてもやると言うなら、条件がありますわ!

一つ、その修行とやらは、私が隣にいて、しっかりあなたの安全を監視している時にしか行ってはなりませんわ!

そしてもう一つ! 修行の場所は、我が雪広財閥が管理する、安全で防音もしっかりした、麻帆良の私のお屋敷の一室を使いなさい!」

 

「えっ、あやかのお屋敷を使っていいのか!?」トータが目を丸くする。

 

あやかはフンスと誇らしげに胸を張り、少し顔を赤くしながら告げた。

 

「ええ、そうですわ! 私の目の届く場所でなければ、心配で夜も眠れませんもの! 古菲さん、それで構いませんわね!?」

「ハオハオ、場所と監視役が決まったなら、願ったり叶ったりアル! ならば、さっそく委員長のお屋敷へ移動するアルな!」

 

古菲が嬉しそうに拳を叩き合わせ、三人はいよいよあやかのお屋敷での「気の修行」へと一歩を踏み出そうとするのだが――。

 

 

「ありがとな、あやか! あやかの家って多分すげぇんだろ? 楽しみだぜ!」

 

トータが人懐っこい笑顔でカチッと親指を立てると、あやかは少しだけ頬を赤らめて扇子で顔を隠した。初対面の時から、この12歳(に見える)の少年はあやかのことを物怖じせず「あやか」と呼び捨てにしている。

 

「もう、トータさんは相変わらず気軽に私の名前を呼びますわね。……でも、まぁ良いですわ! その代わり、お屋敷では私の言うことを絶対に聞くことですわよ!」

 

(真っ直ぐに『あやか』と呼ばれて頼られるの、やっぱり少しドキドキしてしまいますわ……!)と、内心で母性とショタコン魂をくすぐられながらも、あやかはなんとか威厳を保ってツンと胸を張る。

 

トータが元気よく「おう、約束するぜ、あやか!」と頷くのを見て、古菲は「ハオハオ、話がまとまったならさっそく出発アル!」と拳を鳴らした。

 

三人であやかのお屋敷へと向かうべく、広場から歩き出そうとした――その時だ。あやかがハッと足を止め、美しい縦ロールを揺らしながら自分の額に手を当てた。

 

「……あら? おかしいですわね。何か大切なことを忘れているような……」

「どうしたんだ、あやか?」

「私、そもそもどうして放課後の広場にやってきたのかしら……。確か、古菲さんに用事があって、ずっと探していたはずなんですけれど……」

 

あやかが首を傾げると、古菲も「そういえばそうアルな」とポンと手を叩いた。

 

「委員長、私に用事って一体何だったアルか? じらすのは無しアルよ!」

「ええっと、何でしたかしら……。古菲さんのことで、先生に頼まれて……あ」

 

あやかの顔から、すうっと血の気が引いていった。彼女は手に持っていた扇子をバチンと閉じると、もの凄い形相で古菲を指差した。

 

「思い出しましたわ古菲さん!!気がどうの、修行がどうので完全に忘れていましたわ!」

「な、何アルか!? そんな怖い顔しないでほしいアル!」

 

「あなた、先日の英語と数学の小テスト、揃ってとんでもない点数を叩き出しましたわね!? 職員室で先生が『今すぐ古菲をここに連れてきなさい! 補習と説教のダブルパンチです!』って、もの凄い剣幕で怒り狂っていましたのよ! 私はそれをあなたに伝えるために、学園内を走り回って探していましたの!」

 

その言葉が響き渡った瞬間、今度は古菲の顔が真っ白に染まった。

 

「ひ、ひえええええええええええーーーーーっ!!! 補習と説教アルか!!?」

 

古菲は頭を抱えてその場に飛び上がった。

 

「それを早く言うアルよ、委員長ーーー!! 先生、怒らせると本当に怖いアル! 中国拳法の達人の私でも、あの説教の正拳突きには耐えられないアルよぉぉぉ!!」

「自業自得ですわ! さぁ、今すぐ職員室へ出頭なさい!」

「今日の修行は泣く泣く延期アル! トータ、あやか、また明日アルーーーっ!!」

 

砂煙を上げながら、古菲はまるで脱兎のごとき猛スピードで職員室へと向かって走っていった。その背中は、これから待ち受ける地獄を察してガタガタと震えている。

 

ドタバタと去っていく拳法娘の後ろ姿を、トータとあやかは呆然と見送るしかなかった。広場には、夕暮れの冷たい風がヒューッと寂しく吹き抜けていく。

 

「……行っちまったな」

 

トータが頬をポリポリと掻く。

 

「……ええ、行ってしまいましたわね。まったく、お騒がせな人ですわ」

 

あやかはフゥと深い溜め息をつきつつも、どこか楽しそうにクスリと笑った。 影を落とし始めた夕暮れの中、隣に立つトータを優しく見つめる。

 

「そういうわけですから、気の修行とやらは明日以降にお預けですわね、トータさん」

「おう、しょうがねぇな! でも、あやかの家に行けるの、楽しみにしてるぜ!」

「ふふん、楽しみにしていなさいな。雪広のおもてなし、ご期待を裏切りませんわ」

 

気の修行は思わぬオチで延期となってしまったが、夕暮れの帰り道、並んで歩くトータとあやかの距離は、心なしか少しだけ縮まっていた。




トータをギリギリショタ判定としましたが・・・流石にちょっと大きいか?
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