冬休みを目前に控えた、終業式の日の夕方。
夕闇が深まり始めた麻帆良学園の学園長室に、突如として激しい衝撃音が響き渡った。
バターンッ!!
「大変やでおじいちゃん! 事件や!!」
静寂をぶち破って勢いよく飛び込んできたのは、中等部2-Aの近衛木乃香だった。
その手には、なぜか腕を強引に引っ張られて体勢を崩しているトータが繋がれている。
重厚なデスクで書類に目を通していた学園長・近衛近右衛門は、眼鏡をずらして二人を見ると、ひょいと白い髭をさすった。
「なんじゃ木乃香、大騒ぎして……。まさかトータくんと結婚の約束でも取り付けてきたのかの?」
「もー、何言うてるのよおじいちゃん」
カンッ!
木乃香はニコニコと可憐な笑顔を浮かべたまま、袖口から取り出した金槌で、迷いなく学園長の頭を軽快に叩いた。
「え、えぇっ!? 」
急に行われた激しいツッコミにトータが目を丸くして狼狽する傍らで、学園長は頭に立派なタンコブを作りながらも、何事もなかったかのようにコホンと咳払いをした。
「……で、それで何の用だったのじゃ?」
「えぇっ!? いいのかよ! 普通に流したぞ!?」
容赦ないツッコミと、それを平然とスルーする学園長の妙に息の合ったやり取りに、トータは突っ込んだ。
学園長である近衛近右衛門と2-Aの生徒である近衛木乃香は母方の祖父と孫の関係性である。
当の木乃香は「あ! そうそう!」と楽しそうにポンと手を叩く。
「怒鳴り込みに来たんやなくてな!
凄いのよおじいちゃん、トータ君が……自分の『苗字』を思い出したんよ!」
「ほほう……ふむ」
学園長は頭の上のタンコブを押さえながら、少し表情を引き締めて考え込むように顎をさすった。
「何かそこからトータ君のことについて分かればええのじゃがのう。
……して、なんと言うのじゃ?」
「ふふん、驚かんときや? トータ君の本当の名前は、なんと――」
木乃香が得意気に胸を張った瞬間、トータの脳裏に、ほんの少し前の『超包子(チャオパオズ)』での賑やかな光景が鮮やかによみがえっていた。
終業式が終わった直後の、屋台式中華レストラン『超包子』。
店の前に広がるテラス席では、忘年会を楽しむ2-Aのクラスメイトたちで大いに賑わっていた。
「さあさあ! 終業式も無事に終わったし、帰省しちゃう子もいるからね!
今日はちょっと早い忘年会だよーっ!」
「トータくーん、こっちラーメン追加ね!」
「はいよっ! 中華そば一丁、すぐ上がるぞ!」
厨房と客席を大忙しで何往復も駆け回っていたトータは、エプロンで汗を拭いながら、ようやく一段落ついたところでカウンターの椅子に腰を下ろした。
そこへ、食事にやってきた神楽坂明日菜と近衛木乃香の二人が席についた。
「ふいーっ、トータくんもお疲れ様! 相変わらずいい働きっぷりね」
明日菜がレンゲを手に取りながら声をかける。
「おう、サンキュー明日菜! 料理、口に合ったか?」
「ええ、すっごく美味しいわ!」
ニコニコと微笑む木乃香が、ふと思い立ったようにトータを見つめた。
「そういえばトータ君、うち等、何度もこうして会うとるけど……ちゃんと自己紹介とかしてへんかったよね?」
「あ、言われてみればそうかもな!」
用務員や超包子として働く仕事柄、生徒達との交流は何度かあるが、改まって自己紹介をする機会などはなかなか作り出せていなかった。
トータはエプロンでパンパンと手を拭うと、あらためて二人に向き直った。
「俺は見ての通り、記憶喪失のトータだ!」
「ふふ、知っとるよ。うちは近衛木乃香。隣におるのがクラスの元気印の神楽坂明日菜ちゃんやで」
「近衛……木乃香……」
その名前が耳に飛び込んできた瞬間、トータの動きがピタリと止まった。
(……近衛?)
胸の奥が、ドクンと大きく波打った。
どこか懐かしく、温かく、けれど切ないような――不思議な愛着と郷愁が、津波のように胸いっぱいに広がっていく。
ずっと探していた大切なパズルのピースが、吸い付くようにカチリとはまったような強烈な「しっくり感」。
トータは自分の胸に手を当て、茫然と呟いた。
「近衛……このえ……」
「? どうしたのトータ君、近衛っていう苗字がどうかした?」
不思議そうに顔を覗き込んでくる明日菜に、トータは弾かれたように顔を上げた。
「……近衛トータ?」
声に出した瞬間、全身に電撃が走った。
「そうだ……! 俺の名前だ!! 思い出した、俺の名前……!」
トータは思わず立ち上がり、店中に響き渡るような大声で叫んだ。
「俺の名前は、近衛刀太(このえ とうた)だーーーっ!!」
トータの突然の宣言に、一瞬店内が静まり返った――次の瞬間。
「ええぇぇぇっ!? 思い出したの!?」
「よかったじゃん、トータくん!」
「みんなー! トータくんが自分の名前を思い出したってさー!」
「えぇっ!? マジで!? お祝いじゃんそれは!」
超包子内にいた2-Aのクラスメイトたちが一斉に大盛り上がりし、口々にガヤを飛ばし始めた。
「でも待って、近衛ってことは……木乃香ちゃんと同じ苗字?」
「え、もしかして親族とか?」
「隠し子とかいう可能性もあるんじゃない!?」
「えぇーっ!? 木乃香のお父さんの隠し子!? じゃあ、お兄ちゃんか弟かもしれないってこと!?」
店内はやいのやいのと大騒ぎ。勝手な推測が面白面白おかしく尾ひれをつけて広がっていく。
「おいおい、勝手なこと言うなよー!」
トータが苦笑いしていると、グラスに入ったジュースが次々と手渡された。
「まあまあ! 何はともあれ、名前が分かったんだから今日はお祝いだー!」
「「「かーんぱーい!!」」」
「おう、サンキューみんな!」とトータがジュースを飲み干す傍らで――。
(……隠し子……? お父さんが……?)
「隠し子」というワードを耳にした瞬間、木乃香の笑顔がピキッと固まった。
その背後から、どろりとした漆黒の怨念のようなオーラが立ち昇り始める。
「もし……もしそれが本当なんやったら……お父さん、絶対に許してはおけんなあ…!」
「こ、木乃香……? 大丈夫……?」
隣にいた明日菜が引きつった笑顔で声をかけるが、完全にトランス状態に入った木乃香の耳には一切届いていない。
「お爺ちゃんに……お爺ちゃんに直接問い詰めに行かないと……!」
「え? 木乃香ちゃん、おじい――ぶはっ!?」
木乃香は凄まじい力でトータの腕をガシッと掴むと、そのまま超包子を飛び出し、ピューッと学園長室へ向かって脱兎のごとく走り去ったのだった。
「――と、いうわけなんよ。トータ君の本当の名前は、『近衛刀太』君っていうらしいわ」
学園長室の静けさの中で、木乃香が何事もなかったかのように可愛らしく首をかしげ、事もなげにそう告げた。
「む……近衛じゃと!?」
学園長は驚愕の声を上げ、目を見開いた。
「そう、そうなんよ。近衛ってちょっと珍しい名字やろ? せやから、うちらの親族なんやないかとおもてな。
……それに、もし刀太君が、お父さんが家族に内緒で作った隠し子なんやとしたら……」
木乃香は袖口から再びぬっと金槌を取り出すと、その可愛らしい顔にどろりと昏い影を落とし、黒い笑みを浮かべた。
「と、とりあえずじゃな……っ!」
学園長はダラダラと冷や汗を流しながら、慌てて場を仕切り直すようにコホンと咳払いをした。
そして、金槌を構える孫娘から視線を逸らし、刀太の方へと向き直る。
「刀太君、名前が『近衛刀太』だと思い出したというのは、本当の話かね?」
「あ、はい。自分でもかなりしっくり来ているので、間違い無いと思います。でも、それ以外の記憶はまださっぱりで……」
「ふむ……」
学園長は白く長い髭をさすり、深く考え込むように目を細めた。
(一般人とは思えぬデタラメな身体能力と再生能力。
そして、あのパクティオーカードの所持……。
カードにあった『雪広』の姓や神明流の男性(?)、そして何よりこの『近衛』という名。
これほどの要素が揃っていて、我が近衛家と無関係であると無視することは到底できぬな……)
――近衛家。
それは日本有数の歴史と権威を誇る、呪術の家系である。
木乃香の母方の祖父である近衛近右衛門は、麻帆良学園の学園長にして関東魔法協会の理事を務める重鎮。
そして、現在の関西呪術協会のトップを務めるのが、木乃香の父親である近衛詠春だ。彼はかつて、ネギま!の主人公の父親である『千の呪文の男(サウザンド・マスター)』ナギ・スプリングフィールドと共に世界を救うべく戦った伝説の大英雄であり、婿養子として近衛家に入っていた。
ちなみに、娘である木乃香自身は、両親の「普通の女の子として育ってほしい」という方針から魔法の存在を知らされずに育てられているが、その身体に秘めた潜在的な魔力は測り知れず、時として裏の勢力から狙われるほどの存在でもあった。
(もし刀太君が近衛の血を引く者、あるいは何らかの深い関わりを持つ者だとするならば……)
思考をまとめた学園長は、ゆっくりと顔を上げた。
「刀太君、年末は暇かね?」
「え? 用務員の仕事もないですし、超包子もお休みなので、特に予定はないですけど……」
「ふむ、ならば少し頼みがあるのだがな。
年末、ワシはいつも木乃香と共に実家のある京都の方へ帰省しておるのじゃが……
君も一緒についてきてはくれんかね?」
「え、京都に……ですか?」
「うむ。向こうで近衛詠春や、妻であるワシの娘にも直接会ってもらい、君の顔や名前に何か心当たりがないか聞きに行きたいのじゃ」
「京都……!」
刀太は自分の手を見つめる。
記憶を思い出すこと。それは刀太自身雲を掴むような感覚であった。何がきっかけで思い出すことができるのかもわからず、闇雲に頑張ってもさっぱり思い出すことができていなかった。
そんな状態から、名前を引き出すことができ、自分のルーツに近づくことができるかもしれないということも分かったのだ。
それから力強く頷いた。
「俺の記憶が戻るきっかけがつかめるかもしれないなら、ぜひお願いしたいです!」
「わぁ、本当!? 刀太君、うちに里帰りについてきてくれんの? 嬉しいわ〜!」
木乃香はパッと顔を輝かせると、先ほどまでの黒いオーラを一瞬で霧散させ、飛び跳ねるようにして弾ける笑顔を見せた。
かくして、刀太の年末の予定は「京都への同行」に決定したのだった。
――だが、その学園長室の分厚い扉のすぐ外では、思いもよらぬギャラリーたちが息をひそめて耳を澄ませていた。
学園長室の分厚い扉の外。
廊下の暗がりにひっそりと身を潜めていたのは、超包子から密かに木乃香たちの後を追ってきた2-Aのメンバーたちだった。
ドアにピタリと耳を押し当て、中の会話を漏らさず聞き取っていた雪広あやかが、静かに身を起こすと優雅に胸を張った。
「……トータさんの素性がわかるかもしれないというわけですわね」
ふっと口元に不敵で麗しい笑みを浮かべる委員長。
「こうしてはおれませんわ! 私も刀太さんと修行する仲間として、しっかり見守りませんと!」
あやかは自身の圧倒的な資金力――すなわち雪広マネーをフル活用し、こっそり京都へ追跡する気満々である。
それを見ていた明日菜が、ジト目で額に青筋を立てながら即座に噛みついた。
「ちょっと委員長! あんた、いつの間に知らないところでツバつけてたのよ!? このショタコン!」
「なんですって!? ショタコンとは失礼な! 私は純粋に刀太さんの健やかな成長と未来を見守りたいだけですわ!」
「はいはい、どこがよ! 目が完全に獲物を狙う猛禽類になってるじゃない!」
いつものように胸ぐらを掴み合ってギャーギャーと取っ組み合いを始める二人。
しばらく取っ組み合いをしていたあやかは不意にコホンと咳払いをすると明日菜の手をすんなり外し、少し離れた場所で控えめに立ち尽くしていた四葉五月の方へと優しく向き直った。
「五月さんはどうなさいます? 私1人では寂しいですし、人数が増えても私としては全く問題ありませんわよ」
「えっ、私ですか……? で、でも、私なんかがついて行ったらご迷惑じゃ……」
五月は申し訳なさそうに両手を振って遠慮しかけた。
だが、ふと脳裏に浮かんだのは、毎日超包子で元気に汗を流し、自分の作った料理を「五月のメシは最高にうめぇ!」と心からの笑顔で頬張る刀太の姿だった。
自分にとっても、あの大切な仲間の過去や素性に関わる大事な局面なのだ。
離れた場所でただ吉報を待つことなんて、どうしてもできなかった。
五月は胸の前でぎゅっと拳を握りしめると、決意を込めて見つめ返した。
「……いえ。もしよろしければ……お世話になります、委員長」
「フフ、そう言ってくださると思っていましたわ」
頭を下げる五月を見て、あやかは満足そうに口元を綻ばせると、すっと五月の耳元へと顔を寄せ、吐息混じりに小声で囁いた。
「……さすがは私のライバルですわ」
「へ……? ラ、ライバル……ですか……?」
予想外の言葉に、五月はパチクリと目を丸くして首をかしげた。
そんな彼女に対し、あやかはバチッと完璧な角度でウインクを贈ってみせる。
ふたりがそんなやり取りを交わしていた、まさにその時だった――。
「はいはーい! 僕たちも行きたい!」
元気いっぱいの大きな声とともにぴょんと飛び出してきたのは、双子の鳴滝風香と文香だった。
風香が勢いよく手を挙げ、文香もその隣でコクコクと大きく頷いている。
あやかは両手を腰に当て、困ったように溜息をついた。
「あなた達ねぇ……これはお散歩と違って、遊びで行くのでは――」
言いかけたあやかの言葉が、ピタリと止まった。
いつもなら悪戯っぽい笑顔を浮かべている風香の瞳が、まっすぐに自分を見つめている。
遊び半分などではない、仲間のために本気で力になりたいという、真剣で真っ直ぐな眼差し。
文香もまた、風香の手を握りしめながら静かな決意を宿した目でこちらを見つめていた。
あやかは一瞬だけ目を丸くしたが、すぐに表情を和らげると、優しく微笑んだ。
「……いいですわよ。一緒に行きましょう」
「やったー! さすが委員長!」
「ありがとうございます、委員長さん……!」
喜び跳ね起きる双子の後ろから、どこからともなく気配もなく影が滑り込んできた。
「いやー、拙者の分も悪いでござるなー。旅は道連れ、世は情けでござる」
「なっ……長瀬さん!? あなた、いつの間に!?」
忍者さながらに自然な動作で一行に混ざり込んでいた長瀬楓に、あやかは思わず素でツッコミを入れた。
楓は「ふふん」と裏手で印を結びながら、しれっとした顔で仲間入りを果たしている。
一方、そんな喧騒から少し離れた廊下の影で、三人の少女がひそひそと頭を突き合わせていた。
綾瀬夕映が、眼鏡の奥の目をじっとパル――早乙女はるなに向け、静かなトーンで問いかける。
「……はるな。行かなくていいのですか?」
「は? 行かなくて良いって何がよ? 私たちオタクは年末年始、同人誌の原稿やらコミケやらで死ぬほど忙しいの! 暇なわけないでしょ!」
はるなはぷいっと顔を背け、腕を組んで早口でまくしたてた。
だが、その視線がチラチラと学園長室のドアとあやかたちのグループを往復しているのを、親友二人が見逃すはずもなかった。
今度は宮崎のどかが、控えめに、けれど核心を突くようにはるなの袖をちょんちょんと引っ張った。
「でも……ハルナ。みんな刀太くんを追いかけて行っちゃうよ? ハルナは本当に、ここで待ってるだけでいいの……?」
「だーかーら! なんで私がわざわざ京都まであの野生児を追いかけなきゃいけないのよ! 意味が分からないわ!」
「ふふ、素直じゃないですね」
夕映がニヤリと意地悪な笑みを浮かべる。
「トータさん、自分の本当の過去を知るために京都へ行くのですよ? もしかしたら、向こうで運命のヒロインに出会ってしまったりするかもしれません」
「ゆ、夕映、何言っちゃってんのよバカじゃないの!? 少女漫画の読みすぎ!!」
「ハルナの描いてたあの絵……すごく情熱的だったのにねぇ……」
のどかが追い打ちをかけるように、ぽつりと呟く。
先日の裏庭での、あの盛大な勘違い(と本気のスケッチ)を知っている二人の追撃に、はるなの顔はみるみるうちに真っ赤に沸騰していった。
「あーもーっ!! 分かったわよ! 行けばいいんでしょ、行けば!!」
はるなは頭をバリバリと激しくかきむしると、ヤケクソ気味に踏み出した。
そのまま大股であやかたちの輪へと突き進み、あやかの肩をガシッと力任せに叩いた。
「委員長! 1人分、追加でお願い!!」
突然背後から肩を叩かれたあやかは、「まあ」と驚いて振り返った。
まさかはるなが自分たちの京都行きに加わるとは思ってもみなかったからだ。
「早乙女さん……? あなたまで行かれますの? でも、あなたはあまり刀太さんと接点があるイメージがございませんでしたけれど……」
あやかの純粋な疑問に、はるなは真っ赤な顔を必死に誤魔化すように、フンと鼻を鳴らして眼鏡のブリッジをクイッと上げた。
「あ、あー……ほら! 私、アイツに毎週漫画貸してるじゃない!?
あのバカが京都に行ってる間に感想が聞けなくなるのは漫画を描く者として困るのよ!
だからこれは仕事! ついで、ただのついでなんだからねっ!」
必死にツンデレな言い訳を並べるはるなの姿に、後ろで見守っていた夕映とのどかは顔を見合わせてクスクスと笑いを漏らした。
あやかははるなの真っ赤な耳と必死な表情をじっと見つめていたが、やがてすべてを察したように、優雅で深い笑みを唇に浮かべた。
「ふふ……ええ、もちろんですわ。大歓迎ですわよ、早乙女さん」
こうして、こっそりと刀太の京都行きに追従する「極秘追跡ツアー」のメンバーが確定した。
雪広あやか、四葉五月、鳴滝風香、鳴滝文香、長瀬楓、そして早乙女はるな。
個性豊かな2-Aの6人組だ。
はるなは「ったく、なんで私が……」とブツブツ文句を言いながらも、どこかソワソワした様子で胸の前に手を置いている。
五月は刀太の無事を祈るように優しく微笑み、風香と文香は探検隊気分で顔を輝かせ、楓はニンジャらしく影に溶け込んでいる。
(あらあら……)
あやかは一人ひとりの表情を静かに見渡すと、扇子を優雅に開いて口元を隠した。
(刀太さんの過去を探る旅……どうやら一筋縄ではいきそうにありませんわね。
皆様、それぞれに譲れない想いがおありのようですこと)
どこか晴れやかで、けれど少しだけ負けず嫌いな光を瞳に宿しながら、あやかは心の中で小さく呟くのだった。
(ふふ……私だって、そう簡単に負けていられませんわね!)
冬休みの到来とともに、物語は舞台を歴史と伝統の街・京都へ――。
記憶を持たない少年と、彼を追う少女たちの、波乱に満ちた「京都編」が、いよいよ幕を開けようとしていた。
修学旅行編以外で京都に行くネギま!二次創作はここだけだと思います。