近衛刀太inネギま   作:けるるんくっく

9 / 10
超ってアルを使わなかったり、使ったをつかたと言ったり「っ」が抜けたりするみたいですかね?

前の話もおいおい訂正します泣


2人の鉄人

12月に入り、麻帆良学園は本格的な冬の寒さに包まれていた。息を吐けば白く染まるような凍える夜でも、「超包子」のまわりだけは、蒸気と温かいスープの香りで満たされている。

 

ある日の夜、営業が終わって片付けをしていた時のことだった。店主の超鈴音が、にこにことした笑みを浮かべながら、トータと五月の前にやってきた。

 

「二人とも、ちょっといいネ? 実は冬の本格的な寒さに合わせて、新メニューを一つ追加したいと思てるヨ」

「お、新メニューか! いいじゃねぇか!」

「新メニュー? この季節なら、体が喜ぶものがいいねぇ」

 

身を乗り出すトータと、おっとり微笑む五月。そんな二人を見比べながら、超はわざとらしく人差し指を一本、チッチッと立ててみせた。

 

「ただ、キッチンカーのスペース的にも、追加できるのは『一品』だけネ。二人で知恵を絞って、最高の冬メニューを一つ、考えてほしいヨ。……それじゃ、頑張てネー!」

 

それだけ言うと、超はフフと意味深に笑いながら、さっさと奥の居住スペースへと消えていってしまた。

 

「一品だけ、か……」

 

トータと五月は顔を見合わせた。そして、ほぼ同時にポンと手を叩く。

 

「よし、思いついたぜ!」

「あっ、私も思いついた!」

「せーので言うか! せーの――」

 

息を合わせて、二人は自分のアイデアを口にした。

 

「『激辛麻辣スープ麺』!!」

「『ホカホカ中華風カスタード蒸しケーキ』!!」

 

夕闇の店内に、全く異なる二つの料理名が響き渡った。

トータと五月は、同時に目を丸くする。

 

「……え? 蒸しケーキ? パルじゃあるまいし、なんで冬に甘いデザートなんだよ、五月」

「トータくんこそ、なんでそんなに辛そうな麺なの?」

 

お互いに一歩も引く気のない視線が交錯する。

 

「いやいや、冬なんだからさ! 寒さを一発で吹き飛ばすくらい、ガツンと辛くて、体の芯から汗が吹き出る熱い麺の方がいいに決まってるだろ!」

 

トータが拳を握って熱弁すると、五月は珍しく眉をひそめ、しっかりとトータの目を正面から見据えて言い返した。

 

「それは違うよ、トータくん。寒〜い冬の夜だからこそ、屋台で買って歩きながら食べられる、優しくて温かい甘みが一番ホッとするんだよ。それに、辛いものが苦手なお客さんだってたくさんいるんだからね」

「そりゃそうかもしれないけどさ! 屋台っていったら、やっぱりフーフー言いながらすする熱い麺だろ! 五月の甘いケーキより、その方が絶対に売れるって!」

「蒸しケーキだって、蒸したてはホカホカでとっても美味しいよ! テイクアウトもしやすいし、冬の夜のデザートにぴったりだよ!」

 

五月は普段のおっとりした様子からは想像もつかないほど、料理人としてのプライドを覗かせて強く主張する。

トータも自分の直感を信じて譲らない。

二人の意見は、完全に平行線をたどっていた。

 

「……うーん、これじゃラチがあかねぇな」

 

トータは頭をガシガシと掻くと、不敵にニヤリと笑った。

 

「じゃあ、明日実際に作ってマスターに食べてもらおうじゃねえか! ま、俺が勝つと思うけどな!」

「……いいよ、望むところだよ。私のカスタード蒸しケーキの美味しさ、思い知るといいよ!」

「フンっ!」

 

二人は同時にそっぽを向くと、ドタブタと足音を立ててそれぞれの部屋へと戻っていった。

いつもなら「今日も飯美味かったぜ!」「おやすみ、トータくん」と笑い合うはずの二人の間に、火花が散るようなギスギスとした空気が残されていた――。

 

 

 

 

 

翌朝。

超包子の居住スペースにある共同のダイニングキッチンには、昨日まではなかった、ひどく重苦しい空気が立ち込めていた。

 

いつもなら、トータが「おっ、手伝うぜ!」と右手一本で器用にトレイを運び、五月が「ありがとう、トータくん。今日もたくさん食べてねぇ」と、おっとりした温かい笑顔を交わし合うのが二人の朝の風景だった。

 

だが、今朝は全く違った。

 

台所に立つ五月は、無言で炊飯器を開けてご飯を茶碗によそい、お味噌汁を器に注いでいく。

トータもその背中に声をかけることができず、ただ食卓の椅子に浅く腰掛け、ツナギの膝の上に置いた自分の右手をじっと見つめていた。

カチャ、とトータの前に朝食のトレイが置かれる。

 

「……おはよう、トータくん」

「……おう、おはよう、五月」

 

交わした言葉はそれだけだった。

 

五月は自分のトレイを持ってトータの向かい側の席につく。普段なら、今日やる作業のことや、他愛のない世間話で賑やかになる食卓。

しかし、今朝はただ、スプーンが食器に当たる金属音と、スープをすする音だけがやけに大きく響いていた。

 

トータは目の前のご飯を口に運びながら、目のやり場に困っていた。

顔を上げればどうしても五月と目が合ってしまう。

五月の方も、ずっと手元のスープの器を見つめたまま、伏せたまつ毛を微かに揺らしている。

 

冷たい12月の朝の空気の中で、二人を隔てる沈黙は、時間が経つほどに気まずさを増して重くのしかかっていった。

そんな中、五月がスープをスプーンで小さくかき混ぜる手を止め、ポツリと、本当に小さな声で呟いた。

 

「……そのメニューならさ、あの激辛スパイスの他に、お味噌を少し隠し味に使うとコクが出ていいと思うよ」

 

トータはピクッと手を止め、顔を上げてきょとんとした表情で五月を見た。

五月はトータと目が合うと、ほんのり頬を赤く染めてパッと目を背けた。

 

「……独り言だから」

 

トータは口を少し開けたまま、そっぽを向いた五月の横顔を見つめた。

気まずくて喧嘩している最中なのに、どうしても相手のメニューが良くなる方法を考えて、つい口から漏らしてしまった五月の温かさが、トータの胸にじわりと広がっていく。

 

今度は五月が、自分の前の調味料棚を見つめながら、またボソッと独り言のように呟いた。

 

「あ……甘いメニューだし、お砂糖買い足しとかないと足りないかも……」

「いや」

 

トータが、お茶碗を置いてボソッと言った。

 

「使うかなと思って、昨日、あの後俺が買ってきてる。棚の奥に入れてあるぜ」

 

トータの作る辛い麺には、砂糖など使わない。五月のために買ってきておいたのだ。

 

五月はゆっくりと顔を戻し、トータの顔を見た。

トータもまた、五月の顔を見つめ返す。

数秒の間。

そして、どちらからともなく「ふふっ」と小さく吹き出した。

 

「あはははは! なんだよそれ! お互い気まずそうにしやがって!」

「ふふふ、お互い喧嘩してたのにねぇ。やっぱり心配になっちゃって」

 

声を上げて笑い合うと、朝から立ち込めていたあの氷のような気まずい空気は、一瞬にして綺麗に溶けて吹き飛んでいった。

 

「よし、五月! これで気まずいのは無しだ! お互いに最高の試作品作って、正々堂々勝負しようぜ!」

「うん! 負けた方は恨みっこなしだからね、トータくん!」

「おう!」

 

 

 

そして夜の9時。

超包子の営業が終了し、片付けを終えた厨房に、再び別の張り詰めた空気が流れていた。

 

カウンターテーブルには、腕組みをした店主の超鈴音が座っている。その前に、トータと五月がそれぞれの試作品を並べた。

 

トータが作った、湯気とともに容赦ない辛香が立ち上る『激辛麻辣スープ麺』。

五月が作った、竹の蒸し器からふんわりと甘い香りを漂わせる『ホカホカ中華風カスタード蒸しケーキ』。

 

「ハオハオ、それじゃいただくネ」

 

超は箸とレンゲを持ち、まずはトータの麺をすすった。

 

「辛! でも、箸が止まらないネ……!」

 

額に汗を浮かべながら、超は麺を一気に平らげる。

続いて、五月の蒸しケーキを一口かじった。

 

「ふわふわで、カスタードの甘みが優しくて最高ヨ……。辛いものの後に食べると、口の中がすごく落ち着くネ」

 

お皿をきれいに平らげた超は、腕組みをして難しい顔をした。

トータと五月は、ゴクリと唾を飲み込んで判定を待つ。

しばらくの沈黙の後、超はパッと顔を上げて、にこやかに笑った。

 

「うーん、決めがたいから、セットで販売しちゃうネ!」

「「えっ!?」」

「それなら一品ネ。辛いのと甘いの、一緒に食べるとちょうどいいネ。でも、辛いのが苦手な人や、甘いのが苦手な人もいるから、単品でも一応販売許可ヨ! お疲れ様!」

 

そう言って、超は満足そうに立ち上がり、嵐のように自分の部屋へと戻っていった。

残されたトータと五月は、ぽかんと口を開けたまま、超が去っていった扉をしばらく見つめていた。静まり返った厨房に、パチパチとガスコンロが冷めていく音だけが響く。

 

「……なぁ、五月」

「……うん、トータくん」

 

トータは首を傾げながら、頬をボリボリと掻いた。

 

「マスター、昨日『追加できるのは一品だけ』って、めちゃくちゃ強調してなかったか?」

「言ってたね……。追加できるスペースがないからって……」

「でも『セットで販売するから一品』って……。それ、ただ二つのメニューを無理やり一皿にまとめただけだよな?」

「う、うん。しかも結局、単品でも売るって言ってたよね……」

 

二人はお互いに顔を見合わせ、超のあまりにも強引でおかしな屁理屈に、呆れたように苦笑いを浮かべた。

 

「なんか、完全にマスターにうまく丸め込まれた気がするな。あいつ、最初から両方採用するつもりだったんじゃねぇか?」

「ふふ、確かに超さんならやりそうだね。……でも、不合格じゃなかったってことだよね?」

 

五月のその言葉に、トータはハッとして、すぐに顔を輝かせた。

 

「――そうだよな! どっちも美味いから両方出すってことだろ! ってことは、俺たちの勝ちじゃねぇか!」

「うん、そうだね! 二人とも合格だよ!」

 

二人は同時に、最高の笑顔で右手を高く掲げた。

パンッ!!

厨房に、昨日からのわだかまりをすべて吹き飛ばすような、威勢のいいハイタッチの音が響き渡る。

 

「やったぜ、五月! 二人で合格だ!」

「やったね、トータくん! 美味しい新メニュー、たくさんのお客さんに食べてもらおうね!」

 

お互いに一歩も引かずにぶつかり合ったからこそ、掴み取った大勝利。二人は喜びを分かち合いながら、温かい絆をさらに深めていた。

 

 

その頃、居住スペースの裏手に下がった超鈴音は、一人で静かに夜空を見上げていた。

昼間の気まずい雰囲気から一転、最後にはお互い高め合って素晴らしいメニューを完成させた二人。

超はフッと表情を和らげ、温かい笑みを浮かべた。

 

(正反対だけど、相性抜群ネ)

 

冬の夜風が通り抜ける学園の片隅で、新しいメニューの灯火が、ほんのりと温かく灯り始めていた――。

 

 

 

そして翌日の夕方。

 

「超包子」の店頭には、手書きの新しい看板が堂々と掲げられていた。

 

『冬限定! ポカポカ甘辛コンビ(単品注文もOKネ!)』

 

夕闇が迫り、冷え込みが一段と厳しくなる時間帯。

お腹を空かせた学園の生徒たちが、温かい湯気に誘われるようにして次々と集まってくる。

 

「はいよっ! お待ちどうさま、激辛麻辣スープ麺とカスタード蒸しケーキのセットだぜ!」

 

トータは片腕で器用に何枚ものお皿を運びながら、元気に声を張り上げた。

 

「わあ、本当に辛そう……! でも美味しそう!いただきます!」

 

女の子たちのグループが、まずはトータの麺をフーフーとすする。ガツンとくる刺激的な辛さに「辛いっ! でも箸が止まらない!」と顔を火照らせながら、一気に麺を平らげた。

 

そして、口の中がヒィヒィと熱くなった最後に、五月のカスタード蒸しケーキを一口かじると、一斉に歓声が上がった。

 

「すごーい! 最後にこの甘いケーキを食べると、口の中の辛さがすーっと中和されて、すっごく幸せな気分になる!」

「この組み合わせ最高! 最後にホッとする甘さがあるから、辛い麺も大満足で食べられちゃうね。体も一気にポカポカしてきたー!」

 

お客さんたちの笑顔と「美味しい」という声が、次から次へと厨房まで届いてくる。カウンターの奥で調理を続ける五月は、その様子を見て、ホッと胸を撫で下ろしながら嬉しくそうに微笑んだ。

 

「よかったぁ……。トータくん、大好評だねぇ」

「おう! 最後にデザートで締めるってのが、思った以上に大ウケじゃねぇか! 頑張った甲斐があったな、五月!」

 

二人がそんな会話を交わしながら、忙しく立ち働いていた、その時だった。

厨房の入り口のカーテンが静かに開き、絡繰茶々丸が姿を現した。

彼女はいつも通りの無表情のまま、トータたちの死角である蒸し器の裏へと真っ直ぐ視線を向ける。茶々丸の瞳が怪しくピカッと緑色に光った。

 

「――警告です、古菲さん。先ほどからあなたの現在の運動量に対して、摂取カロリーの数値が異常なグラフを描いています。……生体スキャンを実行。口内および胃部から、新メニューのカスタード蒸しケーキの成分を検出しました。完全につまみ食いです」

「えっ!?」

 

茶々丸の淡々とした声に驚き、トータと五月が蒸し器の裏を覗き込む。

そこには、トータたちにバレないよう仕事中にこっそり肉まん用の蒸し器からケーキを失敬し、両頬をリスのように膨らませて必死に口に押し込んでいた古菲の姿があった。

 

「あちゃー! バレたアルか! 茶々丸のセンサーは相変わらず容赦ないアルな!」

 

古菲は頭を掻きながら、降参とばかりにペロッと舌を出した。完全に全員に現行犯で引っこ抜かれ、バツが悪そうに笑っている。

茶々丸は微動だにせず、「超マスターに報告し、お給料から天引きしておきます」と告げた。

 

「うぅ、それは勘弁アル……。でもな、トータ、五月! この新メニュー、めちゃくちゃ美味しいアルよ!」

 

古菲は天引きの通告に涙目になりつつも、すぐに親指をグッと立ててニカッと笑った。

 

「辛い麺で口の中がヒィヒィになった最後に、この甘くてホカホカのケーキが優しく包み込んでくれるアル! 正反対なのに相性バツグンアル!」

「あはは、ありがと、古菲ちゃん。しっかり味のコンセプト通りに食べてくれて嬉しいよ」

 

五月がクスクスと笑うと、トータも嬉しそうに胸を張った。

 

「おう、つまみ食いはめっだけど、美味いって言ってもらえるのは最高だな! よし五月、この調子で今夜の分も全部売り切っちゃおうぜ!」

「うん! 頑張ろうね、トータくん!」

 

冬の厳しい寒風が吹き抜ける麻帆良学園の片隅で、超包子の灯りと二人の新メニューは、集まる人々の心と体をどこまでも温かく満たしていくのだった。




刀太が記憶を思い出すまでは、ほのぼのしてます。
記憶を思い出してからはシリアスにならざるを得ないので、それまではこんな感じで交流と恋愛を描きます。
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