静寂の弟子が次代の英雄に加わるのは間違っているだろうか 作:ダンまちにヘラファミリアを求める人
翌日。ヘスティアが目を覚ますと、アルテリアは昨日と同じようにベルのそばに座り目を細めていた。まったく同じ体勢で。
「……寝てないのかい?」「……? ああ、寝ていないが」「いや、寝ようよ!? いつまでベル君を撫でてるんだよ君はー!?」
衝撃のあまり叫んだ後で、びくびくアルテリアの反応を伺うヘスティアだが、アルテリアはとくに気を悪くした様子もない。
(そういえば、たしかにアルテリア君が昨日ボクに寝るかって聞いたのも意外に優しかったな……なんでだろう?)
ベル君を撫でているのと関係があるのか、と考える。
「ベルが起きるまで、だが?」「はぁあああー!?」
そして異常な回答にまた叫んだ。
「うるさい」
ベルから視線を逸らさず、ヘスティアに向けて放たれた手刀。
「うわあ、なんか斬撃がとんでるぞ!?こっわ……」
ドン引きするヘスティア。びびった。
「ああ、そうだ……ヘスティア、
「……わかったよ。あれ、君の前の主神はヘラ、だっけ?それとも……」「ああ、ヘラだ」
エレボス、と言いかけたヘスティアをアルテリアは言外に制する。
(そう言えば邪神って呼んだとき、やけに怒ってたなぁ)
仲良かったのかなー、でも会うことってあるのか? とヘスティアは考えながら、とりあえず触れないことにした。おそらく、彼女にとってエレボスは大事な存在であり、不可侵の領域だ。下手に彼女を刺激するべきではない。
「ふーん。元気なのかい、ヘラ?」「元気だが……」
ヘラが他のありとあらゆる神々に嫌われているのは、アルテリアにとっても事実である。ヘラにも嫌われている、というか恐れられている(?)自覚はあるのだ。故に、そんなヘラが心配されているとあれば違和感を覚えるのも当然でたる。
「ああ! ボクとヘラは仲が良かったんだよ、天界でね!」
ふん!と胸を張るヘスティア。
「……」
「そんな、どうしてそうなったのか、さ〜っぱり理解できねぇなコイツみたいな目でボクを見るなよ!?」
ヘスティアはやはり叫んだ。今日はよく叫ぶ日だ。 『二度言わせるな。そして、三度目はない……ドーン!』 『うわぁぁぁ!?なんか威力あがってるぅ!?』
そんなやり取りがあったとか、なかったとか。
「まあ、それはそれだ。早くしろ」「はいはい」
アルテリアは諸々の服を脱ぎ、背をヘスティアに晒す。体が微かに強張っているのがわかった。
「始まるよ」「……ああ」
神の血が波紋を起こす。ゆっくりとそれが広がり、ヘスティアの司る聖火の形を象った。眠っていたステイタスを呼び起こすのだ。
文字側が、花と乙女の姿でできたものから、聖火を彷彿とさせる
ステイタス更新ではなく、新たな経験値がないのですぐ終わる……はずだったのだが。
「アルテリア君、これは何だい?」
真面目な顔のヘスティアが聞く。作業が終わったと察したアルテリアはさっさと服を着てやった。
「これ、とは何だ?」
「いや、君のスキルだよ(「ステイタス」を見てください)。この、
アルテリアの呼び出しに応じるように、ゆっくりとアルテリアの指先から蒼い魔力光にもにた光が広がり、人の形をとった。
たった今、ふわりと舞い上がった雪が、人の姿に成った。
そう言われても信じられるほど、端麗な容姿だった。
金を帯びた青の髪は長く流され、ふわりとカールしている。
氷のような蒼から銀へと、見る角度によって移り変わる美しい瞳。
繊細な長い青金色の睫毛が瞬く様は、純真無垢な小鳥のようにも見える。
肌は真珠色で、細雪より細かく石膏より滑らかだった。
華奢で可憐な、目が覚めるような美少女。
そっと、ヘスティアが息を呑む音が静寂の中に響く。
「これが……君の精霊?エルファリアって子なのかい?」「ああ、そうだ」
見惚れるでもなく、日常的なことのようにアルテリアは頷く。それを見て、ヘスティアは一度息をふーーっ、と吐き、すぅーー、と吸った。
深呼吸してから、「もういいよ」と言うと、すぐ氷の美少女は空気に溶けるようにして薄くなり、消える。
「はぁぁぁぁ……なんかスキルもやばいし、アビリティもヤバい……てかなんで1000超えてるんだよおかしいだろ……」
ぶつぶつ呟くヘスティア。
「スゴい子を引き当てたんだねぇ、ボクは」
最後に感慨深そうな顔をし、目の前を向くと、「んっ!?」いつの間にかアルテリアは居なくなっていた。
ばっ!と後ろを向くと、やはりベルを撫でているアルテリア。もはや突っ込む気力もないヘスティアは溜息をついた。
ちなみに、本来ファルナ持ちのアルテリアさまは本来オラリオに入れないのですが、魔法で城壁を乗り越えて不法侵入しています。どこかのアマゾネスの姉妹とは違って。