推しの心の傷になりたい!!   作:じんさんぽ

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曇らせは後にも続く

 

 

渋谷事変 七海side

 

身体中が熱かった。

いや、実際半身が焼けているのだ。

皮膚は炭のように焦げ、右目はもう見えない。

それでも、足は止まらなかった。

「……あと少し。」

あと1人、もう1人だけでも救えれば。その一心だけで歩く。

改造人間を一体、また一体。

気が付けば何体倒したかも分からなくなっていた。

「………。」

疲れた。本当に疲れた。

脳裏に浮かぶのはマレーシアの青い海。静かな波の音。

仕事も呪霊もない。

そんな場所で本を読みながら、何も考えずに過ごす。

そんな未来を夢見ていた。

「……行きたかった。」

ぽつりと漏れる言葉。

すると不思議だった。

マレーシアの景色はいつの間にか消えていた。

代わりに見えたのはあの頃の高専の景色。

春。桜が舞っている。

「七海くん!」

聞き慣れたしかし懐かしい声がする。

振り向くと、彼女が笑って手を振っていた。

「また新しいパン屋さん見つけたんだよ!」

「一緒に行こう!」

何でもない。

本当に何でもない日の記憶。

それなのにこんなにも胸が締め付けられる。

「……明代さん。」

彼女は笑う。

あの日と同じように優しく、穏やかに。

「ねぇ、今日は寄り道しようよ。灰原くんも誘ってさ。」

後ろを見る。

灰原が笑っている。

「七海ー!早く行こうよ!」

三人で並んで歩く。

そんな未来はもう、どこにもない。

「……すみません。」

七海は小さく笑う。

「うまく出来ませんでした。」

マレーシアに行くことも。

普通に生きることも。

ずっと生きていて欲しいと言う彼女の願いも、呪術師に戻らなければ叶ったはずなのに。

全部、叶わない。

明代は首を横に振る。

「ううん。十分だよ。」

「七海くん。七海くんはたくさん頑張った。」

その一言だけで、張り詰めていた何かが切れそうになる。

「私はね。」

彼女は桜を見上げる。

「最後まであなたが生きてくれて嬉しかった。」

「だから。」

彼女はあの日、森で別れた時と同じ笑顔を浮かべる。

「もう、休んでもいいよ。」

七海は目を閉じた。

「……。」

休みたい。

本当はずっと休みたかった。

「……ええ。少しだけ。」

「休ませてもらいます。」

その瞬間。

現実へ引き戻される。

背後には人形の呪霊の手が触れている。

虎杖くんの気配がする。

彼なら託せる。

七海は静かに振り返る。

「虎杖くん。」

一瞬だけ、桜の花びらが視界をよぎった気がした。

明代が少し離れた場所で笑っている。

『七海くん。』

『お疲れさま。』

その声が聞こえた気がして。

七海は穏やかに微笑んだ。

「後は頼みます。」

 

 

 

 

 

 

曇らせ第一幕の登場人物

 

明代 凛音(あけしろ りんね)

オリ主。女性。曇らせが性癖。

一度転生してしまって欲望に正直になってしまったモンスター。

推しが曇るためならばどんな手段も選ばない。

術式は簡単に言ったら等価交換。

自分が持っているものを代償に力を得ることができる。

代価に払うものが重要、貴重であるものほど威力が増す。

 

七海 建人

今回オリ主の曇らせのターゲットになってしまった哀れな推し。

どうしてもオリ主が忘れられず他の女性とは付き合えなくなる。

常に形見の数珠のブレスレットを持ち歩いている。

 

灰原 雄

七海と明代の恋を密かに応援していた。

補助監督になって自分たちのように等級違いで死者が出ないよう必死にサポートする。

補助監督なのに現場に出て実際の呪霊を見て生きて帰り報告をするため脳筋な補助監督になる。

 

さしす組

今回それほど出番がなかった。

自分たちに懐いていた明代をとても可愛がっていた。

原作通りに夏油は離反してるし、五条は教師になる。

 

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