転生スライムテイマーの現代無双〜〜この世界も滅びそうなので俺が何とかします 作:現代ダンジョンですぐ死ぬ人
「おい見たか今の………」
「ああ………」
「まさか【学園治安維持隊】と
「アイツやっぱり不正してたんだ………」
「だからスキル判定が出なかったんだ………」
「みんながどれだけ努力したか知らないのかよ」
「あんなクズが攻略者とか冗談じゃない」
「ドーピングで合格したってすぐにボロが出るのにな、馬鹿なヤツだよ」
「能力詐欺で訴えられたら二度と攻略者にはなれないな。いい気味だぜ」
「やはり名門以外の人間の実力なんてこんなもんよ」
「きっと地方試験の成績もインチキかカンニングで合格してたんだ、許せねえ!」
「育てた親の顔が見たいもんだ。さぞかし馬鹿みたいなツラだろうな」
学園治安維持隊が去った後の本試験会場では、受験生たちがユウジを悪しざまに罵っていた。
ユウジが連行された理由はあくまでもドーピング“疑惑”。断定ではなく、これから真偽を明らかにする段階だというのに、受験生の誰もがユウジは不正をしたのだと決めつけていた。
彼らがこう思うのも、やはり学園治安維持隊とその隊長である犬飼サツキの影響によるところが大きい。
本試験前に受験生たちは様々なチェックをされており、考えれば不正のしようがないことくらいわかりそうなものなのだが、学園治安維持隊が隊長ともどもわざわざ出向いて容疑者を確保した現場に居合わせた、この状況が彼らの認識を狂わせた。
“本当に不正をしたから学園治安維持隊が来た”のだと。
こうして向界ユウジは不正を行った違反者だと、同期の受験生たちに周知された。
これから明らかになる事実よりも、彼らは都合の良いストーリーを信じたのだ。
かつてのオールドメディアは大災厄のときに無能を晒し、見捨てられ消えていった。
しかし、大衆の本質はオールドメディアを盲信していた頃と何ら変わってはいなかった。
◇◇◇ ◇◇◇
「それで犬飼隊長………ありもしない罪状をでっち上げて受験生を監禁している理由は何かな?」
「監禁ではありません、事情聴取中です」
「ほう、監禁して暴力でウソの自白を強要することが事情聴取か。では速やかに私の質問に答えてくれ。穏便に聞いているうちにな」
壮年のスーツ姿の男性が犬飼サツキに問いかける。
攻略者学園の本舎、その最上階の会議室にて、攻略者学園の幹部たちに彼女は呼び出されていた。
サツキに話しかけているのは学園の理事長であり、かつては有名な攻略者であった男。
彼は“攻略者を目指す者には出自、能力に拘らず、平等たれ”という理念を掲げ、学園を運営してきた。
犬飼サツキもこの学園の卒業生であり、その理念の下に学園の治安維持に努めてきた、男はそう思っていたのだが………
「まあまあ、そんな怖い言い方やめましょうや理事長」
なんとも軽薄な口調で幹部の一人が口を開く。
ショートの茶髪にヘラヘラ薄ら笑いを浮かべ、着物に羽織を纏った二十代から三十代くらいの男。
その首には黒い首輪のようなモノが嵌められていた。
「サツキちゃん、ソイツの何が気に入らんかった?初めて寝た男に似てたんか?」
「なっ!?」
「おい───」
着物男の物言いに口を挟んできたのは、深紅の豊かな髪が特徴的な少女だった。
「言葉を選べよ口羽。私の前で下品な発言は許さん」
「こわいなぁ、ホムラちゃん。でもなぁ、よう考えてもわからんのよ、なんでユウジくん逮捕されたん?」
「馬鹿が……コイツの経歴を見ろ。両親は不明、ダンジョンで拾われた孤児だ。穢らわしい快楽のついでに生まれてダンジョンに捨てられたこの世に必要のないゴミだ。
そんなものが何かの間違いで攻略者学園に入り込み、あろうことかマナレベルがSだと測定されたのだ。この学園の名誉のためにもこのゴミは排除すべきだ」
「ええ……マジで言ってんの……?」
「………」
「………」
向界ユウジの経歴を表示したタブレット端末を睨みながら堂々と差別発言を放つ少女、
「ホムラ。君にそんな権限も権利もない、問題はあくまでも犬飼隊長の側にある。それで犬飼隊長、質問の答えを聞かせてくれ」
「………………」
理事長に再び問われるも、サツキは背筋を伸ばし後ろで手を組み、目を伏せて口を結んだまま何も言わない。
黙秘するつもりか───
幹部の誰もがサツキの意図を察したとき、その男が行動を起こした。
〘サツキちゃん、なんで向界ユウジを逮捕した?アイツに入学されると何かマズいことでもあるんか?〙
「!!」
「口羽、貴様!!」
口羽が問いかけると、しばしの間を置いてサツキが答え始めた。
「………あの男はサヤ様の
………ッッ!?」
「ああ、そゆこと………」
「口羽!!勝手にスキルを使ったな!?私たちの許可も無く!!」
「ごめんてホムラちゃん。今のはオフレコな」
「!!………」
口羽はヘラヘラ謝りながら、いつの間にか外していた首輪を再び着ける。
そしてサツキは、口羽の質問に答えたことに酷く動揺していた。
口羽マコトのスキル【絶対命令遵守】。口羽に命令された者はそれに必ず従い、実行するというスキルである。
人間もモンスターも関係なく口羽には逆らえないという強スキルでランクもSだが、欠点は自分よりマナレベルが低い相手にしか通用しないということ。
そしてその強力さゆえに、誤用と悪用を防ぐためにスキルを封印する魔導具を常時着用していなければならない。
彼が着けている首輪がそれだが、簡単に取外しできるあたり抑止として機能しているかは甚だ疑問ではある。
ちなみに口羽マコトのマナレベルはB。出席している幹部たちの中では一番下である。
「ハァ………口羽、スキルを使うなら一言言ってくれないか。それと
「わかりました」
理事長の命を受け、幹部の一人で廻護と呼ばれた女性が席を立つ。
彼女が会議室から退出してから理事長は犬飼サツキを向いた。
「犬飼君。君が冥光院の分家の生まれで、本家が血統主義かつ女尊男卑で団結しているのは知っている。だが学園の運営にその思想を入れないでくれ。
君のやったことは学園の理念と在り方に、次代を担う攻略者たちに歪んだ価値観とモラルの破壊をもたらすものだ」
「たかが何の後ろ盾も無い孤児の一人くらいで大げさな………」
「たかが、か───」
理事長は冷ややかな目つきでサツキを一瞥すると、厳かな口調ではっきりと告げた。
「犬飼サツキ。理事長
「………………」
サツキは何も言い返さなかった。もっとも、納得した顔ではなかったが。
「さて、犬飼君の件はここまでとして、向界ユウジ君のこれからについてだが………」
「ふぁ……あ〜、ふぁあああ〜〜………」
次なる議題に移ろうとした理事長の声を、大きなアクビがさえぎった。
幹部席に着いていた一人の女。先ほどの議題にまったく参加せず寝ていた彼女は、上半身を思いっきり伸ばし眠気を晴らすと、半目ぎみの眼差しを理事長に向けて気だるげに言った。
「茶番は終わったよね。じゃあ今度はボクから話をしようか─────」