スリーさんは透き通るCODEを作りたい 作:頂きに立った
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Confidocational
Organaized
Difensive
Establishment
通称CODE
複数の国家が合同で組織した、地球外生命体や特異現象などから世界を守る極秘防衛機関。
「──俺はこの組織をキヴォトスに作ろうと思っている」
「……いや無理だろ」
サクナから言われる無情な正論。なぜこんなことになったのかというと──
「俺と一緒に、世界を守る気はないか?」
呆然と立ち尽くすサクナ。 何が起こっているのか全く理解できていない、といった表情だ。
……流れる沈黙。 この場にいるのは、俺とサクナ、そして転がっているスケバンたちだけ。客観的に見れば、かなりシュールな光景だろう。
(もしかして俺、ミスったか? 生き急ぎすぎたか……!?)
急速に頭が冷えていき、思考が音を立てて加速する。 冷静になって考えれば、今の俺は不審者そのものだ。ヘイローはないわ、異次元の力は使うわ、他人の記憶は消すわ。挙句の果てには「お前にはエージェントの才能がある」だぁ? 情緒どうなってんだよ。
先ほどまでの自分のイタすぎる言動を思い返し、盛大に頭を抱えたくなる。
(そりゃ固まるよな……! 喋れなくもなるよ……!)
「……まぁ、急な話だったな。どこかでじっくり話をしよう」
『逃げないでくれ──!!』と心の中で必死に祈りながら、何とか落ち着いた声でサクナに告げる。 彼女はおそるおそる、小さく首を縦に振って肯定の意を示してくれた。
ちなみに移動する際、さっきまでいたベンチでたい焼きを回収した。冷えていたけれど、とても美味かった。
────────
俺とサクナは、俺が最初に目覚めた廃墟に身を置いていた。どうやら普段サクナは野宿で生活しているようで、拠点らしい拠点をを持っていないらしい。クレイジーすぎんだろ。
この話は誰かに聞かれるわけにはいかないため、泣く泣くこの廃墟に戻ることになったのだ。
別にここも安全ってわけじゃないんだけどな。
サクナは壁に身を寄せ、こちらを見ようとしない。椅子に座らせようかとも考えたが、さすがに『スリー』のキャラクターからは程遠い親切行動だったのでやめておいた。
俺はサクナと少し距離を置いたまま、静かに話し始める。
「まず、俺がキヴォトスの外にいた時のことから話すか」
「……」
「俺は外にいた頃、エージェントとして世界秩序を目指し、とある組織に従事していた。俺がさっき使ったのはその組織の技術だ」
「……カプセムもか?」
「ああ。カプセムをこの『ロードインヴォーカー』に装填し、その力を利用して身に纏う。これを『擬装』という」
「擬装……パワードスーツを装着することみたいなもんか」
サクナは聞き馴染みのない単語に戸惑いつつも、理解を巡らせる。 さっきは勢いで何も説明できず、サクナを困惑させっぱなしだったので、ここで説明できてよかった。これで少しは警戒心が和らぐだろうか。
そんなことを思いながら、俺は説明を続ける。
「次に、俺がキヴォトスに来た目的についてだ。俺が所属していた組織の名は【CODE】。複数の国家が合同で組織した、危険生命体や特異現象などから世界を守る極秘防衛機関だ」
「あんた……そんなすごい人だったのか……?」
疑問形で聞き返される。そこをあまり掘り下げるな。いくら外面がスリーでも、中身はただの一般人なのだから。
「……そのCODEだが、つい先日解体された」
「は? なんでだよ」
「CODEの代わりが出てきたんだ。それに、CODEという組織自体も限界が近かった」
「でも、そんな簡単に代わりって……」
「実際に起きたことなんだから仕方ないだろ」
違う。嘘だ。何の根拠もない。 ゼッツ本編も最後まで見ていないから、あの後どうなったのかなんて俺にはわからない。けれど、結局は仮面ライダーなんだから莫がなんとかするだろう。 そんな淡い考えに乗っかり、言葉を紡ぐ。
「そういうわけでCODEは消滅した。だからこそ、俺はここに目をつけた」
俺は足元を指差す。
「ここは俺が住んでいた場所と違い、銃撃戦が日常的に行われ、治安も最悪だ」
「こんなにも正し甲斐のある場所はそうそうない」
スリーという男。誰よりも組織『CODE』に忠誠心を抱き、誰よりも合理的な平和を求めた男。 彼が最後に叶えようとしたのは自身の野望か、それともCODEの正義か……それは定かではない。 それでも、俺にとっての正義や平和は、このキヴォトスにはないものだ。
それを目指して何が悪い。きっとスリーだって、同じようなことをするに決まっている。まあ、手段はだいぶ違うだろうが。
「……とまぁ、これが俺の経緯だ。何か他に質問はあるか?」
「いやぁ……なにがしたいかは分かったけどよ、あまりにも現実的じゃねぇだろ。キヴォトスを正すって言っても、どうするんだよ」
「作るんだ」
「は?」
サクナが豆鉄砲を食らったような顔をして聞き返す。 俺が説明した規模感と、これから実行しようとしている手段があまりにも乖離しすぎているからだろう。俺だってそう思う。
「Confidocational Organaized Difensive Establishment──通称『CODE』。俺はこの組織を、キヴォトスに作ろうと思う」
「……いや無理だろ」
サクナが当たり前のように言葉をこぼした。 まあ、当然の反応だ。今の俺たちの立ち位置からすれば、現実感も何もない夢物語でしかない。
「一応、計画自体はあるんだが……お前に話せるのはここまでだ」
「はぁ? なんでだよ」
「お前はまだ、俺の質問に答えてないだろ」
サクナは「あ……」と何かを察したような顔をした。 まだCODEに入るか不明の彼女に明かせる情報はここまでだ。ここから先は、本格的に俺の危険な計画へ巻き込むことになる。
万が一拒否されても、イレイスカプセムを使って記憶を消すことはできる。だが、彼女の進む道はあくまで彼女自身が選ぶべきだ。
「明日の正午まで待つ。決心がついたなら、またここに来い」
そう告げ、俺はボロボロのソファに腰を下ろした。
「……なぁ。最後に一つだけ、聞いてもいいか」
「なんだ?」
「なんでアタシなんだ? 聞いてただろ、アタシは──」
「知らないな」
サクナが言いかけようとした言葉を、俺は容赦なく遮った。
あのスケバンはサクナのことを「宇和島生徒会長」と呼んでいた。 詰まる所―、サクナが自身の学校を廃校まで追い込んだ、といった感じだろう。
重い。あまりにも重い。 一人の少女が背負うには、到底抱えきれないほどに。
「俺が必要としているのは優秀な人材だ。お前のような、な」
「っ……! だから、アタシは──」
「二度は言わせない。俺がお前を必要としている。お前はそれだけ覚えておけばいい」
彼女がなぜこのブラックマーケットにいたのか、なんとなく想像がついた。 けれど、それは俺の妄想に過ぎない。彼女を励ます言葉も、傷を癒やす言葉も、今の俺は持ち合わせていないし、言う資格もない。 俺にできるのは、ただ新しい居場所を用意することくらいだ。
「分かったら、今後どうするかよく考えるんだな。……俺はもう寝る」
「……ふん。勝手なことばっか言いやがって」
そう言い残し、サクナは夜の闇へと去っていった。
「……ふぅぅぅぅ」
大きく息を吐き出し、深くソファに背中を預ける。 めちゃくちゃ緊張した──!!
スリーのロールプレイもさることながら、命がけの戦闘にはまだ身体が慣れていない。心労が半端じゃない。 どっと押し寄せる疲労感に身を任せ、静かに瞳を閉じる。
瞼の裏に浮かぶのは去っていったサクナの姿だ。 彼女は明日、本当に来てくれるだろうか。
彼女がどんな決断を下そうと、俺にそれを咎める権利はない。だが彼女がいてくれれば、これほど心強いことはない。サクナの有無は、今後のCODE設立の成否を大きく左右する。やっぱり仲間がいるというのはデカい。
(本編スリーは自分が好き勝手やるためにファイブとシックスを処分したけど……俺にワンオペとか絶対無理だからなー)
そんなくだらないことを考えているうちに、急速に思考が鈍くなっていく。 今日は朝から晩まで気を張りっぱなしだった。さすがに限界だ。
(あ〜〜……でも、やっぱり無理かもなぁ。さっきの提案、よく考えたら俺にしかメリットなかったし……)
もっと念入りに条件を提示して勧誘しておくべきだったか──。 そんな小さな後悔を反芻しながら、俺はそのまま深い眠りへと落ちていった。
最初の出会いは、最悪だったと思う。
人の気配がして敵襲かと思ったのに、姿が見えない。 一応カマをかけて脅してみたら、空間から急に男が現れた。
それも──ヘイローのない男。 おまけに人相も悪い。どこからどう見ても悪役顔だ。
だから最初見た時は心底驚いた。それと同時に、強い警戒を抱いた。
ヘイローもない、銃弾一発で死ぬような無防備な奴が、なんでこのブラックマーケットにいるのか。 何をするつもりなのか。それを確かめるために、アタシはこいつについて行った。
大人が何を考えているのかなんて、分からない。 そんなことは、自分の身を持って嫌というほど知っている。
もしこいつが、あの汚い大人たちと同じように誰かを騙そうとしているのなら……死なない程度に痛めつけて分からせてやる。アタシは本気でそう思っていた。
けど──しばらく話しているうちに気づいた。こいつ、本当に何も知らない。 キヴォトスの常識も、生活も、何もかも。ヘイローのことすら知らないと分かった時は、流石に目眩がした。
話していれば、大体分かる。こいつは、アタシを壊した卑怯な大人どもとは違う。
それでも。……分かっていても。アタシの心のどこかは、ずっとこいつを疑い、睨みつけずにはいられなかった。
『この土地には私個人でとても思い入れがありましてね……ぜひ手伝わせてもらえませんか?』
『私でよければ力になりますよ』
『故郷を守りたいんです』
学校の経営が本格的に厳しくなってきた頃、そんな内容の連絡がアタシのもとへ届いた。
今思えば、この時点でみんなと情報を共有して、しっかり話し合うべきだったんだろう。 それでもアタシはしなかった。できなかった。生徒会長として、学校を存続させることばかりに気が回って、周りが見えなくなっていた。
みんなは最後まで、アタシのことを信じてくれたのに。
最初のうちは良かった。大人たちの援助も滞ることなく続いたし、学校が抱えていた借金もかなり減らすことができた。
そんな時だ。
自治区に知らない顔が増えた。このあたりは人も少ないから、こんなことは今までなかった。嫌な予感がした。
アタシはすぐにその大人と連絡をとるためスマホを手に取った。
『契約書に書いてあったではないか』
スマホからその言葉を聞いた時、前進の血の感覚が引いていくのが分かった。
アタシは急いで契約書の束を取り出し、掠れそうな目で文字を追った。
……あった。最終ページの最下部、米粒のような極小のフォントで書かれた追加条項。
──なお、返済遅延または運営上の重大な支障が生じた場合、当機関は債権の担保として学校土地所有権および自治区内の管理権を段階的に譲受するものとする──
見た瞬間、息が止まったような気がした。 心臓が締め付けられ、指先から温度が失われていく。
『どうやらそちらの自治区では最近、スケバンやヘルメット団が暴れている様子……これでは
「ま、待ってください! こんなの最初の話と違う……!」
大人たちが差し伸べてくれた手は、アタシたちの学校を合法的に買い叩くための罠。 愚かにもアタシは、その手を取ってしまったんだ。そいつが裏でどんな顔をしているのかも知らずに。
『話と違うと言われましても……サインしたのは君でしょう、宇和島生徒会長』
そいつは淡々と、揺るぎない事実を並べていった。
どうしよう、このままじゃ本当に──
『ですが、私も貴女達を見捨てる気はありません』
男は唐突に話を切り出した。
『皆さん、うちの学校に来ませんか?』
「え……?」
何を言ってるのか理解できなかった。心臓がバクバクとうるさい。それなのに体温がどんどん下がっていく。
『私、実は生徒会長なんですよね、こう見えましても』
『貴女方の学校の経営が破綻し、土地も管理権も失われるのはもはや確定事項です。しかし、路頭に迷う若い生徒たちをそのまま見捨てるほど、私は冷酷ではありません』
『……我が校が、貴女方の学校を”吸収合併”という形で受け入れようと言っているのです』
吸収、合併──。
『合併すれば、生徒たちの籍も保証される。転校手続きの煩わしさもなく、新しい環境で勉学に励むことができる。……どうです? 妙案でしょう?』
(妙案……? これが……?)
頭の中で、バラバラだったピースが一瞬で組み合わさっていく。
最初からこれが目的だったんだ。
ただ土地や施設を奪うだけじゃない。学校の経営難を見計らって、自分たちで引き起こした治安悪化を「運営上の重大な支障」と捏造し、追い詰められた生徒たちを言葉巧みに自分たちの学校へ呑み込む。
生徒たちも一緒に取り込んでしまえば世間体も保たれる。端から見れば「経営難の学校を救った英雄」と捉えられるだろう。
「……ふざけるな」
『ん? 何か言いましたか?』
「ふざけるなッ!!」
怒りで声が震える。スマホを握る指に驚くほど強い力が入った。
「誰がそんな提案受けるか! アタシたちの学校を……みんなの居場所を奪っておいて、どの面下げて……!」
『おや、感情的にならないでいただきたい』
男の声から温かみが消え、底冷えするような冷淡さが顔を覗かせる。
『受け入れを拒否するのは貴女の自由です。ですがその場合、行き場を失った生徒たちがどうなるか……全てサインをした君の”責任”になりますよ? 生徒会長』
「ッ……!?」
『決断の猶予は差し上げます。賢明な判断を期待していますよ、宇和島生徒会長』
電話が切られたあと、アタシはその場から動くことができなかった。
「……はっ!! はぁ、はぁ……夢か……」
意識が叩き起こされ、ガバっと体を起こす。数秒後、さっきまでのことが全部夢だったと気づく。
久しぶりに前のことを思い出しちまった。
原因は恐らくあいつだろう。
このまま二度寝をしようとしたが、どうも寝付けない。
仕方ないので、気分転換に夜の散歩をすることにした。
ブラックマーケットは夜だからといって静まるわけではない。むしろ夜の方が騒がしいまである。
今は戦えるような気分ではないから音が聞こえる方向を避けて歩く。こういう時この耳は便利だ。
なんとなく空を見上げてみる。
無数の星が輝きを放ち、煌めいている。欠伸の出るような光景だ。
『生徒会長!』
今日はよく昔のことを思い出す。
あいつに会ってから調子が狂いっぱなしだ。
「俺と一緒に、世界を守る気はないか?」
あいつの話には現実感も実現性もない。
計画は一応あるらしいが、それもどこまで本気なのか分かりやしない。
あいつの話は夢物語だ。
大人なら、もうちょっと現実的な話をしてほしいな。
もう大人の悪巧みに巻き込まれるのはゴメンだ。そう思い忘れようとしても、あいつの言葉が脳裏から離れない。
忘れたいはずなのに、どうして──そんなこと考えていたら寝床に戻っていた。意識しないままブラックマーケットを一周していたようだ。
正面の瓦礫を押しのけ、中の空間に身を入れる。コンクリートで少し寝づらいが屋根があるだけ十分だ。
すると、昼に買った鯛焼きの袋が目に入った。
「そういやまだ食ってなかったな。スリーは食ってたけど」
ちょうど小腹も空いていたし食べるか。そう思い袋の中から一匹の鯛焼きを取り出した。
……うん、冷えてるけど美味い。やっぱりあの店の鯛焼きは世界一だ。
いつも食べている、いつも通りの味。この鯛焼きを食べれば、辛いことがあっても少しの間忘れられる。
でもなんだろう、何か足りない気がする。味自体はいつもと変わらず美味しいし、冷えているせいでもない。
じゃあなんでーー
「あぁ、そうか」
「やっぱりあいつのせいか」
結局アタシは、ただの寂しがりやか。
数刻後、朝日が昇る。
アタシはあいつのいる廃墟まで足を運んでいた。
あいつは正午まで待つと言っていたが、決めるなら早いことに越したことはないだろう。
静かな朝の光が廃墟の隙間から差し込む中、足音だけが周囲に響く。
迷いが完全に消えたわけではない。あやふやで、夢物語のような言葉を信じるのはあまりにもリスクが大きい。それでも、スリーはアタシの求めているものを持っている気がした。
廃墟の廊下を抜け、開けた空間に辿り着く。
そこにはスリーがソファで眠っていた。こころなしか顔色が悪い。
「まじで寝てたのかよ。もっと警戒心を持ってほしいもんだぜ⋯⋯」
目覚めるまで待っておこうと窓際まで移動しようとすると、スリーの目が開いた。
「⋯⋯来ていたのか」
「あぁ、今度はお前が答える番だぜ」
アタシはこの日を、生涯忘れることはないと思う。
この作品では投稿ペース、作品のクオリティの向上のため、推敲にAIを使用しています
内容には一切関わっていませんので悪しからず