スカイリムCC:釣り師の痴人 作:アーマーブレイク大好きおじさん
拝啓、お母さんへ
この手紙がお母さんの元へ届くことはないでしょう。
けれど私は今、精一杯生きています。
このスカイリムの地で出会った人たちに支えられて、日々を過ごしています。
この世界は残酷ですが、決して暗いばかりの世界でもありません。
光も、笑顔も、温もりもあります。
それら全てを大切に思いながら、これからも前を向いて生き続けるつもりです。
愛しています。お母さん。
本当は直接会いたいです。
だけど、今は我慢します。
この世界で出会った素敵な人たちと一緒に、これからも精一杯生きてみせますから。
心配しないでください。
私は元気です。
それじゃあね、お母さん。
シズクより
☆★☆★☆★☆★
「これで良しっと。」
私がこの世界に転生して、早くも1カ月が経過しようとしていた。
最初の数日は混乱していたけれど、少しずつこの世界に慣れ始めている。
食事に関しては、和食はないけれど、案外口に合うものばかりだった。
私は母への手紙を蜂蜜酒の空き瓶に詰め、外へ出た。
今日のリフテンは日差しが強く、北国とは思えないほど温かい。
白い雲が浮かぶ青空を見上げて、大きく息を吸う。
澄んだ空気が胸いっぱいに入ってくる。
私は足早にリフテンの港に向かう。
この手紙の入った瓶を湖に流すために。
きっと、この手紙はお母さんの元には届かないだろう。
でも――向こうの世界のお母さんに”何か”が伝わると信じたい。
それが単なる思い込みだとしても、構わなかった。
「……よし。」
リフテン港。
昼前の港は閑散としていた。
漁師たちの姿はまばらだ。
私は瓶を持ったまま、湖へ近づく。
私は周りを確認すると、静かに湖へ向かって瓶を落とした。
「お母さん、私は元気です。」
湖面が小さく波打つ。
目を閉じ、静かに祈る。
どうか――お母さんの心に、少しでもこの想いが届きますように。
ふわりと温かな風が湖面を撫で、私の髪を優しく揺らした。
やがて瓶はゆっくりと港を離れ、リフテンの湖へと流れていく。
小さくなっていくのを、私はただ静かに見送った。
「……さようなら。」
向こうへ届くことはない。
そんなことは分かっている。
それでも、この一通を書いたことで胸の奥に張りつめていた何かが、少しだけ軽くなった気がした。
私は空になった手を見つめ、小さく息を吐く。
「……帰ろう。」
そう呟いてから、自分で少しだけ驚いた。
――帰る。
その言葉が、自然と口をついて出たことに。
私が帰る場所は、もう日本じゃない。
夕飯時になれば、「ちゃんと手を洗いなさい」と言ってくれた母のいる家でも。
休日になると友達と遊びに出かけた、あの街のことでもない。
胸が痛まないわけじゃない。
会いたいと思わない日なんて、一日もない。
だけど――。
この世界にも、帰りたいと思える場所がある。
リフテンの通りを抜け。
市場の賑わいを横目に見ながら歩き。
運河にかけられた橋を渡れば、もうすぐだ。
玄関を開ければ暖炉の火が揺れ、「おかえり」と声を掛けてくれる。
笑い合って。
食卓を囲んで。
今日あった出来事を話す。
そんな当たり前の日常が、今の私にはある。
帰る場所は失った。
それでも、帰りたいと思える場所を、私はもう一度見つけることができた。
私は自然と笑みを浮かべ、歩幅を少しだけ速める。
見慣れた木造の家が見えてきた。
煙突からは白い煙が立ち昇り、昼下がりの青空へゆっくりと溶けていく。
私は自然と足取りを速め、そのまま玄関の扉を開いた。
「ただいま帰りました!」
――ギィ
木の扉が開く。
暖炉の熱気が頬を撫で、木の香りと薪の匂いが鼻をくすぐった。
「お帰りなさいませ、シズク様。」
静かな声と共に姿を現したのは、鋼鉄の鎧に身を包んだ女性。
”イオナ”さんだ。
ファイザルさんがリフテンの従士となった際、首長から任命された私兵である。
凛とした佇まきは今日も変わらない。
「ただいまです、イオナさん!」
「お帰りをお待ちしておりました。」
ぺこりと頭を下げるイオナさん。
相変わらず律儀だ。
私はふと辺りを見回した。
「あれ? ファイザルさんは?」
一瞬だけ、イオナさんの表情が曇る。
「実は……寝室に。」
「えっ?」
思わず聞き返してしまう。
まだ昼前なのに?
あの人がこんな時間に寝室へ籠もるなんて、珍しい。
「体調でも悪いんですか?」
イオナさんは俯く。
「おそらくですが……。」
少しだけ言葉を選ぶように間を置き、
「執政の――アヌリエル様に、お叱りを受けた件かと。」
「アヌリエルさんに?」
「はい。」
イオナさんは淡々と説明を続ける。
「先日ホワイトランにて、許可なく『リフテンの従士』を名乗り、晩餐会へ出席された件についてです。」
「あーー……。」
思わず間の抜けた声が漏れた。
そういえば、そんなことがあった。
ホワイトランで偶然開かれていた晩餐会に、ファイザルさんは”リフテンの従士”の肩書を使って参加していた。
嘘ではない。
確かに従士ではある。
……でも勝手に外交の場へ顔を出すのは、色々と問題だったらしい。
「かなり厳しくお叱りになられたと伺っております。」
「そ、そうなんだ……。」
「夕べ、帰宅後は寝室へ直行されました。」
「えぇ……。」
「朝食も、半分ほどしか召し上がっておりません。」
「は?は……半分ですか!?」
思わず声が裏返る。
あの食いしん坊のファイザルさんが、朝食を残すなんて。
これは本当に落ち込んでいるのではないだろうか。
「昼食も不要とのことでした。」
「うわぁ……。」
私は腕を組み、小さく唸る。
どうしよう。
怒られて落ち込むファイザルさんなんて、想像したこともない。
でも、きっと今頃、布団を頭まで被って、
『やってしまった……』
とか反省しているのかもしれない。
「……何か、元気が出るものを作りましょう!」
勢いよく顔を上げる。
「元気が出るもの、ですか。」
「はい!」
私は自信に満ちた表情で頷く。
「卵はありますか?」
「ございます。」
「チーズは?」
「ございます。」
「牛乳!」
「ございます。」
さすが、イオナさん!
この家の食材は完璧に把握しているみたいだ。
「よし!」
私は拳を握る。
「今日は私がオムレツを作ります!」
「オムレツ、ですか。」
「はい。私のお母さんが、落ち込んでる時によく作ってくれた料理なんです。」
ふわふわで、温かくて。
特別豪華な料理じゃない。
でも、不思議と元気が出る。
思い出すだけで、胸が少し温かくなる。
イオナさんはそんな私を見つめ、小さく頷いた。
「承知いたしました。」
「調理の準備をいたします。」
「ありがとうございます!」
私は腕まくりをしながら、軽く気合いを入れる。
今日は、とびきり美味しいオムレツを作ろう。
落ち込んでいる人が、思わず笑ってしまうくらいの一皿を。
私はエプロンを身につけると、調理台の前へ立った。
木製のボウルを取り出し、イオナさんが用意してくれた卵を一つ、二つ、三つ。
コツン、と軽く縁へ当てる。
殻を割ると、黄金の黄身が透き通った白身と共に、するりとボウルへ落ちた。
「うわぁ……新鮮な卵ですね。」
「近郊の農家から毎朝届けられております。」
イオナさんは野菜を洗いながら答える。
さすがスカイリム。
食材はどれも新鮮だ。
私は牛乳を少しだけ注ぎ、木製の泡立て器でゆっくりとかき混ぜる。
シャカ、シャカ、と心地よい音が台所へ響いた。
黄身と白身が混ざり合い、淡い黄色へ変わっていく。
そこへ一つまみの塩。
ほんの少しだけ黒胡椒。
そして、細かく刻んだフロスト・ミリアムをぱらりと散らした。
「少しだけ香りを付けます。」
「それは楽しみですね。」
鉄製のフライパンを火へ掛ける。
ジュッ、と小さな音を立てながら、バターがゆっくりと溶け始めた。
甘く優しい香りが、暖かな空気に混ざって広がっていく。
「いい匂い……。」
思わず頬が緩む。
バターがふつふつと泡立ち始めたところで、卵液を一気に流し込んだ。
――ジュワァァッ。
柔らかな音と共に、卵がゆっくりと固まり始める。
木べらで外側から内側へ。
大きく。
何度も。
優しく混ぜる。
半熟になったところで火を少し弱める。
その中央へ、細かく刻んだチーズをたっぷり。
熱で少しずつ溶け始める白いチーズが、黄金色の卵へ静かに沈んでいった。
「……よし。」
ここからが一番大事。
深呼吸を一つ。
フライパンを軽く手前へ引きながら、木べらで端を折り込む。
もう一度。
くるり。
ふわり。
丸みを帯びた楕円形が姿を現す。
「できました!」
湯気がふわりと立ち上り、バターと卵の甘い香りが台所いっぱいへ広がった。
イオナさんが静かに拍手を送る。
「お見事です。」
「ふふっ、ありがとうございます。」
私は皿へ滑らせるようにオムレツを乗せた。
表面はつややかな黄金色。
ところどころにバターの照りが残り、焼き色はほとんど付いていない。
まるでお日様の陽気を吸い込んだ布団のように、ふっくらと膨らんでいる。
「うん。」
私は満足そうに頷く。
「……きっと喜んでくれます。」
イオナさんがぽつりと呟く。
私は出来上がったオムレツを見つめ、小さく笑った。
「そうだと嬉しいです!」
たとえ少し落ち込んでいても。
たとえ何も話したくない日でも。
温かい料理だけは、人の心にそっと寄り添ってくれる。
お母さんが教えてくれた、私の大好きな家庭料理。
今度は、私が誰かのために作る番だ。
☆★☆★☆★☆★
リビングへ入ると、ふわりとバターの甘い香りが鼻をくすぐった。
暖炉の火に照らされた食卓。
その中央に置かれていたのは、一皿のオムレツだった。
黄金色に焼き上げられた卵。
焼き色はほとんど付いておらず、表面は絹のように滑らかだ。
中央がふっくらと盛り上がり、今にも中身が溢れ出しそうになっている。
横には軽く炒めたキノコと野菜。
焼き立てのパン。
そして湯気を立てるハーブティー。
どれも決して豪華ではない。
だが、それだけにどこか懐かしく、温かい。
「ファイザルさん!」
シズクが嬉しそうに椅子から立ち上がる。
「今日は私が作りました!」
「おお……。」
私は椅子へ腰を下ろし、目の前の料理を見つめた。
「……これは美味そうだ。」
「本当ですか!」
「嘘をつく理由がない。」
シズクはほっと胸を撫で下ろす。
その様子を見て、イオナも小さく頷いていた。
……何だろう。
二人とも”妙に”優しい。
まぁ、いいや。
深く考えるのは後にしよう。
「いただきます。」
私はナイフを手に取り、オムレツの中央へ静かに刃を入れた。
すると――。
――とろり。
半熟に仕上げられた卵が、ゆっくりと左右へ流れ落ちる。
その中から、とろけたチーズが糸を引きながら顔を覗かせた。
――ふわり。
立ち昇る湯気と共に、バターの香りがさらに強くなる。
卵の甘い香り。
溶けたチーズの濃厚な乳の香り。
そこへフロスト・ミリアムの爽やかな風味が重なり、食欲を静かに刺激してくる。
「……なるほど。」
思わず頷く。
見た目だけで分かる。
これは火加減をよく分かっている人間の仕事だ。
フォークで一口大に切り分け、ゆっくりと口へ運ぶ。
――ふわっ。
驚いた。
歯を立てた感覚がほとんどない。
柔らかな卵が、舌の上で静かにほどけていく。
続いて、温かなチーズがゆっくりと広がる。
濃厚で優しい。
まるで女神マーラの如き優しさ。
”二日酔いの胃”にまで染み込むような優しさだ。
卵の甘みが優しく引き立ち、口当たりはどこまでもまろやかだった。
噛むたびに、細かく刻まれた香草がふっと香る。
青草のような爽やかさが、バターとチーズの余韻を心地よく引き締めていた。
私は思わず目を閉じる。
……温かい。
それが最初に浮かんだ感想だった。
それは料理の温度の話じゃない。
この料理の存在そのものが、”温かい”。
この一皿には作った人の気持ちが、そのまま詰まっていた。
「……美味い。」
自然と言葉が漏れる。
その一言だけで十分だったらしい。
向かいに座るシズクの表情が、ぱっと花が咲くように明るくなった。
「良かったぁ……。」
肩の力が一気に抜けたのか、そのまま椅子にもたれ掛かる。
「実はですね。」
シズクが照れ臭そうに笑う。
「落ち込んでるファイザルさんを元気づけようと思って作ったんです。」
そうかそうか。
シズクは優しいなぁ……。
ん?
「……落ち込む?」
私は首を傾げた。
「はい。アヌリエルさんに叱られて、寝込んでるってイオナさんから。」
私はゆっくりとイオナを見る。
イオナもこちらを見る。
「……」
そういえば昨日、執政のアヌリエルに何か言われた気がする。
何だっただろう。
『勝手に従士の名を使うな』だったか。
『外交問題になる』だったか。
『酒臭い』だったか。
……ああ駄目だ。
ほとんど覚えていない。
その時は、夜の”試飲会”のことで頭がいっぱいだったので、真面目に聞いていたかと問われると甚だ怪しいのだ。
”新作のカクテルが出来た。感想を聞かせて欲しい。”
なんてタレンに言われたら、アヌリエルの文句なんて頭に入らない。
ああそうだ、あの時は、一杯だけ。
そう思っていた。
最初は、本当に。
ほんとに、ほんとに。
ところが気付けば、ヴルウルフが「タレン!もう一杯!」と叫び、
ブラン・シェイが「飲み比べだぞ!」と言い出し、
シャドルは「負けませんよ!」と張り合い始める。
結果。
度数の高いカクテルを何杯飲んだのか、誰も覚えていない。
いや、しっかり財布が軽くなっているので、女将のキーラバだけは覚えているのかもしれない。
飲兵衛仲間の末路も中々だった。
ヴルウルフは店の床で大の字。
ブラン・シェイは酔った勢いで段差を踏み外し、膝を擦りむく。
シャドルに至っては、店の裏で盛大に……――これ以上はやめておこう。
「ファイザルさん……?」
シズクが心配そうに私の顔を覗き込んでくる。
ああ、そうか。
シズクは私が落ち込んでいると思ったんだな。
確かに、今は少し気分が重い。
つい調子に乗って飲み過ぎた結果、ひどい二日酔いになってしまったのだ。
「……実は、昨日のカクテルの試飲会があって」
「「…………え?」」
二人の声が綺麗に重なった。
「タレンの新作カクテルを飲み過ぎた。」
「「……」」
「落ち込んでたというよりは……二日酔いだったんだ……。」
シズクはぽかんと口を開けたまま固まり、やがて額に手を当てる。
「心配して損しました……。」
「申し訳ない。」
「もう!」
頬を膨らませるシズクに、私は思わず吹き出した。
「あははっ」
「あははっ、じゃありません~!」
頭はまだ少し痛い。
胃も重い。
それでも。
目の前には、美味い料理を作ってくれる仲間がいて。
隣には、真面目すぎる私兵がいる。
「ですが、従士様。」
「ん?」
「結果的に元気になられたようですので、シズク様の判断は間違っていなかったかと。」
「……そうだね。」
私はもう一口、オムレツを口へ運んだ。
今度はゆっくりと、その温かな味を噛み締めながら。
「シズク。ありがとう。」
「えへへ……どういたしまして、です!」
こうやって笑い合える日常が、幸せだと思う。
その幸せを守るために――私はまず、二日酔いを治さなければならない。
実は日本語音声の時にイオナと会ったことないんですよね……
と、いうことでほぼオリキャラと化したイオナさんでした。
丁寧語めちゃくちゃ違和感しかないですが、まぁキャラ付けということで、はい。
まぁ、私兵は従士に敬語使うんじゃないですか?知らんけど。
……キャラ性格改変タグをつけておきます。。。
あとホワイトランの晩餐会を書いているときは何も思わなかったのですが、冷静になったら首長の許可なく従士であると名乗り、他地域の晩餐会に乗り込むのってやべぇよな……ってなったので怒られておきました。
割とその場のノリで書いてるのでガバやご都合展開が発生するかもしれませんが、それはまぁこの作品の味ということで……
やりたい放題がこの作品のモットーです()
ChatGPTの画像生成について、OpneAI側は著作権はクリアしているとのことで、参考画像(食べ物やキャラクターの見た目)を生成して掲載することは可能らしいのですが、皆さんの意見が知りたいです。念のため、挿絵の要望が多くても絶対に挿絵を生成するとは約束しませんし、挿絵反対が多くても絶対に挿絵を生成しないとは約束しません。極論、すべてを運営に任せるのが一番ですが、皆さんの意見を聞きたいです。
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生成AIで挿絵を作るべきではない
-
料理は生成しても良い
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キャラクターは生成しても良い
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両方生成してよい