スカイリムCC:釣り師の痴人   作:アーマーブレイク大好きおじさん

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17熱々カニビスク(前編)

 ――ドドッドドッドドッ

 

 馬の足音が規則的に鳴り響く。

 雪の積もった石畳を歩むその音色は、心地良いリズムを刻んでいた。

 

 時は昼前。

 私は薄雲が広がる青空の下、ドーンスターの門まで早馬で向かっている最中だ。

 後ろではシズクが私の背中に必死にしがみついている。

 

 強行軍なのである。

 

 リフテンから出発して、カイネスグローブ、ダンパー・ウォール村を経由して今に至る。

 結構大変な道のりであったが、この白い軍馬のおかげでもうじき目的地に辿り着くことが出来そうだ。

 

 「……ふぅ」

 

 私は息を吐く。

 ことの発端は一枚の依頼書だった。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 ヴィリヤ、

 

 ドーンスターの西の岸辺の小さな小屋付近で、釣り人たちがマッドクラブの群れに襲われたという報告が相次いでいる。

 そうだ、マッドクラブだ。

 いや、私も信じられなかったが、彼らの傷をこの目で見た。

 

 ある旅人の話では「海から飛び出して襲い掛かってきた」そうだ。

 マッドクラブのことでは並ぶ着なき専門家のお前に、調査を依頼したい。

 割ける衛兵がいないから、お願いだ。

 なんとかあいつらを岸辺から追い払ってくれ!

 

 ――スカルド首長

 

ヴィリヤのメモ:興味深い。一体何が彼らを集め、興奮させているのだろう? マッドクラブは會かされない限り脆病な生物だから、何かが彼らを刺激したはず。

いずれにせよ、岸辺に安全を取り戻すには、彼らを倒さなければならない。研究できないのが残念だ。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 ドーンスターの首長、スカルドからヴィリアに送られた手紙。

 

 ヴィリアはその内容を読み終えるや否や、私に調査を依頼してきたのだ。

 さらに今回はドーンスターに対するリフテンの公的な支援という形になっており、ライラ首長から軍馬を貸してもらえた。

 

 このまま貰えないかな?

 サイレント(冠名)アバランチ号なんてどう?

 

 なんて考えているとドーンスターの防壁門が見えてくる。

 そこで私は馬を止め、後ろでぶるぶる震えていたシズクを降ろした。

 

 「ドーンスターに門ってありましたっけ……?」

 

 シズクが戸惑いの声を上げる。

 そういやバニラ(MOD未導入環境)のドーンスターって門無かったね。

 でもまぁ、地方都市みたいな大きな街には普通にあるべきだよね、という考えでドーンスターを改変するMODは大体門付きだったりする。

 そういやモーサルもバニラだと門なかったわ。

 

 それはともかく、目の前に現れた巨大な木製の門は、威風堂々とした雰囲気を放っていた。

 結構立派じゃん。

 

 「とまれ!」

 

 衛兵が叫びながら近寄ってくる。

 私は手紙を差し出した。

 

 「私はリフテンの従士、ファイザルだ。

 ライラ首長の命でマッドクラブの群れを退治するために来た。

 入場許可は貰えるか?」

 

 衛兵は手紙を受け取り、封蝋を確認する。

 何度か目を往復させた後、顔を上げた。

 

 「リフテンの従士……ファイザル殿か。

 ふん……まぁ確かに、ライラ首長の紋章だ。通ってくれ。」

 

 「助かる。」

 

 私は軽く頷き、サイレント・アバランチ号の手綱を引いて門をくぐる。

 ドーンスターの街並みは、リフテンとはまるで違っていた。

 海から吹きつける冷たい風。

 木造の家々の隙間を抜ける潮の匂い。

 遠くでは鍛冶場の槌音が響き、港では漁師たちが慌ただしく動き回っている。

 

 雪に覆われた灰色の街。

 

 どこか荒々しく、それでいて北の港町らしい活気があった。

 

 「うぅ……寒いです……。」

 

 後ろのシズクが肩を震わせる。

 

 「風邪をひかないようにしよう。」

 

 厩舎にサイレント・アバランチ号を預けた後、

 私たちは衛兵に先導されながら、街の中央へ向かった。

 やがて見えてきたのは、首長の館だ。

 

 その前の広場には、既に十数人ほどの男たちが集められていた。

 

 チェインメイルを纏った衛兵。

 分厚い鋼鉄の鎧を着こんだ傭兵。

 革の軽装でカットラスを携えた船員。

 つるはしを握りしめる鉱山労働者。

 銛を杖代わりにして立つ漁民。

 

 「……本当に総力戦なんだな。」

 

 「そ、そうみたいですね……。」

 

 私が呟くと、隣のシズクが不安そうに頷いた。

 私たちが広場へ入った瞬間、その視線が一斉にこちらへ向けられる。

 特に目立つのは、私の尖った耳だろう。

 そして隣に立つ小柄なウッドエルフ(シズク)の姿。

 

 ざわり……と小さなざわめきが広がった。

 

 「エルフか。」

 「サルモールの連中ではないんだよな……?」

 「ウルフリック公なら、こんな連中を寄越したりしないだろうに。」

 

 シズクの肩がぴくりと震える。

 私は小さくシズクに囁く。

 

 「気にするな。」

 

 「で、でも……。」

 

 「ストームクローク領ではよくある反応だ。」

 

 ていうかドーンスターの従士はどこに行ったんだよ。

 

 「開けよぉ!」

 

 その時、館の扉が勢いよく開かれる。

 現れたのは、毛皮付きの重厚な鉄鎧を着込んだノルドだった。

 

 立派な角付き兜。

 肩にかかるは熊の毛皮。

 深く刻まれた皺。

 杖代わりの槍。

 しなびた腕。

 おぼつかない足取り。

 

 「……よぼよぼだな。」

 

 「ファイザルさん、聞こえちゃいますよぉ……。」

 

 シズクが小声で制止する。

 いやぁ、つい……。

 

 ゆっくりと、ノルドの老人――スカルド首長が進み出てくる。

 後ろの衛兵が、さりげなく体を支えていた。

 

 「聞けぇい! ドーンスターの民よ!」

 

 声だけはやたらと大きい。

 広場の空気が一瞬で静まった。

 

 「海より現れし邪悪なる甲殻の軍勢は、我らノルドへの挑戦である!」

 

 スカルドは拳を高々と掲げる。

 

 「奴らは漁師を襲い、港を脅かし、我らの誇り高き海岸を踏みにじった!」

 

 後ろにいた年配の衛兵が、小さくため息をついた。

 

 「……また始まった。」

 

 その顔は苦労人の顔だった。

 スカルドはさらに声を張り上げる。

 

 「だが恐れることはない!このスカルド、若き日には亡霊の海の海賊どもを追い払い、トロール三匹を斧一本で叩き伏せた男である!」

 

 衛兵の一人が肩をすくめる。

 たぶんホラ話だろうね、これ。

 

 「カニ相手に、ここまで大げさにしなくてもいいだろ。」

 

 隣の傭兵らしき男がぼそりと呟いた。

 

 「なんで俺たちまで呼ばれてんだよ……。」

 

 「勘弁してくれよ……。」

 

 鉱山労働者も漁師も不満げだ。

 スカルドはそんな空気をまるで気にしない。

 むしろますます気分が乗ってきたようだった。

 スカルドは手に持っていた槍を振り上げた。

 

 「我らは暴走したマッドクラブどもを海へ叩き返す!」

 

 「おおー……。」

 

 ――ぱちぱちぱち

 

 拍手は起きた。

 だが半分くらいは「とりあえず拍手しておこう」という雰囲気だった。

 

 「よし! では作戦会議だ!」

 

 スカルドは満足げに頷き、広場を見回す。

 その視線が、ふと私のところで止まった。

 

 「……む?」

 

 嫌な予感がした。

 老人は目を細め、私をじろじろと見つめる。

 

 数秒の沈黙。

 

 「待て。」

 

 スカルドが低い声で言った。

 

 「リフテンの援軍というのは……お前たちのことか?」 

 

 「はい。」

 

 私は軽く頷く。

 

 「ライラ首長の命で参りました。」

 

 スカルドは露骨に眉をひそめた。

 

 「ふん。ノルドの港を守る戦いに、エルフとは……。」

 

 シズクの肩がぴくりと震える。

 

 「リフテンも人材不足らしいな。

 まぁ、よい。せいぜい足を引っ張らぬようにすることだ。」

 

 広場の空気が少しだけ重くなった。

 でもまぁ、特に気にする必要はない。

 

 「心得ております。それに私は足を引っ張れるほど重くありません。(激うまギャグ)」

 

 「「「??????」」」 

 

 沈黙が訪れた。

 誰も何も言わない。

 

 え、なにこれ?

 

 「えー……では、作戦会議を始めてもよろしいでしょうか?」

 

 年配の衛兵が慌てて咳払いをした。

 スカルドは不満そうに鼻を鳴らしたが、それ以上は何も言わなかった。

 

 先ほどの衛兵が一歩前へ出る。

 

 「私は衛兵長のジョットです。」

 

 短く名乗ると、彼は丸めていた羊皮紙を木箱の上へ広げた。

 そこにはドーンスター西海岸の簡単な地図が描かれている。

 

 「被害はここ――西の釣り小屋周辺に集中しています。」

 

 ジョットの指が、海岸線の小さな印を叩いた。

 

 「最初の襲撃では、漁師二名が負傷、船一隻が損傷しました。

 昨日は見回りの衛兵も襲われています。」

 

 「衛兵まで……?」

 

 シズクが思わず声を漏らす。

 ジョットは重々しく頷いた。

 

 「普通のマッドクラブなら、ここまで積極的に人間を襲うことはあり得ません。 しかし、今回は違います。」

 

 そうかなぁ。

 でもまぁ、原作だったらマッドクラブだけじゃなく、オオカミや武装してない一般市民もドラゴンに突っ込んでいくトンチキAIだったから、この現実になった世界のマッドクラブはゲームだったころよりも大人しいのは確かかもしれない。

 

 彼はさらに別の紙を取り出し、話を続ける。

 

 「問題の釣り小屋には、元々トリフという漁民が住んでいました。」

 

 すると、広場の端にいた痩せたノルドの男が、おずおずと手を挙げる。

 髭はぼさぼさ、服には魚の匂いが染みついている。

 

 「お、俺だ……。」

 

 ジョットが彼を前へ促した。

 

 「トリフ。見たことを話してくれ。」

 

 男は周囲を見回し、唾を飲み込む。

 

 「……一ヶ月くらい前だった。

 セヴィウルっていうダークエルフの魔術師が来たんだ。」

 

 広場がざわめく。

 スカルドの眉がぴくりと動いた。

 

 「薬と炎の塩鉱石をやるから、しばらく泊めてくれって言われてな……。

 最初は静かな奴だったんだが……。」

 

 トリフの声が少し震え始める。

 

 「でも夜になると、海岸で呪文を唱えるようになった。

 青白い光が見えて……。」

 

 「それで?」

 

 ジョットが促す。

 トリフは両手を握りしめた。

 

 「ある晩、マッドクラブに魔法をかけてるのを見ちまった……。

 カニどもが、じっと奴を囲んでたんだ。

 普通じゃねぇ。」

 

 広場にいた他の漁師が顔をしかめる。

 同じ漁師仲間の被害だ。

 他人事じゃないのだろう。

 トリフは続ける。

 

 「夜中に小屋の床下からカサカサ音がして……。

 寝てたらマッドクラブがベッドの下から這い出してきやがった。」

 

 「……!?」

 

 シズクが息を飲む。

 

 「ダガーを枕元に置いてなかったら足をやられてた。」

 

 トリフは腕をさすりながら続ける。

 

 「そのあと、もう出て行けって言ったんだ。

 そしたら”ここはもう自分の家だ”とか言い始めて……。

 魔法をかけられるんじゃないかと思って、怖くなって……。」

 

 ジョットが静かに補足する。

 

 「その後、トリフは小屋を放棄し、宿屋『ウィンドピーク』へ避難しました。

 現在、小屋は無人、ということになっています。」

 

 私は地図へ視線を落とした。

 

 「つまり、セヴィウルはまだそこにいる可能性がある?」

 

 「高いでしょう。」

 

 ジョットは頷く。

 

 「付近では焦げたカニの殻や、魂石の破片も見つかっています。」

 

 スカルドが腕を組み、不機嫌そうに唸った。

 

 「ふん……やはり魔術師か。

 だから私は魔術師という連中が嫌いなのだ。

 そもそも魔術なんてものは――」

 

 ジョットは疲れ切った顔で答える。

 

 「首長、今、その話は。」

 

 完全に慣れている感じだった。

 

 「要するに、魔法で気が狂った蟹どもを叩けばいいんだろ?

 簡単な仕事じゃねぇか。」

 「デカい口叩きやがって、簡単ならお前一人で行けよ。ビックマウス。」

 「誰だ!今舐めたこと言ったやつは!?」

 「こっちは船が出せなくて困ってんだ。

 どうでもいいからさっさと誰か何とかしてくれよ。」

 

 男たちが次第に騒ぎ始める。

 まさに混乱状態だった。

 

 「静かにせんか!」

 

 スカルドが声を張り上げる。

 静かになった頃合いを見て私は地図を指差した。

 

 「魔術のせいで狂暴になっているのなら、それは幻惑魔術の一種だろう。

 同士打ちをしていないことを見れば、”激昂の魔術”というよりは”扇動の魔術”の線が強い。」

 

 「……”扇動の魔術”?

 だが、それを知ったところで何の意味が?」

 

 傭兵が疑問の声を上げる。

 

 「意味はある。扇動の魔術を受けたものは気分が高揚し、退却することがない。つまりどこまでもこちらを追い回すことになる。」

 

 ジョットが気づいたように口を開く。

 

 「深追いさせるのか。」

 

 ジョットの呟きに、私は頷いた。

 私は地図を指でなぞる。

 

 「正面から殴り合う必要はない。奴らを誘導する。」

 

 指を滑らせる。

 

 「ここで迎え撃つ。」

 

 ジョットが地図を覗き込む。

 

 「水銀鉱山か……なるほど。

 正面から戦えば、数で押し潰される。

 だが、高所に陣取り、狭い場所へ引き込めば話は変わる。」

 

 「弓兵は上から射る。

 近接戦闘員は坂道を利用して迎え撃つ。

 負傷した者はすぐ後方へ下がる。」

 

 「蟹相手に戦列を組む、か。」

 

 傭兵が感心したように笑う。

 

 「悪くない。」

 

 ジョットが頷く。

 

 「カニの近くで戦うのは少人数で済む。

 漁民や鉱夫は無理に近付く必要はない。

 物資の運搬や負傷者の治療をしてくれればいい。」

 

 少しずつ、広場の空気が変わっていく。

 

 先ほどまで不満を漏らしていた男たちも、真剣な表情で地図を見るようになっていた。

 

 「ふむ……。」

 

 スカルド首長が腕を組む。

 

 「つまり、我らは敵を恐れて待つのではない。」

 

 老人は立ち上がった。

 

 「奴らを我らの選んだ場所へ誘い込み、誇り高きノルドの知略を見せつけるのだな!」

 

 私、ノルドじゃないんですけどね。

 でもまぁ、士気が上がったのは確かだった。

 

 「よし!」

 

 スカルドが拳を握る。

 

 「では決まりだ!

 我らドーンスターの戦士たちは――」

 

 「首長!!!」

 

 突然、広場の外から叫び声が響いた。

 全員が振り返る。

 一人の衛兵が息を切らしながら駆け込んでくる。

 鎧には雪が張り付き、その顔は青ざめていた。

 

 「大変です!」

 

 ジョットが眉をひそめる。

 

 「何があった。」

 

 衛兵は息を整える暇もなく叫んだ。

 

 「櫓から報告です!」

 

 嫌な予感がした。

 

 「マッドクラブの群れが……」

 

 衛兵は震える声で続ける。

 

 「こちらへ向かっています!」

 

 沈黙。

 

 誰もが一瞬、意味を理解できなかった。

 

 「……こちらへ?」

 

 ジョットが聞き返す。

 衛兵は頷く。

 

 「はい!」

 

 そして。

 

 「このままでは……ドーンスターは……奴らに囲まれます!」

 

 空気が凍りついた。

 

 「……。」

 

 傭兵がぽつりと言った。

 

 「えーっと。つまり?」

 

 私は静かに答える。

 

 「我々が奴らを誘導する前に……」

 

 不気味なハサミの音が聞こえた気がした。

 

 「向こうが先に来たらしい。」




今回もやりたい放題ざますよ!
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