スカイリムCC:釣り師の痴人   作:アーマーブレイク大好きおじさん

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05ありあわせのミートパイ

 リフテンを出発して三日目。

 ついにリフト地方の広葉樹林帯を抜け、

 岩肌と草木が混在するファルクリース地方の山間部へと入った。

 

 ここまで、

 オーク要塞”ラーガシュブール”で一泊し、

 山肌の街”ライヒ・コリゲート”で一泊したのだ。

 

 え?

 ライヒ・コリゲートって原作に無かっただろって?

 世界全体が現実レベルに拡張されたから、

 原作にはない街なんていくつもあるんだよ。

 まぁ、もしかしたら誰かのMODのせいかもしれないけど。

 

 ともかく、今は”世界のノド”といわれるタムリエル大陸で最も高い山の麓を南に迂回しながら、

 西のファルクリースに向かって進んでいるところなのだ。

 

 薄く積もった雪が残る道を進む。

 リフテンとは打って変わって針葉樹林が多く、

 若干空気がひんやりしている。

 それでもスカイリム全体でみれば温暖な地域ではあるが。

 

 この少し高くなった麓部分を抜ければ、

 次の宿泊地”ヘルゲン”が見える。

 

 そう――ヘルゲンだ。

 

 あの日。

 原作が開始した日。

 

 ヘルゲンは壊滅した。

 

 ”世界を喰らうもの”と呼ばれる黒龍――アルドゥインが街を焼き払い、すべてを破壊したのだ。

 

 我らが原作主人公ドヴァーキンがアルドゥインを倒し、

 世界が平和になったとしても、

 失われたものは戻ってこない。

 

 家族。

 友達。

 仲間。

 そして、居場所。

 

 ヘルゲンの住民たちが、

 何もかもを失った場所。

 

 今回の旅で、私はその場所へと足を運ぶことにしたのだ。

 

 ファルクリースに行くまでの交通の要所だということもあるが、

 一番は街を再建しているという噂があったからだ。

 私は確認したかったのだ。

 

 あの日消え去った街の、その後を。

 

 原作だと崩壊したままゲームは終了するが、

 現実レベルに拡張された世界では生き残った人たちが再び立ち上がろうとしている可能性が十分にある。

 私はその光景を見たいと思ったのだ。

 そんなことを考えていると、前方に崩れかかった石造りの防壁が見えてきた。

 

 「ヘルゲン……」

 

 私は立ち止まり、街を囲む石造りの城壁を見上げた。

 かつて帝国軍が築き上げた堅牢な防壁。

 

 ”幼い頃は帝国軍の防壁や塔がこの上なく頼もしく思えたもんだがな”

 

 原作冒頭の、レイロフの言葉を思い出す。

 

 その城壁は無残に裂けていた。

 

 石は黒く焼け、塔は半ばから崩れ落ちている。

 あれほど分厚い壁を砕いた爪痕が、今も生々しく残っていた。

 私は思わず、その黒く焦げた石肌に手を触れる。

 

 ――冷たい。

 

 ただの石だ。

 だが、その奥には確かに、あの日の炎が焼き付いているような気がした。

 

 門をくぐる。

 

 街は静かだった。

 人がいないわけではない。

 

 荷車を引く男。

 薪を抱えた少女。

 花を供え手を合わせる老婆。

 

 笑い声はない。

 市場特有の呼び込みもない。

 聞こえてくるのは、遠くで響く金槌の音だけ。

 

 ――カン……。

 

 ――カン……。

 

 乾いた音が、冷たい空気に吸い込まれていく。

 噂では、復興が進んでいると聞いていた。

 

 だから私は勝手に期待していた。

 

 新しい家が並び、人々が行き交い、街らしい賑わいが戻っているものだと。

 

 しかし現実は違った。

 

 崩れた家屋は、そのまま土台だけを残している。

 焼け焦げた石畳は、今も所々が黒い。

 更地になった区画には薄く雪が積もり、その上に木材が山積みにされていた。

 

 復興は確かに進んでいる。

 

 だが、それは決して”終わりが見える”という意味ではなかった。

 一歩ずつ。

 本当に、一歩ずつなのだ。

 

 私は小さく息を吐く。

 

 帝国軍の兵士たち。

 反乱軍の兵士たち。

 ヘルゲンの住人たち。

 

 ゲーム冒頭のシーンが、脳裏をよぎる。

 ゲームでは、彼らはイベントの舞台装置だった。

 

 だが、この世界では違う。

 彼らには家族がいて、友人がいて、今日という日を生きていた。

 

 その当たり前の日常が、たった一匹のドラゴンによって奪われた。

 

 胸の奥が、少しだけ重くなる。

 何か、見てはいけないものを見てしまったような、そんな気がした。

 

 その時だった。

 

 ふわり、と。

 焼きたてのバターの香りが風に乗って漂ってきた。

 

 思わず顔を上げる。

 

 宿屋の煙突から、細い煙が立ち昇っていた。

 壊れた街の中で、その煙だけが、まるで”ここにはまだ暮らしがあります”と静かに教えてくれているようだった。

 

 ――ぐぅぅぅ……。

 

 緊張が解けたせいか、お腹が盛大に鳴る。

 思わず苦笑する。

 

 「……そうだな。」

 

 どれだけ苦境に陥っても、人は腹が減る。

 そして腹が減る限り、人は料理を作り続ける。

 

 ならば今は、その温かな灯を味わおう。

 私は宿屋の扉へ向かって歩き出した。

 

 ☆★☆★☆★☆★

 

 「いらっしゃいませ!」

 

 店内に入ると、少年と青年の間くらいの男性が笑顔で迎えてくれた。

 

 「何がある?」

 

 男性に問いかけると、パイを差し出してきた。

 

 「すいません。見ての通り物流はまだ不完全で……。

 それでも出来る限りの料理を用意します、どうですか?」

 

 少し申し訳なさそうな表情で言われたが、構わない。

 今は食事が先決なのだ。

 

 「分かった。それを頂こう。」

 

 私はパイの皿を受け取ると、テーブル席に座る。

 

 湯気をまとった、焼きたてのパイ。

 表面はこんがりと色づき、

 ところどころに入った切れ目から、

 じんわりと肉汁が滲んでいる。

 

 (ありあわせの素材との事だが……さぁ、どうだ?)

 

 「いただきます。」

 

 フォークを入れる。

 

 さくっ、と乾いた音がして――

 

 次の瞬間、内側から湯気が一気にあふれ出した。

 ほぐれた鶏肉と、刻まれた野菜が、クリーム状のソースに絡んでいる。

 派手さはないが、明らかに“ちゃんと作られた”ものだ。

 

 では早速、一口。

 

 ――サクッ

 

 「!?」

 

 軽い。

 だが、ただ軽いだけじゃない。

 層になった生地が、さくさくとほどけながら、ほんのりとしたバターの香りを残す。

 柔らかく煮込まれた鶏肉が、口内でほろりと崩れる。

 その繊維の間に、ソースがしっかりと絡んでいる。

 溢れ出てくる肉汁は濃厚で、それをまろやかなクリームが優しく包み込む。

 複雑に混ざり合った味付けは、決して強引ではなく、自然に調和している。

 

 (これは……本当にありあわせの素材のみで作られた料理なのか!?)

 

 私は何とも言えない驚きに包まれていた。

 物資が不足している今、使える材料も限られているだろう。

 それでも、これは信じられないほどの完成度だ。

 おそらくは店主の技量や知恵、そして熱意が生み出したものなのだろう。

 その力に感動を禁じ得ない。

 

 強すぎない塩気。

 じっくり煮込まれた野菜の甘み。

 そして静かに広がる鶏の肉汁。

 それを抱き込むクリーム状のソース。

 

 濃過ぎず薄過ぎず、丁度良い加減だ。

 そしてそれらを、パイ皮のサクッとした食感と柔らかさが、全体を引き締めている。

 

 「……ああ」

 

 思わず、小さく息が漏れる。

 

 この料理は、どこか落ち着く。

 

 「あ……あの!」

 

 私がパイを口に運んでいると、店主の男性に声をかけられる。

 

 「蜂蜜酒はいりませんか?特別なブレンドです」

 

 蜂蜜酒か。

 最近、カクテルやラム酒ばっかりだったから丁度いい。

 

 「頂こう。」

 

 男性は瓶に入った蜂蜜酒をジョッキに注ぎ、テーブルの上に置く。

 中には、淡い琥珀色の液体。

 

 鼻を近づけると、まず蜂蜜の甘い香りが立ち上る。

 だがその奥に、すっと抜けるような清涼感――ジュニパーベリー特有の、少し青い香りが混じっていた。

 

 「これは……ジュニパーベリー入りの蜂蜜酒なのか……!?」

 

 ジュニパーベリー入りの蜂蜜酒は原作でも登場するお酒だ。

 もっとも――

 

 「はい!ジュニパーベリー入りの蜂蜜酒です!」

 

 ジュニパーベリー入りの蜂蜜酒はヘルゲンでヴィロットという男が作っていた。

 だが、あの日ヘルゲンは焼き尽くされ――

 

 ヴィロットは命を落としたはずだ。

 

 でも、今、目の前にあるこのお酒は――

 

 「この蜂蜜酒は……君が作ったものなのか?」

 

 私の問いに男性は少し俯く。

 

 「……作った、というよりも模造したと言った方が正確かもしれません。

 以前ヴィロットさん――この町に住んでいた料理人が残したレシピを参考に、再現しただけなんですが。」

 

 少年は申し訳なさそうに答える。

 だが、顔には喜びの色が浮かんでいた。

 

 (この子は、もしかして……)

 

 「君……ハミング君かい?」

 

 私が名前を呼ぶと、男性は驚いた表情で顔を上げた。

 

 「え……どうして僕の名前を知っているんですか!?初対面ですよね?」

 

 「ふふ、まぁ、色々とね」

 

 私は強引に話を打ち切って、

 笑みを浮かべながら、ジョッキを手に取る。

 そして――

 

 一口。

 

 ――ゴクッ……

 

 柔らかい甘みが、舌に広がる。

 

 だが、ただ甘いだけじゃない。

 ジュニパーベリーのほのかな苦みと香りが、後味をきゅっと引き締める。

 

 これは、ただジュニパーベリーを入れた蜂蜜酒じゃない。

 ヴィロットの技術を受け継いだ、本物の”ジュニパーベリー入りの蜂蜜酒”なのだ。

 

 喉を通ると、じんわりとした熱が広がった。

 

 そしてすぐに、パイをもう一口頬張る。

 

 目を閉じる。

 

 脳裏に浮かぶ、崩れた塔。

 積み上げられた木材。

 焼き焦がれた石畳。

 

 それでも――ここには温かい料理と酒がある。

 

 そうだ、この場所は“終わっていない”。

 ヘルゲンは“終わっていない”。

 

 もう一口、パイを口に運ぶ。

 

 今度は、少しゆっくりと味わう。

 

 失われたものは多い。

 だが、こうして作られた一皿の上には、

 確かに“続き”があった。

 

 ジョッキを傾ける。

 

 ほのかな甘みと香りが、静かに残った。

 

 あの日、何もかも失われたヘルゲン。

 でも、そこにはまた新たな営みが芽生え、再び息を吹き返そうとしている。

 それは決して簡単なことではない。

 しかし、どんな過酷な状況に置かれようとも、希望を持つことは出来るのだと思わされた。

 

 「ごちそうさま。」

 

 私が食事を終え、支払いをすると、ハミングは申し訳なさそうに頭を下げた。

 

 「すいません。こんな料理しか提供できなくて……」

 

 「いや、十分美味かったよ。

 礼を言うのはこちらの方だ。

 あと部屋も借りたい。」

 

 私は宿代を支払いながら、部屋を借りることを告げる。

 

 「え、あ、はい!大丈夫ですよ。今空きがありますので、

 ただ、少々お待ちください。少し掃除しますので……」

 

 ハミングはそう言うと箒をもって部屋へと走って行った。

 ゲームの頃よりも大きくなったハミングの背中を眺めながら、思いをはせる。

 

 ”起きて、パパ!起きてったら!”

 ”ハミング、こっちに来い。今だ!”

 ”もう駄目だ。行け、逃げろ。”

 ”……よくやったぞ。お前は――誇りだ。”

 

 原作ゲーム内でのやり取りが脳裏に浮かぶ。

 きっとこの世界でも同じようなやり取りがあったのだろう。

 

 ヘルゲンは、まだ崩れたままだ。

 

 失われた命は戻らない。

 

 それでも、この宿には焼きたてのパイの香りが満ちていた。

 

 レシピを受け継ぎ、

 火を起こし、

 客を迎える。

 

 その積み重ねが、いつかヘルゲンという街を取り戻すのだろう。

 

 「トロルフ……ヴィロット……。見守ってやってくれ。」

 

 私は小さく呟きながら、テーブルの上に置かれたジョッキを飲み干した。




サバイバルモードで町追加MODと依頼追加MODを入れて配達人RPするのがマイジャスティスです。某ニコニコ動画の影響でもあります。

ChatGPTの画像生成について、OpneAI側は著作権はクリアしているとのことで、参考画像(食べ物やキャラクターの見た目)を生成して掲載することは可能らしいのですが、皆さんの意見が知りたいです。念のため、挿絵の要望が多くても絶対に挿絵を生成するとは約束しませんし、挿絵反対が多くても絶対に挿絵を生成しないとは約束しません。極論、すべてを運営に任せるのが一番ですが、皆さんの意見を聞きたいです。

  • 生成AIで挿絵を作るべきではない
  • 料理は生成しても良い
  • キャラクターは生成しても良い
  • 両方生成してよい
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