元殺し屋がバイオ事件に巻き込まれる話   作:オッパッピー

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レオン視点で始まります。
本日二度目の投稿。


Chapter5 テンペスト Part2

 ヘリは夜空を切り裂き、崩壊する巨大空母を後にして飛び去っていった。

 

 その頃。

 

 達芝では、すでに地獄が始まっていた。

 

「……くそっ!」

 

 レオン・S・ケネディは、瓦礫の陰から飛び出してきたゾンビを撃ち倒した。

 

 倒れた死体を踏み越え、さらに前へ進む。

 

 だが、進めば進むほど、その数は増えていった。

 

 道路を埋め尽くす人、人、人。

 

 つい先ほどまで普通に生活していたはずの人間たちが、今では生者を求めて徘徊している。

 

 遠くで車が爆発した。

 

 建物の一角が崩れ落ちる。

 

 悲鳴が上がった。

 

 銃声が響く。

 

 そして、また誰かがゾンビに襲われる。

 

「レオン!」

 

 ヘレナの声が飛んでくる。

 

「分かってる!」

 

 レオンは振り返りざまに銃を撃った。

 

 ゾンビの頭部が弾け、後ろへ倒れる。

 

 それでも、次から次へと押し寄せてくる。

 

 この光景を、レオンは知っていた。

 

 知りすぎているほどに。

 

 ――トールオークス。

 

 脳裏に、あの街の光景が蘇る。

 

 あの日。

 

 大統領アダム・ベンフォードは、ラクーンシティ事件の真実を公表しようとしていた。

 

 ラクーンシティ。

 

 十五年前に消滅した街。

 

 自分が生き残った場所。

 

 そして、多くの人間が命を落とした場所。

 

 大統領は、その事件について国民にすべてを話そうとしていた。

 

 バイオテロが世界を脅かし続ける理由。

 

 過去に何があったのか。

 

 政府が何を隠していたのか。

 

 そのすべてを。

 

 レオンは、その大統領の側にいた。

 

 かつて共に戦った仲間であり、自分を信頼してくれていた人間。

 

 だからこそ――

 

 目の前で大統領が変貌した時、レオンは自分の手で引き金を引いた。

 

 撃たなければならなかった。

 

 大統領ではなくなった存在を。

 

 それでも、あの瞬間の感触だけは消えない。

 

 引き金を引いた指。

 

 倒れていく身体。

 

 ヘレナの叫び。

 

 そして、その直後に告げられた言葉。

 

 ――「私が、やったの」

 

 事件の裏側にはシモンズがいた。

 

 大統領暗殺。

 

 C-ウイルス。

 

 ラクーンシティ事件の真実を公表しようとした大統領を消すために仕組まれた、巨大な陰謀。

 

 レオンとヘレナは、すべての真相を追って戦った。

 

 そして――

 

 トールオークスは消えた。

 

 自分たちが街を脱出した時。

 

 遠くで轟音が響いた。

 

 空から降り注いだミサイル。

 

 逃げることもできない市民を残したまま、街そのものが爆炎に包まれていった。

 

 感染の拡大を止めるため。

 

 証拠を消すため。

 

 理由は何であれ、結果は同じだった。

 

 街が消えた。

 

 七万人を超える人間が犠牲になった。

 

 そして今。

 

 また同じ光景が目の前にある。

 

「……またこれかよ」

 

 レオンは呟いた。

 

 目の前で、ひとりの市民が倒れた。

 

 身体が痙攣する。

 

 そして数秒後。

 

 ゆっくりと立ち上がった。

 

「逃げろ!」

 

 レオンが周囲の市民へ叫ぶ。

 

 だが、もう遅い。

 

 その男が別の市民へ襲いかかる。

 

 悲鳴。

 

 混乱。

 

 連鎖する感染。

 

 白いガスは街の至る所へ流れ込み、そこにいた人間を次々と変えていった。

 

 トールオークスと同じ。

 

 いや――

 

 それ以上だった。

 

 ゾンビだけではない。

 

 建物の屋上から、ジュアヴォが姿を現す。

 

 感染者同士が入り乱れ、街中で殺し合いが始まっている。

 

 炎に包まれた道路。

 

 崩れ落ちる高層ビル。

 

 逃げ惑う人々。

 

 その人々へ襲いかかる無数の怪物。

 

 達芝全体が、巨大な感染地帯へ変貌していた。

 

「レオン、こっちよ!」

 

 ヘレナが叫ぶ。

 

「分かった!」

 

 二人は走った。

 

 その時だった。

 

 ――轟音。

 

 頭上から、巨大なローター音が響いてきた。

 

「……何だ?」

 

 レオンが空を見上げる。

 

 夜空の向こうから、一機のヘリコプターが飛んでくる。

 

 ただの救援機ではない。

 

 異常な速度で市街地へ突入しながら、崩壊しかけた建物の間を縫っている。

 

 次の瞬間。

 

 機体側面から銃火が走った。

 

 大量の銃弾が地上へ降り注ぐ。

 

 レオンたちへ殺到していたゾンビの群れが、次々と吹き飛ばされた。

 

「援護してくれてる……!」

 

 ヘレナが驚く。

 

 レオンはヘリを見上げた。

 

 操縦しているのは女。

 

 そして、その隣。

 

 ガンナー席から地上へ銃を向けている男の姿が見えた。

 

 その顔を見た瞬間、レオンは目を見開いた。

 

「……アリス」

 

 十五年前。

 

 ラクーンシティで出会った男。

 

 あの地獄の中で共に生き残り、脱出した男だった。

 

 上空からの援護によって、目の前のゾンビが一掃されている。

 

「行くぞ!」

 

「ええ!」

 

 二人は開いた道を駆け抜けた。

 

 その直後。

 

 巨大な影が道路へ飛び出してきた。

 

 チェーンソーを振り回す異形。

 

「……何だ、あいつは!」

 

 レオンが叫ぶ。

 

 巨大な怪物がチェーンソーを振り上げる。

 

 だが、襲いかかるより早く、上空から銃弾が叩き込まれた。

 

 ミニミ軽機関銃。

 

 ガンナー席の男が、怪物へ正確な集中砲火を浴びせている。

 

 巨大な身体がよろめいた。

 

「今だ!」

 

 レオンとヘレナは、その隙を突いて走り抜ける。

 

 背後では、なおも銃声が続いていた。

 

 レオンは一度だけ振り返った。

 

 ヘリは建物が次々と崩れ落ちる街の中を飛び続けている。

 

 操縦している女は、まるで地上の状況をすべて把握しているかのように機体を操っていた。

 

 その射線を維持するため、崩れ落ちる建物を紙一重で避ける。

 

 上昇気流に煽られても、機体を立て直す。

 

 その間も、ガンナーは地上への射撃を止めない。

 

「……助かった」

 

 レオンは小さく呟いた。

 

 そして、前を向く。

 

 目の前には、クアッドタワーへ続く道がある。

 

 あそこにはシモンズがいる。

 

 あの男を止めるために、レオンとヘレナは走り続ける。

 

 二人がクアッドタワーへ向かう道を確保すると、ヘリは大きく旋回した。

 

 操縦席のエイダは、機首をクアッドタワーへ向ける。

 

「私たちも行くわよ、アリス」

 

「ああ、了解」

 

 次郎はミニミ軽機関銃を下ろした。

 

 地上では、レオンとヘレナがすでにクアッドタワーへ向かっている。

 

 その先にいるのは、エイダが決着をつけようとしているシモンズ。

 

 次郎にとっても、今回の事件を終わらせるために避けては通れない相手だった。

 

 ヘリは速度を上げる。

 

 地獄と化した達芝の上空を抜け、次郎とエイダもまた、クアッドタワーへ向かった。

 

 

 ◇

 

 

 レオンたちへの援護を終えたヘリは、クアッドタワーへ向けて急上昇した。

 

 エイダは操縦桿を引き、機体を一気に上空へ持ち上げる。

 

 だが――

 

 上空から、複数のローター音が響いてきた。

 

「……来たわね」

 

 エイダが前方を睨む。

 

 ビル群の向こうから、武装した攻撃ヘリが姿を現した。

 

 一機ではない。

 

 二機、三機……。

 

 さらに後方からも別の機体が現れる。

 

 機体には重武装が施されている。

 

 操縦しているのは、シモンズ直属の暗殺組織――ファミリー。

 

 クアッドタワーへ向かう者を排除するための防衛部隊だった。

 

「随分と歓迎してくれるな」

 

 次郎がミニミ軽機関銃を構える。

 

「シモンズも、私たちを簡単には通すつもりがないみたいね」

 

 エイダは操縦桿を握り直した。

 

「来るわよ!」

 

 次の瞬間。

 

 敵ヘリの機関砲が火を噴いた。

 

 無数の銃弾が夜空を切り裂く。

 

 エイダが機体を急旋回させる。

 

 凄まじいGが二人の身体をシートへ押しつけた。

 

 銃弾が、さっきまで飛んでいた空間を通り過ぎていく。

 

 そのままエイダは機体を大きく傾け、ビルの隙間へ滑り込ませた。

 

 左右を高層ビルに挟まれた狭い空間。

 

 敵ヘリも追ってくる。

 

 前方から別の機体が迫ってきた。

 

 エイダの急制動により、機体が一瞬で速度を落とす。

 

 その直後、正面を横切った敵ヘリの背後へ滑り込んだ。

 

「捕まえた」

 

 エイダがトリガーを引く。

 

 機体に搭載された機関砲が火を噴いた。

 

 敵ヘリの装甲へ銃弾が集中する。

 

 さらにエイダは追尾ミサイルを発射した。

 

 ミサイルが敵機を追い、回避する間もなく命中。

 

 爆炎が夜空を照らした。

 

 粉々になった機体の破片が、ビルの谷間へ落下していく。

 

「まずは一機」

 

 エイダは淡々と呟いた。

 

 だが、次の敵が迫る。

 

 左右から挟み込むように二機。

 

 正面からも一機。

 

 機関砲が一斉に火を噴いた。

 

 エイダは機体を急降下させる。

 

 直後、頭上を銃弾が通過した。

 

 そのままビルの壁面すれすれまで高度を落とし、建物の角を抜ける。

 

 敵機が追ってくる。

 

 エイダは機体を急上昇させ、反転させるように旋回する。

 

 正面に敵ヘリを捉えた。

 

 トリガーを引き、機関砲の弾幕が敵機を貫く。

 

 続けて追尾ミサイル。

 

 爆発。

 

 もう一機が夜空から消えた。

 

 しかし、その直後だった。

 

 別の敵ヘリがビルの陰から飛び出した。

 

 正面に集中していた機体の死角。

 

 側面に敵機が機体を横滑りさせながら接近し、ガトリング砲をこちらへ向けようとする。

 

 だが――

 

 次郎はすでに待ち構えていた。

 

 ハッチを開け放ったガンナー席。

 

 凄まじいローターの風圧を受けながら、次郎は敵ヘリへ顔を向け、ミニミ軽機関銃を瞬時に向ける。

 

 敵ヘリがガトリング砲を旋回させるより早く、次郎が引き金を引いた。

 

 銃声が轟く。

 

 大量の弾丸が敵機へ叩き込まれる。

 

 狙うのは機体そのものではない。

 

 操縦席。

 

 そして、メインローターの結合部。

 

 防弾ガラスへ弾丸が集中する。

 

 ガラスが砕け、内部へ銃弾が突き抜ける。

 

 操縦席が血煙に染まった。

 

 敵機が大きく傾く。

 

 さらに次郎はローターの付け根へ弾丸を浴びせた。

 

 回転していたローターが大きく揺れた。

 

 制御を失った敵ヘリが横転する。

 

 煙を吐きながら高度を落とし、そのままビルの壁面へ激突した。

 

 爆発。

 

 炎と破片を撒き散らしながら、機体が夜の街へ落下していく。

 

「まだいるわ!」

 

 エイダが叫ぶ。

 

 次郎は正面へ向き直った。

 

 残った敵ヘリが一斉に接近してくる。

 

 だが、もう数は多くない。

 

 正面に回り込んだ機体をエイダが捉える。

 

 機関砲。

 

 ミサイル。

 

 正確な射撃が敵機を次々と撃ち落としていく。

 

 側面へ回ろうとした敵機には、次郎のミニミ軽機関銃が火を噴いた。

 

 操縦席を撃ち抜き、ローターを破壊する。

 

 制御を失った機体が夜空から落ちていく。

 

 正面はエイダ。

 

 側面は次郎。

 

 二人が互いの死角を補いながら戦うことで、ファミリーの攻撃ヘリ部隊は次々と撃墜されていった。

 

 最後の一機が爆発する。

 

 夜空に炎が広がり、黒煙を残して機体が落下していく。

 

 周囲からローター音が消えた。

 

 エイダは前方へ視線を戻す。

 

 その先に、クアッドタワーが見えていた。

 

 建物は大きく損壊している。

 

 各所から煙が上がり、外壁も崩れ始めている。

 

 その最上部にシモンズが待っている。

 

「邪魔はなくなったわ」

 

 エイダが操縦桿を握り直す。

 

「ああ、タワーに行って仕事の総仕上げといこう」

 

 次郎はミニミ軽機関銃を下ろした。

 

 エイダは機体を加速させる。

 

 崩壊寸前のクアッドタワーへ向け、ヘリは一直線に突っ込んでいった。

 

 





敵ヘリが原作よりも多め出ております。

作品世界の被害地域を世界地図にまとめました。
殆どが架空の都市なのでだいたいこの辺りかなと予想して印を付けています。

【挿絵表示】

こうして見るとまだまだ足りないように見えてしまいますね。
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