元殺し屋がバイオ事件に巻き込まれる話   作:オッパッピー

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本日二度目の投稿です。


Chapter6 地獄 Part1

 男はショットガンを構えたまま、一行を睨み付ける。

 

 レオンはゆっくりと両手を上げ、敵意がないことを示した。

 

 「待ってください」

 

 「自分たちはここを通らせてもらいたいだけなんです」

 

 その視線はレオンの制服、そしてマービンの制服へ移る。

 

 「……あんたたち、警察か」

 

 「今さら警察が何をしに来た」

 

 「どの面さげて来やがった!」

 

 怒気を含んだ声が店内へ響く。

 

 「俺の家族も、この街の連中も……誰一人守れなかったじゃないか!」

 

 レオンは何も言い返せなかった。

 

 拳を握り締め、ただ俯く。

 

 マービンも静かに帽子を脱ぐ。

 

 「……すまない」

 

 「言い訳はしない」

 

 「俺たちは市民を守れなかった」

 

 男はしばらく二人を睨み続けた。

 

 やがて大きく息を吐き、ショットガンを下ろす。

 

 男は一行を見回した。

 

 店長や客たちの怯えた表情を見ると、静かに道を開ける。

 

 「……好きに通れ」

 

 「奥から外へ出られる」

 

 「ありがとう」

 

 マービンが短く礼を言う。

 

 男は返事をせず、店の奥を親指で指した。

 

 「裏口から出ろ」

 

 「表の道路は崩れてるが、裏の路地ならまだ通れる」

 

 

 マービンは小さく頷き、そのまま裏口の様子を確認しに向かった。

 

 店の奥へ進み、ゆっくりと裏口の扉を開ける。

 

 軋む音とともに冷たい夜風が吹き込んできた。

 

 マービンは拳銃を構えたまま周囲を警戒し、一歩だけ路地へ足を踏み出す。

 

 左右を素早く見回し、安全を確認する。

 

 その視線が路地の奥で止まった。

 

 「……これは」

 

 少し離れた場所には、一台の工事用バンが乗り捨てられていた。

 

 「避難のために置き去りにしたのか」

 

 鍵は差しっぱなし。

 

 車体に多少の傷はあるものの、走行できそうな状態だった。

 

 マービンは運転席へ乗り込み、キーを回す。

 

 ブルルルッ……

 

 エンジンは問題なく始動した。

 

 「動く」

 

 その声にレオンたちも裏口へ集まる。

 

 レオンは安堵の表情を浮かべた。

 

 「これなら脱出できますね!」

 

 マービンは静かに頷いた。

 

 「ああ」

 

 「店長たちを連れて市外への脱出を試みよう」

 

 その言葉を聞いたエイダが、ふいに次郎へ視線を向けた。

 

 「……アリス」

 

 「一つ聞いてもいい?」

 

 次郎は静かに頷く。

 

 「ああ」

 

 エイダは次郎の顔色を見つめ、静かに言った。

 

 「あなた、感染しているでしょう」

 

 その一言で、その場の空気が凍り付いた。

 

 「なっ……!」

 

 レオンが思わず次郎を見る。

 

 店長たちも一斉に視線を向けた。

 

 次郎はしばらく沈黙した後、小さく頷く。

 

 「ああ、やっぱりこれ感染してるのか」

 

 「多分、脳みそ野郎に爪でやられた時だな」

 

 店長が目を見開く。

 

 「そんな、アリスお前……」

 

 次郎は落ち着いた口調のまま続けた。

 

 「今のところ症状は軽い」

 

 「だが、この先どうなるかまでは分からない」

 

 エイダは腕を組みながら言う。

 

 「顔色が少しずつ変わっている」

 

 「相当苦しい筈なのに、よく平気で動けるわね」

 

 「でも安心して。希望がないわけじゃない」

 

 全員の視線がエイダへ集まる。

 

 「アンブレラの研究所」

 

 「そこなら治療法か、それに繋がる情報が残っている可能性がある」

 

 「可能性は低くても、他に当てはないわ」

 

 レオンは迷うことなく言った。

 

 「だったら行きましょう」

 

 「アリスさんを助ける為に」

 

 「それに、事件の真相も知りたい」

 

 そこでマービンが静かに口を開いた。

 

 「では、俺から提案だ」

 

 「一般人を連れて研究所へ向かうのは危険すぎる」

 

 「ここからは別行動にしよう」

 

 全員がマービンへ視線を向ける。

 

 「俺が店長たちを護衛して、あの工事用バンで市外への脱出を試みる」

 

 「レオン」

 

 「君はアリスとエイダについて行け」

 

 「研究所で事件の真相を探り、治療法があるなら必ず持ち帰ってくれ」

 

 レオンは迷わず頷いた。

 

 「はい!」

 

 店長は次郎の前へ歩み寄る。

 

 「アリス」

 

 「ここまで何度も俺たちを助けてくれて、本当にありがとう」

 

 「お前がいなかったら、俺たちは警察署へ辿り着くこともできなかった」

 

 「だから、今度は自分の命を優先してくれ」

 

 後ろにいた客たちも、次々と頭を下げる。

 

 「ありがとうございました」

 

 「必ず生きて帰ってきてください」

 

 次郎は少し照れくさそうに笑った。

 

 「礼を言うのは、みんなが無事にこの街を出てからにしてくれ」

 

 マービンは静かに頷き、次郎を真っ直ぐ見つめた。

 

 「アリス」

 

 「必ず生きて戻ってこい」

 

 次郎は短く答えた。

 

 「ああ」

 

 こうして一行は二手に分かれる。

 

 マービンは店長たち生存者を護衛し、工事用バンで市外への脱出を目指す。

 

 そして次郎、レオン、エイダの三人は、事件の真相と次郎を救う希望を求め、アンブレラ研究所へ繋がる道を進むのだった。

 

 ◇

 

 工事用バンのエンジン音が静かに響く。

 

 マービンは運転席へ乗り込むと、最後に窓を開けた。

 

 「レオン」

 

 「アリス」

 

 「生きてまた会おう」

 

 レオンは敬礼した。

 

 「はい!」

 

 次郎も静かに頷く。

 

 「ああ」

 

 店長が助手席の窓から身を乗り出す。

 

 「アリス!」

 

 「約束だからな!」

 

 「必ず生きて帰ってこい!」

 

 客たちも車内から口々に声を掛ける。

 

 「ありがとうございました!」

 

 「どうかご無事で!」

 

 次郎は小さく笑みを浮かべ、右手を軽く上げた。

 

 「みんなも無事に市外へ」

 

 「気を付けて」

 

 バンはゆっくりと動き出す。

 

 やがて速度を上げ、夜の街へ消えていった。

 

 その姿が見えなくなるまで、三人は黙って見送っていた。

 

 静寂を破ったのはエイダだった。

 

 「行きましょう」

 

 「研究所へ続く下水道の入口は、この先よ」

 

 レオンは深く息を吸う。

 

 「はい」

 

 三人は再び歩き始めた。

 

 崩れた道路を避け、細い路地を抜ける。

 

 路上には放置された車両が折り重なり、燃え続ける建物から黒煙が立ち上っていた。

 

 途中、路地裏からゾンビがふらつきながら現れる。

 

 次郎がリボルバーを構え、一発で頭部を撃ち抜く。

 

 パンッ。

 

 ゾンビはその場へ崩れ落ちた。

 

 レオンがショットガンを構えたまま周囲を警戒する。

 

 「この辺りも危険ですね」

 

 「ああ」

 

 次郎は短く答えた。

 

 だが、その声には僅かな掠れが混じっていた。

 

 歩き続けるたびに身体が熱い。

 

 額にはうっすらと汗が滲み、左腕の傷口が鈍く疼く。

 

 レオンはその変化を見逃さなかった。

 

 「アリスさん」

 

 「大丈夫ですか?」

 

 次郎は苦笑する。

 

 「まだ動ける」

 

 「心配はいらない」

 

 レオンはそれ以上何も言わなかった。

 

 しかし、その横顔には不安が浮かんでいた。

 

 

 やがて三人は、大きなマンホールの前へ辿り着く。

 

 エイダは周囲を確認すると足を止めた。

 

 「ここから下水道へ入る」

 

 「その前に、一つ確認しておきたい物がある」

 

 次郎はポーチへ手を入れ、小型の携帯レコーダーを取り出した。

 

 「ベンが残したレコーダーだ」

 

 「地下駐車場で一度聞いたが、お前にも聞いておいてほしい」

 

 エイダはレコーダーを受け取り、再生ボタンを押した。

 

 『もしこれを誰かが聞いているなら……俺はもう助からなかったんだろうな』

 

 『アンブレラは、この街の地下で極秘研究を続けてきた。警察の上層部にも手を回し、証拠は何度も揉み消されてきた』

 

 静かなノイズだけが流れる。

 

 『俺が掴んだ資料には、地下研究所と"ウイルス"の記録が残っている。全部は持ち出せなかったが、研究所へ行けば真実はまだ眠っているはずだ……』

 

 『……気を付けろ。アンブレラは証拠だけじゃなく、それを知った人間も消してきた』

 

 ザーッ……ザーッ……

 

 激しい雑音とともに録音は途切れた。

 

 静寂が流れる。

 

 エイダはゆっくりと停止ボタンを押した。

 

 「この録音に嘘はなさそうね」

 

 「少なくとも、研究所が地下にあるという情報は私の調べとも一致している」

 

 レオンは尋ねる。

 

 「じゃあ、研究所へ行けば事件の真相が分かるんですね」

 

 エイダは静かに頷く。

 

 「可能性は高いわ」

 

 「でも、録音だけでは真犯人までは分からない」

 

 「誰がこの事件に関わっているのか」

 

 「そこまでは記録されていない」

 

 次郎はレコーダーを受け取り、ポーチへしまった。

 

 「なら答えは一つだ」

 

 「研究所へ行く」

 

 レオンはエイダへ視線を向ける。

 

 「でも、どうして下水道なんですか?」

 

 「研究所なら、普通は地上にある施設じゃ……」

 

 エイダはマンホールの前まで歩き、静かに口を開いた。

 

 「アンブレラは表向き、この街には製薬会社の研究施設しか持っていない」

 

 「でも、本当の研究施設は別」

 

 「街の地下深くに造られている」

 

 レオンは驚いたように目を見開く。

 

 「地下に……?」

 

 エイダは小さく頷く。

 

 「研究員や実験資材を人目につかず運ぶため、地下には専用の搬送ルートが造られている」

 

 「その一つが、この下水道よ」

 

 「さらに奥へ進めば、研究所へ続く搬送施設がある」

 

 次郎は静かに尋ねる。

 

 「確かな情報なのか?」

 

 「ああ」

 

 エイダは迷いなく答えた。

 

 「情報源は明かせない」

 

 「でも、このルートが一番可能性が高いことは間違いないわ」

 

 レオンは拳を握る。

 

 「だったら行きましょう」

 

 「事件の真相を突き止めて、アリスさんを助ける方法も必ず見つけます」

 

 エイダはマンホールの蓋へ手を掛ける。

 

 「下水道は研究所の警備区域でもあるはず」

 

 「地上より危険かもしれない」

 

 「でも、研究所へ辿り着ける道は、そこしかない」

 

 次郎も蓋へ手を添え、二人で持ち上げる。

 

 重い鉄蓋がゆっくりと開いた。

 

 冷たく湿った空気が地上へ流れ出す。

 

 下水特有の湿った臭いが鼻をついた。

 

 決して耐えられないほどではないが、長く居たいと思える場所ではない。

 

 レオンが思わず顔をしかめる。

 

 「うっ……」

 

 「やっぱり下水道ですね」

 

 エイダは懐中電灯を点灯させ、小さく微笑んだ。

 

 「すぐに慣れるわ」

 

 次郎は小さく息を吸い込み、静かに頷く。

 

 「行こう」

 

 三人は互いに視線を交わすと、冷たく湿った空気に包まれた下水道へ足を踏み入れた。

 

 コンクリートの壁には水滴が伝い、足元では緩やかに水が流れている。

 

 地上の喧騒とは切り離された静寂が、暗闇の奥まで続いていた。

 

 アンブレラ研究所への道は、ここから始まる。

 

 




ここからマービンと生存者たちは別行動です。
正直、この為だけにマービンを生かしました。
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