元殺し屋がバイオ事件に巻き込まれる話   作:オッパッピー

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ちなみに私はバイオハザードは恐すぎてプレイできないので、プレイ動画見る専です。


Chapter2 悪夢の始まり Part4

 まずは救急用品を集める。

 

 消毒液。

 

 包帯。

 

 ガーゼ。

 

 止血帯。

 

 鎮痛剤。

 

 解熱剤。

 

 棚に残っていた物を、近くにあったスポーツバッグへ手際よく詰めていく。

 

 次に飲料水の棚へ向かった。

 

 五百ミリリットルのペットボトルが十数本。

 

 全員分を考え、持ち運べる範囲だけを選んでバッグへ入れる。

 

 さらに栄養補助食品、ビスケット、チョコレートなど、保存が利き、すぐ口にできる物も回収した。

 

 懐中電灯を見つける。

 

 手で光を覆いながらスイッチを入れると、小さく灯りが点いた。

 

 予備の乾電池も忘れずバッグへ入れる。

 

 一通り店内を見回し、必要な物がないか確認する。

 

 その時だった。

 

 レジカウンターの奥から、小さな雑音が聞こえてきた。

 

 ザーッ……。

 

 ザーッ……。

 

 古い携帯ラジオだった。

 

 次郎は周囲を警戒しながら近付き、音量を最小まで下げる。

 

 ゆっくりと周波数を合わせると、雑音の中から男性の声が聞こえてきた。

 

『――こちらラクーンシティ災害対策本部』

 

 途切れ途切れの放送だった。

 

『市民の皆さんは落ち着いて行動してください』

 

『現在、市警察および関係機関が事態の収拾に当たっています』

 

 次郎は黙って耳を傾ける。

 

『不要不急の外出は控え、自宅、または安全な建物へ避難してください』

 

 思わず苦笑が漏れた。

 

「……もう、その段階じゃない」

 

 街はすでに崩壊している。

 

 自宅も、安全な建物も、もはや存在しない。

 

 やがて放送は大きなノイズに遮られた。

 

『ザーッ……』

 

 すると別の声が割り込む。

 

 今度は切迫した男性の声だった。

 

『こちらラクーン市警!』

 

『市内各地で警察官が応戦中!』

 

『生存者は武装した警察官の指示に従って避難してください!』

 

 激しい銃声が混じる。

 

『ぐあっ!』

 

『西口が突破された!』

 

『応援を――』

 

 通信は悲鳴と銃声を最後に途絶えた。

 

 店内には再び雑音だけが残る。

 

 次郎は静かにラジオの電源を切った。

 

 十分だった。

 

 警察も各地で追い詰められている。

 

 誰かの救助を待つ状況ではない。

 

 自分たちで生き残るしかなかった。

 

 スポーツバッグを肩へ担ぐと、入口へ向かう。

 

 ガラス越しに外を確認する。

 

 異常はない。

 

 次郎は静かに店を出て、待機していた店長たちへ小さく手を振った。

 

「もう大丈夫だ」

 

 店長は安堵したように息を吐き、一行を連れて駆け寄ってきた。

 

 

 店長はスポーツバッグの中を覗き込み、小さく息を吐いた。

 

「こんなに集められたのか」

 

「いや、必要そうな物だけだ」

 

 次郎はバッグを地面へ下ろす。

 

「まずは水を配る」

 

 ペットボトルを一本ずつ手渡していく。

 

「一人一本」

 

「全部飲み切らないで。必ず残しておいてくれ」

 

 客たちは静かに頷き、水を受け取った。

 

 次に栄養補助食品やビスケットを配る。

 

「空腹でも、一度に食べないでくれ」

 

「少しずつ食べた方が体力が持つ」

 

 続いて救急用品を店長へ渡した。

 

「包帯、消毒液、ガーゼ、止血帯」

 

「応急処置なら何とかできる」

 

 店長は中身を確認しながら頷く。

 

「助かる」

 

 次郎は表情を引き締めた。

 

「でも……噛まれた傷だけは別だ」

 

 その一言で空気が重くなる。

 

 誰もマークの最期を忘れてはいなかった。

 

 店長も静かに目を伏せる。

 

「……ああ」

 

 次郎は全員を見回した。

 

「みんな、よく聞いてほしい」

 

「転んでもいい」

 

「荷物を落としてもいい」

 

「でも、一人だけ離れるのは絶対に駄目だ」

 

「列が乱れたら、それだけ生き残れる可能性が下がる」

 

 客たちは力強く頷いた。

 

 店長も一歩前へ出る。

 

「アリスの言う通りだ」

 

「全員で生きて、この街を出る」

 

「勝手な行動だけはするな」

 

 その言葉に、不安に満ちていた客たちの表情へ、わずかな決意が戻る。

 

 次郎は店の入口横に設置されていたラクーンシティの案内地図へ目を向けた。

 

 現在地を確認する。

 

 警察署。

 

 市庁舎。

 

 病院。

 

 いずれも人が集まる場所だった。

 

 危険かもしれない。

 

 だが、このまま当てもなく歩き続けるよりは、生存者と合流できる可能性が高い。

 

 次郎は静かに顔を上げた。

 

「警察署を目指そう」

 

 店長は頷く。

 

「ああ」

 

 誰も反対しなかった。

 

 今は、その選択に賭けるしかないのだから。

 

 

 次郎は案内地図を頭の中へ焼き付けると、静かにスポーツバッグを担ぎ直した。

 

「ここから警察署までは、それほど遠くない」

 

「でも、大通りはできるだけ避ける」

 

 店長が頷く。

 

「ああ」

 

「裏路地を使って行くんだな」

 

「そうだ」

 

 次郎は地図を指差した。

 

「この細い道を抜ければ、警察署の南側へ出られる」

 

「遠回りだけど、人通りは少ないはず」

 

 客たちも地図を覗き込み、小さく頷いた。

 

 今は次郎の判断を信じるしかない。

 

 店を出る前に、次郎はもう一度だけ周囲を見回す。

 

 静かだ。

 

 さっきまで聞こえていた唸り声も近くにはない。

 

「行こう」

 

 一行は再び裏路地を歩き始めた。

 

 十分ほど進んだ頃だった。

 

 遠くから、複数の銃声が聞こえてくる。

 

 パンッ!

 

 パンッ!

 

 パンパンパンッ!

 

 続いて、誰かの叫び声。

 

「撃て! 撃てぇ!」

 

 そして、人とは思えない複数の咆哮が重なる。

 

 店長が立ち止まった。

 

「警察か……?」

 

 次郎は耳を澄ませる。

 

 銃声は警察署の方角から聞こえていた。

 

 断続的に続いている。

 

「急ごう」

 

 その一言で、一行は歩く速度を速めた。

 

 しかし、無闇に走ることはしない。

 

 角へ差しかかるたびに次郎が先に周囲を確認し、安全を確かめてから全員を進ませる。

 

 そうして慎重に進み続けた先で、次郎は右手を上げた。

 

「止まれ」

 

 一同がその場で足を止める。

 

 建物の角から、ゆっくりと大通りの様子を窺う。

 

 道路の先には、ラクーンシティ警察署へ続く大きな坂道が見えた。

 

 そして、その坂の下には――。

 

 横転したパトカー。

 

 炎上する乗用車。

 

 路上へ倒れた数人の警官。

 

 無数の血痕。

 

 店長が息を呑む。

 

「これは……ひどいな」

 

 次郎も表情を曇らせる。

 

 だが、ゾンビの姿は見当たらない。

 

 今なら通れる。

 

「警察署まで、あと少し」

 

 そう呟いた直後だった。

 

 ガシャァンッ!!

 

 近くの建物の窓ガラスが激しく割れる音が響いた。

 

 全員が反射的に音のした方を振り向く。

 

 

 割れた窓から、一人の青年が勢いよく飛び出した。

 

 警察学校を卒業したばかりと分かる紺色の制服。

 

 金髪。

 

 手には拳銃が握られている。

 

 着地と同時に体勢を立て直し、背後へ銃口を向けた。

 

 ガラスの割れた窓から二体のゾンビが這い出してくる。

 

「くそっ!」

 

 青年は迷わず引き金を引いた。

 

 パンッ!

 

 一体目の頭部が砕け散る。

 

 だが、もう一体が間髪入れず飛び掛かってきた。

 

 青年は横へ転がってかわす。

 

 立ち上がりざまに照準を合わせるが、距離が近すぎる。

 

 その瞬間だった。

 

 パンッ!

 

 次郎のリボルバーが火を噴く。

 

 マグナム弾はゾンビの頭部を吹き飛ばし、その場へ倒れ込ませた。

 

 青年は驚いたように振り返る。

 

 次郎は周囲を警戒したまま、静かに声を掛けた。

 

「怪我はあるか?」

 

 青年は息を整えながら首を横に振る。

 

「ありません」

 

「助かりました」

 

 そう言って警察手帳を取り出す。

 

「レオン・S・ケネディです」

 

「今日付でラクーン市警へ配属されました」

 

 次郎も軽く頷く。

 

「有栖次郎」

 

「こっちは店長と、生き残った人たちだ」

 

 店長も一歩前へ出る。

 

「よろしく頼む」

 

 レオンは客たちの姿を見て表情を引き締めた。

 

「皆さんも無事だったんですね」

 

「警察署へ向かってるんですか?」

 

 店長が答える。

 

「ああ」

 

「無線で、生存者は警察署へ集まれって聞いた」

 

 レオンは真剣な表情で頷いた。

 

「俺もそのつもりです」

 

「知り合いとはぐれてしまって……」

 

「警察署で落ち合う約束をしています」

 

 次郎はレオンの顔をじっと見つめた。

 

 恐怖はある。

 

 それでも目は死んでいない。

 

 状況を冷静に判断しようとしている。

 

(まだ新人なのに、よく踏みとどまってる)

 

 その時だった。

 

 遠くから低いうなり声が聞こえてくる。

 

「ガァァ……」

 

 坂道の下。

 

 物陰から数体のゾンビが姿を現した。

 

 さらに、その後ろにも人影が続く。

 

 レオンは拳銃を構えた。

 

「ここで立ち話をしている場合じゃないですね」

 

 次郎もリボルバーを構え、小さく頷く。

 

「警察署まで一気に行こう」

 

 こうして、有栖次郎たちはレオン・S・ケネディと合流し、ラクーンシティ警察署へ向けて駆け出した。

 

 

――Chapter2・完――

 





本日の投稿はここまでとさせていただきます。
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