元殺し屋がバイオ事件に巻き込まれる話   作:オッパッピー

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本日二度目の投稿。
ちなみにラスボスのモデルはハガレンのキング・ブラッドレイです。
サーベルだとそのまんますぎるのでレイピアにして見た目をそれに合わせた感じです。


Epilogue 新世界より

――事件発生から28日後

 

 ピッ……。

 

 ピッ……。

 

 規則正しい電子音だけが、静まり返った病室に響いていた。

 

 男はゆっくりと瞼を開く。

 

 白い天井。

 

 薄汚れた蛍光灯。

 

 腕には点滴の針が刺さり、胸には心電図の電極が貼り付けられている。

 

 「……」

 

 乾いた喉から声にならない息が漏れた。

 

 身体は鉛のように重い。

 

 起き上がろうと力を入れると、全身の筋肉が悲鳴を上げた。

 

 それでも時間をかけて上半身を起こす。

 

 病室を見回す。

 

 誰もいない。

 

 看護師も。

 

 医師も。

 

 患者も。

 

 廊下から聞こえるはずの足音も、話し声もない。

 

 聞こえるのは、自分の心電図だけだった。

 

 「……誰か」

 

 掠れた声は病室へ虚しく響き、消えていく。

 

 返事はない。

 

 男は点滴を引き抜き、ベッドからゆっくりと立ち上がった。

 

 足元がふらつく。

 

 二十八日間眠り続けていた身体は、自分のものではないようだった。

 

 壁へ手を付きながら病室を出る。

 

 廊下にも誰一人いない。

 

 ナースステーション。

 

 受付。

 

 待合室。

 

 全て無人だった。

 

 机の上には飲みかけのコーヒー。

 

 床には散乱した書類。

 

 車椅子だけがぽつんと置き去りにされている。

 

 まるで、人々が何かから逃げ出したかのようだった。

 

 「何があったんだ……?」

 

 ナースステーションの扉を開けても、誰もいない。

 

 テレビの電源を入れてみる。

 

 反応はなく、画面は黒いままだ。

 

 電話の受話器を取る。

 

 ツーという発信音すら聞こえない。

 

 病院全体が機能を失っていた。

 

 男はゆっくりと階段を下り、一階へ向かった。

 

 自動ドアは電源を失い、半開きのままで止まっている。

 

 両手で押し開ける。

 

 眩しい朝日が目へ飛び込んできた。

 

 外へ一歩踏み出す。

 

 冷たい風が頬を撫でる。

 

 病院の駐車場には何台もの車が放置されていた。

 

 救急車も、そのまま停まっている。

 

 鳥の鳴き声だけが空へ響いていた。

 

 男は病院を振り返る。

 

 何が起きたのか。

 

 誰も答えてはくれない。

 

 それでも、この場所に留まっていても何も始まらないことだけは分かった。

 

 男はゆっくりと歩き出す。

 

 誰もいない病院を背に。

 

 静まり返ったロンドンの街へ向かって。

 

 彼の物語は、ここから始まる。

 

 ◇

 

 朝日がカーテンの隙間から差し込み、部屋を優しく照らしていた。

 

 エレンはゆっくりと目を開ける。

 

 静かな朝だった。

 

 あの日々のような銃声も、怒号も聞こえない。

 

 代わりに聞こえてくるのは、小鳥のさえずりだけだった。

 

 「……起きます」

 

 小さく呟くと、エレンは一人でベッドを降りた。

 

 寝間着を畳み、カーテンを開け、窓を少しだけ開く。

 

 朝の冷たい風が部屋へ流れ込んだ。

 

 深く息を吸う。

 

 どこにも血の臭いはしない。

 

 それだけで自然と笑みが浮かんだ。

 

 洗面所で顔を洗い歯を磨き、鏡の前で髪を整える。

 

 着替えを済ませると、静かに部屋を出た。

 

 廊下はまだ静まり返っている。

 

 以前の屋敷なら、この時間には使用人が朝の支度を始めていたが、今は違う。

 

 誰かが用意してくれている朝は、もうない。

 

 エレンは階段を下り、リビングへ向かった。

 

 冷蔵庫を開ける。

 

 卵。

 

 ベーコン。

 

 牛乳。

 

 食パン。

 

 「よし。今日は私が作ろう」

 

 小さく呟き、フライパンへ火を点ける。

 

 ベーコンを焼き、卵を割る。

 

 パンをトースターへ入れ、コーヒーと紅茶の準備も進める。

 

 旅の途中、魚を焼き、野菜を切り、料理を作る次郎の隣で何度も手伝った。

 

 最初は包丁を持つことさえ危なっかしかった。

 

 それでも、少しずつ覚えてきた。

 

 やがて香ばしい匂いが部屋へ広がる。

 

 皿を並べ、朝食を盛り付け終えた、その時だった。

 

 二階からゆっくりと足音が聞こえた。

 

 振り返ると、灰のカッターシャツにジャケットを羽織った次郎が階段を下りてくる。

 

 「おはよう、アリス」

 

 「ああ。おはよう」

 

 次郎はテーブルへ並んだ朝食を見て、小さく目を細めた。

 

 「君が作ったのか」

 

 「うん」

 

 エレンは少し照れくさそうに笑う。

 

 「一人でやってみたの」

 

 次郎は皿へ視線を落とし、小さく頷く。

 

 「綺麗にできている」

 

 その一言だけだった。

 

 大げさに褒めることはない。

 

 子ども扱いすることもない。

 

 当たり前のように、一人でできたことを認めてくれる。

 

 その言葉が、エレンには何より嬉しかった。

 

 旅へ出る前の自分なら、一人で起きることも、支度をすることも、朝食を用意することもできなかっただろう。

 

 しかし今は違う。

 

 自分のことは、自分でできる。

 

 それは二十八日間の過酷な生活が、自分に与えてくれた確かな成長だった。

 

 「アリス」

 

 「何だ?」

 

 「いただきます」

 

 次郎は穏やかに頷く。

 

 「ああ。いただきます」

 

 窓から差し込む朝日が、静かなリビングを優しく照らしていた。

 

 ◇

 

 巨大なモニターへ、一枚の写真が映し出される。

 

 黒いロングコート。

 

 傍らに落ちた帽子。

 

 頭部を撃ち抜かれ、基地の地下通路へ倒れ伏すBОW。

 

 薄暗い会議室には重苦しい空気が流れていた。

 

 楕円形のテーブルを囲むのは、アンブレラ社欧州支部の幹部たち。

 

 誰一人として口を開かない。

 

 やがて、一人の男が静かに資料を閉じた。

 

 「コードネーム《ファントム》。運用実験……失敗」

 

 別の男が首を横へ振る。

 

 「失敗ではありません」

 

 「性能だけを見れば、予想を遥かに上回りました」

 

 リモコンを操作すると、新たな映像が映し出される。

 

 米軍基地内部。

 

 監視カメラが記録した最後の映像だった。

 

 兵士が銃を構える。

 

 次の瞬間には心臓を貫かれ、崩れ落ちる。

 

 別の兵士。

 

 さらに別方向からの十字砲火。

 

 しかし黒い影は、そのすべてを紙一重で潜り抜ける。

 

 数分後。

 

 基地は沈黙した。

 

 「米軍兵士五十七名」

 

 「特殊部隊十二名」

 

 「戦車一台、装甲車一台」

 

 「人的被害と僅かな破壊のみで基地を制圧しています」

 

 男は淡々と読み上げる。

 

 「戦果だけなら、タイラントを大きく上回っています」

 

 別の幹部が腕を組んだ。

 

 「問題はそこではない」

 

 「開発費だ」

 

 机へ一冊の分厚い資料が投げられる。

 

 「素体の確保に世界的フェンシング選手の誘拐」

 

 「脳神経の改造と制御チップの埋没」

 

 「特殊合金製レイピア」

 

 「専用栄養薬液の培養設備」

 

 「維持管理費」

 

 「一体当たりの製造費用はタイラント五体分を超えている」

 

 誰も反論しない。

 

 事実だった。

 

 「しかも運用時間は驚くほど短い」

 

 別の男が資料をめくる。

 

 「レイジウイルス由来の高代謝は改善し切れていない」

 

 「任務終了後は必ず回収し、休眠処置と栄養補給が必要」

 

 「継続戦闘能力は低い」

 

 「使い捨ての兵器としては、高価すぎる」

 

 会議室が再び静まり返る。

 

 やがて、最奥の席に座る老人がゆっくりと口を開いた。

 

 「そして、撃破されたと」

 

 モニターが切り替わる。

 

 そこには地下通路の最後の映像。

 

 ファントムが最速の刺突を放つ。

 

 それを紙一重で回避した男。

 

 そして。

 

 制御チップを正確に撃ち抜く一発。

 

 映像が停止する。

 

 老人は静かに呟いた。

 

 「完全に攻略されたのだ」

 

 部屋にいた全員が映像を見つめる。

 

 「まさか予備動作を見切る人間が存在するとは」

 

 「想定外でした」

 

 「それは違う」

 

 老人は即座に否定した。

 

 「想定しなかった我々の責任だ」

 

 老人は立ち上がり、窓の外を眺める。

 

 「兵器とは」

 

 「量産できて初めて兵器となる」

 

 「英雄一人を殺すためだけに、タイラント五体分以上の予算を使う兵器など、商品ではない」

 

 沈黙。

 

 老人はゆっくりと振り返る。

 

 「ファントム計画はここで凍結とする」

 

 誰も異論を唱えなかった。

 

 「だが」

 

 老人の目が細められる。

 

 「興味深い収穫もあった」

 

 画面には次郎の顔写真が映し出される。

 

 《有栖次郎》

 

 《Tウイルス完全適応者》

 

 《レイジウイルス完全適応確認》

 

 老人は写真を見つめながら、小さく笑った。

 

 「兵器は敗れた」

 

 「だが、我々は彼という新たな研究対象を得た」

 

 その一言で、会議室の空気が変わる。

 

 男たちは一斉に次郎のデータへ視線を向けた。

 

 ファントム計画は終わる。

 

 しかし――アンブレラ社の興味は、すでに次の標的へ移っていた。

 

 ◇

 

 英国政府臨時対策本部。

 

 レイジウイルスによって英国本土の統治機能が崩壊した後、政府首脳は友好国の協力を受け、国外へ退避していた。

 

 異国の地に設けられた臨時政府施設。

 

 その地下会議室では、英国の未来を左右する会議が開かれていた。

 

 円卓を囲むのは首相をはじめ、国防大臣、保健大臣、財務大臣、外務大臣、情報局長官、軍参謀ら政府中枢の人間たちだった。

 

 スクリーンにはアメリカ政府から送られてきた報告書が映し出される。

 

 「アメリカ政府より正式な回答です」

 

 「アリス・ジロー氏から提供を受けた血液データの解析に成功」

 

 「レイジウイルスに対するワクチンおよび抗ウイルス剤がもう間もなく開発される見込みとの事」

 

 会議室がざわつく。

 

 「ようやくか……」

 

 「これで人類は助かる」

 

 研究員は続ける。

 

 「なお、アリス・ジロー氏は血液提供に際し、一切の対価を要求していません」

 

 「完全な無償協力とのことです」

 

 その報告に、何人かの閣僚は安堵した表情を浮かべた。

 

 「交渉の必要はないということか」

 

 「ありがたい話だ」

 

 しかし。

 

 財務大臣が静かに口を開く。

 

 「……それでは困りますな」

 

 室内が静まり返る。

 

 「アメリカ政府は、ラクーン事件の際、アリス・ジロー氏へ相応の報酬を支払っています」

 

 「今回の血液データについて報酬を支払わなければ、英国は何も支払わず成果だけを受け取ることになる」

 

 「確かにその通りです」

 

 財務大臣は頷いた。

 

 「ワクチンや抗ウイルス剤については、当然アメリカ政府へ対価を支払います」

 

 「しかし、それだけでは済みません」

 

 首相が眉をひそめる。

 

 「理由は」

 

 財務大臣は一拍置いて答えた。

 

 「国の体面です」

 

 「アメリカが正当な対価を支払った人物へ、英国は何一つ支払わない」

 

 「そのような前例を作れば、我が国はアメリカに借りを作ったままになります」

 

 外務大臣も続ける。

 

 「外交とは貸し借りです」

 

 「恩を受けるだけの国家は、必ず立場が弱くなる」

 

 「『英国は金も払えず、アメリカに頼って生き延びた国』と見られるようでは困ります」

 

 軍参謀総長が静かに頷いた。

 

 「我々は敗戦国ではない」

 

 「一時的に国土を失っただけだ」

 

 「国家としての矜持まで失う必要はない」

 

 首相はしばらく考え込む。

 

 やがて静かに口を開いた。

 

 「アメリカ政府への支払いとは別に」

 

 「アリス・ジロー氏個人へ、英国政府として正式な対価を支払う」

 

 「これは謝礼ではない」

 

 「国家間の均衡を保つための支払いだ」

 

 財務大臣が満足そうに頷く。

 

 「それでこそ英国です」

 

 「善意には甘えない」

 

 「受けた利益には、国家として正当な対価を支払う」

 

 異論を唱える者はいなかった。

 

 これは一人の英雄へ報いるためではない。

 

 英国という国家が、同盟国アメリカに軽く見られないため。

 

 そして、大国としての誇りを守るための決定だった。

 

 ◇

 

 事件終息から数週間後。

 

 穏やかな朝だった。

 

 リビングでは、エレンが食後の紅茶を淹れ、次郎は新聞へ目を通している。

 

 そんな静かな時間を破るように、玄関のチャイムが鳴った。

 

 「私が出るわ」

 

 エレンは立ち上がり、玄関へ向かう。

 

 扉を開けると、配達員が一通の封筒を差し出した。

 

 「アリス・ジロー様宛のお届け物です」

 

 「ありがとうございます」

 

 封筒を受け取り、リビングへ戻る。

 

 「アリス宛にお手紙よ」

 

 「俺に?」

 

 次郎は新聞を畳み、封筒を受け取った。

 

 差出人には英国政府の紋章が印刷されている。

 

 「英国政府……」

 

 嫌な予感を感じながら封を切る。

 

 中から現れたのは、一通の手紙と、一枚の小切手だった。

 

 次郎は何気なく小切手へ視線を落とす。

 

 その瞬間、動きが止まる。

 

 「……」

 

 静かな沈黙が流れた。

 

 「どうしたの?」

 

 エレンが不思議そうに覗き込む。

 

 次郎は何も言わず、小切手を差し出した。

 

 受け取ったエレンは金額を見た瞬間、思わず息を呑む。

 

 「えっ……!?」

 

 「こ、これ……」

 

 桁を数え直す。

 

 一度では信じられず、もう一度数える。

 

 それでも間違いではなかった。

 

 思わず次郎の顔を見る。

 

 視線は自然と次郎へ向く。

 

 当の本人はソファへ腰掛けたまま、静かに額へ手を当てていた。

 

 「……困った」

 

 ぽつりと呟く。

 

 「ありがたいのは間違いないが」

 

 「ラクーン事件の時もそうだったが、急にこんな大金を渡されても使い道が思いつかない」

 

 そう言って、小切手をテーブルへ置く。

 

 ラクーン事件の後、アメリカ政府から受け取った報酬だけでも十分すぎるほどだった。

 

 そこへ今度は英国政府からも、同じように莫大な金額が送られてきた。

 

 普通なら喜ぶところなのだろう。

 

 しかし次郎は、本気で途方に暮れていた。

 

 「いっそ何処かに寄付でもするか……」

 

 真剣に悩む次郎を見て、エレンは思わず吹き出した。

 

 「ふふっ」

 

 「そんなことで困る人、アリスくらいだよ」

 

 部屋には、ようやく事件を乗り越えた者たちの穏やかな笑い声が広がった。

 

 その時だった。

 

 エレンは何かを思い付いたように顔を上げる。

 

 「……そうだ!」

 

 「私に良い考えがあるわ!」

 

 次郎は顔を上げる。

 

 「何だ?」

 

 エレンはいたずらっぽく微笑んだ。

 

 「そのお金、とっても素敵な使い道があると思うの」

 

 次郎は苦笑しながら肩をすくめる。

 

 「……聞くだけ聞こうか」

 

 その返事を聞いたエレンは、嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。

 

 「私ね、この事件が終わってからずっと考えてたの」

 

 エレンはゆっくりとソファへ座り直す。

 

 「ラクーンシティも、この前のイギリスも」

 

 「家族を亡くした人がたくさんいる」

 

 「家も仕事も、生きる希望まで失った人だっている」

 

 次郎は静かに耳を傾ける。

 

 エレンは真っ直ぐ次郎を見つめた。

 

 「私が生き残れたのはアリスやクレアが助けてくれたから」

 

 「でも、助からなかった人もたくさんいる」

 

 「だから今度は、私が誰かを助ける側になりたい」

 

 その瞳には、もう事件当初の弱さはなかった。

 

 次郎は何も言わず続きを促す。

 

 「このお金を元手に、人を助ける組織を作る」

 

 「被害者や遺族同士が支え合えて、バイオテロの被害に遭った人を助けられる場所」

 

 「そして、二度と同じ悲劇を繰り返させないために活動する組織」

 

 少し照れくさそうに笑う。

 

 「もちろん、一人じゃ無理」

 

 「だからラクーン事件の遺族や、イギリスで家族を亡くした人たちにも声を掛けたい」

 

 「きっと同じ思いの人はいるはずだから」

 

 次郎はしばらく黙っていた。

 

 やがて小さく笑う。

 

 「寄付より、よほど有意義な使い道だな」

 

 エレンの表情がぱっと明るくなる。

 

 「本当?」

 

 「ああ」

 

 「これは俺の金じゃない」

 

 「命を懸けた結果として、多くの人から託された金だ」

 

 「その金で、さらに多くの命を救えるなら、その方が意味がある」

 

 エレンは嬉しそうに何度も頷いた。

 

 「ありがとう、アリス!」

 

 それからの数か月、エレンは世界中を飛び回った。

 

 ラクーン事件で家族を失った遺族。

 

 英国レイジウイルス事件で全てを失った生存者。

 

 医師、弁護士、報道関係者、元警察官、そしてバイオテロを憎む多くの人々。

 

 彼ら一人ひとりと対話を重ね、協力を呼び掛けた。

 

 次郎は表舞台へ立つことはなかった。

 

 必要な資金を提供し、危険な地域への同行や護衛を引き受けるだけだった。

 

 やがて、その活動は世界各地の賛同者を集めていく。

 

 そして――。

 

 バイオテロ被害者支援団体

 

 『テラセイブ(TerraSave)』

 

 その名は、世界中へ広がっていくことになる。

 

 その設立趣意書の最後には、こう記されていた。

 

 『悲劇を忘れない。生き残った者には、生き残った者にしかできない使命がある』

 

 後に世界最大のバイオテロ被害者支援組織となるテラセイブは、この静かな朝の小さな会話から始まったのである。

 

 

――第二章・完――

 

 




ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!おかげさまで、無事に第二章を完結させることができました。
日頃から頂いている応援、感想、そして☆評価が日々の執筆の大きな原動力になっています。
今後の更新について明日から三日間、英国の後日談を18時に投稿してから休みに入ります。
第三章自体はすでに書き上がっているのですが、読者の皆様により楽しんでいただけるよう、クオリティ向上のための手直しと修正の期間を数日ほどいただきたいと考えております。

ちなみにこの世界では28日後の本編がこれから始まりますが、ワクチンが開発されるので28週後には続きません。
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