元殺し屋がバイオ事件に巻き込まれる話   作:オッパッピー

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本日一度目の投稿。
原作Re4でサドラーからアンバーが排出された際にケースに入っていたのが謎だったので勝手に改変しています。
アンバーこと支配種プラーガは宿主から排出されて危機的状況に陥ると琥珀のような謎物質を分泌して全身を覆い硬化、眠りについて死を免れるという独自解釈です。



Chapter4 夏の夜の夢 Part2

 研究室を出た次郎とエレンは、地下通路を抜けていった。

 

 島の各所から怒号が響いている。

 

 だが、その数は数時間前とは比べ物にならないほど少なくなっていた。

 

 教団の戦力は、ほとんど壊滅している。

 

 次郎は度々振り返り、エレンをエスコートする。

 

「行こう」

 

「ええ」

 

 二人はそのまま脱出地点へ向かった。

 

 島の南側。

 

 地下港へ続く洞窟の中には、二台の水上バイクが残されていた。

 

 次郎は周囲を確認する。

 

 敵の気配はない。

 

「これなら問題なく脱出できる」

 

 エレンは水上バイクへ視線を向けた。

 

「これに二人で乗るのよね?」

 

「ああ」

 

 次郎が一台へ跨る。

 

 エンジンを始動する。

 

 低い駆動音が洞窟へ響いた。

 

 エレンも後部座席へ腰を下ろす。

 

「しっかり掴まっていろ」

 

「はい」

 

 エレンは次郎の腰へ腕を回し、ぴたりと体を密着させた。

 

 その瞬間。

 

 ――ドォンッ!!

 

 遠くで大きな爆発音が響いた。

 

 二人が同時に振り返る。

 

 島の奥。

 

 研究施設の方角からだった。

 

 続いて。

 

 ――ドォンッ!!

 

 さらに爆発。

 

 銃声。

 

 そして、人間のものとは思えない咆哮。

 

 次郎は静かに目を細めた。

 

「始まったな」

 

「……レオンさん」

 

 エレンも不安そうに呟く。

 

 次郎は答えなかった。

 

 だが、何が始まったのかは分かっている。

 

 最後の戦い。

 

 レオン・S・ケネディと、オズムンド・サドラー。

 

 島に残された最後の決着だった。

 

「行こう」

 

 次郎がアクセルを開くと、水上バイクが勢いよく走り出す。

 

 洞窟の出口へ向かって加速していく。

 

 エレンは次郎へしっかりとしがみついた。

 

 背後では、なおも爆発音が響いていた。

 

 やがて洞窟を抜ける。

 

 眼前に広がるのは、月明かりに照らされた夜の海。

 

 次郎は一度だけ振り返った。

 

 遠くに見える孤島。

 

 その中心から、再び爆発音が響き、黒煙が立ち上っているのが見えた。

 

「……任せたぞ、レオン」

 

 小さく呟く。

 

 そして前を向く。

 

 水上バイクは夜の海を切り裂き、島から遠ざかっていった。

 

 ◇

 

 ――ドォンッ!!

 

 最後の一撃が、礼拝堂全体を揺るがした。

 

「ぐおおおおおおッ!」

 

 サドラーの巨体が大きく仰け反る。

 

 次の瞬間。

 

 巨大な身体が崩れ落ちた。

 

 轟音。

 

 床へ叩き付けられた衝撃が礼拝堂全体へ伝わる。

 

「……終わった……」

 

 レオンは荒い息を吐いた。

 

 だが、その身体も限界だった。

 

 プラーガ除去を終えたばかり。

 

 そこへサドラーとの死闘。

 

 最後の攻撃に全ての力を使い果たしていた。

 

 足元がふらつく。

 

「くっ……」

 

 レオンはその場へ倒れ込んだ。

 

 その直後だった。

 

 崩れ落ちたサドラーの身体が、大きく痙攣した。

 

「……?」

 

 レオンが僅かに顔を上げる。

 

 サドラーの胸部が大きく膨れ上がる。

 

 次の瞬間。

 

 ――ズルッ。

 

 何かが体内から這い出してきた。

 

 サドラーの身体から押し出されたのは、一匹の異形の寄生生物だった。

 

 支配種プラーガ。

 

 通常のプラーガとは明らかに異なる姿をした、特殊な個体だった。

 

 それは剥き出しのまま床へ落ちる。

 

 ベチャッ。

 

 身体を震わせながら、必死に蠢き始めた。

 

「……なんだ……これ……」

 

 レオンは霞む視界で、その異形を見つめる。

 

 宿主を失ったにもかかわらず、プラーガはまだ生きている。

 

 だが。

 

 その動きに明らかな変化が現れた。

 

 まるで、自らの置かれた状況を理解したかのように。

 

 支配種プラーガの身体から、琥珀色の液体が滲み出した。

 

「……?」

 

 それは徐々に量を増していく。

 

 粘り気のある謎の物質が、プラーガの全身を覆っていく。

 

 まるで自らを包み込むように。

 

 琥珀色の物質は瞬く間に硬化を始めた。

 

 表面が硬くなる。

 

 さらにその上から新たな物質が分泌され、厚みを増していく。

 

 やがて。

 

 そこにいたのは、琥珀のような物質に全身を覆われた異形の寄生生物だった。

 

 先ほどまで激しく蠢いていた身体が、完全に動きを止める。

 

 静寂。

 

 レオンは目を細めた。

 

「……死んだのか……?」

 

 違う。

 

 レオンには理解する事ができないが、死んだのではない。

 

 宿主を失い、危機的状況へ陥った支配種プラーガが、生存本能によって自らを硬化させたのだ。

 

 活動を停止し、長期間の休眠状態へ移行する。

 

 そうすることで、宿主を失った環境でも死を免れる。

 

 ただ、目の前にある琥珀のような物体が、先ほどまで生きて動いていた寄生生物だということだけはレオンにも分かった。

 

 その時。

 

 コツ。

 

 静かな足音が近付いてきた。

 

 レオンは僅かに顔を上げる。

 

「……エイダ……?」

 

 エイダ・ウォンが姿を現した。

 

 彼女は倒れているレオンを一瞥する。

 

 そして、その傍らに転がっている琥珀状の物体へ視線を向けた。

 

「……ようやく見つけた」

 

 エイダがゆっくりと近付く。

 

 琥珀状に硬化した支配種プラーガを拾い上げる。

 

 手の中で僅かに重さを確かめる。

 

 間違いない。

 

 これが今回の任務の目的だった。

 

「アンバー……」

 

 エイダは小さく呟く。

 

 そして懐から金属製のシリンダー型ケースを取り出した。

 

 琥珀状のプラーガを慎重にケースへ収める。

 

 カチッ。

 

 ロックが閉じる。

 

 これで回収は完了した。

 

 エイダはケースを持ち上げる。

 

 内部では、琥珀のような硬質の外皮に包まれた支配種プラーガが、完全な休眠状態で眠っている。

 

 レオンが僅かに目を開く。

 

「それが……目的か……」

 

「ええ」

 

「それは何なんだ……?」

 

 エイダはケースへ視線を落とす。

 

 そしてレオンを見る。

 

「悪いけど、それについて話すつもりはないわ」

 

「……相変わらずだな」

 

 レオンは苦笑する。

 

「あなたも相変わらずね」

 

 エイダは立ち上がる。

 

 手には、アンバーの入ったケース。

 

「じゃあね、レオン」

 

「……ああ」

 

 エイダは踵を返す。

 

 崩壊していく礼拝堂を背に、静かに歩き出した。

 

 ◇

 

 夜明けの空を、一機のヘリコプターが飛んでいた。

 

 眼下には、徐々に遠ざかっていく孤島。

 

 エイダは座席へ腰を下ろし、隣に置かれたケースへ視線を向けた。

 

 金属製のシリンダー型ケース。

 

 その内部には、琥珀のような物質に全身を覆われ、休眠状態となった支配種プラーガが収められている。

 

 ――アンバー。

 

 今回の任務における目的だった。

 

 エイダは耳へ装着した通信ヘッドセットへ手を伸ばした。

 

 数秒後。

 

 通信回線が開いた。

 

『報告を』

 

 聞き慣れてしまった男の声。

 

 アルバート・ウェスカーだった。

 

「アンバーは確保したわ」

 

「任務は成功」

 

『ご苦労』

 

 淡々としたやり取り。

 

 だが、エイダはすぐには通信を切らなかった。

 

「……一つ、言っておくわ」

 

『何だ』

 

「エレン・クロフォードの件」

 

 通信の向こうが僅かに沈黙する。

 

「あなたたちが彼女を誘拐したことが発覚するのは、時間の問題よ」

 

『……』

 

「英国で起きた事件の生存者」

 

「テラセイブの幹部」

 

「そんな人物がスペインの教団に誘拐された」

 

「捜査されれば、いずれ組織まで辿られる」

 

『その程度のことは承知している』

 

 返ってきた声には、動揺がない。

 

 エイダは小さく息を吐いた。

 

「そう」

 

 数秒の沈黙。

 

 エイダは膝元のケースへ視線を落とした。

 

「……アンバーについて聞きたいことがある」

 

『何だ』

 

「これが実用化された場合」

 

「今後、何人が犠牲になると思っているの?」

 

『数十億だ』

 

「……」

 

 エイダの表情が固まる。

 

「数百万人……ではなく?」

 

『数十億だ』

 

 淡々とした返答。

 

『俺の計画に使用されれば、それだけの被害が出ても不思議ではない』

 

「……そう」

 

 短い返事。

 

『何か問題でも?』

 

「いいえ」

 

 それ以上は答えなかった。

 

『ならばアンバーを指定地点へ運べ』

 

「……了解」

 

 エイダはヘッドセットの通信スイッチへ指を触れる。

 

 通信が切れた。

 

 機械的な電子音だけが耳元に残る。

 

 エイダはしばらく無言のまま座っていた。

 

 膝の上にはアンバーの入ったケース。

 

 その中には、世界を変える可能性を持つ支配種プラーガが眠っている。

 

「数十億……」

 

 小さく呟く。

 

 その数字が頭から離れない。

 

 そして、もう一つ。

 

 あの男の姿が脳裏に浮かぶ。

 

 黒いスーツ。

 

 冷たい瞳。

 

 彼が教団の施設を一人で突破していく姿を思い浮かべる。

 

 プラーガによる精神支配すら受け付けず、教団そのものを敵に回しても生き残った男。

 

「……アリス」

 

 エイダは目を閉じる。

 

「組織は、あの男を利用できると思っている」

 

 だが、違う。

 

 あの男を敵に回すことが、どれほど危険なのか。

 

 今回の島で、それを嫌というほど見せつけられた。

 

「……あれを敵に回す気で」

 

 エイダはアンバーのケースを見る。

 

「そのうえで、数十億人を犠牲にする?」

 

 静かに息を吐く。

 

「正気じゃないわね」

 

 エイダは立ち上がった。

 

 操縦席へ向かう。

 

「どうした?」

 

 操縦士が振り返る。

 

 エイダは腰のホルスターへ手を伸ばす。

 

 拳銃を抜き、操縦士へ銃口を向ける。

 

「進路を変えて」

 

「……エイダ?」

 

「指定された場所には行かない」

 

「だが――」

 

「今すぐ」

 

 冷たい声だった。

 

「行き先は?」

 

「それは私が決めるわ」

 

 操縦士は黙り込む。

 

 やがて、操縦桿へ手を戻した。

 

「……分かった」

 

 ヘリの進路が変わる。

 

 組織から指定されていた航路から離れていく。

 

 エイダは拳銃を下ろす。

 

 そして窓の外へ視線を向けた。

 

 もう島は見えない。

 

 それでも、あの島で再会した男の姿だけは、鮮明に記憶へ残っている。

 

 有栖次郎。

 

 敵に回してはいけない男。

 

 そして、エイダはケースへ視線を落とす。

 

 数十億もの人間を犠牲にしかねないアンバー。

 

「……次に会う時は」

 

 小さく呟く。

 

「敵じゃないといいわね」

 

 ヘリは夜明けの海を進んでいく。

 

 組織の指定した目的地から離れて。

 

 その瞬間。

 

 エイダ・ウォンは、長く身を置いてきた組織との決別を選んだ。

 

 




最終ステージは鉄骨の足場ではなく礼拝堂に変更。

因みにこのサドラーは次郎に一度追い詰められているのでロケランが無くても倒せる状態になっています。
頑張ればHARDCOREモードでもロケラン無しで討伐ができるかも知れません。
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