本日二度目の投稿です。
ガンッ!
警備員室の扉が激しく揺れた。
続けて、何かを引きずるような足音が廊下へ響く。
ズル……。
ズル……。
レオンが反射的に拳銃を構える。
「くそ! こいつらどこから湧いてきやがった!」
警備員室の扉が勢いよく開かれ、血まみれの警官が姿を現した。
制服は引き裂かれ、首元は無残に食いちぎられている。
その後ろから、さらに二体。
警備員室の奥にもまだ人影が見えた。
「ガァァァ……」
次郎はリボルバーを構えた。
「レオン!」
「俺が奴らを処理する!」
「君はその警官を連れて下がってくれ!」
「了解!」
パンッ!
先頭の警官ゾンビの頭部が砕ける。
その隙に二体目が飛び出す。
レオンが素早く負傷した警官へ駆け寄り、肩を貸した。
「肩を貸す! 掴まれ!」
警官は苦しそうに頷く。
「す、すまない……」
しかし、その直後――
廊下の奥からも唸り声が聞こえてきた。
「アアァァ……」
倒れていた警官たちが次々と立ち上がっていく。
一体。
二体。
三体。
四体。
さらに奥からも姿を現す。
レオンの表情が険しくなる。
「くそ! このままじゃ弾が足りない!」
次郎は即座に判断した。
「全部を倒す必要はない!」
「危ない奴だけ処理する!」
三人は来た道を駆け出す。
だが、曲がり角から新たなゾンビが現れた。
次郎は迷わず一発。
パンッ!
ゾンビが倒れる。
その間にレオンは警官を支えながら前へ進む。
「右!」
レオンの叫びと同時に、右側の部屋から制服姿のゾンビが飛び出した。
レオンは警官を支えたまま半歩身体を開き、拳銃を構える。
パンッ!
頭部を撃ち抜かれたゾンビが床へ崩れ落ちる。
「このまま行きます!」
「ああ!」
シャッターが見えてきた。
しかし、その前にも二体のゾンビが立ちはだかる。
次郎とレオンは互いに視線を交わした。
二人の銃声がほぼ同時に響く。
パンッ!
パンッ!
二体は同時に倒れ、道が開けた。
レオンが急いでシャッターの下へ伏せる。
「先に彼を!」
次郎も警官を支えながらシャッターの下へ押し込む。
そのままレオンが反対側から腕を掴み、引き上げた。
次郎も続いて身体を滑り込ませる。
ゾンビの手が足首へ伸びる。
あと数センチ。
間一髪でシャッターを抜けた。
レオンは全身の力を込め、シャッターを押し下げる。
ガシャンッ!
重い音と共に通路が完全に閉ざされた。
シャッターの向こうから無数の手が叩き付けられる。
ガンッ!
ガンッ!
ガンッ!
しかし、こちら側へ来ることはできない。
三人が振り返ると、そこには拳銃を構えた一人の警官が立っていた。
鋭い眼差し。
制服に乱れはあるものの、目立った負傷はない。
その背後では店長が客たちを守るように立ってはいるが、全員無事だった。
警官は三人を見て、小さく息を吐く。
「無事だったか」
レオンは警察手帳を見せながら敬礼する。
「レオン・S・ケネディです!」
「本日付でラクーン市警へ配属予定でした!」
警官はゆっくり頷いた。
「マービン・ブラナー巡査部長だ」
「この署で無事な警官は……今のところ俺たちだけらしい」
しかし、そこでマービンは警官の左腕を見る。
噛み傷を見た瞬間、表情がわずかに曇った。
それでも何も言わず、一歩前へ歩み寄る。
警官は苦笑した。
「マービン...頼みがある」
「俺が変わったら......迷わず撃ってくれ」
レオンが顔を上げる。
「まだ助かるかもしれません!」
警官は首を横に振った。
「いや……」
「自分の体だ。さすがにもう分かる」
「さっきから寒気が止まらないんだ」
「頭も……ぼんやりしてきた」
マービンは何か言おうとする。
しかし言葉にならない。
長年一緒に働いてきた同僚だった。
何度も現場を共に潜り抜けてきた仲間だった。
「すまない……」
それしか言えなかった。
警官は静かに笑う。
「謝るな」
「最後に……仲間に会えただけで十分だ」
その直後だった。
警官の体が大きく震えた。
「ぐっ……!」
膝から崩れ落ちる。
呼吸が急激に乱れ、額から大量の汗が流れ落ちた。
次郎は静かにリボルバーを抜く。
レオンも拳銃を握るが、その手は震えていた。
マービンだけは、目を閉じたまま動かなかった。
静かな廊下に、警官の荒い呼吸だけが響く。
やがて警官の呼吸は急速に弱まっていった。
「……マービン」
かすれた声が廊下へ響く。
マービンは静かに膝をつき、同僚の肩へ手を置いた。
「ここにいる」
警官は苦しそうに息を吐きながら、かすかに笑う。
「最後まで……警官でいられて……よかった」
その一言を最後に、体から力が抜けた。
静寂。
誰も口を開かなかった。
レオンは拳銃を握る手に力を込める。
仲間の死。
その現実を受け入れ切れずにいた。
マービンは帽子を脱ぎ、胸の前で握り締める。
「……安らかに眠れ」
短く祈りを捧げる。
しかし、次郎だけは視線を逸らさなかった。
静寂は長くは続かなかった。
ぴくり――。
右手の指先が小さく動く。
次郎の表情が変わる。
「レオン、下がってくれ」
レオンもその異変に気付き、一歩後ろへ下がる。
やがて警官――エリオットは、不自然な動きでゆっくりと上体を起こした。
白く濁った瞳。
口元から垂れる血。
喉の奥から獣のような唸り声が漏れる。
「ガァァ……」
マービンは帽子を取り、静かに目を閉じた。
「……エリオット」
かつての同僚の名を、小さく呼ぶ。
だが、その声に応える人間はもういなかった。
エリオットは唸り声を上げながら、最も近くにいたレオンへ歩き始める。
レオンは拳銃を構える。
しかし、その指は引き金を引けずにいた。
ほんの数分前まで言葉を交わした相手だった。
次郎はレオンの前へ半歩出る。
「俺がやる」
レオンは何も言えず、小さく頷いた。
パンッ――。
乾いた銃声がメインホールへ響く。
弾丸はエリオットの眉間を正確に撃ち抜いた。
エリオットはその場へ崩れ落ち、二度と動くことはなかった。
重苦しい沈黙が流れる。
マービンはゆっくりとエリオットの前へ歩み寄り、帽子を胸へ当てた。
「……よく、戦った」
「安らかに眠れ」
短く祈りを捧げると、静かに立ち上がる。
レオンは拳を強く握り締めた。
「巡査部長……」
「一体、この街で何が起きているんです?」
マービンは苦しげに首を横へ振る。
「分からん」
「市内で暴動が起きたという連絡は受けていた」
「だが、ここまでの事態になるとは誰も予想していなかった」
少し間を置いて続ける。
「噛まれた者が化け物になる理由も、事件の原因も、今の俺には分からない」
レオンは唇を噛んだ。
「そんな……」
マービンはレオンの胸ポケットから覗く青い手帳へ視線を向ける。
「その手帳……エリオットから受け取ったんだな」
「はい」
レオンは手帳を取り出して見せる。
マービンは静かに頷いた。
「あいつは署内の構造を調べ回っていた」
「正規の出入口はほとんど封鎖されている」
「だから、隠し通路が残っていないか探していたんだ」
レオンは手帳を見つめる。
「隠し通路……」
「ああ」
マービンは女神像の方へ目を向けた。
「この警察署は昔、美術館だった建物を改装したものだ」
「増築や改築を何度も繰り返したせいで、古い通路や隠し部屋が今でも残っている」
「エリオットは、そこに脱出できる道があると考えて調べていた」
レオンは力強く頷く。
「なら、その続きを俺たちがやります」
「手帳の内容を確認しながら探索しましょう」
次郎も静かに頷いた。
マービンは二人を真っ直ぐ見据えた。
「ああ」
「俺はここで生存者を守りながら、端末と監視カメラで情報を集める」
「探索は二人に任せる」
マービンは受付カウンターの奥へ歩き、鍵の掛かったロッカーを開けた。
中から一本のポンプアクション式ショットガンと、警察支給のコンバットナイフを取り出す。
ショットガンの薬室を開き、装填を確認すると、そのままレオンへ差し出した。
「持っていけ」
レオンは驚いたように目を見開く。
「巡査部長……」
「前線へ出るのは君たちだ」
「拳銃だけじゃ心許ないだろう」
レオンは両手でショットガンを受け取った。
ずしりとした重量が腕へ伝わる。
「ありがとうございます」
マービンは続けてコンバットナイフも差し出す。
「近付かれた時は銃より役に立つ」
「無くすなよ」
レオンは静かに頷き、腰のホルダーへ収めた。
「大事に使います」
マービンは満足そうに頷くと、受付端末へ向き直った。
「マービンさん」
「皆の護衛を頼みます」
マービンは店長と客たちを見回し、力強く頷いた。
「ああ」
「ここは俺に任せろ」
マービンは非常用無線機の電源を入れ、署内の監視システムを起動する。
「何か分かれば、すぐ無線で伝える」
次郎は静かに頷いた。
「お願いします」
レオンは胸ポケットからエリオットの手帳を取り出した。
二人は受付カウンターへ並び、ページをめくる。
そこには署内の見取り図だけではなく、エリオット自身が書き込んだ大量のメモが残されていた。
『女神像――三つのメダル。』
『獅子・乙女・ユニコーン。』
『地下への隠し通路を開く鍵。』
『古い美術館時代の仕掛けらしい。』
さらにページをめくる。
それぞれの像の場所。
館内の簡単な地図。
立ち入り不能区域。
危険箇所。
エリオットが命懸けで集めた情報が、細かく書き込まれていた。
レオンはゆっくり手帳を閉じる。
「まずは、この三つのメダルを集めましょう」
次郎も女神像を見上げる。
「あれが地下への入口なら、ここに留まる理由はない」
マービンは監視モニターから目を離さず口を開いた。
「西側の作戦会議室を抜ければ獅子像」
「二階へ上がればユニコーン像」
「東側には乙女像がある」
「だが、どこも安全じゃない」
「気をつけてくれ」
次郎はリボルバーのシリンダーを確認し、静かに閉じた。
「大丈夫だ。問題ない」
レオンはショットガンを肩へ担ぐ。
「行きましょう」
二人は女神像を一度見上げると、最初のメダルを求めて西側廊下へ足を踏み出した。
もしもマービンが負傷していなかったらというIFルートです。
彼の生存に不満を持つ人もいるかも知れませんが、無闇に原作死亡キャラを生かすつもりはないのでご容赦を。
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