元殺し屋がバイオ事件に巻き込まれる話   作:オッパッピー

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本日一度目の投稿です。
18時に二度目の投稿をする予定です。


Chapter3 警察署 Part3

 西側廊下は、メインホールとは別世界のような静けさに包まれていた。

 

 受付の灯りも届かず、非常灯だけが赤黒い廊下をぼんやりと照らしている。

 

 壁には飛び散った血痕。

 

 床には薬莢と書類が散乱し、警官たちが最後までここで応戦していたことがうかがえた。

 

 次郎は先頭でゆっくりと歩く。

 

 リボルバーは構えたまま。

 

 レオンはショットガンを背にして拳銃を構え、周囲へ鋭い視線を向ける。

 

 数メートル進んだところで、次郎が足を止めた。

 

 「……待ってくれ」

 

 レオンも立ち止まる。

 

 次郎は床を指差した。

 

 そこには血だまりの中へ、新しい足跡がいくつも続いている。

 

 「新しいな」

 

 「誰かが動いてる……」

 

 レオンも頷く。

 

 「さっきまで誰かがいたってことですね」

 

 二人はさらに慎重に歩を進めた。

 

 やがて作戦会議室の扉が見えてくる。

 

 半開きになった扉の隙間から、かすかな物音が聞こえた。

 

 カリ……。

 

 カリカリ……。

 

 まるで何かを噛み砕くような音だった。

 

 レオンが拳銃を構える。

 

 次郎は首を横へ振った。

 

 「俺が見る」

 

 静かに扉へ近付き、足でゆっくりと押し開ける。

 

 ギィ……。

 

 部屋の中央には、警官の遺体へ群がる二体のゾンビがいた。

 

 制服姿の警官と、市民らしい中年男性。

 

 二体とも夢中で遺体を喰らい、まだこちらへ気付いていない。

 

 次郎は小さく囁く。

 

 「一体ずつやろう」

 

 レオンも頷いた。

 

 「了解」

 

 二人は左右へ分かれる。

 

 次郎は静かに間合いを詰め、リボルバーの銃口を警官ゾンビの後頭部へ向けた。

 

 レオンも中年男性の頭へ拳銃を合わせる。

 

 次郎が目だけで合図を送る。

 

 

 パンッ!

 

 パンッ!

 

 二つの銃声が重なった。

 

 警官ゾンビと中年ゾンビの頭部が同時に弾け飛ぶ。

 

 室内は再び静寂に包まれた。

 

 レオンは拳銃を構えたまま周囲を確認する。

 

 「クリア」

 

 次郎も頷く。

 

 「先へ進もう」

 

 二人は作戦会議室を抜け、その先にある階段へ視線を向けた。

 

 エリオットの手帳によれば、この階段を上がった先に獅子像がある。

 

 しかし、その暗闇の奥からは、何かが這うような不気味な音が微かに聞こえていた。

 

 カツ……。

 

 カツ……。

 

 まるで硬い爪が壁を叩くような音だった。

 

 二人は顔を見合わせる。

 

 まだ、その正体を知る者はいない。

 

 

 

 西側の探索は想像以上に過酷だった。

 

 作戦会議室を抜け、獅子像から最初のメダルを回収する。

 

 その後もエリオットの手帳を頼りに館内を巡り、二階のユニコーン像、東側の乙女像を目指して進み続けた。

 

 行く手を阻むゾンビは、その都度二人で連携して突破した。

 

 次郎が前衛で危険な個体を素早く排除し、レオンが死角を警戒しながら援護する。

 

 戦いを重ねるごとに、二人の息は自然と合っていった。

 

 ◇

 

 途中、外から何か巨大な物がぶつかる音を聞いて二階東側通路から非常階段に出て確認した時のこと。

 

 階下からフェンス越しに一人の女性が声をかけてきた。

 

「レオン!」

 

 聞き覚えのある声に、レオンは勢いよく階段の下を覗き込む。

 

「クレア!」

 

 フェンスの向こうに立っていたのは、赤いジャケットを羽織った女性、クレア・レッドフィールドだった。

 

「無事で良かった」

 

「あなたも!」

 

「大丈夫?ヘリコプターが急に現れて」

 

「ああ、なんとか無事だ」

 

 レオンは思わず笑みを浮かべる。

 

「そのポケットに鍵は、入ってないわよね?」

 

「ああ、あいにく無いな」

 

「で?君は大丈夫?」

 

「ええ、私は大丈夫」

 

 クレアはレオンの隣に立つ次郎へ一瞬だけ視線を向けた。

 

「レオン、そちらの方は?」

 

 レオンはすぐに紹介する。

 

「彼はアリス」

 

「ここへ来る途中で知り合ったんだ」

 

「何度も助けてもらっている」

 

 次郎は周囲へ視線を配ったまま、軽く会釈する。

 

「有栖次郎です」

 

「よろしく」

 

 それ以上は口を挟まない。

 

 今は二人が無事を確かめ合う時間だと分かっていた。

 

 クレアも小さく頷き返す。

 

「私はクレア・レッドフィールド」

 

「よろしく」

 

 その直後――。

 

 轟音とともに、二階へ突き刺さっていたヘリコプターが爆発炎上した。

 

 ドォォンッ!

 

 熱風が非常階段を吹き抜ける。

 

 次郎は反射的に二人の前へ半歩出て爆風へ備える。

 

「ここは危ない」

 

「戻るぞ! レオン」

 

 レオンもすぐに頷いた。

 

「クレア!」

 

「また会おう!」

 

 クレアは笑顔で応える。

 

「ええ!」

 

「二人とも気を付けて!」

 

 そう言い残し、クレアは奥の通路へ駆け去っていった。

 

 レオンはその背中を見送り、小さく息を吐く。

 

「……よかった」

 

 次郎は何も言わず、静かに周囲を見回す。

 

 爆発音で署内の空気が一変していた。

 

「行こう」

 

 次郎はその一言だけを告げ、メインホールへの帰路についた。

 

 ◇

 

 その後も探索は続いた。

 

 エリオットの手帳を頼りに仕掛けを解き、最後の乙女のメダルを回収する。

 

 これで三枚のメダルが全て揃った。

 

 レオンはポケットの中の三枚を確認し、小さく笑う。

 

「これで地下へ行ける」

 

 次郎も頷いた。

 

「メインホールへ戻ろう」

 

 

 

 二人は静まり返った二階東側通路を歩いていた。

 

 先ほどのヘリコプターの爆発で、館内には薄く煙が流れ込んでいる。

 

 崩れた天井からは火の粉が舞い、焦げた臭いが鼻を突いた。

 

 レオンはショットガンを抱えながら、小声で呟く。

 

「さっきの爆発……」

 

「署の中まで影響が出てる」

 

 次郎は周囲を警戒したまま答える。

 

「音も大きかった」

 

「今まで動かなかったものまで動き出すかもしれない」

 

 レオンは小さく頷いた。

 

「急ぎましょう」

 

 二人は足音を抑えながら通路を進む。

 

 その時だった。

 

 カラン――。

 

 どこかで薬莢が床を転がるような、小さな金属音が響いた。

 

 二人は同時に足を止める。

 

 レオンが小声で尋ねる。

 

「……聞こえましたか?」

 

「ああ、聞こえた」

 

 次郎はリボルバーを静かに構える。

 

 しかし、それ以上物音はしない。

 

 ゾンビの唸り声も聞こえなかった。

 

 レオンは息を潜めたまま周囲を見回す。

 

「気のせい……か?」

 

 次郎は首を横に振る。

 

「違う」

 

「何かがいる」

 

 その言葉と同時に、天井から微かに何かが這う音が聞こえた。

 

 カリッ……。

 

 カリカリ……。

 

 まるで鋭い爪が天井を掻くような音だった。

 

 二人は反射的に天井を見上げる。

 

 だが、そこには何もいない。

 

 静寂だけが広がっている。

 

 レオンはショットガンを握り直した。

 

「姿が見えない……」

 

 次郎はゆっくりと辺りを見回す。

 

「不用意に撃つな」

 

「相手の位置が分からない」

 

 レオンは短く返事をした。

 

「了解」

 

 二人は背中合わせになるように立ち、それぞれ別方向を警戒しながら一歩ずつ前へ進む。

 

 館内は不気味なほど静かだった。

 

 聞こえるのは、自分たちの呼吸と、遠くで燃え続ける炎の音だけ。

 

 そして次の瞬間――。

 

 天井の暗闇から巨大な影が、二人の数メートル先へ静かに着地した。

 

 トサリ――。

 

 重いはずの体が信じられないほど小さな音しか立てない。

 

 レオンは思わず息を呑んだ。

 

「な、何だ……あれは」

 

 そこに立っていたのは、今まで見てきたゾンビとはまったく異なる異形だった。

 

 全身の皮膚は剥がれ落ち、赤黒い筋肉がむき出しになっている。

 

 頭部には目が存在せず、その代わりに脳が露出していた。

 

 異様に発達した前脚の先には、鎌のように長く鋭い鉤爪。

 

 長い舌がゆっくりと垂れ下がり、喉の奥から低い唸り声が漏れる。

 

「キィィ……」

 

 その姿を見た次郎の表情が険しくなる。

 

(動く死体じゃない)

 

(まったく別の化物だ)

 

 レオンはショットガンを構えた。

 

「撃ちます」

 

「待て」

 

 次郎が小さく制する。

 

 しかし、その一瞬で異形は壁を蹴り、一気に天井へ飛び移った。

 

 カッ!

 

 四肢を蜘蛛のように広げ、そのまま天井へ張り付く。

 

「くそ、速い!」

 

 二人は反射的に見上げた。

 

 異形は天井を這うように高速で移動している。

 

 カリッ……

 

 カリカリッ……

 

 鋭い鉤爪がコンクリートを引っ掻き、不気味な音が廊下へ響く。

 

 レオンはショットガンで追うが、その動きはあまりにも素早い。

 

 照準が追いつかない。

 

 異形を見失った二人の背後で動きを止めると、床へ飛び降りた。

 

 トサッ――。

 

 低く身を沈め、四肢を広げる。

 

 露出した筋肉が脈打ち、長い鉤爪が床を削った。

 

「キシャァァァッ!」

 

 異形の降り立った音に反応して二人は同時に振り向く。

 

 レオンはショットガンを構え直す。

 

「来る!」

 

 異形は獣のように床を蹴り、一瞬で間合いを詰めた。

 

 速い。

 

 振り抜かれた鉤爪が一直線にレオンを襲う。

 

 目で追うのがやっとだった。

 

 間に合わない。

 

 その瞬間だった。

 

「危ない!」

 

 次郎がレオンの肩を思い切り突き飛ばした。

 

 ザクッ!

 

 鉤爪が次郎の左肩から胸元を深く切り裂く。

 

「ぐっ……!」

 

 鮮血が飛び散り、次郎は壁へ叩き付けられた。

 

「アリスさん!」

 

 レオンが叫ぶ。

 

 異形は追撃せず、大きく跳び退くと壁を蹴り、再び天井へ張り付いた。

 

 カリカリカリッ……

 

 天井を高速で這い回りながら、次の獲物を狙っている。

 

「くそっ……こいつ、すばしっこい!」

 

 

 

 この時、異形の意識は完全にレオンへ向いていた。

 

 天井を這い回りながら、獲物との距離を測っている。

 

 カリッ……

 

 カリカリッ……

 

 レオンはショットガンを構えたまま、その姿を必死に追った。

 

「どこだ……」

 

 だが、一瞬。

 

 高い敏捷性に翻弄され、まだ経験の浅いレオンの視界から異形が消える。

 

 レオンが天井へ視線を向けたまま周囲を探した、その直後だった。

 

 トサッ――。

 

 異形はほとんど音を立てることなく、レオンの背後へ降り立つ。

 

 四肢を大きく広げ、低く身構える。

 

 長い鉤爪が床をゆっくりと擦った。

 

 レオンはまだ気付いていない。

 

 照準は依然として天井へ向けられていた。

 

 異形は静かに右腕を持ち上げる。

 

 次の一撃で仕留めるつもりだった。

 

 その時。

 

 先程まで壁にもたれていた筈の次郎が、静かに異形の背後から歩み寄っていた。

 

 左肩から血が流れ続けている。

 

 それでも表情一つ変えない。

 

 コンバットナイフを逆手に握り、足音も呼吸も殺して歩き出す。

 

 一歩。

 

 また一歩。

 

 異形との距離を詰めていく。

 

 意識は完全にレオンへ向いている。

 

 次郎の接近にはまったく気付かない。

 

 次郎は迷いなく踏み込む。

 

 コンバットナイフが露出した後頭部へ深々と突き刺さる。

 

 刃を引き抜かないまま、そのまま両手で首筋へ一気に切り裂いた。

 

 筋肉を断ち。

 

 腱を断ち。

 

 頸椎を砕きながら刃が深く食い込んでいく。

 

 異形の巨体が激しく痙攣する。

 

 なおも次郎は動きを止めない。

 

 確実に仕留めるため、首を切断する勢いで解体を続ける。

 

 異変に気付いたレオンが振り返った。

 

 そこには、異形の背後へ張り付き、無言のまま解体を続ける次郎の姿があった。

 

 異形は最後の力を振り絞るようにもがく。

 

 だが、すでに身体は言うことを聞かない。

 

 レオンは迷わずショットガンを構えた。

 

 銃口を露出した頭部へ押し当てる。

 

 ドォンッ!

 

 至近距離から放たれた散弾が頭部を粉砕する。

 

 異形はその場へ崩れ落ち、二度と動くことはなかった。

 

 次郎は静かにナイフを引き抜く。

 

 付着した血を軽く払うと、肩の傷を押さえながら一歩後ろへ下がる。

 

 レオンは息を呑んだまま、倒れた異形と次郎を交互に見つめていた。

 

 

 

 廊下を支配していた緊張が、ようやく静かに解けていく。

 

 レオンはショットガンを下ろすと、すぐに次郎のもとへ駆け寄った。

 

「アリスさん!」

 

 左肩から胸元にかけて走る鋭い裂傷。

 

 制服は血で赤く染まり、床へ雫が落ちている。

 

 レオンの表情が青ざめた。

 

「傷が深い……!」

 

 次郎は壁へ背中を預け、小さく息を吐く。

 

「心配するほどじゃない」

 

「急所は外れている」

 

「そんな傷に見えません!」

 

 レオンは救急ポーチを開き、止血帯とガーゼを取り出す。

 

「失礼します」

 

 傷口を確認すると、リッカーの鉤爪は肩から胸へ斜めに裂いていたものの、骨や肺までは達していないようだった。

 

 それでも出血量は決して少なくない。

 

 レオンは消毒を済ませ、圧迫しながら包帯を巻いていく。

 

「少し痛みます」

 

「構わない」

 

 包帯を巻き終えたレオンは、大きく息を吐いた。

 

「応急処置は終わりました」

 

「でも、このまま戦い続けるのは危険です」

 

 次郎は肩を軽く動かして感触を確かめる。

 

 鋭い痛みは走る。

 

 それでも腕は動く。

 

「まだ動ける」

 

「……本当に無茶な人ですね」

 

 レオンは苦笑しながら立ち上がった。

 

 その時だった。

 

 無線機から小さなノイズが流れる。

 

『……ザーッ……』

 

 続いて、聞き慣れた声が響いた。

 

『マービンだ。聞こえるか』

 

 レオンはすぐに無線機を取る。

 

「こちらレオンです!」

 

『監視カメラで見ていた』

 

『無事で何よりだ』

 

『それと、メダルは三枚そろったか?』

 

 レオンはポーチを軽く叩く。

 

「はい。三枚とも回収しました」

 

『よし』

 

『なら、すぐにメインホールへ戻れ』

 

『女神像の仕掛けを動かせば、地下への隠し通路が開くはずだ』

 

『さっきの爆発の影響で周囲も騒がしくなっている』

 

『これ以上ここへ留まるのは危険だ』

 

「了解しました」

 

 通信が途切れる。

 

 レオンは無線機を腰へ戻し、ショットガンを握り直した。

 

「戻りましょう」

 

 次郎も静かに頷く。

 

「ああ」

 

「地下へ行く」

 

 二人は肩を並べ、三枚のメダルを携えてメインホールへの帰路を急いだ。

 

 

 メインホールへ戻る道中、二人はこれ以上の敵と遭遇することはなかった。

 

 先ほどの戦闘音の影響か、廊下のあちこちからゾンビの唸り声は聞こえてくる。

 

 しかし、無理に戦う必要はない。

 

 次郎とレオンは物陰を利用しながら最短距離で移動を続けた。

 

 やがて見慣れた吹き抜けのメインホールが視界へ入る。

 

 受付カウンターの前では、店長たちが固まって待機していた。

 

 二人の姿を見つけると、店長は安堵の息を漏らす。

 

「無事だったか!」

 

 マービンも受付カウンターの奥から歩み寄ってきた。

 

 その視線はすぐに次郎の左肩へ向けられる。

 

「もしかして、噛まれたのか」

 

 次郎は首を横に振る。

 

「少し爪がかすっただけだ」

 

 レオンが苦笑する。

 

「その傷を『少し』とは言わないですよ」

 

 店長も顔をしかめた。

 

「あとでちゃんと休め」

 

 次郎は小さく笑うだけだった。

 

 マービンは二人の表情を見比べる。

 

「……その顔を見る限り、目的は果たせたようだな」

 

 レオンは胸ポケットから三枚のメダルを取り出した。

 

 獅子。

 

 ユニコーン。

 

 乙女。

 

 金色のメダルが照明を受けて鈍く輝く。

 

「全部そろいました」

 

 マービンは静かに頷く。

 

「よくやった」

 

 レオンは女神像の前へ歩き、エリオットの手帳を開く。

 

 刻まれた印を確認しながら、一枚ずつメダルをはめ込んでいく。

 

 カチッ。

 

 獅子。

 

 カチッ。

 

 ユニコーン。

 

 カチッ。

 

 乙女。

 

 三枚目が収まった瞬間だった。

 

 ゴゴゴゴゴ……。

 

 女神像の台座全体が低い地鳴りとともに震え始める。

 

 店内にいた全員が息を呑んだ。

 

「動いた……」

 

 石像の台座がゆっくりと左右へ開き、床が重々しい音を立てながら沈んでいく。

 

 やがて、その下から地下へ続く石造りの階段が姿を現した。

 

 冷たく湿った空気が、階段の奥から静かに吹き上がってくる。

 

 レオンは思わず呟いた。

 

「これが……隠し通路」

 

 マービンは静かに頷く。

 

「ああ」

 

「エリオットの推測は正しかった」

 

 次郎は暗い階段の奥へ目を向けた。

 

 光は届かず、その先がどうなっているのか分からない。

 

 だが、この警察署に留まるより、生き延びられる可能性は高い。

 

 その時、受付カウンターの端末から警告音が鳴り響いた。

 

 ピッ、ピッ、ピッ――。

 

 マービンが画面へ駆け寄る。

 

 監視カメラには、正門を突破して正面玄関へ押し寄せる大量のゾンビが映し出されていた。

 

 入口を叩く音は徐々に激しくなり、バリケードも限界に近づいている。

 

「もう時間がない」

 

 マービンは即座に判断した。

 

「全員、地下へ移動する!」

 

 店長は客たちへ振り返る。

 

「聞いたな! 一列になって進むんだ!」

 

 客たちは緊張した面持ちで頷き合う。

 

 マービンはショットガンを構え、階段の入口へ立った。

 

「俺が最後尾につく」

 

「万が一奴らが追って来ても、これで食い止める」

 

 レオンは安心したように頷いた。

 

「ありがとうございます、巡査部長」

 

 次郎も小さく頷く。

 

「全員で生き残りましょう」

 

 マービンは力強く答えた。

 

「ああ。そのために俺たちはここまで戦ってきたんだ」

 

 地下への階段を先頭で次郎が降り、その後ろにレオン、店長と客たちが続く。

 

 そして最後尾のマービンが扉を閉め、ショットガンを構えて警戒しながらゆっくりと歩き始めた。

 

 ラクーン市警察署のメインホールには、再び静寂だけが残されていた。

 

 

――Chapter3・完――

 




レオンが次郎に敬語なのは仕様です。
あくまで次郎は現地での協力者で恩人なので。
クレアにレオンがタメ口なのはレオンが恩人だからと認識しています。
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