らぶみーとぅー!~NTR性癖の幼馴染を満足させるため、僕は真実の愛を探す~ 作:大豆亭きなこ
図書室は本の匂いに溢れています。
実家の書庫は古い本ばかりだったので、少し黴臭かったのですが、図書室は清潔な、比較的新しい本の香りがします(書架の方に行くとそうでもないのですが)。
これを私なりに解釈すると、古い本はどんどん捨てられ、人気のない本もどんどん捨てられ、最低限の教養書と、学習教材、名作、あとは生徒に受ける流行りの本だけが残っていくのです。
だからこんなにも本がたくさんあるのにあの独特な香りがしないというわけです。
それはさみしいことではありますが、当然なのです。
だって学生は三年間しか在籍しないのです。どんどんと巣立ち、どんどんとフレッシュな新入生が入ってくるのです。新陳代謝です。それに迎合するのが学校の図書室ってやつの役割なのです。
世の中、変化っていうのは絶え間なく起こっていて、後悔しようと、喜ぼうと、前へと進んでいくのです。過去ってのは後ろに流れていって、わざわざ振り返らないと見えなくなってしまうのです。
私たちは変化や前進を肯定するしかないのです。
だって、私たちは不可逆ですし、人間ってのは未来に向かって、前に向かって進んでいくしか能がないのです。自身がやること、やらざるを得ないことを否定してしまったら、生きている意味がないのです。だから、その変化や前進が私にとって好ましくないものだとしても、肯定するしかないのです。
クーラーがゴォォと鳴って、私の髪を揺らします。
分厚い窓越しでも、閉め切っていたとしても、セミの鳴き声は意識すれば聞こえてきます。毎日毎日飽きもせず、よくやるものです。彼らの鳴き声を人間様の言葉に直すと「交尾ィ! 交尾ィ!」になるはずです。バカみたいですね。
あ、知ってましたか? セミのうんちって液体なんですよ。
七月になっても私はまだ図書委員なのでした。
どうにも、私が先輩といると騒がしくなることが図書委員会の担当教諭にばれ、当番の曜日を離されてしまいました。
先輩がいないと私は図書委員をやっている実感がなくなってしまうのです。それだけ、私はこの場所が、この仕事が、先輩と共に過ごす時間が好きだったのです。
私の新しいペアは、小さくて小柄な、入学当時の私の様に垢ぬけていない丸い眼鏡をかけた女の子でした。
自分から話しかけてこないし、私が話しかけても『え』とか『あ』とかばっかりで話になりません。先輩が恋しいです。退屈です。ですが、私はこの子と友達になってみたいとも思います。きっかけさえつかめば仲良くなれる気がするのです。まずは、どうにか聞き出した彼女の好きな夢小説と男性アイドルと言うものを嗜んでみようと思います。
と言っても、一朝一夕にはうまくいきません。今日のところは二、三言葉を交わしただけで、会話をシャットアウトされてしまいました。
こんな日は本を読む気にもなれないので、私は腕を枕にして、机に伏せます。微調整を繰り返すのですがベストポジションが見つからないので、諦めて顔を上げ、窓の外にある空を見上げます。
ついこの前までのじめじめとした陰鬱な梅雨が嘘だったみたいに晴れていました。
カブトガニの血液のような空の青に、もくもくと縦に伸びる入道雲。
突き抜けるほどに夏なのでした。
ああ、あれからの話をしましょうか。
先輩が幼馴染の瞳子先輩と、歴史的な決別をした後のことです。
先輩は今まで迷惑をかけてきた人たち、一人一人に謝りに行きました。そうです、先輩が手当たり次第に口説いてきた人達にです。卒業した元三年生にも、連絡がつく限り電話で謝罪をし、近くに住んでいるならば直接出向き、謝りに行きました。
その文言は、平均し、要約すると、
『僕は真実の愛を求めすぎるがあまりに、たくさんの人に迷惑をかけてしまいました。心から申し訳なく思います。今後そう言ったことは二度としません。望むのならば、僕ができる最大限のお詫びはします。そして、都合がよすぎるかもしれないけども今後は、僕のことをただの同級生として、ただの先輩後輩として扱ってくれると嬉しいです。無理にとは言いません、僕のことを嫌ったままでもいいです。それだけのことをしてしまったのですから』
といった風な感じになります。要約しても長いですね、まあ先輩らしいですが。一人一人に対して誠心誠意、頭を深く下げ、望まれるならば土下座までして。
最初のうちは、奇異の視線にさらされ、信じられていませんでしたが、丁寧に謝罪を行うことを続けていくうちに本気さが伝わってきたらしく、この奇妙で、生真面目な学生のことを、概ねの生徒は受け入れ始めているように思います。
先輩は海老原先輩や私のところにも謝りに来ました。
私たちはほとんどの事情を知っているので、先輩に対して悪感情は抱いていないのですが、海老原先輩は面白がって、一発ギャグをやらしていました(面白くなかったです)。
先輩は私たちのことをただの友達だと思っているようですが、私たちはそんなことないのです。だからこちら側からどんどんアクションを起こすべきではあるのだと思いますが、当分はこのままでいい気もします。
先輩は、恋愛とか真実の愛とかに懲りている気もしますし、何より私は今の関係が心地よく、楽しい。海老原先輩をからかうのは面白いし、ヒカリ先輩は性格が悪すぎて面白い。
あ、そうそう瞳子先輩のことですが、本人も言っていた通り、まったく懲りていません。
むしろ先輩に学校でも絡むようになって、前よりひどくなっているような気もします。先輩も先輩でそれを袖にすることなく、普通に接しています。腑には落ちませんが、収まるとこに収まったとして、まあ良しとします。
──そうして、いろいろと考え事をしていると、時間はあっという間に過ぎて、下校時間となりました。
私が帰る準備をしていると(ペアの子は私と目を合わせず、挨拶もせず早々に帰ってしまいました)、
「つばめちゃん」
図書室の扉の方から声がかかります。
「……先輩」
スクールバックを肩にかけた先輩が、片手をあげ立っていました。
「仕事はもう終わり? 一緒に帰ろうよ」
「はい、もちろん。……でも先輩? 何でこんな時間まで残ってたんですか?」
「ああ、ヒカリの奴がさ、販売するからブロマイドを撮ってくれって言いだしてね、僕とエレナさんがカメラマンをやってたんだ。……馬鹿な男どもを騙すんだって」
「なんで、そんな面白そうなこと私に黙ってるんですか!」
「いや、つばめちゃん今日図書委員でしょ」
「そんなのどうだっていいです! サボりますから」
「……だから言わなかったんだよ」
「ぶぅ」
「まあそれはいいじゃん、ほら早く行こう。ヒカリが校門で待ってる。エレナさんも。ラーメン食い行くんだってさ。エレナさんがヒカリの贔屓の店よりいいところを紹介してくれるらしい。……それでさ、ラーメン食べながら夏休みの予定を立てようってさ」
「はい!」
私は先輩の横に並びます。
先輩が笑っています、私もきっと笑顔でしょう。
私たちは世間一般で言うはみ出し者なのかもしれません。でもいいのです、お互いがお互いを尊重し合って、関われば、それは友情なのです。愛なのです。
今年の夏は私の今までの人生で、一番素晴らしいものになる、そんな予感がします。
くぅ~疲(中略)ファサ(中略)ってなんで俺君が!?
ここまでお読みいただきありがとございました。
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現在カクヨムコンに向けて準備しています。
その間、また少し前に書いた作品を投稿します。
『LD-CF~幼馴染が多すぎる!~』
(https://syosetu.org/novel/426623/)
→またまたラブコメです。今度は嘘じゃないです。
他にも、カクヨムにも作品をあげていますので、もしよかったらお読みください。
(https://kakuyomu.jp/users/daizu_kinako)
(https://x.com/daizuteikinako)
→面白かった作品の感想と、投稿のお知らせくらいしか呟きません。あなたのタイムラインを汚さないことをお約束いたします。