らぶみーとぅー!~NTR性癖の幼馴染を満足させるため、僕は真実の愛を探す~   作:大豆亭きなこ

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第三話:後輩女子と仲良くなる方法

 楽しかった大型連休も終わり、あれからひと月ほどの時間が流れた。もう六月だ。

 

 エレナさんには悪いことしたなぁと思い、学校ですれ違う度声をかけるのだが、一向に取り合ってもらえない。あ~あ。

 

 学校には僕の評判が広まり切りほとんど誰にも相手にされなくなったので、作戦変更。具体的にはレンジを広げることにしたのだ。

 

 駅前にてナンパ千人切り(千手観音同様、ホントに千回したわけではない)、BARにて一人で寂しそうな女性に酒を奢る(未成年だとすぐにばれ、店を追い出された)、落としてもいないハンカチを拾い無理やり接点を見つける作戦(危うく警察沙汰)、エトセトラエトセトラ……。

 

 まぁうまくいくはずもなく、まだ僕は寝取られていない、真実の愛を見つけられていない。

 

 助言を得ようと恋愛マスターラブオオヤマに相談メールを送ったが(プレミアムプラン)、一向に返事がなく、不審に思い検索をかけてみると詐欺罪かなんかで捕まっていた。

 

 瞳子は着実に学校、部活、クラスになじんでおり、人気者となっていた。告白されているのもよく見る。この前の体育大会でもクラスリレーのアンカーとして活躍していた。部活対抗リレーにも出場しており、茶道部らしく着物姿で登場した。会場中の男女問わずそのあまりの美しさに息をのみ、モダン京美人の称号をほしいままにしていた。美人で賢くて、その上運動までできるのはずるいよなぁ。

 

 と、まぁ散々な僕だが、一つだけやけに好調で前進していることもあった。

 

 同じ図書委員の後輩女子、阿布都乃比つばめちゃんのことだ。

 

 彼女との初対面で騒ぎ、図書委員の仕事を放棄したことが、委員の担当教員にばれ、僕たちは週に二度図書委員をする羽目になっていた。

 

 それが功を奏し、僕たちは急速に仲良くなっていった。彼女の目的は分からないし、僕のことをどう思っているかは知らないが、少なくとも表面上は慕ってくれているように見える。

 

 特殊な思考回路、趣向、趣味をしている彼女は僕の知的好奇心を刺激し、彼女の音量は小さいながらも軽快な口調は僕の耳に良くなじむ。

 

 彼女はよく僕に自分の考えの感想や、勧めた本の感想などを求め、僕の拙い話口調を楽しそうに聞いてくれる。

 

 僕にはおおよそ友人と呼べる人物が存在せず、よくわかってもいないが、自分にとって彼女のような存在を友人と呼べるのならば、いかに幸せなのだろうと思う。

 

 それだけに、初対面のファーストインプレッションが悔やまれるのだ。なぜ僕はあんなくだらない、下心を滲ませたことを言ってしまったのだろう。こればかりは瞳子に文句の一つでも言いたくなる。

 

 彼女とは、ただ普通に友人として仲良くしていたいのだ。

 

 これは今まで僕の人生に存在しなかった感情なのだ。

 

 いずれ、つばめちゃんを瞳子にも引き合わせ、ついでにヒカリも呼んで四人で仲良く歓談でも出来たらいいなと思う。

 

 最近はとても充実しているように思えた。

 

    ◇

 

 ここで、皆さんには後輩女子と仲良くする方法をいくつか紹介しよう。これは実体験であり、それを聞いた皆さんはぜひ身近な後輩女子に試してほしい。

 

 その子がたまたま変な子で、あなたのことを少なからず嫌っていないのであれば、きっともっと仲良くなれるはずだ。

 

『CASE1:褒める』

 

「つばめちゃんは美人だと思うよ」

 

「はぁ? なんですか? いきなり褒めてきて」

 

 思ったことを素直に伝えてみただけなのだが、つばめちゃんは煩わしそうに分厚いハードカバーの本からこちらに視線を移し、怪訝そうな顔をしている。

 

「口説いてんですかァ?」

 

「いや、君は物事の道理をよく理解しているからさ、自身の性質をきちんと理解できているだろう? もう少しあか抜けて、生来持つ美形を利用しないのかなと思って。そのほうがいろいろ得をするだろ?」

 

「それ先輩が言います?」

 

「どういうことだ」

 

「あんたかて、別にまずい面してないでしょうが。うまいことやれば彼女の一人や二人すぐにできるでしょう」

 

「僕の顔の良し悪しは置いといて、彼女は何人かできたことあるよ。でも瞳子は納得しない」

 

「あぁ、例の真実の愛ってやつ」

 

 つばめちゃんは、本を閉じ、頬杖を突きながら呆れた表情でこちらを見る。

 

 彼女には僕と瞳子の関係を話してしまっていた。──と言うか問い詰められ、ほとんど当てられ、ヒカリ同様事情を知られてしまったのだ。まぁ、それは別にいい。それを知られたからとて、つばめちゃんとの友人関係に揺るぎはない。それの何と素晴らしいことか。齢十六にして初めて友愛を知る。

 

「でも、上川先輩が望んでいるのは寝取られなんでしょう。その元カノとセックスはしましたか?」

 

「いや、してない。初めては瞳子としたい。嬉恥ずかしセックスをしたい。つばめちゃんには純愛の素晴らしさを説いたことがあるだろう?」

 

「ああ、あの童貞中学生のご都合主義妄想みたいな……。すいません、一切興味がなかったのと気色悪かったので全く聞いていませんでした」

 

 なんだと。

 

「とにかく、先輩は中途半端なんですよ。上川先輩は上っ面だけの子供みたいな恋愛では納得しないことは分かっているんだから、多少強引にでもいろいろやりゃあいいんですよ。それこそ、先輩の太宰とか芥川みたいな、耽美大正書生病弱フェイスを使ってね」

 

「なんじゃそりゃ」

 

「んで、まぁ最初の質問に戻りますがね、私は自分の容姿の良さを別に利用する気はないんですよ」

 

「……なんで?」

 

「だって、美しいことって武器じゃないですか。それも抜き身の刀みたいな触れるもの皆傷つける質の悪い武器ですよ。そりゃあ、普段は得しますし、使いようによっては欲しい結果への最短ルートになりえますがね、その分いらない嫉妬だとか情欲、期待も向けられるんですよ。先輩だってそうです、先輩がもっと不細工なら、少なくとも同性はもっと同情的だったはずです。先輩、女子生徒だけには飽き足らず、男子生徒にも蛇蝎のごとく嫌われているでしょう、それはあんたの面がそこそこ見れたもんだからですよ。だから、先輩には湯川光男みたいな変なのしか寄ってこない」

 

 ……そうだったのか。喜ぶべきなのか悲しむべきなのか。

 

「とにかく、私は無駄なことはしないのです。そりゃあ、こうして芋女子高生に擬態してたのを先輩に見抜かれたときには、驚きましたし、ちょっと嬉しかったですが、普段はこれでいいんですよ。……まぁ、先輩が望むなら、私が本気出した姿見せてやってもいですが」

 

「いや、それは別にいいや」

 

 僕は彼女が、美人であろうが不細工であろうが仲良くしたいと思っている。最初の疑問は合理的な彼女の非合理が気になったからなのだ。しかし、こうして彼女の説明を聞くと納得でいた。疑問は解消されたのだ。

 

「なんで⁉」

 

 ──RESULT:友情点プラス二点、尊敬点マイナス一点、好感度プラス二パーセント。

 

    ◇

 

『CASE2:趣味の共有』

 

「今は何の本読んでるの?」

 

 この日とはまた別の日の図書委員の当番の日、つばめちゃんは真剣に本を読んでいたので、邪魔するのもなんだと思い、話しかけずにいたら、帰り際本を読み終わった彼女に「なんで話しかけてくれなかったんですか⁉」と怒られたので、一応声をかけるようにしているのだ。

 

 きっと彼女も僕同様、会話に飢えているのだ。

 

 ──いじらしいやつめ。

 

「『幼馴染が多すぎる!』です」

 

 つばめちゃんが、文庫本の表紙をこちらに向けてくる。そこにはやけに短いスカートをはき、ありえないくらい胸を強調した制服を着ている二次元美少女がシナを作っているイラストが描かれていた。

 

 僕はその表紙を見て、とてもうれしくなった。

 

「ジミスギじゃん! 読んでくれたの?」

 

 僕が彼女にお勧めしていたアニメの原作だった。普段、ライトノベルは読まないと言っていたので自分が進めた影響で読んでくれたのだ。しかも表紙を見るに現在三巻。人生においてこれ以上にうれしいことがあるだろうか。感想が聞きたいなぁ。

 

「アニメは見るのが恥ずかしいので、原作を読んでいます。いやあ読むまでにかなり時間がかかってしまいました。まさか、私が本屋でこんな胡乱なもの買うわけにはいかないので苦労しましたよ。図書委員の担当教師と司書さん説得するのに思ったより時間がかかったんです」

 

「え? 図書室に入れたの?」

 

「はい、ライトノベル並びに萌え文化は現在世界中に広まっている。教育現場である、高校がそんな最先端に流行に疎いのはいかがなものかと、良く知りもしないのに熱弁をふるいました。ほらあそこ見てください」

 

 彼女が指さす方向を見たら、祭壇のように盛り立てられたライトノベルコーナーができていた。ヴィレッジヴァンガード顔負けのきらびやかで煽るようなPOPもたくさん張られている。

 

「え? どうしたのあれ? つばめちゃんが作ったの?」

 

「ははっ、まさか。ほかの図書委員に作らせましたよ。ライトノベルに詳しそうなやつらに。図書委員になるオタク男子ってのは皆、図書委員に夢持ってんですよ。薄幸の、深窓の、読書好きなヒロインを求めてんすよ。私は読書家の地味巨乳ですから、やつらのそういったとこ少しくすぐってやれば、遮二無二働きましたよ。あはは、馬鹿ですよねぇ。まぁそのあと、その幻想は壊させていただきましたが」

 

 ──うわぁ。

 

「なんですか、その顔」

 

「なんて言ったの?」

 

「ああ、『ライトノベルやサブカル文化に罪はないが、それを消費している奴らは全員クソだ』とか、『私の関心を少しでも惹きたいのなら、あと三回生まれ直せ』だとかですね」

 

 ひ、ひどい……。

 

 働かせたのなら、せめて夢は見せ続けてやるべきなのだ。

 

 同じ、サブカル好きとしては心が痛い。彼らとはもしかすると、ラノベの話で盛り上がれたのかもしれないのに……。

 

「ああ、それは無理ですよ。例にも漏れず、彼ら先輩のこと嫌っていましたから、ヤリチンだとか、女の子を騙す最低の男とか散々言ってました」

 

「…………」

 

 深呼吸一つして、心を落ち着ける。彼らと同様ありもしなかった幻想に振り回されるのはごめんだ。息を吐ききるころには心が平静に戻っていた。

 

「それで、どうだった? ジミスギの感想は。三巻まで読んでるってことは……っ!」

 

「ああ、意外に悪くないですね。最初は先輩のクソ純愛妄想と同じような読み口で吐きながら読んでいたのですが、途中で気づいたんですよ。このライトノベルのヒロイン、最初の幼馴染。多分罪と罰の娼婦モチーフですよね?」

 

「え?」

 

「あ、でもあれか、スコセッシのタクシードライバーのあの娼婦ともとれるか。……先輩はどう思います?」

 

 罪と罰の娼婦と言えば、ソーニャのことか。タクシードライバーの方はアイリスのことかな?

 

「いや、僕はそんな考えたことないな。それにこのラノベは純愛とイチャイチャが魅力で──」

 

「えーっ。じゃあ、主人公はいつ人を殺すんですか? この主人公は、世間や社会に鬱屈したものを抱えていますよね、それにこんな男に媚びた淫売みたいな女にあからさまな好意を向けられて、何もしない。これは主人公の潔癖性を表していますよね。世界にうんざりしておきながら、まだどこかで世界に期待している。まるっきりヒューマニズムじゃないですか、ニューシネマの文法じゃないですか、これで人殺さなきゃ嘘ですよ。今これ、八巻まで出てますよね、ネタバレしてもいいですから、何巻で人殺すか教えてください」

 

「人は殺さないです」

 

「じゃあ、どこで主人公はどん底に落ちるんですか? 家族に裏切られたり、親友に売られたり、街を追放されたり」

 

「そんなことは起きません」

 

「はーっ? じゃあ先輩は何が楽しくて、これ読んでるんですか?」

 

「純愛イチャイチャが摂取でき、ヒロインのいじらしさが可愛らしいからです」

 

「げぇー、マジですか。ヴィトゲンシュタイン的厭世観を仄かに感じたから実家から哲学辞典引っ張り出してきて、引きながら読んでたのに……」

 

 つばめちゃんが、ジミスギを雑に机に放りだした。そして肩をもみながら深くため息をつき、

 

「先輩、わりかし神話とか民俗学とか哲学とか詳しいわりに、こういう毒にも薬にもならないものも読みますよね、何でですか?」

 

「ああ、僕の場合は逆なんだよ」

 

「?」

 

「ゲームの続編が出た時、『前作をプレイしていなくても楽しめるが、前作をプレイしているとにやりとできる部分がある』とか言われるだろ、僕はあれが死ぬほど嫌いでね。マンガ読んでても、映画見てても、そんなものは絶対に付きまとう。例えば洋画を見るとなると、キリスト教の知識がいるし、伝奇モノを読むとなると、日本書紀とか古事記の知識が必要になる。あ、シェークスピアとかゲーテとかも必須だなぁ。……とにかく、そういうわけで古典だとか、教養だとか、文化だとかは一通り読んだし、学んだ。僕は何にも取りこぼしたくないんだ。作品を百パーセント楽しみたい、味わい尽くしたい。まぁ、瞳子がそういうの好きで付き合わされていたってのもあったけどね」

 

「……はぁ、難儀な性格ですね。まぁでもどういう経緯だって、私とそういう話をしてくれるのは嬉しいですよ。前提の説明を抜かせるのはありがたい。このライトノベルの解釈だって祭壇作ってくれた図書委員に話すとぽかんでしたからね」

 

 災難だな、その彼ら。考察当たり屋だ。

 

「つばめちゃんは意外と寂しがり屋なのかもなぁ。かまってちゃんとも言えるか」

 

 つばめちゃんは面食らったような顔した後、少し考え、照れたような顔で、

 

「そうですよ、その寂しがり屋を見つけたのは先輩なんですから、これからも私の話に付き合ってください」

 

 ──RESULT:友情点プラス三点、尊敬点プラス五点、好感度プラス八パーセント(コングラチュレーション、好感度が一定レベルに達しました、関係変化イベントが発生します)。

 

    ◇

 

 そして、時間軸は現在に戻る。

 

 今日は六月らしく雨が降っている。

 

 傘を差しても濡れるので、嫌だけどバスできた(全然遅刻した。急に予定を変えるもんじゃないね)。

 

 そんな日の放課後、僕とつばめちゃんは当番の日じゃないのにも関わらず、図書室で受け付け業務をしていた。なぜかというと理由は三つあって、僕とつばめちゃんの図書委員の仕事がいい加減すぎること、僕らの生活態度の悪さ(遅刻の多さや授業中本を読んでいることなど)、そして今日当番のはずだった図書委員が来ないことであった(後で知った話だが、この図書委員と言うのが、つばめちゃんがラノベ祭壇を作らせ、その後ボロカスに言った生徒らしい)。

 

 まぁ、自業自得なわけだ。

 

「しねハゲ」

 

 しかしつばめちゃんはこうして悪態が止まらず、ぼそぼそと恨み節を言っている。

 

 彼女は初対面の大人しそうな印象からは考えられないくらい口が悪く、生意気なのだ。

 

「して、先輩。どうしましょう」

 

「ん? 何が?」

 

「先輩と話すのは楽しいですが、こうしていつものように図書委員の仕事中に話していると、興が乗ってしまって、また騒がしくなるでしょう」

 

 騒がしくなるのは、彼女の演説にも見える熱弁のせいだと思う。

 

「このままじゃ週五で図書委員ですよ、馬鹿ですよ」

 

「それはそうだね」

 

「だから、ですね。先輩。こうして私たち仲良くなったわけですし、ここ以外でも会ってもいいんじゃないでしょうか?」

 

 彼女にしては珍しく歯切れが悪い、手を太腿に挟みもじもじとしている。

 

「うん? というと?」

 

「ですから、図書委員以外で会って喋りましょうと言っているんですよ!」

 

「それは、例えば中庭とか、カフェテリアとか?」

 

「ああ、それもいいですが、私が考えているのはもっと素敵なとこですよ」

 

「えー、どこだろ? 公民館とか?」

 

「こことほとんど変わらないじゃないですか。違いますよ、私の家ですよ」

 

「家?」

 

「なんか今日の先輩、勘が悪すぎますね。そうです、私の家です。本がたくさんあります、映画も。紅茶もいいのが揃っています。校長室にあるようなふかふかのソファもあります。どうでしょう? それに先輩には私のバックグラウンドにある事情もそろそろ知って欲しいんですよ」

 

「紅茶何があるの?」

 

「マリアージュフレール」

 

「行く」

 

 タイトルをつけるならそうだな、『CASE3:お宅訪問』だろうか?

 じゃあ、シーンスタート!




改めて読み返すとつばめちゃん、凄いこと言ってますね。
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