ゴールドの熱気の中、タカシは朝からずっとニコニコしていた。
今日という日は特別だった。
大好きな『エバンゲリオン』の最新台が導入されるからだ。
普段なら雑誌や動画サイトで貪るように集める「事前情報」を、今回は一切遮断してきた。
真っ白な状態で、新しいエバぁぁと出会いたかった。
隣には、友人(兄貴分)の一ノ瀬が座っている。
いざ実機が動き出すと、液晶に映し出されたのは衝撃の光景だった。
エバンゲリオン初号機の前に立ちはだかる、圧倒的な存在――ゴヂラ。
「すげえ! タカシ、これ新しいハンドル!? レバブルの振動がダイレクトに伝わりそうだ!」
大はしゃぎする一ノ瀬の横で、タカシは静かに涙を流していた。
画面を見つめたまま、ポロポロと目から涙がこぼれ落ちていく。
それがあまりにガチな涙だったため、一ノ瀬はギョッとしてハンドルを握る手を止めた。
「な、なぜ泣くんだ……? いくら感動したからって、まだ当たってもないのに」
タカシは目元を拭おうともせず、液晶のスピーカーを指さした。
「……聞こえるだろ。喜んでる声優たちの声が」
「え? 声優?」
「考えてもみろよ。彼らはもう何十年も、毎度毎度同じセリフを収録し続けてるんだ。
『逃げちゃダメだ』『目標を駆逐する』『動け、動いてよ!』……。いくら声で飯を食っているプロでも、
さすがに飽き飽きしているはずさ。そこに、この新台だ」
タカシはパチパチと明滅する画面を愛おしそうに見つめる。
「『ゴヂラ』という、完全なる新ワード」
「新ワード……」
「そうさ。セリフのひとつひとつから、彼らの凄まじい『やる気』を感じるんだ。
新鮮なセリフを喋れる喜びが、声の波動から伝わってくる。ほら、見てみろ」
画面には、作戦本部のオペレーターであるモブキャラが映し出されていた。
「このモブキャラなんか、原作アニメではセリフが2つしか与えられてないんだ。
なのに、そのセリフがあまりに印象的だったから、パチンコが出るたびに毎年毎年、
同じセリフを収録させられてる。でも、今回の『ゴジラ』のおかげで、
彼らは原作にない新ワードを発してる。生き生きとしてるだろ? 声が弾んでるんだよ」
タカシは深く、深く頷いた。
「声優たちの、魂の解放がここにある。俺は今、奇跡の瞬間を耳にしてるんだ」
一ノ瀬は、あまりにも斜め上すぎるタカシの感動ポイントに圧倒され、
ただ「そ、そうか……」と呟くことしかできなかった。
パチンコ特有の轟音の中、新しいセリフを叫ぶキャラクターたちの声が、タカシの涙をいっそう激しく加速させていった。