「まさか青ダヌキが生息しているとは」
希望ヶ峰学園には負けたよ……。
本人だったらサインほしいな。しかし色紙がないというこの状況。この悔しさも計算の内なのだろうか。学園さん、お前は俺を怒らせた……っ!
「本当に、大丈夫なんですかね……?」
舞園さんが不安そうに言った。まあ確かに嫌な感じはしたしね。
「でも、ここに残っていてもしょうがないわ」
不安はあっても、進むしかないと霧切さん。それにはみんなも賛成だったようで、素直に体育館に行くことに。
シリアスな雰囲気なので無言で行こうとしたら、舞園さんが隣についてきた。
「なんだか、おかしな事になってきましたね」
「そだね。最近の高校ってみんなこうなのかな」
「それはないです」
バッサリと切られた。そりゃそうだ。
「もしかして、桑田君は高校に行ってないんですか?」
「うん、俺は中学までだよ」
目を丸くして驚いているのは良いんだけど、そこまで驚くことかな。中卒とかよくある話だと思うけども。
「家計が苦しくてね。もっぱらバイト生活でした。就職先を探しながらせこせこ稼いでたよ」
「意外と真面目なんですね」
「失礼な。どこが不真面目に見えるのだぃ」
「外見です」
「ぐうの音も出ない」
俺の髪、燃えてるかのような色だけど、地なのよね。
「そろそろ髪を黒に染めて就職しようとした矢先にこれだよ」
「これですよね……」
二人そろってため息。この話題はやめよう。
「そういえば、舞園さんは苗木君とお知り合い? 親しい感じだったけど」
「あ、いや。話したことはないんですけど、中学では同級生だったので」
「これはラブロマンスの予感。私、家に帰ったら結婚するの!」
「人生の墓場一直線はさすがに……。そもそも私、アイドルですし。まだ誰とも付き合う気はありませんよ?」
「マジレスでしたか。では、現在の苗木君の評価は?」
「気になる男の子、ですかね」
「おお、初対面にしては高評価。ああいう優しそうなタイプがモテるのかな。ちなみに俺は?」
「ギルティ」
「突然の有罪判決に驚きを隠せない。上訴する」
「却下です」
「三審制とはなんだったのか。俺にだって人権は」
「ないです」
生き生きと俺の基本的人権を消し去る舞園さん。
笑顔で全否定しやがって。可愛いじゃないか、ちくせう。
体育館前のホールまで来ました。
「誰もいなかったなあ」
校内を歩いていたけれど、上級生や教師にまったく会わなかった。もしかしたら隠れているだけかもしれないけど。NINNJAってやつか。さすが希望ヶ峰学園、一味どころか五味くらい違うぜ。
「開けよ、ごまぁ!」
どーんと扉を開けて体育館を見てみると、普通の入学式のように椅子が並んでいた。一味も違わなかったよ。そんな気持ちを葉隠君も持っていたようで、ほら見ろ普通じゃねえかと安堵を漏らした。だがやっぱりそれは甘かったようで。
「オーイ、全員集まった~!? それじゃあ、そろそろ始めよっか!!」
大山○ぶ代似の声と共に、クマのぬいぐるみみたいなのが教壇に飛び立った。
「え、ヌイグルミ……?」
「ヌイグルミじゃないよ、ぼくはモノクマだよ! 君たちの、この学園の……学園長なのだッ!!」
「う……うわわわ……ヌイグルミが喋ったぁぁぁ!!」
山田君のリアクションが素晴らしい。
みんなも唖然とした表情でモノクマと名乗ったヌイグルミを見るが、あくまでモノクマはマイペースに話を続けるご様子。置いてけぼりだなぁ。
「では、これより入学式を執り行いたいと思います!! まず最初に、これから始まるオマエラの学園生活について一言。えー、オマエラのような才能あふれる高校生は、〝世界の希望〟に他なりません。そんな素晴らしい希望を保護するため、オマエラにはこの学園内だけで共同生活を送ってもらいます! みんな、仲良く秩序を守って暮らすようにね! えー、そしてですね……その共同生活の期限についてなんですが……」
モノクマは一拍おいて宣言した。
「期限はありませんっ!!」
「はぁっ!?」
大和田君が激オコで今にも殴り飛ばしに行きそう。気持ちはとてもわかるけども。
「つまり、一生ここで暮らしていくのです!」
「強制ニート生活突入したとか親に見せる顔がないんですが」
まだ親孝行し終わってないよぉ!
みんなも不満を口にするが、モノクマはにべもない。窓にあった鉄板も俺たちを閉じ込めるためにやったことだそうだ。希望ヶ峰学園に希望がないとか笑えない。
「でもねぇ、ぶっちゃけた話、ないわけじゃないよ。ここから出られる方法……」
「ほ、本当……?」
腐川さんが食いつくと、ノリノリでモノクマは答えた。
「学園長のボクが作った学園から出られる特別ルール。それが『卒業』というルール!」
「その『卒業』するためにはどうすればいいんだ……?」
「うぷぷ……焦らないでよ。お前らには秩序を守った共同生活が義務付けられましたが、その秩序を破った者が現れた場合。その人物だけは、学園から出ていくことになるのです。そしてその秩序を破るが意味するものとは……」
簡単でありますように。簡単でありますように。大事なことなので二回唱えました。
「人が人を殺すことです!」
「勘弁してよクマえもん」
まさかこんな小説のようなことが自分に起きるとは、昨日の夜に思ってもなかったのです。これが青ダヌキの本気か……っ!
「どうしてだい? 殺し方は何でもいい。誰かを殺した生徒だけがここから出られる、それだけの簡単なルールじゃないか」
「なるほど。つまり相手を悩殺すれば」
「もちろん! 相手の生命を絶つという意味の『殺す』です!」
「ウゾダドンドコドーン」
容赦ないクマえもんの言葉がレオンの逃げ道をふさいだ!
その後も大和田君がクマえもんに攻撃を仕掛けたら爆発したり、電子な生徒手帳を渡されたりしたけども、もういっぱいいっぱいです。
「それじゃあ、豊かで陰惨な学園生活をどうぞ楽しんでください。まったね~!」
クマえもんが去っていった。呆然としていたいけどさすがにそれはダメだろうね。
「つまり、この学園で一生暮らすか、誰かを殺して自分だけ出るか選択しろと。高校生に選ばせるものじゃござらんよ」
「そんな……」
舞園さんも顔色悪い。まあ俺もちょっと吐きそうだけども。
「ウソだ……そんなバカげた話……ウソに決まってるんじゃないか……!」
「本当かウソかが問題なのではない。問題となるのは、この中に、その話を本気にするヤツがいるかどうかだ……」
あ、これまずい雰囲気だ。
「そもそもクマえもんの中の人は誰だろね? 国民的人気キャラクターの声とか勝手に使ったらファンの人にフルボッコにされる気がするんですが」
「少なくともこの15人の中にはいないわね。モノクマの反応を見る限り、人間が受け答えしているのだろうし、別の場所でモノクマを操っているのでしょう。そして声に関しては……まあ、色々と狙いはあるんじゃないかしら。それこそファンを煽ることとか、ね」
霧切さんの視線が俺へと突き刺さる。まあ確かに腹は立ちますが。別にファンってほどじゃないんだけどね。
「それで、どうするの?」
冷たい彼女の声がきっかけとなり、みんなが意見を出し始めた。