舞園さんと話した後、脱出の手掛かりを探して校舎内をぶらり途中下車の旅する事に。床とか調べたけど隠し通路とかはない様子でした。
「というか舞園さんは俺と一緒でいいの? 他の人のほうが安心すると思うんだけど。苗木くんとか」
「確かに苗木君の方が頼りがいがありますね」
「ストレートでござるな」
「ですが、苗木君と二人だとラブコメになってしまいそうで……。この状況で恋愛するのはとても不吉な気がするんです」
「あ、分かる。すごい死亡フラグだよね」
「はい。あと、苗木君や桑田君以外とはまだあんまり親しくないので、一緒に居るのはちょっと怖くて」
「そっか。ということらしいので親しくなりませんか霧切さん」
「いきなり話を振られても困るのだけど」
霧切さんに廊下で遭遇したので声をかけてみる。ため息を吐かれたけど足を止めてくれた。この娘絶対ツンデレだ。
とはいってもクールな霧切さんと話題になることといったらなんだろう。ミステリアスすぎて好きな事もミステリー。
むしろそんな霧切さんの秘密を暴いてやるぜスタイルでいってみよう。
「霧切さんの持っている超高校級の才能を当ててしんぜよう」
「……へぇ。いいわ、聞いてあげる」
「超高校級のクイズ王」
「…………」
完全無視は寂しいな。北風が吹きこんでいるのかってぐらい温度が下がった気がする。
「だめでしたか。頭が良さそうだし賢い人が持ってる才能だと思ったんだけど」
「それは確かに。……超高校級の弁護士とかどうですか?」
「さぁ、どうかしらね」
霧切さんが涼しい顔で流す。個人的には「発想を逆転させるのよ」と言ってる霧切さんが浮かぶくらいぴったり当てはまったのだけども違うのかな。
「むむ、うまく躱しますね。他には……政治家や警察くらいしか思いつきません」
「意外なところでピアニストとか。クラシック似合いそうだし」
「なるほど……音楽系ですか」
その発想はなかったようで舞園さんが唸る。才能なんてシンプルに考えた方が当たりやすい気もするけど。結局霧切さんは答えを言う気はないようなので真相は分からずじまいなのだろう。
「くっ……事件は迷宮入りか」
「教えたくないなら仕方ないですよ。でも、いつか教えてくれると嬉しいです」
「ええ。もちろんよ」
軽く笑んで頷く。そういえば霧切さんが笑ったところを初めて見た。冷静そうに見えるけど、彼女も彼女でこの状況に参っているのかもしれない。
「呼び止めてしまいましたけど大丈夫でしたか」
「ええ。あなたたちと同じく手がかりを探しているのだけど、やはり見当たらないわ。一階にはこれ以上の情報はないのかもしれないわね」
ポーカーフェイスを崩さずに言っている霧切さんだが、声の調子がちょっと落ち込んでいる。舞園さんも気落ちした表情だ。やはり進展がない今の状況は精神をゴリゴリ削られますな。
「個人的には校則の希望ヶ峰学園について調べるのは自由っていうのが気になるかな。調べられるもんなら調べてみなって空気が漂ってるけど」
「……私に希望ヶ峰学園を勧めてくれた先輩は、新しい発見がいっぱいあって面白い所だと話していました。元々こうだったとは思えません」
「舞園さんはこの学園の知り合いがいたのね。なら、モノクマが乗っ取ったと考えるのが自然でしょう」
「みんなは最初に学校を見たときには普通だったって言ってたし、モノクマは俺たちを拉致ってから校舎を改築したんだよね。すごい、ジョバンニでも一晩でできないよ」
「……そうね。一日や二日でできるとは思えないわ。もしかしたら、私たちが思っているよりも遥かに時間が経っているのかもしれない」
「…………」
霧切さんが顎に手を当て考え込む。それはいいんだけど、早くアイドルに戻りたい舞園さんにとっては悪夢のような推測だ。どう声をかければいいか分からず黙ってしまう。
「大丈夫ですよ」
ささやかれた言葉に振り向くと柔らかい笑みを浮かべた舞園さん。
「私はおつちゅいていましゅ」
「噛みすぎて何言ってるのか分かんないっす」
不安しか見えねぇ。
「ち、違います。人気アイドルは噛みません!」
「リピートアフターミー。山のいのしし屋根のすす、こはだのすしに帯のしゅす」
「山のいのしし屋根のすす、こはだのすしにおびゅのしゅす」
「ダウト」
「だってしょうがないじゃないですか、もう私の居場所がないかもしれないんですよ! 少なくともセンターは絶対取られてますもん! あんなに苦労したのにぃ……うぇ、ひっく、ふわああああああああん!!」
幼児化した舞園さんが胸にどーん。役得とかそういうの考える前にとても罪悪感が湧きました。
「女の子を泣かすなんてサイテーね、桑田君」
「ごめんなさい」
もう言い訳もできません。
うぅ、ぐす、チーンと胸で泣いてる舞園さんに謝り撫でつつ、遠い目。けっこう大丈夫そうだったからいじった結果がこれだよ。こんなに感情を見せてくれるほど余裕があるのはいいことなのですが。
「そしてこんな体勢でも舞園さんが姉にしか思えない俺はおかしい」
「私も弟が姉をなだめているように見えるから心配ないわ」
霧切さんは二回頷き賛意を示した。ここで兄と妹とは感じ取れないのがこのコンビの特徴です。
「この学園でもっとも安心できる人物は桑田君なのかもしれないわね」
「照れるぜ」
「その受け答えにしても、程良いダメさが伝わるのよ。初めてモノクマと相対した時も相槌を入れてムードを良くしていたでしょう?」
「バ・レータ。……ん? 今けなされなかった?」
「気のせいよ。とにかく、あなたと話していると安らぐって事」
ううむ、なぜか過大評価されているような。霧切さんは俺が受け止めきれていない様子を見て何故かもう一度満足そうに頷き、また後で、と歩いて行く。
その後ろ姿は気品溢れるもので。
「大人の女性や……」
「それは私が子供だって言ってるんですか」
「うん」
いつの間にか泣き止んでいた舞園さんにノータイムで答える。
わき腹つねらないで。いたいです。