ソバは巡る   作:モンです

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怪獣君の日々 その1

 目が覚めたら白衣を着たおじいさんが怪しい笑みを浮かべていました。

 

「気分はどうかね、試験体K-38」

 

 鈍色の鉄に囲まれた部屋。いくつも並ぶ円柱型の水槽の一つから出て、俺は立っていた。

 

「知らないはげじじいだ……」

 

「誰がはげじゃ誰が」

 

 これでも気にしているのじゃぞと頭部をなでるおじいさん。そうなんですか。もっと言ってやろうかと思ったけどさすがに止めておこう。

 

「ごめんなさい」

 

「いいわい、もう。儂はドクターカイル。お主を作った者じゃ」

 

「なんと」

 

 俺はこのおじいさんが作った怪獣らしいです。今はただの青年だけれども、ちょっと踏ん張ればカメが凶悪化したような姿に変身できるとな。

 

「すごいね」

 

「ふふん、まあ当然だのう! 儂は天才科学者であるし!」

 

「ドクターで科学者なの?」

 

「そういうツッコミは受け付けてないぞい」

 

 あなたが頬を膨らませても可愛くないです。というかそろそろ本題に入ってほしい。

 

「さて、お主を作った理由はじゃな。儂の世界征服の邪魔をするやつらをぎったんぎったんにしてほしいのじゃ」

 

「ん、了解。じゃあいってくるね」

 

「まだ話は終わってないぞい!」

 

 だって長そうなんですもの。

 

「二年前、儂は人の遺伝子から怪獣を作ることに成功したが、皆は世迷いごとと罵倒しまったく相手にしなかった。だから思い知らせてやろうとしたのじゃ、世界征服と言う形での! 一年と十ヶ月を使い、二十体の怪獣を作り出した儂は、その脅威を見せつけるために日本中に解き放ったのじゃ。暴れまわる怪獣を鎮圧するため自衛隊が出動したが、貴様ら怪獣は既存の兵器ではかすり傷一つつけられん。世間は恐れおののき、すべて計画通りに行っておった。だが、そんな時に奴らは現れた。レジェンド5と名乗る忌々しい者どもは、アニマルパワーという謎のエネルギーを使い儂の怪獣たちを次々に倒していったのじゃ! このままでは世界征服への道が途絶えてしまう。だから儂はさらに強力な怪獣たちを作りだし、レジェンド5が二度と立ちはだかることができないようにぼこぼこすることにした。そして作られたのがお前なのじゃ。分かったか?」

 

「三行でオナシャス」

 

「世界征服したい

 でもレジェンド5が邪魔

 じゃあぼこぼこにするのじゃ!」

 

「把握」

 

 まあやるとは言ってないんですけどね!

 

「でもレジェンド5って名前からして五人だよね。十体くらい同時に襲ったら何とかなるのでは?」

 

「そんなことさせとらんわい。五人をたった一体でぼこぼこにするからええのじゃろう? 勝てるだけのスペックは持たせておるよ」

 

「さすが。今まで負けてきた人は説得力が違う」

 

 逆の意味で。リバースな意味で。大事なことなので英訳しました。

 

「ともかく、貴様のスペック自体はレジェンド5全員と戦っても勝てるほどのものじゃ」

 

「前の怪獣は違ったの?」

 

「そう、そこじゃ。もちろん他の怪獣にも奴らに勝てるだけの能力は持たせとった。だが結果は全滅。そこで思ったのじゃ、もしかしたら怪獣たちは自らの能力を扱いきれてないのでは、とな。レジェンド5との戦闘を見ると、力に振り回されているように見えたからの」

 

「つまり鍛錬しようぜってことですね」

 

「そういうことじゃ」

 

 満足そうに頷くドクター。人間が鍛錬するのはイメージが湧きやすいけど、怪獣が鍛錬するのはなかなか思い至らないと思う。それを人間の身で考え付くドクターは、やっぱり頭が良いんだなと思いました(小並感)

 

「だから貴様はすぐにレジェンド5と戦うのではなく、しばらく人間として身を隠して密かに修行をし、能力を十分に使いこなせるようになってから暴れるのじゃ」

 

「いえっさー」

 

 修行って言葉にはロマンがあるよね。すごい能力を持っていたら使いこなしてみたいのは男として当然だと思うんだ。暴れるかどうかはしらんけど。

 

「さて、貴様の能力じゃが」

 

「えっと、俺は亀だったっけ」

 

「そうじゃな。単純に力が強いし、頭や手足がかなり伸びるため、リーチを見極めにくい。今の所甲羅にこもって突撃するのが一番威力が高いと思われる攻撃じゃろう。だが貴様の最も優れた能力は何をされても傷つかない強靭な耐久力。亀山という山があるんじゃが、それは蓬莱の異称、つまり不老不死の地とされる霊山じゃ。その山をイメージして作られたのが貴様というわけじゃな。さすがに不死とまではいかんが、持久戦ならば負けなしじゃろうて」

 

「お、おう。では弱点は?」

 

「移動速度じゃな。伸びるとはいえ足は長くはないし、体重も重い。遠距離攻撃やヒット&アウェイを永遠とされると辛いかもしれん。そこら辺の対策が一番のポイントかの」

 

「なるほど」

 

 ドクターがガチすぎて若干引いた。本当に世界征服狙ってるんだね。

 

「鍛錬ってここではできないの?」

 

「残念ながら儂の研究所にはそこまでのスペースがなくての。修行をみてアドバイスした方が良いと思いはするのじゃが、それより新たな怪獣を作りたくて仕方ないんじゃ」

 

 もっとも良いのは修行しているうちにレジェンド5が倒されること。だから新たな同朋を作ることは大賛成です。

 

「伝えるべきことはこのぐらいかの?」

 

「そだね。色々ありがとう」

 

「どういたしましてじゃ。頑張るんじゃぞ」

 

「ん、行ってきます」

 

 なんだかんだ結構優しいドクター。これが父性ってやつなのかと考えつつも、外へ出るためにワープパネルを踏んだ。

 

 

 

 外へ出ると、そこはさびれた工場跡地だった。俺が生まれたあの部屋から外へランダムに転移する仕組みなんだとか。

 

「とりま現状確認しよか」

 

 俺は怪獣で、ちょっと強いカメになれる。むしろそっちが本当の姿らしい。そしてレジェンド5を倒すのが俺の役割である。その為に修行しなければならない。以上である。レジェンド5が誰なのかすら分かってないじゃないですか。それに人間たちの世界で生きるために必要な戸籍も金も、名前すらない。

 

「これはどげんかせんといかん」

 

 このままではレジェンド5と戦う前にどこかでのたれ死ぬだろう。生活基盤から整えなければならないとは、ドクターはどういうつもりなんですかね。これも修行の一環という事か。千尋の谷に突き落とされる身にもなってほしいんだけどねェ(半ギレ)。

 

「まあ、戸籍がない時点でホームレス一直線なんですけどね」

 

 ホームレス0歳児、はじまりはじまり。

 

 

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