ソバは巡る   作:モンです

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怪獣君の日々 その2

 ホームレスになって一ヶ月。田舎にある鹿馬公園が俺の家です。最初は勝手が分からず飢え死しかけたけど、流浪の先輩さんに助けられました。そのまま弟子入りして生活の知恵を授かったりしちゃったり。神様仏様ホームレス様。足向けて寝れません。

 今は鹿馬公園の近くの山でレッツ修行タイム中。人に見つからないように山奥でやっているのだけど、最初にあった熊さんをワンパンで星にしたせいか、動物にまったく会いません。やりすぎ? 急に襲ってきたから力加減間違えました。手加減の練習などしとらんし。体の動かし方やら戦い方とかでしたし。怪獣を襲うとかなにげに度胸のある熊だったけど、どこまで飛んでったんだろう。

 

「ほぉわたぁ!」

 

 一通り終わったので人間に戻って水浴びして帰宅。12月なのでヒャッハーな水温だけども苦にならない。亀で良かった。あ、ちなみに自分の名前は亀山怜と決めました。シンプルが一番だよね。別に警察に聞かれた際にとっさに答えたからではない。ないもん。

 

「そして帰ってきたら地面に見知らぬ女の子が寝ています。どうしたらいいでしょう」

 

 ダンボールハウスに戻る途中、視界に入ったのは小柄で白髪ショートの少女。公園の隅で丸くなって寝ています。このままだと凍死する可能性が微レ存。冬ですし夜ですし。寒さをなめてはいかんのです。とりあえず起こしましょうか。

 

「目覚めなさい、目覚めなさい勇者よ」

 

「…………ぅん……?」

 

 体を揺するとぼんやり目を開ける。完全に起きるまでしばし待つと、白い少女は目をくしくしとこすって首をかしげた。直後、はっと目を見開いて飛ぶように退く。すごく警戒しているようです。

 

「誰です、あなた」

 

「私は兄神シ・スコン。親しみを込めておにーちゃんと呼びなさい」

 

「変質者さんでしたか」

 

 一気に目が冷たくなった。手で懐を探っているけど、何してるのかな。

 

「携帯どこでしたっけ」

 

「ごめんなさい警察だけはホント勘弁してください」

 

 全力で頭を地にこすり付けた。ちらりと上を見ると少女はすでに携帯を探し終え、右手に装備している。これまずくね?

 

「……なら、私の質問に正直に答えてください」

 

「イエスマム」

 

「ここはどこで、あなたはだれで、何をしてたんですか?」

 

「ここは鹿馬公園で、俺は亀山怜。普段はここで住んでる。今日はちょっと公園から離れてたんですが帰ってきたら君が倒れていたのでびっくりしました」

 

「……ホームレスですか。……私の寝てる間に何か変なことしました?」

 

「してないしてない。この時期にこんなところで寝てたら凍死するから起こしただけです。ほら、この目を見てごらんなさい。これが嘘をついているように見えますか?」

 

「見えます」

 

「待って110番おさないで。話せばわかる、話せばわかるから」

 

「犯罪者はみんなそう言うんです」

 

「その問答無用さに全俺が泣いた」

 

 一点の曇りなく言い切る少女。確かにホームレスが怪しいのは分かるけども。

 このままだと警察に捕まる→怪獣とバレる→研究所行きルートに入ってしまう。くっ、かくなるうえは切り札を使うあるまい……っ!

 

「ほら、おにぎりあげるから。しかも二個だよ二個。これ食べてる間だけでもお話聞いてくれるとおにーちゃん嬉しいなーなんて」

 

「通報しました」

 

「ちょ」

 

 この子容赦ないな!

 

「では手短に。おにぎりここに置いておくから、良かったら食べて。水はあそこの水飲み場で飲むといいよ。あと冬に外で寝るのはアウト。公園の障害者用トイレとかで寝ないとマジで死ぬ。どうしても外で寝るなら昼に寝て、夜に行動しなさい。では俺は逃げます、じゃあの!」

 

「あ、ちょっと待っ」

 

 少女が何か言ってるような気がするけど気のせいに決まってる。あばよ~とっつぁ~ん。

 

 

 

 てってけてーと走って三十分。やっと振り切れたようです。怪獣パワーで人外のスピードとスタミナをもつ俺に二十分も追走してくるとかどんだけ捕まえたかったのだろうか。女性って恐ろしい。当然のことながら荷物はすべておいてきたので、あるのは着ている服と耳栓のみ。残金は千二百円。ゼロから始まるホームレス生活、スタートです。

 

「逃げ戻りとかメリットがなさすぎ。まあ警察のお世話になるよりはいいんだけどね」

 

「そうですね」

 

「なん……だと……?」

 

 非常に聞き覚えのある声へと振り向くと、そこには先程の白い少女が立っていた。

 

「ばかな……きみはほんとうににんげんかい……?」

 

「失礼な。においを追ってきただけです」

 

 なるほど犬だったのか。どっちかと言うと猫です。猫ってそんなに嗅覚あるの? 人間の数万倍以上らしいです。すごいね。すごいです。

 

「というかおにぎりはどうしたの?」

 

「もう食べました」

 

「!?」

 

 どうやら走りながら食べていたという。横腹が痛くなりそうですが。

 

「食べながら走るにはちょっとコツがいります」

 

「なにそれ気になる」

 

「千二百円でいいですよ」

 

 それ全財産じゃないですか。

 

「払うから亀山君を逃がしてあげて」

 

「やです」

 

 三文字で怪獣を絶望させるとは……っ! この子は将来大物になる予感。このままだと俺の将来は実験体ですけどね。

 

「そもそもまだ通報してませんし」

 

「……そうだったの?」

 

「私はあの時電話してましたか?」

 

「Oh……」

 

 テンパりすぎてました。それだけ国家権力がトラウマだったという事である。あおいせいふくこわい。決してまんじゅうこわいではない。あしからず。

 

「そういえばどうしてお外で寝てたの?」

 

「……なんで不審者にそんなこと言わなきゃいけないんですか」

 

「たしかに」

 

 まるで言う意味がないね。正論です。

 

「というかなんで私は追ってきたんですか」

 

「聞かれても分からんよ」

 

「でしょうね。……うん、そうですね、あなたと会話したせいで私の心が汚されました。責任を取って私を養いなさい」

 

「それ明らかに今考えたよね。そしてなぜホームレスに頼んだし」

 

 家なき子ルートとか勇気あるね。同情するなら金をくれ。

 

「水谷ユキです。これからよろしくお願いします」

 

「そしてこの強制である」

 

 怪獣に平和などなかった。

 

 

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