グスタフさんにこのことをと話すと、「徹底的に教育します」と言って、謝ってはすぐさまどこかに行った。恐らく教育をしに行ったのだろう。ざまぁみろ。
そんなことを考えながら教官室に戻ると、人はいなく、茶器と菓子皿が洗われていた。恐らくバル君がやったのであろう。あの状況だと俺に良い感情は持っていないはずなのに、全く律儀な奴だぜ。流石主人公って訳か。
そんなこともある中、時は既に五時を過ぎ、退勤時間となっていた。一応言っておくが本校はすごくホワイトだ。理不尽な残業なし、残業手当あり、退勤時間以降なら帰ったりしても、仕事が終わっている限り誰も何も言わない。そんでもって給金は高い。日本の教授の平均月給が六五万円程度だが、今現在の俺の月給は八千ターレル、日本円にすると大体八十万円だ。教授という専門性と、軍人という特殊性によってこのような額になったのであろう。これだけでも俺は食っていけるが、それだけではない。
加えて言うと、俺は貴族だ。この国の貴族というのは、基本的に土地を所有する。古来にあった封建制度の名残みたいなもので、歴史が古い貴族程土地が多い傾向にある。
さて、今の俺はレットウ=フォルベック家の二四代目当主だ。帝国成立以前の王国時代の当初から国に仕えている、いわば名門だ。爵位だって上から二番目。要するに俺は地主である。
それも只の地主ではない。大地主だ。どこの土地かって?首都さ。首都のど真ん中。俺は一等地の大地主なのだ。そこからくる利潤というのは、給金なんか比にならんくらいある。それに相続された財産まで含むと、それはもう想像もできないくらいの財産がある。
これ全部俺のなんだぜ?想像しただけで、よだれが止まらんが…ぐへへ。
まぁそんなこともあり、案外悪くない生活を送っている。無論、教員生活が本格化すると。かなりキツくなるとは思う。それに戦争だって起こるんだ。無茶だ。負けたら多分財産没取くらいで済んだらいい方だろうな。それは嫌だぜ。
ま、そういうのは後でもっと考えるとして、だ。先ずは夕食をどうするべきか考えなければならない。よくよく考えると、俺昼食も食べていない。道理でお腹がペコちゃんな訳だ。
一応寮に食堂があるが、一度横目に見た限り、正直あまり美味しくなさそうだ。俺は一応ある程度の料理はできる。しかし、キッチンがない。材料もない。寮の厨房を拝借するか?いやいや絶対変な目で見られる。ていうかばりばり混んでいる時間帯だし、無理無理。
どこか混んでなくて?料理できて?材料もあって?借りてもいい場所を探すか。若しくは外食か。外食って言っても学校の近くにはお店ないし、ちょっと歩くか馬車を借りるしかできない。別にそこまでして飯を食いたくはないな。
どうしたものか。食堂に行くしかないのか?でもあれ絶対不味いぞ。食ってる人の顔も相当なものだったし。
そう悩ませながら仕方なしに食堂に繋がる廊下を歩いていると、調理服を着た男が如何にも食べられそうな食材をカゴに持っている姿が見えた。材料の調達にも見えたが、にしては結構雑に運んでいた。若しかして、捨てるのか?
「そこの、何をしている」
取り敢えず聞くことにした。男は俺の声に驚き、しかし訳がわからない表情をする。
「何って、ゴミ捨てに行っています」
やはり捨てるのか。でも、まだ食べられそうだぞ。カゴに入っているのはジャガイモ、レタス、ニンジン、パっと見えるのはそれくらいか。ジャガイモは芽が出ているが、落とせば食べられし、レタスも少ししなっているが、食べるには申し分ない。ニンジンも少しばかり黒ずんでいるが、許容範囲内だし、全然いける。捨てる?あれを?まだ食えるだろう。
「まだ食べられそうではないか。捨ててしまうのか」
「えぇ。こんなもん、貴族様(・・・)の皿に出したら怒られますからね」
彼は皮肉にするように貴族様と強調しながらそう言う。俺、貴族ぞ?
これ、若しかして貰える?貰えたところで料理できる場所はない。が、そのままでも食える。最悪アレで凌ぐか?大丈夫。農業高校時代にあれより酷い物も散々食ってきたではないか。イケるイケる。
「それでは勿体無いではないか。何か他に使い所にはないのか?」
頼む。廃棄って言ってくれ!用途があるんじゃあ、申し訳ない。なんだか〇円で食堂を開くアイドルの気持ちがわかる気がする。
「まぁ、ないですね。このまま廃棄するだけですよ」
廃棄!その二文字を聞きたかった。よっし。セーフだセーフ。これには番組スタッフもニッコリするぜ。
「では、私が頂いても構わないかね?」
さぁ交渉だ。おや、相手側はかなり不透明な表情をしているぞ。そりゃそうか。いきなり変なおっさんが廃棄する野菜を貰おうってんだから。
「別に構わないけど、どうするんです?貰って」
「料理する」
「料理?貴方さん、料理できるんです?」
「多少は」
さぁ、早く渡すんだ。俺は今腹がペコちゃんなんだ。これ以上、待てない。
「料理できる場所はあるんですか?」
「…探す」
くそっ。嫌なところを突かれてしまった。ないよ?ないけど、頂けないかな。キッチンカーとかあったらいいのにな。
俺の返答に男は一息ため息を吐く。多分情けないって思ったのであろう。うーむ、反論できねぇ。
「じゃあ、うちの厨房使います?」
おっ?えっ?いいの?こっちとしちゃあ願ったり叶ったりだけど?いいの?
「学生食堂は今誰も使っていませんからね」
なるほど、学生食堂か。確かにあそこなら昼食の時しか使わないから使える。
「私としてはありがたいのだが、いいのかね?」
「えぇ、どうぞどうぞ。食材を大切にしている点、悪い人では無さそうですしね」
おぉぉ。ありがてぇ。まさか、こうすんなりとことが進むとは。
「あっ、そうだ。代わりに料理の味見をさせてください。現役料理人として厳しく評価しますよ?」
えぇー。プロがアマチュア評価するとか。タチ悪。俺人並み程度しかできんけど。仕方がない。交換条件として承諾するか。
「構わない。お手柔らかに頼む」
さて、何を作ろうか?
全くもってそうだ。俺だって食うものはよく確認する(尚、土がついている虫害だらけの大根をそのまま食べていた高校時代)。
「まぁ、補充もすぐ来ますから、後少しだけ経つと大丈夫です」
「ならば良いのだが」
きっと普段は悪くない料理を出すのだろう。
「取り敢えず感謝する、その」
「あぁ、ハンスです。ハンス・マルクスです。大丈夫ですよ。使ってない時に、またここを使ってください、えっと」
「ゲルハルト・フォン・レットウ=フォルベック、騎兵担当教授だ」
俺がそういうと、彼は少し何故だか固まってしまう。
「…フォン?」
「あぁ。これでも貴族だ」
今度は尚固まった。おいおい、折角の爽やか顔面が台無しではないか。
すると、彼はそのまま一歩身をひき、猛スピードで片膝をついて顔を床に着ける勢いで頭を下げた
「申し訳ございませんでした!」
そしてまぁでかい声でそんなことを言う。うるさ。
マジで続かない
投稿めっちゃ間違えてた
萎え