もはや何番煎じかもわからぬオーブ指導者層転生物 作:シチシチ
第二話
さてこのヘリオポリス。
原作の物語はこの地から始まる。平和*1な街に突如襲い来る存在に対して偶然あった軍の機密最新兵器に偶然乗り込んだ主人公は他を圧倒するスーパーコーディネイターであり〜から始まるのだが。
「既に重力が働いております。足元、お気をつけください」
「ええ。ありがとうございます」
今はそんなことどうだっていい。重要なことじゃない
いや、重要ではあるが目的はそこではない。
このコロニーでは地球連合軍の兵器を建造しているが、それだけではない。
その最新モビルスーツ開発計画に用いられるこれまた最新の兵器技術を盗用*2して自国用のモビルスーツの開発を国家元首に対して極秘*3で行っているのだ。
そして私はその責任者。我ながらやばいことしてるなー。
「事前のご指示通り、P04、05もパーツのロールアウト段階で組み立てをさせております」
「あれですね?」
「ええ。どちらもまだ未塗装ですが向かって右がP04、左がP05。P01からP03は、もうベイの方へ移送を」
MBF-P。
プロトアストレイシリーズ。
だからなんだよ許されるわけねえだろと令和の遵法精神が首をもたげるのを内心でそっと寝かしつける。この世界技術盗用とか日常茶飯事であり、まず特許の持ち主がその利用許可を求めてきた相手に何故求めたのか問い返すほどだ*6。
なお、この機体。原作アニメではリメイク前のOPに1カット登場したのみである*7。外伝作品群ASTRAYが活躍の場であり本編には量産型のMBF-M1 M1アストレイが出るのみである。
「ギナさんはもう到着を?」
「はい。ベイへの移動と積み込みもご自分で。あとは資料として確保した例のリニアキャノンも」
「ああ、あの……。イヤーコマリマシタネー、ドウゴマカシマショウカー」
ロンド・ギナ・サハク。
サハク家が次世代として作った男女双子の男の方。
彼の家であるサハク家はアスハ家と同じオーブ五大氏族の一つ。そんな彼はその次代を担う存在として製造された。
如何せん愛国心こそ強いものの、その方向性がオーブによる支配!だの支配者による統治!だののため周囲からの受けはイマイチで、案の定ASTRAY第一部ボスとして死んだ。まあ美味しくなって新登場!するんだけど*8。
サハク家はオーブのなかでも軍事を陰ながら司る家。表に出ることが少ないことから国民にはあまり認識されてはいないものの、政府や軍部の上の方には顔が利く。今回このような計画を実現できたのもサハク家の力によるところが大きい。
なお、その状況で私の役目はというと、看板。あるいは錦の御旗である。いざというときのスケープゴートともいう。
このような国の標榜に関わる計画ともなれば尻込みする者や内通を図るものなどが出る。そこを次期首長*9としてダイジョウブダヨーコワクナイヨーするのがお仕事。
「イサリ様。ロンド・ギナ様からです」
「おや、噂をすれば。ありがとうございます。……ギナ様?」
《イサリ・マヤか。P01の、積み込みは完了した。取り決め通り事前に運び出すはずでよいな?》
P01。彼の乗機がここで開発されたプロトアストレイシリーズの一号機であり、のちの通称はアストレイゴールドフレーム。ギンギラギンにさりげないフレーム色と白い装甲の機体*10なのだが、当初武器として350mmレールバズーカ「ゲイボルグ」というなんとも香ばしい名前の武器を持っていた。
盗品である。
もともとは連合軍側のG計画の一機X102デュエルのための装備だったのを、原作ではヘリオポリス攻撃で崩壊した構造物からの脱出のどさくさにパチっている。なんでアストレイシリーズの工場に連合の兵器があったのか疑問だったがヘリオポリス攻撃前からモルゲンレーテがパチっていたらしい。
やってくれおる喃...!(憤怒)
このあとヘリオポリス攻撃がなかったらどう誤魔化すつもりだったのか疑問でならない。全然普通に国際問題だが?
「ええ。主任技師たちの収容とともにお願いします」
《わかっている。ザフトの艦艇がL3に侵入したのは確認が取れているのだな?》
「はい。サーペントテールが過去に接触した部隊とのことです。情報通りクルーゼ隊でしょう」
《では出させる》
そう端的にだけ言って通信を切られてしまった。やっぱ微妙に嫌悪感隠しきれてないよね。叔父ウズミのこと大嫌いだもんなあの兄妹。*11*12
さて、そんな御曹司の彼がなんで遥々ヘリオポリスまで来ているのかといえば、私と同じくプロトアストレイを運び出すためだ。
というのもこのG計画の、情報が漏れたらしく今まさに襲撃直前と言ったところなのだ。
よって急ぎ運び出した...と言えれば話は単純だったのだがそうはい神崎。
敵はザフトだけでなくオーブ国内にもいた。このアストレイ開発計画は反対派もおり、彼らがアストレイ計画の成果を抹消せんとしているのだ。まあ、彼らの言い分であるところの中立国が、自国のコロニーで、戦争当事国の兵器を密造はおろかそこから技術を盗用して自分たち用の兵器を作ろう!計画は反対に値するとは思う。ただ、ギナたちが言うようにこの戦乱の世に中立を保つには自国の戦力を持つのは絶対という意見もまたそう。
生き残り戦略でどれだけ先を見るかの違いなのだ。どちらが悪いということもない。
「とにかく、積み込みを急いでください。04,05は想定通り私の乗ってきたクルーザーに」
「まさかL3なんて辺鄙な場所にわざわざ艦を寄越すとは思いませんでした。何を考えているのか、あるいは嗅ぎ付けられたってか本当なんです?」
「だとしてもそれは連合の計画の方でしょうから。今は隠蔽と運び出しを...!」
ズンッと一揺れ。
次いでけたたましい警報が鳴り響く。
《タネンバウム地区にて外殻に爆発!》
「始まっちゃいましたか」
「始まっちゃいましたかって、どういう!?」
「着ちゃったみたいですねザフト軍」
厳密には国家認証していないので自称・軍。
「イサリ様退避を!」
「その前にP04と05をこのまま押し込んじゃってください。それとアグレッサーの方は?」
「か、確認いたします」
ここに来た目的はプロトアストレイの回収だが、ついでにもう一つ受け渡しとしての面もあるのだ。
「叢雲氏の到着まで後しばらくは掛かるとのことです」
「んんー」
叢雲劾。
この世界でもトップエースの一人。
傭兵業を生業とし、今回、彼にプロトアストレイの運用とノウハウ蓄積を正式に私から出していた。
本来ならプロトアストレイを見たもの全てを排除することを反対派から依頼されてここ、ヘリオポリスを訪れるというのが流れなのだが、如何せんその後の裏切りでオーブへの印象が悪くなりそうなのと、彼の実力がずば抜けているのは確かなので、本命の量産型へのフィードバックを前提に機体を預ける計画だった。
なお、これはギナにも軍部にも入っていないためほとんど私個人の計画だったりする。だって原作知識由来の計画だったんだもん。言えないって。
「やむを得ません。隠蔽を兼ねてベイ部分は爆破してください」
「爆破ですか!?」
「非常用の隠蔽機構なんですから今が使いどきでしょう。奥の工廠区までを塞いで侵入防止も兼ねて」
「わ、わかりました」
「P04,05の積み込みが完了しました!」
「イサリ様、どうもシリンダー内部にMSが侵入してきたとのことです。また、連合のGが宇宙へ飛び立つのと同じくジンに護衛されるかのようであったと見てきたものがいます」
「あー....、鹵獲されちゃいましたが」
忙しいったらありゃしない。状況が刻一刻と変化している。もうあと数時間もすればこのヘリオポリスコロニーは他ならぬ原作主人公様たちの手で崩壊する*13。此処にいるメカニックは下っ端ひとりまでこういう仕事に投じれる優秀且つ貴重な人材。避難させねば。
「今出るのは危険かもですね。人員は全員避難カプセルへ。私はクルーザーで機を見ます」
「イサリ様もカプセルのほうがよろしいのでは?」
「最悪P04,05は処分せねばなりませんから、その判断ができるわたしがカプセルにはいるわけにはいかないでしょう?ほらいったいった」
作業員を近場の待避所へと追いやり、自分は乗ってきたクルーザーへ戻る。戻りすがら、ついででクルーザーの格納庫を覗く。互い合わせにぎっちぎちに2基のプロトアストレイが押し込まれていた。コックピットが跳ね上げる形式でだと開けるかどうか怪しいレベルだった。
「戻りました」
「イサリさま」
「上が落ち着くまでは我々もここに足止めです。どれだけかかりますかねぇ」
クルーザーの船橋部分に入り、ゲスト用の席に着きながら船長に指示を出す。船長も別に鉄火場に慣れているわけではないだろうがおびえるような雰囲気も出さないあたり、責任者としては満点を上げれる。
そうして待つこと数時間。
「イサリ様。生き残った外部カメラからの有線映像です」
「新造戦艦、アークエンジェル級でしたか。飛び立ちましたか......。しかしコロニー部分が」
「完全に崩壊してしまいました……」
「この規模の被害となると連合にもプラントにも何も言わないわけにはいきませんね……」
面倒な。
ただプラントに非難声明と謝罪・賠償請求を出してもG計画周りで突っつかれるし、しかも国家元首に秘密でやっているとなると政府の方でも紛糾するぞぅ。原作ではどう収めたんだこれは。
「イサリ様。船長。収音マイクが何か拾っています」
おや?
「なに?そいつも有線か?」
「はい。ベイブロックの生き残った回線からです」
≪バーカお宝のにおいがするってんだよ!リーアム!キメラを持って来い!あそこを掘るぜ!≫
おやおやおや?