もはや何番煎じかもわからぬオーブ指導者層転生物   作:シチシチ

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C.E.71年2月13日 低軌道会戦・3

第七話

 

《敵モビルスーツ四機、前衛の隊列を突破! ローラシア級一隻、それに追随してきます!》

《突破機はデュエル、バスター、ジン二機! いずれもアークエンジェルの降下経路へ向かっています! メネラオス、交戦開始!》

 

《フラガ大尉!》

 

 ストライクから入った声に、ムウはすぐ応じた。

 

《ああ。こっちでも見えている》

 

 メビウス・ゼロのコックピットから、ムウが艦橋との回線を開く。

 

《艦長、ゼロとストライクを出してくれ。デュエルとバスターは俺たちじゃなきゃ止めらんないでしょ!》

 

「何を馬鹿な! ――ストライク? ……たち?」

 

 マリューが聞き返した。

 

《僕が乗っています》

 

 今度は、キラの声が艦橋全体へ流れた。

 

「キラ!?」

 

 ミリアリアが顔を上げた。トールも作業の手を止め、振り返りかける。

 

「お前、ランチに乗ったんじゃ……」

 

 サイの声にも、キラはすぐには答えなかった。

 

「キラ君ッ……! どうしてあなた、そこにいるの!」

 

 マリュー自身にも、責めているのか、確かめようとしているのか分からなかった。

 

 キラはもう艦を降りたはずだった。これまで戦わせた礼を告げ、軍籍からも、ストライクからも解放した。少なくとも自分は、そのつもりで送り出した。

 

《怖くなくなったわけじゃありません。また戦うのは、今でも怖いです》

 

 息を継ぐ音が、回線に小さく混じる。

 

《ランチに乗る前、自分がどうしたいのかって聞かれたんです。それで僕は、ここに残りたいと思った。だから戻りました。戦えと言われたからじゃありません。僕が、自分で決めたんです》

 

 その答えを聞いても、マリューの胸に残る苦さは消えなかった。

 

 自分で選んだのだと言われれば、無理に降ろすことはできない。だが出撃を命じれば、結局また、この少年の力に頼ることになる。

 

 正面モニターでは、第八艦隊の艦が新たに一隻、光の中へ消えた。

 

《艦長。話は生き残ってからだ》

 

 ムウの声が、沈みかけた艦橋の空気を引き戻す。

 

《再収容できる限界まで、あとどれくらいある?》

 

「大気圏突入の第三段階へ移るまで、まだ猶予はあります」

 

 ノイマンが計器を確認する。

 

「ですが、メビウス・ゼロを収容するなら、その前に戻す必要があります。出撃準備を含めれば余裕はありません」

 

《ストライクの機体性能なら、単独でも降下できるはずです。僕は戻れなくても――》

 

「カタログ上の話でしょう。実際に試した人はいないわ」

 

 マリューが遮った。

 

「ですが、出撃させるべきです」

 

 ナタルの声だった。

 

 マリューが見ると、ナタルは正面の戦況表示から目を離さないまま続けた。

 

「デュエルとバスターをこのまま通せば、本艦は降下前に撃沈されます。本艦を地球へ降ろすために、第八艦隊は戦列へ残ったのです。ここで本艦を失えば、彼らが払っている犠牲を無駄にします」

 

 反対するための言葉ではなかった。艦を預かる者へ、決断に必要な事実を差し出している。

 

「帰還条件は?」

 

「メビウス・ゼロは第三段階への移行前に必ず収容。ストライクも帰艦を優先させます。単独降下は、帰艦不能となった場合だけです。両機には高度と残り時間を常時送ります」

 

 マリューは一度だけ目を閉じた。

 

 キラを戦わせたくないという思いと、今ここで彼の力が必要だという事実は、どちらかを否定すれば消えるものではない。

 

 目を開き、艦長席の通話器を握り直す。

 

「フラガ大尉、キラ君。両名の出撃を許可します。デュエルとバスターを食い止め、本艦の降下経路を確保してください」

 

《了解!》

 

《はい!》

 

「ただし、帰還命令には必ず従って。ストライクの単独降下を最初から当てにすることも許しません」

 

《分かりました》

 

「キラ!」

 

 ミリアリアが、発進回線へ割り込むように呼び掛けた。

 

《ごめん。話は戻ってから》

 

「絶対だからね」

 

 返事の代わりに、ストライクの発進準備完了を告げる信号が艦橋へ届いた。

 

《キラ・ヤマト、ストライク、行きます!》

 

《ムウ・ラ・フラガ、メビウス・ゼロ、出るぞ!》

 

 二機がアークエンジェルを離れた。

 

 先行したメビウス・ゼロがバスターへ向かい、ガンバレルを展開する。

 ストライクは、往還船の近くをかすめるデュエルへ機体を向けた。

 

          * * *

 

 警報が、P05のコックピットを満たしていた。

 

 モニターを見れば、ザフト機四機が第八艦隊を突破し接近していた。

 往還船は、合流前からオーブへ向かう降下経路に合わせて軌道を調整していた。すでに地球へ向けて降下加速を始めている。だが、戦闘空域を抜けたわけではない。

 

「往還船は進路を維持。こちらで止めます。劾さん!」

 

《了解。ブルーフレーム、前へ出る》

 

 劾の機体が加速する。

 

 P05のコンピュータが再び警告音を吐く。先頭にいたデュエルの進路を解析した結果だ。いわく、デュエルは往還船の進路をかすめるコース。

 先に突入を始めた往還船は、比較的長い距離を浅い角度で降下するため既に原則を始めている。後から突入を決めたアークエンジェルが先刻頭上を通過し、それを追う各機の進路が往還船の降下経路と交差したのだ。

 

「警告します。接近するザフト機は直ちにオーブ船から離れてください!」

 

 返答はない。だが、その右腕が動き、ビームライフルの銃口がこちらへ向く。こいつ正気か!?

 

 次の瞬間、ブルーフレームが視界を横切った。

 

 一撃。

 

 デュエルの機体が大きく弾かれ、ビームライフルの銃口が往還船から外れる。対ビームシールドに命中した衝撃で機体姿勢を大きく崩したためだ。

 

 直後、別方向から白い機体が飛び込んだ。

 

 ストライクがビームサーベルを振り下ろす。

 デュエルはそれを咄嗟に受け止め、二機はもつれるように往還船から離れていった。

 

 主役交代ということだ。ここから先は原作主人公様に、あとはお願いします。

 

 こちらに残ったのはジン二機。バスターはメビウス・ゼロと第八艦隊の対空砲火に阻まれたらしい。

 

 デュエルの一件を見てか、ジンの一機がブルーフレームへ銃口を向ける。

 

 《やらせるか!》

 

 イライジャのジンが、手にした重突撃銃から弾丸をばらまく。狙いを定めずに連射されるそれを前に、敵機は回避を強いられる。

 瞬間、青い機体がジンの懐へ入る。

 重なった2機の反応が分かれたときには、ジンは四肢から力が抜け、往還船の進路から外れていった。ほどなく、センサー上の反応も消える。

 

《一機、落とした。残りも片づける》

 

「いいえ、残るジンは私が引き受けます。劾さんは第八艦隊へ」

 

《今の依頼には入っていない》

 

 ですよね。

 

 分かっていて言った。事前の協議にはなかった提案だ。

 だが、できれば介入しておきたい。既に第八艦隊旗艦メネラオスまで砲火が届きつつあり、このままでは被弾も時間の問題だ。

 

「ええ。ですから、今ここで依頼を中断します」

《中断すれば、俺がお前の指示に従う理由もなくなるが?》

「承知しています。ハルバートン提督、回線をお借りしています。お聞きでしたか?」

《聞こえている。この状況で契約交渉かね》

 

 互いに危険な状況だ。メネラオスは徐々に僚艦を失いつつあり、眼前にはローラシア級フリゲートが迫る。こちらも眼前にジン。

 手早くまとめる必要があると判断し、劾との話がまとまる以前から通信にハルバートン提督を巻き込んだ。

 

「この状況だからです。オーブからの依頼のまま、連合軍を援護させるわけにはいきませんので」

 

 残ったジンが重突撃銃を撃つ。眼前の小勢を手早く排除し、アークエンジェルへ取りつく算段か。

 私はP05をジンと往還船との間へ滑り込ませ、シールドで射線を切った。

 

 衝撃が腕を震わせる。

 案山子どころか、射撃場の的では? いやいや、弱音を吐いている暇はない。

 

《分かった。叢雲劾、第八艦隊司令として依頼する。メネラオスの退艦が完了するまで、我々を援護してほしい》

《報酬と条件は?》

「私が仲介します。詳細は生き残ってから詰めてくださいッ! とりあえず新星防衛と同額で!」

《かまわん、出す!》

 

《……任務了解》

 

 ブルーフレームが機体を翻し、第八艦隊の戦列へ向かった。

 

 戦場のど真ん中で契約書は出せない。通信記録で強請ってもらうほかあるまい。通信記録はこちらにも残る以上、軽々しく反故にはできないだろう。

 

 残るジンが往還船への距離を詰めようと姿勢を変えるのを見て取る。

 私は撃墜を狙わず、その進路へP05を置き続けるように、スラスターを吹かす。

 

 ビームライフルを撃つ。撃つ撃つ撃つ。

 外れる。全部はずれ。

 

 相手が撃つ。

 こちらも外れる。

 

 まっずいぞぅ。下手糞同士の戦いが始まってしまった。大気圏再突入を目前にした、この状況で!

 

 しかも、こちらには守るべき進路がある。相手をそこへ入れないようにしつつ、このまま押し止めなくてはならない。

 できるか!?

 

          * * *

 

 メネラオスの艦橋では、警報が途切れることなく鳴り続けていた。

 

 艦隊の各所から、被害報告と通信途絶が伝えられる。

 

「左舷推進器、応答ありません!」

「敵ローラシア級、さらに接近!」

「ベルグラーノ撃沈! セレウコスとの通信途絶!」

 

 ハルバートンは正面モニターを見上げた。

 

 アークエンジェルは地球へ向け、すでに降下軌道へ入っている。

 その周囲ではストライクとメビウス・ゼロが、追いすがるG2機を押し止めていた。

 

 一方、メネラオスへ向かうローラシア級ガモフは止まらない。

 

 砲撃で艦体を削られながら、それでも突入を続けている。

「差し違えるつもりか!?」

 

 眼前に迫るローラシア級にホフマン大佐も思わず立ち上がる。

 

「提督、本艦はもうもちません!」

「艦橋要員を除き、総員退艦を発令。使用可能なシャトルをすべて出せ。負傷者から乗せろよ!」

「提督も、すぐに退艦を!」

「艦隊へ命令を送った後だ!」

 

 通信士が回線を開く。

 

《第八艦隊各艦へ。アークエンジェルの降下を援護後、各艦の判断で離脱せよ。月へ戻れる艦は月へ。地球降下が可能なシャトルをもつ艦は、生存を最優先とせよ》

 

 命令への返答は、すべての艦から戻ったわけではなかった。

 

 それでもハルバートンは、最後まで聞こえている者へ言葉を続けた。

 

《諸君の働きによって、アークエンジェルは地球へ到達する。ここまでよく戦ってくれた》

 

 通信を終え、退艦艇の発進を確認したハルバートンも、側近に促されて艦橋を離れる。最後の退艦艇がメネラオスを離れた直後、ガモフが残された旗艦へ迫った。

 

 間へ、青いモビルスーツが飛び込む。

 

 ブルーフレームだった。

 

          * * *

 

 P05のモニターの隅で、メネラオスから複数のシャトルが離れていくのが見えた。直後、その背後でガモフの機関部が爆発した。

 劾の一撃で破壊された機関部から誘爆が走り、ガモフの艦体が跳ね上がる。あわやシャトルまで体当たりに巻き込まれ、木っ端みじんかと思ったが、メネラオスの残骸が跳ね上がったガモフを受け止め、シャトルの盾となった。

 

 P05のモニターには、脱出したシャトルがそのままアラスカへの降下予定経路に乗ったと表示されている。

 

「メネラオスを退艦したシャトルからの報告で、ハルバートン提督の無事を確認しました!」

 

 往還船からの報告に、私は息を吐いた。

 

 次の瞬間、遠方で光が膨らんだ。

 

 ローラシア級ガモフとアガメムノン級メネラオスの反応がともに消える。もつれあう残骸がまとめて爆散したのだ。

 少し遅れて、その爆発からブルーフレームが飛び出した。

 

「劾さん。連合からの依頼は?」

 

《ガモフ撃沈。メネラオスの退艦までの護衛も完了した。依頼は達成だ》

 

「では、改めて依頼します。往還船をオーブまで護衛してください。報酬は先ほどと同額で」

 

《引き受けた。収容位置を送れ》

 

「すぐ送ります。今度こそ、地上でお会いしましょう」

 

《そうなるよう努力する》

 

 ブルーフレームが往還船へ向かう。

 

 私は、まだ前方にいるジンとの間合いを保ちながら、往還船の降下経路を確認した。

 

 地球が、視界のほとんどを埋めている。

 

 往還船はオーブへ。

 メネラオスから脱出したシャトルはアラスカへ。

 

 そして、アラスカを目指していたはずのアークエンジェルは、戦闘によって予定の降下経路から外れ始めていた。

 

 ストライクの降下方向へ、アークエンジェルが舵を切るのが見える。

 デュエルとバスターの姿は見えない。

 

 白い艦と白いモビルスーツは、赤く燃える大気圏へ消えていった。

 

 どかんっ

 

 「わぁ!」

 《任務が戻った以上落としたぞ》 

 

 ここにきて往還船にとりつこうとしていたジンも撃墜。

 既に重力にとらわれつつあり、助かるには往還船しかないと判断したのか。距離を詰めてきたところをイライジャ氏によって撃墜された。往還船へ近づけず、サーペントテールが戻るところまで持たせたのだから、私の仕事としては勝ちでよいだろう。

 

 アークエンジェルの降下先は、原作どおりならアフリカだ。

 

 第八艦隊の艦影は、もうほとんど残っていない。

 月へ向けて離脱できた艦も、こちらの観測範囲にはなかった。

 

 艦隊の戦力としては、全滅。

 

 それでも、メネラオスから離れたシャトルの反応は残っている。

 最後に離れた一隻からは、ハルバートン提督の識別信号も返っていた。

 

 助けられた。何もかもではなかったが。

 第八艦隊の多くの兵士が死んだ。私が何をしようと、戦争そのものは止まらなかった。

 

 それでも、助けられた命まで、なかったことにはならない。オーブからの避難民、ハルバートン提督たちメネラオスの乗員。

 

 先ほど、礼を受け取ろうとしないキラへ返した理屈を、今度は自分へ返す。

 

 ブルーフレームとイライジャのジンは、すでに往還船の収容位置へ取りついていた。

 

「P05、往還船へ戻ります」

 

 返ってきた誘導信号へ進路を合わせる。

 目指すはオーブ。我が新たな故国。

 




よくわかるコズミックイラ
~C.E.9 第3次世界大戦終結。大国3つ中小国8つに世界が分割される。*1
C.E.15 最初のコーディネイター木星へ。このおっさんのうかつな発言がほぼほぼ諸悪の根源*2
*3
C.E.16 一回目の禁止。なお密造コーディネイター。
C.E.44 プラントの第一群コロニー完成。金を出したのはもちろん大国3国*4*5*6
C.E.54 S2インフル流行。*7
C.E.55 プラントでワクチンが開発*8
同年 2回目のコーディネイター製造の禁止。キラ達はこの年生まれのためギリギリセーフ。
C.E.65 プラントの与党が独立派である黄道同盟に
C.E.68~C.E.70 独立を狙っては殺されを繰り返していた*9*10
C.E.70 国連が交渉の場を設けたところ国連代表と理事国代表メンバーがまとめて爆殺。なお、プラント代表のみ遅刻して到着し無傷*11

プラント理事国による国連に代わる組織、地球連合の立ち上げ、~そして戦争へ~

この後は
1.食料生産プラントへ勝手に改装していたユニウス市第7~10コロニーへの攻撃。ユニウス・セブンへの核攻撃*12
2.報復のニュートロンジャマー散布*13*14*15
3.地球降下作戦*16
4.東アジア共和国の資源衛星「新星」強奪。*17

*1
最小はオーブ。次点でスカンジナビア王国

*2
僕はナチュラルに生まれた者ではない...とか、僕はコーディネイター...とか言った。

*3
遺伝子改造人間告白をしたこいつはオリンピック陸上銀メダリストでアメフトのスター選手で17歳でMIT博士課程修了ノーベル賞候補者。そりゃ軋轢生むよ

*4
いわゆるプラント理事国。大西洋連邦・ユーラシア連邦・東アジア共和国

*5
プラントの実態はほぼ植民地。コーディネイターの能力を十全に生かして生産された富を理事国がちゅーちゅーする仕組み

*6
利益を得られない非理事国との関係も悪化

*7
なお、ナチュラルしか感染しない模様

*8
なお、コーディネイターはだいたい免疫が強化されているため病気にかからない。そのためプラントは明確に薬学分野が雑魚。なのにおやぁ?

*9
理事国以外からの食糧輸入→輸送船の撃沈

*10
プラント評議員議員がテロられる→理事国が糸を引いていたことが判明

*11
ラクス・クラインの父親

*12
死者24万

*13
3基で地球を覆える規模を1万発投下した

*14
原発が主の地表は軒並みエネルギー不足へ。凍死・餓死によって死者10億。この時4月。ロシア、ヨーロッパ、カナダあたりは気温一桁どころかマイナスもある

*15
これを主導しといて穏健派ってマジ?(シーゲル・クライン)

*16
実は二回目。一回目は普通に失敗した。上述の2はこれの反省とも

*17
のちにボアズと改称して自国の防衛要塞に転用

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