貴方の時間を少しだけいただけると幸いです。
ぜひ、お楽しみください。
全くの予測不能。てっきり─────。
(0)
病室にて、幽鬼。
また病室にて、鷹三。
(1)
「やあ」
久しぶりですな、と鷹三が続ける。
生きてたのか。
まんま、同じことを鷹三に訊く。
「そりゃ、ギリギリね。」
目線を斜め上にやり、舌を出しながら言う。
「して……何回?」
「……いやね、まあ。58だよ」
と、なんか言いづらそうに答える。
目の前に93がいるからだろうか?
「いや、悪いね。こんな出迎えになって。」
こんな、というのはもちろん、病室のベッドに横になっているからである。
義肢とは言えど、肉体といえば肉体だ。
生身の部分の銃創の修復もあれば、同じように義肢の修復もある。
構わないさ、と続け、私が「なんで来たの?」と訊く。
「無論、あんたの惨めな姿を見に来たんだよ……と、それは冗談で。」
つまらない冗談だ。いや、冗談になってない。
「ホントの理由はだね…」
「あんたの99回目に、私を呼んで欲しいんだ」
(2)
へ?
今、こいつなんて言ったんだ?
「99回目に私を呼んでくれ」、と?
「……どうした?大将の遺志でも継ぎたくなったか?」
鷹三はそれを鼻で笑い。
「生憎、大将は生きてるよ。ま、死んでるようなもんだけどね」
生きてるのか。
勝手に死んでたもんと思っていたが。
「つまりだけどさ、尸狼は、プレイヤー復帰不可の怪我を負ったわけだ?」
「ご名答」
しかしながら、別に復帰不可という程のものでも無いらしい。
腕1本と両脚というところ。
ま、〈ああいうやつ〉には相当屈辱だろう。
ああ、そうそう。
「で、継ぐわけでもないならさ、なんで99回目に呼んで欲しいわけ?」
(3)
んまあ特に理由はないんだけどさ、と軽く息継ぎをして。
「あんたの死に様を見届けてみたくってね。」
……私が、死ぬとでも?
「いや、栄光を掴む瞬間かな」
と、幽鬼の圧に飲まれたのか、言い直す。
「どちらにせよ、あんたの行く末を見届けたいってこった。」
「許可、してくれるかい?」
なんと、ふざけた理由。
これでもトッププレイヤーなんだけどな。
いや……
〈上等だよ〉。
やってやる。
「いいよ。」
「でも、それまでに死ぬのはやめてくれよ?」
たっぷりと、皮肉を。
(4)
鷹三は、本心をそのまま幽鬼に伝えた。
無論、全てでは無い。
実際、鷹三はプレイヤーをやめようとした。
しかしそれでも。
まだ。
依然。
私が生きているというのなら。
いや、〈生きている間は〉。
この殺人ゲームの行く末を。
幽鬼の、成ったその後を、見てみたいという好奇心が勝った。
好奇心は、人を人たらしめるそのものだと、鷹三は考える。
しかし、ふと。
〈好奇心は猫をも殺す〉と。
それでは、好奇心は……
鷹も、殺してしまうのだろうか?
(5)
「感謝するよ。」
「それを示さないとあんたは納得してくれないだろうからさ。」
なんか、いる?
と、鷹三が尋ねてきた。
それが感謝の印なのかとは思ったが、まあそれでいいだろう。
「いいよ、感謝はいらない。」
でもさ、できるなら──────。
「尸狼に、1度だけ会わせれくれ。」
数秒、驚きを含んだ沈黙が流れ。
「御意」
と。それで。
こちらを見ず、手だけを振りながら、鷹三は去っていった。