白煙は、爆発の余韻を引きずるように体育館の中へゆっくりと広がっていた。
焦げた木材の匂いに火薬の刺激臭と
焼けたゴムの臭気が重なり、息をするだけで喉の奥がひりつく。
何人もの生徒が激しく咳き込み、
涙目になりながら制服の袖やハンカチで口元を覆っていた。
器具庫の周辺では、爆風によって吹き飛ばされた棚やマットが無残に散乱している。
破れたマットの端にはまだ小さな火が残っており、
赤い炎が獲物を確かめるように、ゆっくりと表面を舐めていた。
体育館の照明自体は辛うじて生きている。
しかし、天井から吊り下げられた照明器具は爆発の衝撃で大きく揺れ続け、
そのたびに床へ不安定な影を落としていた。
建物全体が軋んでいるような振動も残り、
体育館そのものが今にも崩れ落ちるのではないかという錯覚を、
生徒たちへ与えている。
「落ち着け!」
坂上数馬の怒声が体育館全体へ響き渡った。
「出口へ走るな!その場で止まれ!」
だが、間近で本物の爆発を目撃した生徒たちの恐怖は、
既に理性で抑えられる限界を超えていた。
女子生徒の一人が、涙を流しながら入口へ向かって駆け出す。
「嫌ぁぁぁっ!」
その姿を見た瞬間、周囲にいた数人の生徒も反射的に動き出した。
誰か一人が逃げれば、自分も逃げなければならないと思う。
理屈ではない。
危険から離れようとする、人間の本能だった。
「待って!」
一之瀬帆波が叫び、煙の中を駆け抜けて入口側へ回り込んだ。
「押さないで!誰かが転んだら、もっと危ないから!」
その声に反応して、何人かの足は止まった。
しかし、全員ではない。
恐怖によって生まれた動きは、理性よりも速く伝染する。
体育館の入口付近では、生徒同士が互いを押し退けるように密集し始めていた。
やがて一人の女子生徒が足を滑らせ、床へ倒れかける。
「きゃっ!」
その身体が完全に倒れるより先に、軽井沢恵が反射的に腕を伸ばした。
「危ない!」
軽井沢は女子生徒の腕を掴み、
後方から押し寄せる人の波へ飲み込まれないよう、必死に身体を引き戻した。
だが、後ろから来る勢いは止まらない。
「押さないでって言ってるでしょ!」
軽井沢が声を張り上げる。
その声は恐怖で震え、今にも泣き出しそうだった。
それでも、掴んだ手だけは決して離さない。
櫛田桔梗も別方向から人混みへ割って入った。
「止まって!お願いだから、一度止まって!」
普段の柔らかく明るい声ではない。
必死に周囲を制止しようとする、切迫した声だった。
「今走ったら、転んだ人が踏まれちゃうから!」
それでも、人の流れは簡単には止まらなかった。
その時だった。
「黙れ」
低く冷たい声が、人混みの騒音を切り裂いた。
龍園翔が、入口へ向かって歩いてくる。
彼は逃げようとしていた男子生徒の胸倉を乱暴に掴み、
そのまま身体を持ち上げるように引き寄せた。
「う、うわっ!?」
「聞こえなかったのか?」
龍園の目は、少しも笑っていなかった。
「このまま押し合えば死ぬって言ってんだよ」
男子生徒の顔から血の気が引く。
龍園は怯えた相手をそのまま壁へ押しつけ、周囲にも聞こえる声で言い放った。
「次に誰かを押した奴は、俺が先に潰す」
あまりにも暴力的な制止だった。
だが、その威圧には即効性があった。
龍園の近くにいた男子生徒たちは、反射的に足を止める。
さらにアルベルトが入口の横へ無言で立つと、
その巨体だけで人の流れを塞ぐ壁になった。
石崎大地も慌てながら両手を広げる。
「お、おい!順番守れって!一気に行こうとすんな!」
伊吹澪は床へ倒れかけていた女子生徒の腕を掴み、舌打ちしながら立たせた。
「立てる?」
「う、うん……」
「だったら走らないで。余計危ないから」
体育館全体は、あと少し何かが崩れれば、完全な集団パニックへ陥っていた。
それでも、辛うじて繋ぎ止められている。
教師たちが出口を確保し、一之瀬と平田が生徒を落ち着かせ、
軽井沢と櫛田が転倒者を守る。
龍園たちは威圧と力で人の流れを押し止めていた。
それぞれの方法は違う。
だが、体育館が崩壊するのを、別々の方向から必死に食い止めていた。
オレは煙の向こうへ視線を向ける。
器具庫周辺の損傷は大きく見えるが、爆発そのものの範囲は限定されていた。
真嶋が予測していた通りだ。
山内は、今すぐ体育館にいる全員をまとめて消し去るつもりではない。
少なくとも、現段階では。
山内が狙っているのは、単純な破壊ではない。
生徒たちへ恐怖を植えつけ、精神と体力を削り、互いを疑わせる。
そして最後には、自分たちの意思で何かを選ばせる。
その過程を見ることこそが、山内の目的なのだろう。
「綾小路くん!」
堀北鈴音が煙の中からこちらへ歩いてきた。
頬には煤が付着し、普段の整った姿とは程遠い。
それでも、表情だけは必死に冷静さを保っていた。
「負傷者が出ているわ」
「重傷者はいるか?」
「今のところ、命に関わる怪我をした人はいないみたい」
「なら、爆発そのものよりパニックの方が危険だ」
「ええ……」
堀北は体育館全体を見回した。
床へ座り込んで泣いている生徒がいる。
呼吸を乱し、過呼吸になりかけている一年生もいる。
震えながら友人の手を握っている女子生徒や、
教師へ縋りついている生徒の姿も見えた。
誰もが恐怖を隠せず、
体育館全体を覆う空気そのものが今にも崩れそうになっている。
「こんなの……」
堀北が小さく呟いた。
「もう、学校じゃないわ」
その通りだった。
ここは既に教育を受けるための場所ではない。
巨大な密室であり、人間が恐怖によって
どう壊れていくのかを試す実験場へ変わっている。
山内春樹は、校舎に爆弾を仕掛けただけではない。
学校そのものを、一つの巨大な爆弾へ変えていた。
その時、体育館のスピーカーから激しいノイズが流れた。
生徒たちの声が止まり、誰もが天井を見上げる。
やがて、山内の笑い声が響いた。
『いいねぇ。最高だよ』
体育館全体が凍りつく。
『ちゃんと怖がってるじゃん。
やっぱり本物の爆発を一度見せると、反応が全然違うな』
誰も言葉を返さない。
この状況を楽しんでいるのは、山内ただ一人だった。
『なぁ、今どんな気分だ?
安全だと思ってた場所が、いきなり吹っ飛ぶってさ。怖いよな?』
軽井沢が悔しそうに歯を食いしばり、
櫛田も引き攣った表情でスピーカーを見上げている。
山内は満足そうに笑った後、少しだけ声を低くした。
『でも、これはまだ序章なんだよ』
体育館の緊張がさらに強くなる。
『次はもっと面白いぞ』
オレは僅かに目を細めた。
次の問題が来る。
『北棟三階。資料室前』
山内は、こちらの反応を確かめるように間を置いた。
『そこに感圧式の仕掛けがある』
体育館の空気が一瞬で静まり返る。
『今、一人がその上に立ってる』
誰かが息を呑む音が聞こえた。
堀北も、信じられないものを聞いたように呟く。
「誰かが……踏んでいるの?」
山内の声は続く。
『足を離したら反応する。周囲にいる奴もまとめて巻き込まれるかもしれない』
そして、楽しそうに選択を突きつけた。
『助けに行くか、見捨てるか。好きな方を選べよ』
そこで放送は途切れた。
体育館中が沈黙する。
誰かがその場から動けず、一人で立ち続けている。
助けるためには、危険な北棟へ向かわなければならない。
しかも、救助に向かった側まで巻き込まれる可能性がある。
「最悪ですね」
坂柳有栖が静かに呟いた。
彼女は煙の残る器具庫を見つめたまま、落ち着いた声で分析を続ける。
「これは、私たちへ選択を強制するための問題です」
「選択……?」
一之瀬が聞き返す。
坂柳は小さく頷いた。
「助けに向かえば、救助する側の人間にも危険が及びます。
ですが、誰も行かなければ、その生徒は一人で取り残される」
僅かな間を置き、坂柳は結論を口にした。
「つまり、誰を優先し、どこまで危険を冒し、
場合によっては誰を切り捨てるのか。それを私たちへ突きつけているのでしょう」
体育館の空気が、さらに重く沈んだ。
実力によって評価され、能力によって選別され、
必要がないと判断されれば切り捨てられる。
それは、この学校が繰り返してきたことでもある。
山内は自分が味わった苦しみを、
より極端な形で生徒たち全員へ返そうとしている。
龍園がスピーカーを睨みつけた。
「それで、誰がそこにいるんだ?」
放送はすぐには答えなかった。
数秒の沈黙が、異様なほど長く感じられる。
まるで山内が体育館にいる全員の不安が膨らんでいくのを楽しみながら、
わざと間を取っているようだった。
やがて、再び笑い声が流れる。
『ああ、そうだな。名前くらい教えてやるか』
その瞬間、一之瀬帆波の肩が僅かに揺れた。
理由の分からない不安ではない。
自分にとって大切な誰かの名前が呼ばれると、
身体が先に理解していたかのような反応だった。
『白波千尋』
一之瀬の表情が凍りついた。
周囲は一瞬遅れてざわめき始める。
「白波って……」
「一之瀬のクラスの子だよな?」
「あの子、体育館にいなかったのか?」
一之瀬は息をすることさえ忘れたように、スピーカーを見上げている。
白波千尋は、一之瀬と同じクラスの生徒だ。
普段から一之瀬の近くにいることが多く、
困っている人がいれば放っておけない、穏やかで優しい少女だった。
そして何より、一之瀬にとって大切な親友でもある。
山内は、一之瀬の反応を見抜いているかのように笑った。
『今も泣きながら、必死にその場へ立ってるぜ。可哀想だよな』
その声には、同情など少しも含まれていない。
『動いたら自分だけじゃなく、周りまで危ない。
でも、その場から逃げることもできない。
誰も助けに来なかったら、ずっと一人のままだ』
一之瀬が小さく息を呑み、顔色が一気に白くなる。
「千尋ちゃんが……?」
掠れた声だった。
信じたくない気持ちと、
今すぐ助けに行かなければならないという焦りが、同時に押し寄せている。
山内はさらに追い打ちをかけた。
『ちなみに、北棟三階はかなり危ないぞ。
渡り廊下も一部崩れてる。行くなら急いだ方がいいんじゃねぇか?』
そこで放送が切れた。
体育館へ重い静寂が落ちる。
そして次の瞬間、一之瀬が出口へ向かって駆け出そうとした。
「私、行く!」
だが、その腕をオレが掴んだ。
「放して!」
一之瀬が勢いよく振り返る。
目は完全に揺れ、涙が滲み、呼吸も既に乱れ始めていた。
「千尋ちゃんが、一人でいるんだよ!?」
「落ち着け」
「落ち着いてなんかいられない!」
声が震えている。
今にも泣き出しそうだった。
「千尋ちゃんは怖がりなんだよ!高いところも苦手で、
狭い場所に閉じ込められるのも嫌いで……
そんな子が、一人でそんな場所にいるなんて……!」
一之瀬の肩が大きく震える。
普段の彼女なら、クラスメイトの前でここまで感情を露わにすることはない。
常に周囲へ気を配り、誰かが不安になれば真っ先に寄り添い、
自分の苦しさを表へ出さずにクラスを支えてきた。
だが今の一之瀬は、クラスの中心人物ではない。
一人の親友を助けたい、普通の女子高生だった。
「だから放して……!」
一之瀬はオレの手を振りほどこうとする。
しかし、オレは腕を離さなかった。
「今のお前が飛び出せば、白波だけじゃなく、ここにいる生徒たちまで崩れる」
「でも!」
「周りを見ろ」
オレは体育館全体を示した。
床へ座り込んで泣いている生徒がいる。
不安そうに一之瀬を見ている女子生徒もいる。
クラスメイトたちは、縋るような視線を彼女へ向けていた。
一之瀬は、その姿を見て言葉を失う。
「お前がいなくなれば、この体育館はまたパニックになる」
「……っ」
「白波を助けたいなら、まず冷静になれ」
一之瀬の目から、堪えていた涙が零れ落ちそうになる。
悔しさと恐怖と焦りが混ざり合い、
どの感情を優先すればいいのか分からなくなっている。
「でも……」
声が弱くなる。
「千尋ちゃん、本当に怖いと思うんだよ……」
その一言には重みがあった。
親友だからこそ、分かってしまう。
今の白波が、どれほど怯えているのか。
どれほど泣きながら助けを待っているのか。
どれほど孤独に耐えているのか。
想像できるからこそ、一之瀬は何も考えずに飛び出したかった。
しかし、それを止める声があった。
「一之瀬さん」
堀北が静かに呼びかける。
一之瀬が振り向くと、堀北は真っ直ぐ彼女を見ていた。
「あなたが行くべきではないわ」
「……」
「今、この体育館の生徒たちを支えられるのは、あなたしかいない」
「でも、千尋ちゃんが……!」
「だからこそ、助けられる人間が行くべきなのよ」
堀北はそう言い、オレへ視線を向けた。
一之瀬は唇を強く噛む。
涙が落ちそうになる。
それでも、彼女は崩れなかった。
崩れそうになりながらも、自分を頼っている生徒たちの前で踏みとどまった。
「……お願い」
一之瀬は俯いたまま言う。
「千尋ちゃんを、助けて……」
声は小さかった。
だが、その言葉には今の一之瀬が抱えている感情のすべてが込められていた。
オレは短く答える。
「ああ」
龍園が鼻で笑った。
「泣かせんなよ、優等生」
一之瀬は深く息を吸い込み、袖で涙を拭った。
完全に落ち着いたわけではない。
親友への不安も、今すぐ駆け出したい衝動も消えてはいない。
それでも彼女は、もう一度体育館全体を見回した。
怯える生徒たち。
不安に押し潰されそうな後輩たち。
そして、自分の言葉を待っているクラスメイトたち。
一之瀬帆波は、ゆっくりと前を向いた。
「……みんな、大丈夫だから」
まだ声は震えている。
それでも彼女は、白波を助けに向かうのではなく、この場へ残ることを選んだ。
「それで、代わりに誰が行くの?」
堀北が問いかける。
「慎重に状況を見られる人間が必要だ」
オレは答えた。
「それに、通路が崩れているなら、
状況によっては力ずくで突破できる人間もいた方がいい」
そこまで言って、オレは龍園へ目を向ける。
龍園は意図を察したように、口角を吊り上げた。
「俺も行けってことか?」
「嫌なら別にいい」
「面白れぇ」
龍園は楽しそうに笑う。
「いいぜ。ちょうど退屈してたところだ」
石崎が露骨に顔を引き攣らせた。
「えっ、また俺らも行く流れっすか?」
「当然だろ」
「マジかよぉ……!」
伊吹が呆れた顔を向ける。
「アンタ、毎回リアクションだけは普通の人よね」
「俺は普通の人間だからな!?」
そのやり取りへ割り込むように、体育館の入口側から笑い声が聞こえた。
「フッフッフッ」
全員が振り返る。
そこには高円寺六助がいた。
彼は壁へ身体を預けながら、
この惨状には似つかわしくない優雅な笑みを浮かべている。
まるで、この体育館の中で彼だけが別の世界を生きているようだった。
「随分と騒がしいねぇ」
堀北が驚いた顔をする。
「高円寺くん……!?」
「君たち、まだそんな場所で右往左往していたのかい?」
軽井沢が半泣きのまま叫ぶ。
「どこに行ってたのよ!」
高円寺は何事もなかったかのように髪を掻き上げた。
「少し校舎を散歩していただけさ」
「散歩!?」
「なかなか刺激的な朝だったよ」
周囲の生徒たちは、呆然と高円寺を見つめている。
なぜ、この男だけが平然としていられるのか。
オレは高円寺へ尋ねた。
「北棟の様子は見たか?」
「見たとも」
高円寺は微笑む。
「三階へ続く通路の一部が崩れている。
普通の人間なら、通るのは難しいだろうねぇ」
龍園が笑う。
「普通じゃねぇ奴なら行けるってことか」
「無論だとも」
高円寺は自信満々に胸を張った。
「この私なら、何の問題もない」
その自信は異常だった。
だが、この状況では頼もしくもある。
坂柳が静かにオレへ声をかけた。
「綾小路くん」
「何だ」
「山内くんが用意した仕掛けが一つだけとは限りません。
感圧式と説明しておきながら、その周囲に別の罠を用意している可能性もあります」
「分かっている」
「でしたら、大人数で動くべきではありません。
救助へ向かう人数が増えるほど、別の仕掛けへ触れる危険も高くなります」
龍園が苛立たしげに舌打ちする。
「チッ。どこまでも面倒くせぇな」
「でも、誰かは行かなきゃいけない」
一之瀬が言った。
体育館が静まり返る。
誰かを助けに行く。
言葉にすれば簡単だ。
だが、その先には本物の危険が待っている。
それでも、誰かが動かなければ白波は救われない。
「行くぞ」
オレはそう告げた。
龍園は笑い、高円寺は余裕の微笑みを浮かべる。
堀北は険しい表情をしたまま一歩前へ出た。
「私も行くわ」
「駄目だ」
「どうして?」
「ここで指示を出せる人間が必要だ」
堀北は言葉を詰まらせた。
悔しそうな表情だった。
自分も動きたいのだろう。
しかし、体育館の混乱を抑える役目が重要であることも理解している。
オレは一之瀬へ向き直った。
「白波は必ず助ける」
「うん」
一之瀬は小さく頷いた。
「信じるよ」
「ここにいる生徒たちを頼む」
「任せて」
続いて壇上付近へ視線を向ける。
南雲雅は腕を組み、こちらのやり取りを静かに見ていた。
「南雲先輩。三年生に北棟周辺の状況確認を頼めますか」
「分かった」
南雲は迷わず即答した。
最後に、煙の向こうへいる鬼龍院楓花を見る。
「鬼龍院先輩」
鬼龍院がこちらへ顔を向ける。
「あなたの観察眼を借りたい」
鬼龍院は僅かに笑った。
「面白い」
その一言だけだったが、了承したという意味だろう。
体育館を覆っていた空気が、ほんの少しだけ変わり始めた。
先ほどまでは、誰もが恐怖に支配され、ただ次の爆発を待つことしかできなかった。
だが今は、それぞれに役割が生まれている。
危険な場所へ向かい、白波を助ける者。
体育館へ残り、生徒たちを支える者。
周辺を調べ、退路を確保する者。
崩れた通路を突破し、罠を見抜く者。
山内春樹は、そのすべてをどこかから見ている。
実力によって人間を選別してきたこの学校が、
危機を前にして本当に実力を結集できるのか。
おそらく、それすら山内にとっては観察対象なのだろう。
オレは体育館の出口へ目を向けた。
その先の廊下には、まだ煙が残っている。
赤い非常灯が不規則に点滅し、遠くからはサイレンに似た警報音が鳴り続けていた。
事件は、まだ終わっていない。
北棟三階。
資料室前。
一人で動けずにいる白波千尋。
そして、残された時間は二十分。
次の試験が、始まろうとしていた。
一日一話で三作品を投稿するのは多いですか?
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いいぞ、どんどんやれ
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多い!読みきれない