魔法少女リリカルなのは EXCEEDS 〜Gun Blaze Vengeance Side-by-Side〜 作:三坂
海女取島 某所
侵略種を駆除した埠頭から車で10分ほどの距離、島全体を見渡せる位置に水守区市役所、海女取島分庁舎と書かれた2階建てのコンクリート製建造物が…
駐車スペースには役所のマークが描かれたあの特徴的で見慣れたミニバンが止まっていることから、ここが明智の勤務先のようだ。
あのあと分庁舎へと戻ってきた明智であったが、先ほどシイナと自分で駆除した侵略種の残骸の回収依頼を仕事用スマートフォンで依頼しつつ、何やら重そうな箱をミニバンのトランクへ次々と積み込んでいく。
「あっお疲れ様です、今日地元の猟友会の方と侵略種を駆除したのでその残骸回収を…はい、場所は海女取島の埠頭Aで…」
ちなみに運び込んでいるものは先ほどシイナに頼まれた弾薬類であり、内訳としてはソードオフショットガンや猟銃、また対物ライフルの弾といった感じであり、これにプラスしてグレネードも少しばかり入っているようだ。
本来であればアウトな行為ではあるものの、この分庁舎で勤務しているのは明智1人であり、他の職員に見られることがない上、弾の管理も上層部がガバガバだからこそなせる技と言ってもいい。
まあその分全ての業務を1人でこなさないといけないため、いくら電子化が進んでいる時代とはいえ大変なことには変わりないが…
「はいはい、あーあと本土の病院に入院してる〇〇さんの退院に関しても。島に戻りたいってことなのでその手続きも〇〇部署に伝えて貰えれば…お願いします」ピッ
ー…はぁ…、1人ってのもいいことばっかじゃないわねぇ…小さい島とはいえ全ての業務をしないといけないのは流石にしんどい…ーハァ…
そんなことを愚痴ってる間にも一通り弾薬やらなんやら積み込み終わった明智は、ボタンを押して電動式のトランクが閉まることを確認しつつ、慣れた足取りで運転席へと乗り込む。
「…ふぅ、とりあえず積み込んだからトランク閉めて…っと」ボムッ
その後エンジンを始動する(エルグランドのエンジンはe-POWERと呼ばれるものなので始動音は静か)と、ドライブのボタンを押してブレーキをゆっくり離しながら発進。
それなりに広い山道の下りを降りていき幹線道路的な通りに合流すると、シイナが暮らしている家に向けて車を走らせていくのであった。
「よっと…、本当地方の離島なのによくこんな新型車の運用許可降りたわね…試験運用とは言えど…。…まあとりあえずぱっぱとシイナに持っていきますか…」
モーター音
明智が分庁舎に戻った頃、島の中央部…あたり一帯森林に囲まれたこの場所に侵略種の侵入を防ぐために設置された頑丈そうな柵と電気柵に囲まれる形で建てられた立派な一軒家の姿があった。
敷地内には別荘っぽい建物はもちろんのこと、畑(ビニールハウス版もあり)やらちゃっとした森…また家畜(鶏)などや物資が入っているであろうコンテナが置かれており、ちょっとした自給自足程度なら問題なさそうにも思える。
そんなセツナの家の敷地内にある畑近くでは、ピンク髪のショートヘアに黒色のリボンを後頭部に身に着けた少女、久瀬セツナ(11歳)が上機嫌な表情を見せながら採れたての野菜を籠に収めていく。
「…♪」
すると家の出入り口である柵が開くと共に家主であるシイナがただいまと告げながら帰宅、それを聞いたセツナがおかえりと満面の笑みを見せながら野菜を入れた籠を抱えながら彼女の胸元へと飛び込む。
ガラガラ
「セツナ〜!!」
「しぃちゃん!おかえりしぃちゃん!!」
「うん〜♪ただいま!」
双方の家族は既に亡くなっているため、久瀬家は姉であるシイナと妹であるセツナの2人暮らしで暮らし。ちなみにシイナが今こうして猟友会として活動出来ているのも、今は既に居ない彼女のおじいちゃんが銃の扱いを教えてくれたから。
…世界中何処にいても侵略種の災害に巻き込まれるため…あまり先行きなどは良くないかもしれない、…が姉妹の関係は良好なのでぶっちゃけた話幸せに暮らせればそれでいいだろう。
そんなこんな話している間にも2人で家の中に入り、猟銃などをキチンと保管庫に戻して施錠をしたシイナはキッチンのテーブルイスに封筒片手に腰掛けると、セツナがお茶と水どっちがいいかと尋ねてきた。
「しーちゃん、お水と麦茶どっちがいい?」
「ありがとう〜、お水がいいなー」
その後水を持ってきてもらい美味しそうに一気に飲み干すと、手に持っていた封筒から取り出した1枚の紙に視線を落としていく。
そこに書かれていたのは学区外就学許可申請書という文字、どうやら島の高校を卒業したら本土で働きながら暮らすつもりらしい。
もちろんそれもセツナのためであり、高校を卒業して本土に引っ越した後は今の仕事を活かせる侵略種駆除ハンターとして活動しつつ、お金を貯めて彼女を本土のちゃんとした学校へ行かせて上げたいという思いがあるようだ。
「……」
とはいえ離島のこの島に比べると確かに設備やら施設は整っているとはいえ、本土で安全に暮らすにはかなりお金がかかるのもまた事実。
シイナが持っている紙の内容を一通り読んだセツナは、この島でも勉強は出来るから無理をしなくてもいいと申し訳なさそうな口調で話していく。
「……しぃちゃん私はこれ、本当に大丈夫だよ。ここでも勉強はちゃんと出来るし…私…不満なんてないんだし…」
もちろんそれはシイナも分かっており、それでも勉強が出来て頭の良いセツナを私立などの勉強に力を入れている学校に通わせてもっと成長してほしいという思いがあるらしい。
「そうかもしんないけど…セツナは頭いいんだし、勉強も好きでしょ?…国語も理科も算数もっ全部100点じゃん!」
「…それはそうなんだけど」
とはいえ先ほども言った通り本土の私立に通うだけでもお金がかなりかかるのに、安全に暮らしていこうとなるとセツナでもわかるぐらい費用がかかるのだとか…。
やはりそれが彼女にとって一番の心配であり、これ以上自分のためにシイナに負担がかかるのが申し訳ない気持ちもあるのだろう。
だがシイナは全然気にしていないらしく、お金の心配は気にせずに自分のやりたいことをやっていけばいいよ!と後押ししていく。
「私立の学費もそうなんだけど…、本土で安全に暮らすのって…お金がかかるんでしょ?」
「そんなの心配しなくても大丈夫…!お姉ちゃんにドンと任せといて!!」
もちろんセツナの言う通り本土で安全に暮らすには色々と大変、だがそれ以上に本土の都会ならお店がたくさんあるうえに、衣食住も困ることがないのだ。
確かにそれは魅力的ではあるため、セツナも確かにそれはいいかも…と口にしながも、自由奔放な姉に困り果て気味の表情を浮かべる。
「それに本土の都会ならお店が一杯…!服も食べ物も色々見られるよ〜!」
「…それはちょっと魅力的…かも」
それにシイナには明智という役所で働く親友がいるため、なんなら彼女をこき使っていい感じの場所を探してきて貰ったりという方法も使えるため、そのへんのことは心配しなくてもいいと答えていく。
相変わらず親友をこき使ってる姉に対してまたそんなことを…と少し呆れ気味の表情をセツナが浮かべていると、インターホンの音が室内に響き渡った。
「…まあお金の心配とかに戻るけど、本土に関係するなら明智っていう役所で働く親友がいるから!いい感じの場所を見つけて貰えば大丈夫!」
「…またお友達をこき使って…」ピンポーン
噂をすれば…とシイナが笑みを崩さずに部屋に設置された画面をタップすると暗転していた画面が起動、映像にきり替わると共に門の前に見慣れた明智の姿が映っていた。
もちろん尋ねてきた理由は分かりきっているため、持ってきてもらった弾薬などを家に運び込めるように、今から門を開けるから待っててと彼女に告げて画面を切っていく。
「おっ噂をすれば、はーいっ」ポチッ
『シイナー、ちゃんと言われたやつ持ってきたわよー』
「サンキュ明智、今から開けに行くから待ってて」ピッ
その後セツナにも荷物降ろすのを手伝ってほしいと告げていき、彼女も分かったと答えながら立ち上がっていくと、外に向かうためそのままリビングを後にしていくのであった。
「セツナー、明智が荷物持ってきたから降ろすの手伝ってくれるー?」
「うんわかった…!」
弾薬やらグレネードといったものが入った箱は合計3箱ほどエルグランドのトランク(3列目シートを撤去した状態)に積み込まれていたが、数もそこまでなかったこともあって下ろし作業は数分ほどで終わった。
いつもありがとうねーと笑みを見せながらお礼を口にしたシイナに対して、はいはいと受け流すように答えつつ、相変わらず人使いが荒いんだから…と内心突っ込みを入れていく。
「…こんなもんかな、まあ3箱しかないから3人ですればすぐに終わったわね」
「だね、でも本当にサンキュ明智。いつも助かってるわ〜」
「はいはい、そりゃどうも」
その後持ってくるだけ持ってきたため雑談もほどほどに分庁舎にそろそろ帰るねと告げた明智だったが、セツナが良かったらうちで夕飯を食べていかないか?と提案してきた。
いつも何かとお世話になっているためそのお礼も込めて…といったところだろう、明智もそれを聞くとまあ夕飯ぐらいなら…と頭の中で仕事のスケジュールを照らし合わせつつあっさりと了承。
「んじゃ私はそろそろ…」
「あっあーちゃん、良かったら夕飯だけでも食べていきませんか?」
「んぇ?夕飯を?」
「はい、いつも何かとお世話になってるので…せめて夕飯ぐらいは奢らないとって…」
「……まあ夕飯ぐらいなら、わかった。それじゃお言葉に甘えようかな」
それを聞いたセツナは満面の笑みを見せながら、なら早速夕飯の支度をしてくるね!と2人に告げながら上機嫌な雰囲気のままその場を後にしていく。
その様子を見ていたシイナは自分に対しては冷たいのに、セツナには甘いんだ…とニヤニヤしながら弄るように話しかけてくる。
「やった…!それじゃ今から夕飯の支度してくるね…!!」
「…本当私には冷たいのに、セツナには甘いんだから…ねー?明智っ」
まあセツナはシイナの妹とは思えないほど何でもできるうえに他人を気遣えるほど優しい性格をしているため、あんたとは偉い違いだからそう接してるだけと指摘。
するとそれを指摘されたシイナはてっきり否定するのかと思われたものの、あっさりと彼女の言葉を認めていき、確かに自分の妹は優しいうえに頼れる存在だとも頷く。
「そりゃセツナちゃんはいい子だからねー、気も利くしっ。姉とは偉い違いってやつだよー」
「何をー?…ってまあ確かにそうなんだけどさ、実際私も助かってるし」
もちろんシイナがセツナを本土の学校に通わせたいというのも見え見え(まあ前からそういった話をチラホラ聞いていたのもあるが)だったらしく、明智がはいこれ…ととある書類を手渡す。
そこには本土で暮らすに当たって安全な地域や行政支援、シイナが働きそうな侵略種駆除ハンターやセツナが安全に通える私立の学校といった内容が書かれており、流石にこれには彼女も想定外だったのか驚きの表情を露にしていた。
「…とりあえずはいこれ、アンタが前からチラホラ話してたから用意してみた」
「…これって…、本土で暮らすに当たっての奴?…すごっ、めっちゃ用意周到じゃん……」
本人曰く山ほどある事務仕事の合間を縫って色々と調べたためかなり大変だったとのこと、だがそれでも侵略種駆除を行う猟友会に所属しているとはいえ、ごく普通(?)の女子高生であるシイナにとってはかなりありがたいとも言える。
「言っとくけど調べるの大変だったんだからね、本土の役所に問い合わせたり自分で調べたり…山ほどある事務仕事の合間にするの」
「……」
ーそう言ってるけど…ちゃんと調べてくれてる……、私からすればこれだけでも充分ありがたい…ー
もし島の高校を卒業してセツナと共に本土に引っ越すつもりなら、寂しくはなるものの新しい家が見つかって暮らしが安定するまではサポートするつもりだとも答えた。
とはいえ最終的にセツナと安心して本土で暮らすとなればシイナ自身の頑張りにもよるが、島を離れた後の猟友会の仕事は自分が引き継ぐから、安心してほしいとも明かしていく。
「…まあもしここを離れるつもりなら、アンタのやってる猟友会としての侵略種駆除も引き継ぐつもり。あとあっちで安定するまではしっかりサポートするから」
「…そこまで…」
「…正直数少ない親友のアンタが居なくなるのは寂しいけど…、セツナのために決めたことだもん。出来るとこまではとことん支えてあげる、でもそれ以降はアンタ次第」
なんだかんだいっていい親友を持ったな…そんなことを思いながらしんみりしかけたシイナは、明智に悟られないようにさっさと家に上がってセツナの手料理食べるぞ!と意気込みながら駆け出す。
相変わらず自由奔放なんだから…そんなことを思いながらも笑みを浮かべた明智は、その後を追いかけるように家の中へと足を踏み入れるのであった。
「…よーし!おなかも減ってきたし!夕飯の支度手伝ってセツナの手料理食べるぞー!」タタッ
「…ったく、相変わらずなんだから…アンタは」
「ん〜!やっぱセツナの手料理最高っ!我ながら出来た妹だよー!」
「大げさだよしーちゃん…(汗)、それに全部私がしたわけじゃないし…」
辺りが少しオレンジ色になりつつある頃、久瀬のキッチンに置かれたテーブルを囲む形で2人はセツナの手料理を美味しそうに頬張っていた(主にシイナが)。
もちろん彼女1人で作ったわけではなく、小学生の高学年ということもあってシイナにも手伝ってもらってはいるものの、それでも年齢対してこれだけ出来れば充分だろう。
「いやいやっ!小学生でこれだけ出来れば充分だよー、やっぱセツナは頭いいし器用でなんでも出来ちゃうから羨ましいなー」
「あはは…、でもしぃーちゃんに言われると嬉しいかも…♪」
シイナともやり取りしながら明智にも今日の料理はどうかとセツナは尋ねていき、聞かれた彼女もいい感じの味で美味しいと答えてくれたため、つい嬉しそうな表情を見せながらガッツポーズを見せていく。
まあ普段コンビニ弁当ばっかりで米を自炊する程度で手料理をしないため、そりゃ余計に美味しく感じるでしょうねーとシイナがニヤけながら指摘する。
「あーちゃんのほうはどう、美味しい?」
「うん、凄く美味しいよー口あって食べやすいし」
「えへへ♪それはよかった…!」
「まあ明智、普段からコンビニ弁当とかだもんねー。米の自炊だけはしてるけど」
もちろん本人曰く出来れば料理などもしたい気持ちはあるのだが、仕事が忙しくて米の自炊以外出来る余裕がないらしい。
しかしだからといって偏りのある食事は身体に良くないため、セツナがちゃんとしたご飯は食べないと駄目だよ?と指摘しつつ、忙しくても簡単に出来る料理の作り方教えるよとも提案していく。
「…むぐ、出来れば料理も作りたいよ。でも仕事が忙しいからそういう余裕が全然…」
「むー、でもちゃんとご飯食べないと身体に悪いよー?あっ今度簡単に出来る料理教えてあげるよ…!」
流石にそこまでしてもらうのは申し訳ない…と最初こそ断ろうとした明智だったが、最終的にセツナに押されるかたちで承認してしまうことに。
「いや、流石にそこまでしてもらうのは…」
「ダーメっ!これもあーちゃんの為だもん、拒否権はないよ?」
「…あーはい…」汗
とまあそんなこんなでテーブルを相変わらず囲む形で夕飯を食べていた3人は、楽しげな雰囲気をリビングに響かせながら時間も忘れるほど会話に没頭していくのであった。