腹の底から響いてくるような重低音が分厚いコンクリートの壁を震わせていた。
雄英高校の広大な敷地内に建造された巨大スタジアム。その内部に設けられた一年A組の指定控室には、これから始まる大舞台に向けた独特の熱気と肌を刺すような静かな緊張感が充満している。
USJでの
この短い期間の中で、1-Aの生徒たちは競技種目の傾向を予測し、それに伴う各々の“個性”の研鑽と準備に明け暮れていた。中でも枢は他の誰よりも忙殺される日々を送っており、六月の仮免取得に向けた相澤からの膨大な課題を日々の授業と並行して処理するべく、睡眠時間を削って過密なスケジュールをこなしていたため、ここ最近の彼は常に深い欠伸を噛み殺している状態だった。
しかし、今日ばかりはその端正な顔に眠気の類は一切宿っていない。
「(流石にみんな気合い入ってるねぇ……今回は轟と爆豪、あとは上鳴あたりに期待かな)」
控室のパイプ椅子に深く腰掛けながら、枢はアイマスクの下の『六眼』で周囲のクラスメイトたちを静かに見渡した。
視線の先。部屋の隅では、何故か緑谷を強くライバル視し、周囲の空気を凍りつかせるほどの冷たい覇気を漂わせている轟の姿がある。
そして、そんな轟の様子を見て苛立ちに奥歯を軋ませつつも、普段よりもさらに倍増しで強烈な殺意と敵意を枢へ向けている爆豪。
さらに目を引いたのは、瞼を閉じ、どこか強張った面持ちで深呼吸を繰り返している上鳴の姿だった。
あの日、食堂で枢に明確な宣戦布告を叩きつけた上鳴は、この二週間誰よりも必死に自身の“個性”の制御と向き合っていた。
ここ最近は雄英敷地内の演習場───
「(みんな良い顔してんじゃん。やっぱり体育祭はこうじゃなきゃね)」
自分という壁を前にしても決して折れることなく牙を研ぎ続けてきた彼らの姿に、枢はただ純粋に今日の体育祭を楽しみにしているかのような底知れぬ不敵な笑みを浮かべていた。テレビの向こうで見ているであろう壊理や孤児院の子供たちに、最高のショーを見せるための舞台装置は完璧に仕上がっている。
「てか人ヤバくない? 例年は三年ステージがメインのはずなのに、なんで今年はこんなにこっちに人集まってんのさ……」
「USJで
「でもそれって、プロヒーローもたくさん見てくれてるってことだし激アツじゃん! ……コスチューム着れなかったのは残念だけど」
「先生方が公平を期す為と仰っていましたわね。ですが、確かサポート科のみ、事前の申請があれば自作の開発アイテムを持ち込んでいいとか何とか」
火花を散らす男性陣の重い空気とは打って変わって、女性陣は壁掛けのモニターに映し出される観客席の異様な熱狂ぶりを見つめながら心地良い高揚感に包まれていた。
学生らしく自分の実力をアピールしてスカウトの目に留まろうと意気込んでいる彼女たちの会話を耳にしながら、枢は小さく息を吐き、ここに来るまでの間あちこちの廊下で『今年は一年生ステージにNo.2ヒーローのエンデヴァーまで観戦しに来ている』という噂が飛び交っていたのを思い返す。
「(どうせスカウト目的っていうよりは息子の活躍を見に来たんだと思うけどね)」
枢の視線が先程緑谷に宣戦布告をし、人を寄せ付けないオーラを纏っている轟焦凍の横顔を捉える。
赤と白の半冷半燃の“個性”。そして、燃え盛る炎を操るNo.2ヒーロー。
二人の間にどんな確執があるのかは知らないが、それはそれとしてこちらにまで敵対心を向けてきている轟の姿に、枢は今回はもう半分も使ってくれるといいけどと内心で愉快そうに笑みを零した。
「───ねぇねぇ五条くん! 五条くんは第一種目って何やると思う?」
でも嫌われちゃってるみたいだしなーと枢が嘆息していると、スニーカーを軽やかに鳴らして葉隠が近寄って来た。
しかし弾むようなその声音とは裏腹に、葉隠の立ち位置は枢からおよそ一メートルほどの微妙な距離を保っている。
その原因は言うまでもなく、以前の戦闘訓練でのあの不慮の事故であることは明白だった。
「(流石に透視能力とかがある訳じゃないんだけどね……)」
嫌われているわけではないと分かってはいつつも、下手に触れることも出来ないので苦笑を零すに留まった枢が思考を切り替えて葉隠の問いに応じた。
「例年通りなら一種目目は個人戦だし、順当に行くなら借り物競走とか障害物競走とか……あとはサポート科の作ったアイテムを使ったタッチダウンみたいなのになるんじゃない?」
「あー、確かに! 毎年一つくらいは予想外なことしてくるし、サポート科のアピールってことでその線はありそう」
「タッチダウンってあのラグビーボールとか使ってやるやつだよな? 俺、アレ苦手なんだよなぁ……」
「蹴るのに結構コツとかいるもんね」
孤児院の子供たちにせがまれて毎年一緒に目にしているだけあって的確な予想を立てた枢。それに葉隠が見えない手を打ち鳴らして同意を示せば、一緒にいた砂藤が大きな身体を縮こまらせるようにして頭を掻き、同席の尾白と口田も相槌を打つように頷いていた。
その三人の様子を見て、枢は不思議そうに首を傾げるとアイマスクの下で『六眼』を瞬かせながら言葉を告げた。
「いや、今回は今までの体育祭と違って“個性”の使用アリの体育祭なんだし、そういう意味じゃ三人とも“個性”使えば楽勝でしょ」
「「「え?」」」
三人が揃って間抜けな声を漏らす。
枢は呆れたように肩を竦め、彼らの“個性”の特性を瞬時に言語化して並べ立てた。
「砂藤の『シュガードープ』なら細かいコツなんか無視して力押しでボール吹っ飛ばして後は走るだけ。尾白の『尻尾』ならその柔軟さとバネを活かして空中を使った立体的な動きが出来る。口田の『生き物ボイス』に至ってはそこら辺の鳥に指示だしてボール運ばせるとか虫でも使って相手の視界奪うとか、やろうと思えば幾らでも抜け道あるじゃん」
さらりと言ってのけられた自身の“個性”の最適解とも言える戦術。
彼らには先日、枢の口から『六眼』という特異体質の件が知らされている。しかし頭では理解していても、自分たち以上に“個性”の応用力と可能性を瞬時に見抜き、的確すぎるアドバイスをいとも容易く提示してくる枢の姿に三人は若干引いたような姿勢を見せていた。
「……五条って、ある意味プロヒーローとかよりも教師とかの方が向いてそうだよな」
「うん。……ついでに、かなり好き嫌いが分かれそうな部類の」
「───!」
「はは、マジビンタされたい感じ?」
砂藤が引き攣った笑いを浮かべながらポツリと漏らせば、尾白が深く頷き、口田もまた残像が見えそうなほどの勢いで首を縦に振っていた。
圧倒的な実力を持ち、『六眼』も相俟って生徒の才能を見抜く目は確かなのだが、性格が致命的に軽薄で無自覚に煽りスキルが高い。もし彼が教師になれば、相澤とはまた違ったベクトルで胃に穴の空く生徒が続出することは想像に難くない。
三人の失礼な評価に対し朗らかに笑いつつも枢から物騒なジョークが飛び出せば、張り詰めた控室の中でそこだけが妙にマイペースで日常的な空気を醸し出していた。
「皆、準備は出来てるか!? もうじき入場の時間だぞ!!」
そんな控室の一幕を断ち切るように、扉を勢いよく開いた飯田の声が室内に響き渡る。
いよいよ始まる雄英体育祭。
枢はゆっくりとパイプ椅子から立ち上がると、アイマスクのズレを指先で直し、心底楽しそうな笑みを携えたまま入場ゲートへと歩みを進めるのであった。
☆
鼓膜を揺らすどころか、内臓の奥底まで直接響いてくるような重低音が巨大なスタジアム全体を支配していた。
『さぁさぁエビバディ!! 待ちに待った青春の祭典、雄英体育祭の開幕だぜェ!! 今年は例年以上に激アツな展開が目白押し! なんたって、いきなりあの
上空の巨大スピーカーから降り注ぐ、実況席のプレゼント・マイクによる鼓舞と煽り。それに呼応するように、スタジアムをすり鉢状に囲む数万人規模の観客席から地鳴りのような大歓声と無数の拍手が巻き起こった。
『ヒーロー科、一年A組ぃぃぃッ!!』
高らかなアナウンスを合図に、スタジアム東側の巨大ゲートから、まばゆい初夏の陽光の下へと生徒たちが歩みを進める。彼らを出迎えたのは、全方位から突き刺さる熱狂的な視線の雨と、無数のテレビカメラが放つ無機質なレンズの群れだった。
「す、すごい人だね……! なんだか見られてるってだけで息が詰まりそうだよ……」
列の先頭付近を歩く緑谷出久は、周囲からの圧倒的なプレッシャーに顔を強張らせ、胸元をギュッと握り締めながら震える息を吐き出していた。無理もない。ただの高校生が、数万の人間から一斉に値踏みされるような視線を向けられる経験など、これまでの人生にあるはずがないのだから。
「おいおい緑谷、呑まれてどうすんだよ! 俺たちをスカウトしに来てくれるプロのヒーローたちがこんなに見てくれてんだぜ!?」
切島鋭児郎が緑谷の肩を叩き、興奮に頬を紅潮させて白い歯を見せる。彼のように、この途轍もない熱気と緊張感を、自身の未来を切り拓くための強烈なスパイスとして変換している生徒も少なくない。
「(ハッ、アガるじゃねェか)」
「(クソ親父……)」
爆豪勝己は渦巻く歓声を自らを讃えるファンファーレと捉え、獰猛な笑みを浮かべて前方だけを鋭く睨みつけている。
一方で、少し後方を歩く轟焦凍の瞳に周囲の熱狂は映っていない。その冷徹な眼差しは、スタジアム最上段のVIP席の一角───燃え盛る炎を纏うNo.2ヒーロー、エンデヴァーの姿だけを、確かな敵意を込めて見据えていた。
極度の緊張に呑まれる者、武者震いに笑みを溢す者、己の目的のために周囲の熱を一切遮断している者。これから始まる過酷な生存競争を前に、主役たる1-Aの生徒たちの表情は十人十色であった。
やがて、ヒーロー科、普通科、サポート科、経営科といった一年生全十一クラスの生徒たちが、スタジアム中央に広がる広大な芝生の上へと整列を終える。
「───選手宣誓!!」
総勢二百名を超える生徒たちの前に設けられた白亜の演台。そこに立ち、スタジアム中の視線を一身に集めたのは、18禁ヒーローとして名を馳せる雄英教師、ミッドナイトである。
素肌に極薄のタイツを纏い鞭を振るうという過激なコスチュームには、各所から「教育機関としていかがなものか」という疑問が飛び交っているが、そんな些末なツッコミを置き去りにするほどの妖艶なオーラで、彼女は会場の空気を一瞬にして掌握していた。
「選手代表! 1-A、五条枢!!」
ミッドナイトの艶やかな唇から紡がれたその名前に、スタジアムの空気が僅かに、しかし明確に形を変えた。
整列していた1-Aの集団の中から、気怠そうに首の後ろを掻きながら一人の少年が歩みを出したのだ。
見慣れた雄英指定の体操服と透き通るような白髪。だが何よりも目を引くのは、その視界をすっぽりと覆い隠す異様な漆黒のアイマスクである。芝生を踏み締め演台へと向かう彼の歩みには、一介の高校一年生が持つはずのない、圧倒的な強者としての静かな覇気が纏わりついていた。
「(……あれが、今年の入試をトップで通過したという)」
観客席に陣取る数多のプロヒーローたちが、手元の資料から顔を上げ、息を呑んで白髪の少年を凝視した。
USJ襲撃事件における彼の大立ち回りの詳細を知る者は雄英の教師陣や一部の警察関係者に限られている。プロたちが持ち合わせている情報など『今年のトップは例年に比べても優秀らしい』という漠然とした噂に過ぎない。
しかし、直接肉眼で捉えた少年の佇まいはどうだ。数多の修羅場を潜り抜けてきた歴戦のプロたちの本能が、一介の学生を前にしてけたたましい警鐘を鳴らしている。彼らの目から見ても、その少年の存在は底が見えない不気味さを孕んでいた。
「(やっぱり雰囲気からして別格よね、この子)」
演台で待ち受けるミッドナイトもまた、内心で驚嘆の息を漏らしていた。
並の生徒であれば、これほどの大舞台の演台に向かうとなれば少なからず歩調が乱れるものだ。しかし階段を上り自身の傍らに立つ枢からは、心拍数の乱れはおろか気負いすら微塵も感じられない。
この途轍もない熱狂の中で一体何を語るのか。ミッドナイトは一人の大人として、期待を隠せないと言わんばかりの蠱惑的な笑みを浮かべた。
「内容、しっかり考えてきた?」
「確認だけど、何言ってもいいんでしょ?」
「公序良俗に反さなければね」
「ミッナイ先生に言われると説得力違うわ」
際どすぎるコスチュームを横目に呆れたように肩を竦め、枢はマイクの前へと進み出る。数万の観客、全国のテレビ中継、そして眼下に並ぶ二百人の同級生たちの視線が、彼の一挙手一投足に集中した。
「ふむふむ……」
言葉を発するよりも先に、枢は顔を覆っていた漆黒のアイマスクに手をかけ、ごく自然な動作で首元へ引き下げた。
視界を遮っていた黒布が解かれる。
露わになったのは、抜けるような白い肌と、長い睫毛に縁取られた端正な顔立ち。そして何より、深い海の底と果てしない蒼天を同時に閉じ込めたかのような、宝石のごとく輝く二つの碧眼───『六眼』であった。
『───ッ!!』
その神がかった美貌が会場の巨大モニターに大写しにされた瞬間、観客席のあちこちから悲鳴に近い黄色い歓声が爆発的に沸き上がった。あまりの顔の良さに他クラスの女子生徒たちまでもが頬を染めてざわめき始め、1-Aの列に並ぶ峰田などは自身のハンカチをギリギリと噛み千切りながら血の涙を流している。
しかし、枢本人はそんな周囲の喧騒など端から存在しないかのように華麗にスルーし、眼下に広がる二百人の生徒たちを文字通り見下ろすように観察していた。
『六眼』が視界に入る全ての“個性”の波長、発動のメカニズムを瞬時に解析していく。
今この瞬間、二百人余りの生徒たちの身体情報、個性因子、そして戦闘能力の限界値が、膨大なデータとなって枢の脳内へと流れ込んでいる。一人、また一人と視線を這わせ、わずか数十秒の間に全ての生徒の底を測り終えた枢は、マイクに向かってひどく退屈そうに言葉を零した。
「───あー、やっぱり難しそうかな」
マイクを通してスタジアム全体に響き渡った、脈絡のない呟き。
宣誓の言葉としてはあまりにも不適切で意味不明な前置きに、会場中が頭に疑問符を浮かべて静まり返る。だが、枢は戸惑いの空気を意に介することなく、不敵な笑みを唇の端に刻んで言葉を続けた。
「はい。今ちょっと全員の“個性”を簡単に確認させて貰ったんですけど。……残念なことに、ざっと見た感じ、みんなの中に俺の“個性”を突破できそうな手段を持ってるやつがいなさそうなんで───」
その言葉の意味を即座に理解できた者はどれだけいただろうか。
確かなのは、それが他の全生徒の能力を真っ向から否定し、自分とは釣り合わないと断言する極上の侮辱であるということだけだ。
「───宣誓。今回の体育祭で、自らに一つ『
『───……は?』
耳を疑うような驚愕の宣言に、眼下の生徒たちだけでなく、傍らのミッドナイトまでもが呆然と目を見開いた。
自身の未来のヒーロー活動の命運を分けると言っても過言ではないこの大舞台において、自らの力に手枷足枷を嵌めるなど正気の沙汰ではない。しかし、ざわめきが広がる会場を尻目に、枢の瞳に宿る不敵な光は一層の強さを増していく。
「俺はこれから行われる全ての競技において、『
断言。
演台のマイクを通したその冷徹な音声が、静まり返ったスタジアムの空気を鋭く切り裂いた。
「『不可侵』が何かについては後でA組の人たちなり、実況席で鼻水垂らしてるプレゼント・マイクにでも聞いてください」
それは、五条枢という存在を絶対的な領域へと押し上げている要因『無下限』のバリアのことである。
戦闘訓練やUSJでの死闘を目の当たりにし、その理不尽なまでの絶対防御の性質を理解しているA組の生徒たちや教師陣の顔色が一気に変わった。
最大の防御札を捨てる。それはすなわち、彼が初めて他者からの攻撃をその身に受けるリスクを背負うということに他ならない。
しかし、彼らに心配や安堵の感情が湧き上がるよりも早く、枢はとどめとばかりに極めつけの傲慢な言葉を叩きつけた。
「───
以上でーす。
枢はそう軽い調子で締めくくると、呆気に取られたまま固まっているミッドナイトに軽く手を挙げ、背を向けて演台から降りていった。
スタジアムを支配する、あまりにも重く、痛いほどの静寂。
数万の観客も、プロヒーローたちも、常軌を逸した宣誓に開いた口が塞がらず思考を停止させていた。何らかの特権を許された王族が、平民たちに向かって『少しだけハンデをやるから楽しませろ』と言い放ったに等しい究極の暴言。
しかし。
その静寂の中で、微かに、だが確実に温度を急上昇させている集団が存在した。
枢の言葉の真意───『最大の防御を捨ててやるのだから、少しは俺を楽しませてみせろ』という、自分たちを一切の脅威とみなしていない残酷なまでの見下し振り。その真意を最も深く、骨の髄まで理解した一年A組の生徒たちの列から。
「(舐めやがって……!!)」
「(ふ、ざけんなァ……ッ!!)」
ギリッ、と。
上鳴の拳を握り締める音と、爆豪の奥歯が軋む音が鳴った。
緑谷、飯田、切島、瀬呂……。彼らA組の生徒たちの身体から、殺気にも似た鋭く重い闘気が立ち上り、列へと帰還してくる枢の全身へと一斉に突き刺さる。
肌を焼くような闘気の奔流を真正面から受けながら、枢は歩みを止めることなくアイマスクを再び目元まで持ち上げ、眼前の同級生たちに向けて微かに首を傾けてみせた。
「期待してるよ?」
導火線に火を放つ、最後の追撃。
その言葉を聞いた瞬間、ついに堪忍袋の緒が切れたA組の生徒たちから、溜まりに溜まった怒りと闘争心が大爆発を起こした。
「「「上等だああぁぁぁッ!!!」」」
クラスメイトたちの喉の奥から絞り出された、決死の咆哮。
その怒号を合図にするかのように、事態をようやく飲み込んだ会場全体の観客たちからスタジアムの底が抜けるような空前絶後の大歓声が巻き起こった。ある者はその傲慢さに怒りを覚え、ある者は圧倒的な強者のヒールっぷりに興奮を覚えながら。
こうして、前代未聞の宣誓と共に。
雄英高校体育祭という過酷なサバイバルの幕が、波乱の予感を孕みながらついに切って落とされたのであった。