『───君は、ヒーローになれる』
あの日、憧れの人からかけられたその一言を、無個性だった自分の人生を根底から覆したあの瞬間を、緑谷出久は生涯忘れることはないだろう。
春のうららかな陽光の下、出久は真新しいブレザーの袖に腕を通し、夢にまで見た国立雄英高等学校の広大な敷地を歩いていた。
入試本番。敵Pを一点も獲得出来ず実技試験を絶望的な結果で終わらせてしまった出久だったが、試験の最中に身を挺して一人の少女を助けた行動が評価され、隠し要素であった救助活動Pを得ることで、彼は奇跡的に雄英高校の門を潜る権利を勝ち取っていた。
オールマイトから受け継いだ“個性”───ワン・フォー・オール。まだその“個性”を入れ込むための器が出来上がっただけの、一度使えば自身の肉体ごと破壊してしまう諸刃の剣だが……それでも自分は、確かにヒーローになるためのスタートラインに立つことができたのだ。
「(頑張らなきゃ……! お母さんやオールマイトに胸を張れる、最高のヒーローになるために!)」
ギュッと両手を握りしめ、出久は決意を新たに校舎の中へと足を踏み入れる。
迷路のように入り組んだ巨大な校舎の廊下を進み、自分が割り当てられたクラス『1-A』の教室を探し始め早数分。
やがて辿り着いたその場所で、出久は思わずあんぐりと口を開け放った。
「(ドアでっか……)」
目の前にそびえ立っていたのは見上げるほどに巨大な扉だった。大柄な人間でも悠々と通れそうなそのサイズ感に一瞬戸惑ったものの、出久はすぐに合点がいく。
「(……そっか。色んな“個性”に対応した、バリアフリーってやつか)」
異形型の“個性”を持つ生徒でも問題なく出入りできるようにという、多種多様な“個性”の集まる雄英ならではの気遣い。そんな細部にまで宿るヒーロー育成機関としての完成度の高さに感動を覚えつつ、出久はゴクリと生唾を飲み込んで扉の取手に手を掛ける。
この扉の向こうには、あの倍率三百倍以上とも言われる超難関の入試を突破した選ばれた
緊張で心臓が早鐘のように鳴り響く。出久が最も恐れていたのは、実技試験の会場で見かけたやたらと威圧的で怖い眼鏡の受験生と、自分を長年蔑んできた
「(二人とは同じクラスじゃありませんように……!)」
祈るような気持ちで、出久は扉を思い切って横にスライドさせる。
ガラガラ、と重たい音を立てて扉が開いたその瞬間。
「机に足をかけるな! 雄英の先輩方や机の製作者に申し訳ないと思わないのか!?」
「思わねーよ! てめーどこ中だ端役が!!」
教室の前方で、最も顔を合わせたくなかった二人が、初対面にも関わらずバチバチと火花を散らして口論を繰り広げていた。
終わった……、と出久の魂が口から抜けかけていると、続け様に眼鏡の少年───飯田天哉が出久の存在に気付き、ズンズンと歩み寄ってきてロボットのような規則正しい動きで自己紹介をしてきたことで、出久の緊張はさらに跳ね上がった。
しかし、その直後のこと。
背後から「あ! そのモサモサ頭は!!」と、明るく弾むような声を掛けられた出久が振り返れば、そこにいたのは実技試験で自身が助け、そして助けられた少女、麗日お茶子がそこにいた。
「プレゼント・マイクの言ってた通り受かったんだね!」
お茶子のふわりとした柔らかな笑顔と試験の時と変わらない屈託のない彼女の態度に、出久は張り詰めていた緊張の糸が少しだけ解れ、気恥ずかしさこそあれど何とか気を持ち直すことができた。
そうして麗日と少しの言葉を交わした後、出久は自身の名前が割り当てられた座席を探し出し静かに腰を下ろした。
まだ担任の教師は来ていない。クラスメイトたちは各々自己紹介を交わしたり今後の学校生活への期待を語り合ったりして、教室内には新学期特有の熱気と喧騒が満ちていた。
出久はこっそりと周囲を見渡す。
幼馴染の少年は当然として、金髪に黒い稲妻模様の入った少年、六本の腕を持つ大柄な少年、姿が完全に見えない透明な少女等々───一目見ただけでも、同じものは一つとしてない唯一無二の強力そうな“個性”を持った生徒たちばかりだと分かる。
「(やっぱり、みんなすごい人たちなんだろうな……)」
入学初日だけあって、未だに着慣れない雄英のブレザーの感触を確かめながら出久は一人ごちる。
三百倍という絶望的な倍率を潜り抜けてきた正真正銘の傑物たちの集まり、そんな彼らの中に自分のような元・無個性が混ざっているのだ。
今はまだ、実力も、“個性”のコントロールも、何一つとして彼らに敵わないかもしれない。でも、だからこそ───
「(───少しでも……少しでもみんなに追い縋れるように、これから必死に頑張っていかないと)」
机の下で拳を握りしめ、出久は強く気合いを入れた。
キィーン、コォーン……。
その時、ホームルームの開始を告げる予鈴のチャイムが教室に鳴り響いた。
その音を合図に、教室内を満たしていた喧騒がスッと波を引き、散らばっていた生徒たちが一斉に自分の座席へと戻っていく。皆、最高峰のヒーロー科に入学しただけのことはあり、切り替えの早さと規律の良さは流石の一言だった。
そんな彼らに倣うように、出久も姿勢を正して前を向こうとしたのだが───ふと教室全体を見渡した時、出久の視線がある一点で止まり、彼は思わず首を傾げた。
「(あの席……)」
予鈴が鳴り終え、全員が着席を終えたはずの教室。
その中で、一つだけポツンと空席が存在していたのだ。
出久の席から少し離れた最後列の中心。そこにあるはずの生徒の姿がなく、真新しい机と椅子だけが主の不在を寂しげに主張している。
その異変に気付いたのは出久だけではなかった。
周囲の生徒たちも、ポッカリと空いたその座席に視線を向け、ヒソヒソと小さな声で囁き合い始めた。
「なぁ、まだ一人来てないよな?」
「入学初日から遅刻かよ、肝据わってんなぁ」
「でも、電車遅延のお知らせなんて無かったし……もしかして、登校中に何か事故にでも巻き込まれたんじゃ……」
「馬鹿言え、だったら俺らが気づかないはずねーだろ」
怪訝そうな表情を浮かべる者、呆れる者、本気で心配そうな表情を見せる者。
初日からの欠席者という予期せぬイレギュラーに、教室内に僅かなざわめきが波及していく。
「───しっかり席に着いてるようで感心感心」
そんな中、教室の入り口の方からひどく間延びした、それでいて底冷えするような低い声が響き渡った。
全員の視線が一斉に声の主へと向かう。
そこに立っていたのは、ボサボサの黒髪に無精髭を生やした、どこかくたびれた様子の男性だった。首にはマフラーのような灰色の布をぐるぐると巻きつけ、黒いジャージのような服装に身を包んでいる。
その姿はお世辞にも教師らしいとは言えない、まるで路地裏から這い出てきた不審者のような風貌だが……そんな男から放たれる気配はただの不審者のそれではない。出久の肌が、ピリッとした本能的な緊張感を感じ取っていた。
「担任の相澤消太だ。よろしくね」
気だるげにそう名乗った男性───相澤は、教卓の前に立つとクラス全体をぐるりと見渡した。空席の件があって少しざわついていたとはいえ、予鈴と共にしっかりと席に着いて待機していた生徒たちの姿勢に、彼は言葉通り感心したような態度を見せている。
しかし、それも束の間。
相澤は手元の袋から青色に白と赤のラインが入った見慣れた衣服を引っ張り出すと、教卓の上にドサリと置いた。
「それじゃ、
そのあまりにも唐突な指示に、出久の頭の中に疑問符が浮かび上がった。
「(えっ……? グラウンドって、今日は入学式とオリエンテーションやるんじゃなかったっけ……?)」
周囲の生徒たちも、大半が出久と同じように戸惑いの表情を浮かべている。
しかし、相澤は「机の中に入ってるから」とだけ言い捨て一切の質問を受け付ける気配がない。
一先ず指示に従おうと、出久が慌てて自身の机の中に手を伸ばし、支給されていた体操服を取り出そうとした、その矢先のことだった。
「先生!!」
ビシッ!! と、教室の空気を切り裂くような鋭い風切り音と共に、飯田が天井に向かって定規を当てたように綺麗な挙手をしていた。
「なんだ」
「まだ一人到着していない生徒がいるようです! 入学初日というこの重要な日に、クラス全員が揃っていない状態で行事を進行するのは問題ないのでしょうか!?」
真面目すぎる飯田の、しかし至極もっともな問いかけ。
その言葉を受け、クラス全員の意識が再びあの空席へと向けられる。
あの席に座るはずの生徒は一体誰なのか、なぜ来ていないのか───そんな生徒たちの疑問と視線を一身に浴びながら、相澤は面倒くさそうに首を掻くと、半ば閉じていた目を僅かに開いて淡々と答えた。
「───そいつは
家の事情。
その言葉に出久は首を傾げる。苦労して合格を勝ち取ったであろう雄英の入学初日に、遅刻を優先しなければならないほどの家の事情とは一体何なのだろうかと。
しかし、相澤はそれ以上の詮索を許さなかった。
「時間は有限だ。君らに残された時間はそう多くない。……人の心配する暇があるなら、さっさと準備してグラウンドに来るんだな」
冷たく言い放つと、相澤は踵を返し足早に教室を後にしていった。
後に残されたのは、担任の圧倒的なペースに巻き込まれ、体操服を抱えたまま呆然とする多数の生徒たち。
「(家の事情で、遅刻……)」
出久は手元の体操服を握りしめながら、窓際の空席をもう一度だけ盗み見た。
三百倍の倍率を突破し、この雄英高校と言う最高峰のヒーローアカデミアに入学を果たした未知の同級生。
未だ見ぬその人物の姿を想像しながら、出久はこれからグラウンドで何が起こるのかという不安と、その最後の同級生への微かな好奇心を胸に抱くのだった。
☆
雄英高校の入学初日。
その日の朝、五条枢がいつもより少し遅い登校を余儀なくされたのは、あまりにも唐突で、そして枢自身予想だにしていなかったイレギュラーが原因であった。
まだ夜の帳が完全に明けきっていない早朝。
“
まだ他の職員たちも出勤していない時間帯であり、施設内で対応できる人間は枢以外に誰もいない。普段は何かと神経質で口うるさい所長が、泡を吹いて白目を剥いているという突然の事態に、流石の枢も目をパチクリとさせた。
「(……えっ、どうしたの急に。幽霊でも見た?)」
そんな冗談を脳内で飛ばしつつも、枢は一先ず救急車を呼ばんと携帯電話を取り出し119番へとダイヤルした。これが、今日の枢の予定を狂わせた全ての発端である。
救急車が到着するまでの間、枢は気道の確保や体勢の調整といった出来得る限りの応急処置を施した。
所長は特に持病は患ってなかったはずだけど……と思考を巡らせた枢は、何にしても一応は育ての親とも呼べるべきこの男性をこのまま放置して捨ておく訳にも行かなかったため、現状他に付き添いができる職員がいない以上、枢は到着した救急車に同乗し、近くの総合病院へと向かう羽目になった。
病院に到着後、救急隊員や医師に所長の発見時の状況や容体を説明し、その間に駆けつけてきた孤児院の他の職員たちに今後の連絡先や対応の諸々を引き継いで……ようやく全ての面倒な手続きから解放された頃には、すでに太陽は高く昇り雄英への登校時間をとっくに過ぎていた。
「(“個性”が使えるならひとっ飛びで行けるのになぁ……)」
電車に揺られながら、枢は小さく嘆息する。
“個性”による空間と座標の圧縮を使えば、事前にルートを設定しておけばここから雄英高校までなど瞬きする間に到着できる。だが、この超人社会において仮免すら取得していない人間が公共の場で無断で“個性”を使用することは法律で固く禁じられている。
入学初日から法律違反で検挙されては、将来の設計図に自ら泥を塗ることになるのは明白。
結局、事前に担任へ遅刻の連絡を入れたとはいえ、五条枢は入学初日から盛大に遅刻するという憂き目にあってしまった。
ふと、枢はポケットから携帯電話を取り出し、担任である相澤から返信されてきたメールの文面を改めて確認した。
『事情は理解した。到着次第、教室ではなく体操服に着替えてグラウンドへ来い』
「(……今日って入学式やるんじゃなかったっけ?)」
遅刻したとはいえ時間はまだ午前中だ。本来であれば、今はちょうど入学式やオリエンテーションを行っている最中のはずである。
しかし、それを踏まえてのわざわざ制服ではなく体操服に着替えてグラウンドへ来いという指示には、流石の枢も何が何だかと疑問を隠せなかった。
ただ、その胸中にあるのは純粋な疑問だけであり、不快感は微塵も存在していない。
自由な校風を謳う天下の雄英なのだから、入学式の形も普通の学校とは一線を画すのだろう。それに、体操服に着替えるということは、少なからず体を動かす実技的な何かが待っているのは明白だ。
故にこそ、退屈な校長先生の話を聞かされるよりはよっぽどいいと、枢の口元には自然と不敵な笑みが浮かんでいた。
「───おー、やってるやってる」
指定通りに青と白の体操服に着替え、広大なグラウンドへと辿り着いた枢の目に飛び込んできたのは、正に非日常の光景だった。
自分と同じ青と白の体操服に身を包んだ同級生と思わしき生徒たちが、黒ずくめの教師───相澤の指導の下、グラウンドを走らされている。
しかもただ走っているのではない。膝裏から排気管を生やして爆走する者、靴底から氷を生み出し滑るように移動する者、果てにはバイクに跨って疾走する者など、各々が自身の“個性”らしき力を全開にして競い合っているのだ。
「来たな」
グラウンドの端でストップウォッチを手に佇んでいた相澤が、枢の気配に気付いて振り返った。
「ども。すみません、入学初日からご迷惑をおかけして」
「いや、身内の急病なら仕方ない。……災難だったな」
枢が軽く頭を下げると、相澤も事情が事情だと納得しているようで、それ以上の遅刻の理由を追求してくる様子はなかった。
しかし、二人がそんなやり取りをしている間、持久走に精を出していた生徒たちの視線が一斉にグラウンドの端へと向けられていた。
遅れてやってきた最後の一人。そして何より、視界を完全に覆い隠す漆黒のアイマスクという異様な出で立ち。
誰もが好奇と警戒の入り混じった視線を向けてくるが、枢はそんな同級生たちの反応など全く気にした素振りも見せず、顎でグラウンドをしゃくった。
「で、俺もあれに参加すればいいんですか?」
「悪いが、あの持久走で一通りの種目は終了だ。あいつらの結果を伝えたらお前の記録も取るから、それまで準備運動でもして体を解しておけ」
どうやら入学式をすっぽかして“個性”ありの体力テストをやっていたらしい。
へぇ、と。枢はアイマスクの奥で目を細め、面白そうに笑みを零した。
「了解です。……それなら、しっかり準備しとかないとだ」
相澤の言葉に頷き、枢は搬送の付き添いで凝り固まった体を解すように、アキレス腱を伸ばしたり肩を回したりとストレッチを始めた。
その間にも持久走は次々と終了し、息を荒くして座り込む生徒たちが相澤の前に集合してくる。
「───んじゃ、後がつかえてるからパパっと結果発表するぞ」
相澤は手元の端末を操作しながら、後ろでストレッチを続ける枢へチラッと視線を向け、いざ生徒たちに結果を伝えようとした。
しかし、当然ながらそんな枢の存在を放っておく生徒たちではない。
「先生!!」
ビシッ! と。入試会場でも見かけた、あの真面目そうな眼鏡の少年───飯田が再び綺麗な挙手をしたのだ。
「なんだ」
「今回の個性把握テストでは、『最下位の者は見込み無しとして除籍処分とする』と先生は仰られました! しかし、それを加味するのであれば、これから単独でテストに臨もうとしている彼を数に含めず、この時点で結果を発表するのは不平等なのではないでしょうか!?」
飯田のその至極真っ当な意見に、周囲の生徒たちも「確かに」「それはそう」とチラホラ同意の頷きを返す。
その光景を見送った相澤は、僅かな嘆息の後、三白眼を細めてひどく人の悪い、ニィッとした笑みを浮かべた。
「ああ、除籍の件はウソな。君らの最大限を引き出すための、合理的虚偽だ」
その言葉が放たれた瞬間。
「ええええええっ!?」と、大半の生徒たちが目を剥いて驚愕の絶叫を上げた。
中には死に物狂いでテストに挑んでいた者もいたのだろう。緊張の糸がプツリと切れ、その場にヘナヘナと座り込む者までいる。
一方で、事の顛末を全く知らない枢は、「え、何の話?」と一人だけ話についていけず、首を傾げるばかりだった。
そんな蚊帳の外にいる枢へ、金髪に黒い稲妻模様の入った少年───上鳴電気が、ドッと疲れたような息を吐きながら声をかけてきた。
「良かったな、お前は普通にリラックスしてテスト受けれるってよ……」
俺たちは除籍がかかってたから、それこそ必死にやってたってのに。
上鳴の声音には、そんな理不尽への僅かな不満と愚痴が滲んでいた。
「……てか、お前なんで目隠ししてんの?」
その言葉を聞いた瞬間。
アイマスクを指差して怪訝そうに首を傾げる上鳴を他所に、枢の中で何かがカチリと音を立てて噛み合った。
除籍を賭けた個性ありの体力テスト。
自分の限界を引き出すために、死に物狂いで足掻いた同級生たち。
そして───一人だけ、そのスリリングな行事に参加できなかった自分。
何を思ったのか。枢は口端を三日月のように吊り上げると、上鳴の質問には答えず、おもむろに相澤へと視線を向けた。
「ねぇ、先生」
「なんだ」
「今回のテストで、一番成績が良かった人って誰だったの?」
唐突な質問。相澤はその言葉に眉をピクリと動かしたが、どうせ発表するのだからと、手元の端末に目を落とし淡々と答えた。
「……そこの八百万だ。一応、推薦組だからな」
相澤の視線の先。名を呼ばれ、「私ですか?」と上品に首を傾げた、黒髪をポニーテールにした発育の良い女子生徒。
枢はアイマスク越しに彼女の纏う“個性”の気配を瞬時に解析すると、さらに深く笑みを刻み「いい“個性”持ってるじゃん」と静かに呟いた。
───そして、一切の躊躇もなく。
「んじゃ、その子より俺の総合成績が下だったら、俺のこと除籍処分にしていいですよ」
しん、と。
春の風が吹き抜けるグラウンドの空気が、一瞬にして凍りついた。
あっけらかんと、まるで今日の昼食のメニューでも告げるかのような気軽さ。
眼前の上鳴たち1-Aの生徒はおろか、発案者であり常に冷静沈着な相澤ですら、その発言を受け思わず目を見開いて言葉を失っていた。
しかし、当の本人である五条枢だけは周囲の驚愕などどこ吹く風。
漆黒のアイマスクの奥で確かな自信と共に『六眼』を細めた彼は、一人不敵な笑みを携えて、自らハードルを跳ね上げた個性把握テストへと臨むのであった。