天剣へと至る愚者   作:一般通過害悪

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※手帳によれば、レイモンド・グレイラットは断片的にだが徐々に取り戻すことができていった。
その引き金となったのは、肉親や近しい人たちとの会話や再会ではなく、自己鍛錬と自己修錬だった。


武者修行

甲龍歴419年◯月◯日

パウロさんに強くなりたいから好きに動きたいと伝えた日から三日経った。

 

現在、ミリス神聖国を出発し中央大陸に一人で向かっている。

 

目的は、王竜山脈にいるファデュイさんの知り合いを訪ね稽古をつけてもらうことだ。

 

昨日も書いたが、ファデュイさんは長老からの呼び出しを受け集落に出戻った。

 

詳細は分からないが急ぎのようだったらしく、昨日朝には、姿が無く、紹介状なのだろう紙と簡易的な地図が置かれているだけだった。

 

昨日はパウロさん、ノルン、アイシャ、リーリャさんに出迎えをしてもらい送られた。

 

パウロさんには不便を強いるだろうが仕方ない。

 

この一人旅の目的は単純。

強くなることで、記憶を取り戻すためだ。

 

肉親や親しくしていた人間と顔を合わせ、会話をしてきたのだが、断片的でも思い出せなかった。

 

そこから、度々、手帳にあった強くなるという単語が引き金になるのではと考えたのだ。

 

当初は、剣神ガル・ファリオンの居る、剣の聖地に行く気だった。

 

ただ、ファデュイさんの置いて行った手紙を無碍にするのはと思い書かれた場所に向かうことにしたのだ。

 

紙には、王竜山脈には古い知人が居る。これを見せれば稽古をつけてくれると思う。成長への助けになると信じて、応援してるよ。ちなみに、戦闘能力で言えば帝級はあると思うから安心して行ってきて。

 

どの流派かは書いてなかったが帝級は確かにあるとか。

 

甲龍歴419年◯月◯日

一ヶ月が過ぎ、 港町ウェストポートに到着した。

船を予約し適当な宿を取って休憩中。

 

やっぱりと言うべきか。

ファデュイさんの偉大さを知る。

 

天族の飛行能力であればさっと行ってパッだったがこうも時間が掛かるとは。

 

ちなみに、ここまでは馬車や闘気などは使わず純粋な身体能力で全力で走ってきた。

 

そう言えば、こうやって地を踏みしめ全力で走ったのは一年ぶりだったような気がする。

 

やっぱり、自分の足というのは良いものである。

 

出発は明日の夕方。

 

現在は昼だ。路銭稼ぎをするとしよう。

冒険者ギルドに向かい適当にペットの捜索依頼を受注した。

早速、依頼主と接処してペットの詳細を教えてもらう。

 

さて、詳細を聞き終わって早速探すとしよう。

 

今日中には発見できるので、ソレを伝えると、依頼主は半信半疑ながらなら家で待っとくからと。

 

ここで僕が行なったのは闘気の使用である。

街を歩きながら、体内を循環する闘気を外部に流していき、探し物を探す。

 

僕の解釈では、闘気とは身体そのもの。

 

つまり、闘気とは足であり手であり脳である。

 

身体能力を上げるだけではなく感知や直感を底上げするものなのだ。

 

数分もすれば探しものを見つけれた。

 

小さい猫である。

そういう品種のものであり子猫ではない。

 

ここで行うのは、殺気の完全消去と自然に溶け込む気配操作だ。

 

軽く、首根っこを捕まえ敵意がないことを背中を撫でることで教えると猫は落ち着いてくれた。

 

飼い主に持っていき、端金な料金と普通の書類をもらいギルドに報告することで依頼は達成できた。

 

 

甲龍歴419年◯月◯日

海嫌い。

まさか、船酔いするとは。そのせいで3日分の日記が書けていない。クソが。

 

現在いるのは王竜王国の最東端、港町イーストポート。

 

到着したのが夜なので宿を取りこうやって書いているわけである。

 

明日には王竜山脈へと歩くことになるので寝るとする。

 

 

甲龍歴419年◯月◯日

王竜山脈の麓に到着。

地図通りに向かえばぽつんと一軒家があった。

石積と木造建築だった。

 

そこに件のファデュイさんの古い知人が居た。

 

名前をレイド。家名はないとか。

 

弟子は取ってねぇ。帰れと言われたが、ファデュイさんの紹介状を渡すとクハッと破顔し家に入れてくれた。

 

内部を移動しながら少し会話をした内容は、僕はファデュイさんのなんなんのかと言うこと。

 

実子ってことはねぇだろ。時間経ち過ぎだしアイツもガキも死んだしな。後は、あの女はアイツが死んでも誰かに心変わりして股を開くような淫乱じゃねぇからなぁ。つまり、養子か、世話を焼いてしまうだけテメェに入れ込んじまったかだろ?

 

こっちの言葉を待たずにされる一方的に捲し立てられる。

 

どう答えるべきかを悩んでいたら、部屋に移動し座らせられた。

 

開口一番、レイドが言ったのは「で? 何が斬りてぇんだぁ?」だった。

 

ファデュイさんの紹介状から強くなり記憶を取り戻したいと言うことは書かれていたから知っているとレイドは言う。

 

重要なのはその先だと言う。

 

強くなる。その意識は正しいとしながら何を斬るかによって稽古の幅が広がるとか。

 

僕は、その言葉から、ギレーヌさん?と会話した記憶の断片的が思い起こされた。

 

 

そうして、気が付けばこう言っていた。

 

「全て」

 

レイドはその言葉にふーんと言いながら立てかけていた剣を二つ取り、一本をこちらに投げた。

 

そこから、問答無用な感じで稽古が始まった。

稽古と言っても実戦形式だった。

 

粉末による目潰し、足払い、隠し武器、なお、あくまで稽古とした実戦を想定したものだったので、木刀だけとは言っておらず。

 

今日は普通に負けた。

 

 

甲龍歴419年◯月◯日

闘気に頼りすぎだとを指摘された。

闘気を使用せずに戦えるようになれと。

筋肉が付きにくいのは言い訳だと一蹴され、一から肉体強化からやることになった。

 

ちなみに、この男の料理は認めたくないがめっちゃ旨い。

 

 

甲龍歴420年◯月◯日

あれから一年が経った。

簡単に言えば、闘気を使用せずに王竜を一対一で倒せるようになった。

 

闘気をしないことで、より身体を効率的に動かすことを意識してみればすんなりと行けた。

 

加えて、新たな高みへと登れたと思う。

 

主な二つはこれだ。

 

一つ、擬似的な空中飛行。

空に存在する空気の層が視覚化可能になり、具体的に言えば、索敵能力と周囲を取り巻く空気の温度や湿度の違いにより存在する”面”を捉える事が出来るようになった。

 

二つ、身体能力の向上。

これまでは、丸一日走りっぱなしでバテていたが、3日休みなく動き続けることができるようになった。

闘気を纏えば、一週間は食事、睡眠がなくとも動き続けることが可能になった。

感覚の鋭敏化、視力、聴力、嗅覚、そして、触覚。

そのすべてが効率化され対敵の行動を見ずとも一秒先なら分かるほどになった。

 

明日からようやくレイドとの実戦訓練が始まる。

 

 

甲龍歴420年◯月◯日

今日は箸を持ったレイドに完敗した。

強くなったと思ったのだが、どうやら、闘気の使い方がなっちゃいねぇらしい。

 

殺気の消し方、気配の消し方は満点。

 

問題なのは、闘気の扱いと基礎に忠実すぎることだと。

 

闘気はもっと強く深く、想像しろ。

基礎は大事だが、それ沿った戦い方だったら対策している人間の良いかもだと。

 

うーむ、難しいことを言うが結構、わかってきた気がする。

 

 

甲龍歴421年◯月◯日

気が付けば、もう一年が経った。

あれから、幾重もレイドと打ち合い、実戦という実戦を叩き込まれた。

 

今日は階級の授与できるかの勝負がある。

 

勝てば、レイドから剣王と北王の階級を貰える。

ちなみに、レイドは剣帝であり北帝である。

 

頑張ろう。

 

勝った。剣聖→剣王、上級→北王へとなった。

 

もう教えることはねぇなと言いながら懐から紙を取り出しソレを差し出してきた。

 

どうやら、水神レイダ・リィアへの紹介状だと。

なんでそんなものを持ってるのかと聞いたら知り合いだからという。

 

水神流の紹介状をくれた、理由は、受け流しやカウンターを覚えるのに最適だからだとか。

 

強いやつはどいつもこいつも知り合いなのだろうか。

ありがたくもらったが、既に手紙を出しており一週間後にアスラ王国に行かないとだめだと伝えられた。

 

クソが。

 

一週間でアスラ王国まで、だと。

 

 

行けるわ。

 

 

甲龍歴421年◯月◯日

あれから一週間。アスラ王国の首都に着いた。

一度も止まらずにここまで来たので結構疲れるかと思いきやめっちゃ元気。

 

加えて、中は壮観のひと言。

 

 

 丘の上にそびえる、荘厳なる王城。シルバーパレス。

 

 城を囲む、上級貴族たちの巨大な邸宅。

 

 それらを囲む要塞のような城壁に、そこからどこまでも広がる町並み。

 

 巨大な闘技場。

 絢爛たる騎士団の訓練場。

 聖ミリス教団の美しい神殿。

 街中に張り巡らされた水道橋。

 世界最大の商社の本部。

 水神流宗家の道場。

 劇場が立ち並ぶ歌劇街。

 艶やかな女性の色香漂う宿場街。

 ラプラス戦役の勝利を記念して作られた門。 

 

そう、人類最古の町である。

 

今から向かうのは水神流宗家の道場である。

 

無駄に広いのでそこそこの速度で駆け抜けるとしよう。

 

あれから、数時間。

水神レイダ・リィア、ならびに直弟子のイゾルテ・クルーエル、他門下生たちと対面して水神流を教えて貰えることになった。

 

 

自己紹介を行ったあと、レイダさんに言われイゾルテさんと模擬戦を行った。

 

どこか納得してない様子のイゾルテさんに構わずに僕は配置に着く。

 

ルールはよーい始めで開始。

水神流以外はだめとは聞いていないので、剣神流の技を昇華した技を使うことにする。

 

よーい始めでまずは様子見しようとイゾルテさんを見れば、いつでもどうぞと言ってきた。

 

試合開始の前に、イゾルテさんが水王の階級を持った実力者であることを知った。なので、油断は一切なく胸を借りるつもりで戦うことにしよう。

 

そう思いながら、姿勢を低くして一気に踏み込む。

空気が遅れて流れ音が鳴る。

 

僕の放った斬撃に対応できなかったらしく、イゾルテさんは地に伏した。

 

彼女に使ったのは、殺意、闘気、気配の三銃士を使わないオリジナル技の「無窮の太刀」。

 

レイドの2年の修行と稽古で培った技術の集大成と呼べるものだ。

 

 

 

レイダさんはそんなイゾルテさんを見てまるで最初から分かっていたかのようにため息を吐き、僕を見た。

 

そこから、水神流を教えてやる代わりにイゾルテへ剣神流と北神流を体験させろと言われた。

 

住む場所はこの道場でいいらしい。

 

 

 

甲龍歴421年◯月◯日

最初はまず、形からということで早起き。道場の掃除と先輩の門下生たちが入ってきたら大きい挨拶を心がけた。

 

強くなりに来たとはいえ、嫌われるようなことをするつもりはない。

 

ということで、道場に入ってきた先輩方に元気よくご挨拶。その後は、イゾルテさんと戦闘訓練。

 

 

甲龍歴421年◯月◯日

あれから数カ月が経ち今日に至る。

先輩方とは僕目線では上手くいっていると思う。入った時点では上級だったが、レイダさんから上級の域にないから聖級な。と言われ水聖になった。

 

そのことに嫉妬は確かにされているだろうけど、表立ってやらないので民度は良い方なのだろう。

 

お国柄そういうのがあると思っていたが存外に、まともな方が多いようだ。

 

イゾルテさんも僕との稽古で着実に成長していると思う。

 

元から、水王だったので素質は十分。

 

あとは彼女次第だろう。

 

甲龍歴421年◯月◯日

レイダさんに頼み、奥義の剥奪剣界をやってもらった。レイダさん曰く、とても早く剣を抜いて首を落すだけの技だとか。

 

喉に向けて向かってくる剣の軌道はこれまでの特訓の成果で視えていたし、避けようと思えば避けれただろう。

 

避けなかったのは闘気の防御力を知るためだった。

わざと動いて食らってみたがそこまでだった。

 

奥義が全く効かなかったことに思いのほか気にしてない様子だったレイダさんによると、七大列強の2位龍神オルステッドの龍聖闘気と同じ原理だとか。

 

龍聖闘気ってなんだよ。

 

レイダさんもわからないらしい。

 

なんでも、龍神がそう言ってるだけで彼以外の使用者が現代にいないからよく分からない技術だとか。

 

 

 

 

甲龍歴421年◯月◯日

今日は休日だった。

イゾルテさんに誘われて、一緒に出かけることになった。

まぁ、体のいい荷物持ちだ。

 

でも、まぁ、美人と二人で出かけるだけで僕にとっては十分ご褒美である。

 

会話や色々な観点から品定めされているように感じたが、気にしないようにした。

 

なんの品定めなのだろうか。

 

 

甲龍歴421年◯月◯日

水神流について振り返っておこう。

基本的に言えば、防御とカウンターを主体とした剣術だ。

 

なので、攻撃されないと反撃出来ないという欠点がある。

 

こちらを有利にするためには、相手の感情を揺さぶり自身は落ち着いて対処することを常としている。

 

感情が乱れると殺気を出したり次の動きが見えやすくなる。

 

そのため、煽りの技術も大事とされている。

 

つまり、どれだけ相手の逆鱗に触れるかの見極めが必要な性格の悪い剣術と言うわけだ。

 

 

甲龍歴421年◯月◯日

今更、気付いたがこの手帳に聞いてある文字は人間語ではない。

 

イゾルテさんやレイダさん、他の先輩方たちに見せてもなんて書いてあるのか分からないとか。

 

だけど、自分はなぜかこの文字を完全に理解している。

 

なんなんだろうか、この感覚は。

 

時間のあるときに何度も読み返していたはずなのに、見落としていたことがあることに気付いた。

 

転生して早一年。

 

一番最初の手帳のページにはそうしっかりと書かれていた。

 

自分は、一番最初の記憶を持っていたレイモンド・グレイラットは何を思いこの世界を見ていたのか。

 

そして、強くなりたいのはどうしてだったのか。

僕は、オレはソレを心の底から知りたいのだ。

 

故に記憶を取り戻さないといけない。

 

強くなる。

 

それが記憶を取り戻す足掛かりになると信じて。




ーーー
レイド
年齢:525歳(外見35歳前後)
種族:不死魔族のクォーター
戦闘能力:帝級と神級の間ぐらい。
流派:剣神流 剣帝 / 北神流 北帝
本人曰く、帝級の方が語呂が良くて字がかっこいいからそのままでいるとか。
身長:195cm(筋骨隆々)
功績:ラプラス戦役時、王竜山脈にて5名のパーティーと共に魔族・獣人連合の大規模先遣軍8〜10万規模を半年以上に渡り食い止め、壊滅させた。
性格:豪快・粗暴・口が悪い。性に寛容。セクハラ大好き。
好きなもの:強い酒、大人の女(特に巨乳)、王竜の肉。
嫌いなもの:ガキ、野菜全般。
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