天剣へと至る愚者   作:一般通過害悪

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青年期に入り、『天剣』は前代の剣神ガル・ファリオン、水神レイダ・リィアの下で、その才覚を十分に発揮していくことになる。


水神流の特訓〜剣の聖地へ。

甲龍歴422年◯月◯日

気付けば半年経ち、年齢は15歳になった。

今日は水王の階級を与える試練をレイダさんに出され見事乗り越え、晴れて水王の階級を頂いた。

 

あと、失くした記憶も思い出してきている。

 

まず、ボレアス家にて使用人兼兵士として過ごしたこと、ルーデウスと一緒にギレーヌから獣神語を教えてもらったこと、魔神語や闘神語を学んだこと。

 

幼少期にパウロからの苛烈なしごき等々。

 

あとは、母親のゼニスとの思い出と自分自身が何者であるのかということだ。

 

強くなればなるほど、自分についての理解が増えていくのはなかなかに楽しいものがある。

 

一層、稽古と修錬に励むことにする。

 

 

甲龍歴422年◯月◯日

水神流を教わる傍ら、イゾルテさんに剣神流、北神流への対処と、殺気のない相手の攻撃を受け流す方法を教え始めて、半年と少し。

 

イゾルテさんも殺意の無い攻撃を受け流せるようになってきた。

 

なので、今日からは闘気の練度についても改善をすることにした。

 

甲龍歴422年◯月◯日

手紙が来た。

どうやら、母親のゼニスの居場所が分かったらしい。場所はベガリット大陸の迷宮。

 

居場所は断片的にしか分からないが、パウロは昔の仲間と残った少数を連れて向かうとか。

 

そこで、アイシャとノルンをどうするのかと話し合った結果、ルーデウスの所に送るという。

 

僕のところに送るという案も出たが、武者修行中であるということを考慮してか、パウロが却下したとか。

 

ノルン、アイシャは僕の方がいいと駄々をこねたらしいがそこばかりは仕方ない。

 

僕に頼んで来たのは、アスラ王国に一度、寄るので会ってやってほしいと言うことだけだった。

 

どうやら、護衛に付けとかは言わないとか。

 

ちなみに、護衛としては、件のスペルド族ルイジェルドさんがいるとか。

 

あとは、ゼニスの奪還で、もしもの時は力を貸してほしいの旨が書かれていた。

 

何かあればすぐに出発できる準備を整えて置くことにする。

 

甲龍歴422◯月◯日

レイダさんに稽古をつけてもらい、奥義の一つを習得した。

 

 

甲龍歴423年◯月◯日

ノルンとアイシャ、そして、ルイジェルドさんと再会した。取り敢えずは宿に泊まり2日ぐらいはアスラ王国に滞在するらしい。

 

ノルンとは近況とこれまでのこと。

アイシャにはこれまでのことから、良い人は見つかったのかとか。

 

まぁ、子供らしくいっぱい聞かれた。

 

ルイジェルドさんには、ルーデウス、エリスと一緒にした旅の話を聞かせてもらった。

 

中々に興味深い話だった。

兄らしいと言えばらしい判断の数々で何と言うか、流石だなとちょっと誇らしくなった。

 

甲龍歴423年◯月◯日

今日はレイダさんから話があると伝えられ、イゾルテさんと共に部屋を訪れていた。

 

なんでも、剣神ガル・ファリオンから手紙が送られてきたとか。

 

内容は『一人の弟子を鍛えてほしい』という要約すればそのようなこと。

 

即座に破り捨て、見なかったことにすることも出来た、と言うよりしようとしたのだが、ある考えが脳裏に過ぎり踏みとどまったらしい。

 

人にものを頼むのが嫌いなガル・ファリオンがわざわざ手紙を書いてきたこと、加えて、その弟子とやらに少し興味が湧いたとか。

 

イゾルテさんは連れて行く弟子で、僕が呼ばれた理由は単純に男手と護衛としてだと。

 

どうやっても、赤龍山脈は通らざるをえない。

そこで、僕を連れて行くことにしたとか。僕は赤竜の群れを事前に知れる、闘気流しが使えるかららしい。

 

ダメ元でノルンとアイシャについて言ってみたのだがだめだった。

 

その後は、一緒にいけない旨を伝えに行き、ルイジェルドさんに頭を下げて二人を頼んだ。

 

甲龍歴423年◯月◯日

そんなこんなでアスラ王国から剣の聖地まで歩き、何度か、野営を繰り返すこと3週間。

 

赤竜の上顎付近に到着した。

 

夜になったので天幕を張り、食事を済ませ今は見張り中である。

 

基本的に見張りは僕がやることになっている。

レイダさんによると、お前はアイツのしごきに耐えて来たんだろう?一ヶ月は寝ずに見張りぐらいは出来るだろさとか。

 

言ってることが無茶苦茶だが、理には適っている。

寝ずに戦い続けることはレイドのとこで慣れっこだし問題はない。

 

地獄のドキドキワクワク王竜山脈でのビバークで何度死ぬかと思ったことか。

 

なんかムカついてきた。

あのクソ師匠。

今度会ったらぶん殴ってやる。

 

それと、常時、闘気を半径一キロメートル先まで広げることで魔物がこちらに踏み込んできた場合はすぐさまに対応ができる。

これは、自分で闘気流しと命名した。

そのまんまなので、今度、兄に会ったときは良い感じの技名を考えてもらうことにする。

あの兄なら良い感じの名前ぐらいはつけてくれそうだから。そこばかりは信用できる。

 

これもこれで、よい修行になるので嬉しいことだった。

そんな夜中、これを書いているとイゾルテさんが起きてきて、手帳を覗き込んできた。

 

「やっぱり、なんと書いているのか分かりませんね」

 

そう言ってきた。どこの文字かと言われても自分自身が分からないので説明の余地がない。

 

言いづらそうな僕が視線を泳がすとイゾルテさんはふぅと息を吐いて、言いたくないならいいとそっぽを向いた。

 

何と言うべきか、こうやって軽い会話をできるようになったのはとても良い。美人さんがこの仕草をやっていると思うと萌えるものがある。

 

ただ、間が息辛くなったので寝れないのかと聞いたら肯定してきた。

 

眠れない理由は僕を心配してとのこと。

 

少しぐらいは仮眠をとるように言われた。

五時間ぐらいなら見張りを交代すると。

 

ここ一年で、イゾルテさんが譲ることはないと知っているので優しさに甘えることにした。

 

天幕に戻ろうとすると、服の裾が引っ張られイゾルテさんに止められた。

 

見ると、少し恥ずかしいのか頬を赤らめながら言いづらそうに自身の太ももをポンポンと叩いて膝を貸すと言ってきた。

 

勇気を振り絞って言ってくれたのだろう。

それを察した僕は遠慮なく借りることにした。

 

鍛え抜かれた肉体美を頬で感じながら見上げる感じで顔を上げる。

 

顔はしっかりと見えた。

 

イゾルテさんの服の形状上から、そう見えるだけで実際には着痩せするタイプなのだ。私服姿からそれは確かなことだと分かっている。

 

いやらしい考えを察したのか顔にチョップを食らった。

 

とても可愛かった。

 

 

 

甲龍歴423年◯月◯日

五時間の休憩のあとにイゾルテさんに起こされ、見張りを続行。イゾルテさんは天幕に戻った。

 

とってもよく寝れたと思う。

思考はいくらかハッキリしたし、剣の聖地までなんとか身体は持ちそうだ。

 

 

日が昇る頃。

起きてきたレイダさんに頭を叩かれた。理由は聞いてみたら腰抜けがと言われただけ。

 

おおよそ、昨日の夜中のイゾルテさんとの密会を見られていたと考える。

 

腰抜けと言うことは、イゾルテさんに手を出してもいいという暗喩なのかもしれない。

 

よく分からないが。その言葉が妙に心に突き刺さった。

 

 

 

甲龍歴423年◯月◯日

あれから、2週間。

剣の聖地に到着した。

 

町中を進んでいき奥へ行くと木刀を片手にした胴着姿の者や、道場のような場所が増えていく。

 

それを物珍しそうに、見るのがイゾルテさん。

それに答えるレイダさん。

 

「剣神流は早く動けないと木偶の坊だからね。寒くても重いものは身につけないのさ」

 

「なるほど。でしたら、レイモンドくんもそうするべきかと思うのですが」

 

「そいつは例外中の例外だからね。無視しな」

 

そんな会話を聞いた。

心外である。

 

歩けば、剣の聖地の大本。

剣神流の総本山となる大道場へとたどり着き、長旅の終わりが訪れたのだ。

 

そこから、剣神の娘であるニナさんに案内を受けながら『当座の間』へとやってきた。

 

そう、剣神ガル・ファリオンその人である。

 

瞬間、僕は踏み込みガル・ファリオンの首元目掛けて剣を振るう。

 

待ちに待った剣神に僕の心の底が行けと叫んだのだ。

 

殺気、気配、闘気、一切を消した一撃。

無論、剣神は受け止めた。

 

「ずいぶんな挨拶じゃねぇか」

 

その瞳には驚きと好奇心が詰まっていたように思える。そこから、僕は、軽い連撃を繰り出すが全て返される。いや、しっかりと見れば頬の方に赤い線が入ったのでちゃんと通用しているようだ。

 

「水神流はいつからこんな狂犬を育て始めたんだ?」

 

少しばかり、嬉々とした顔をしながらレイダさんに言う剣神。

レイダさんは、ため息を吐きながら言う。

 

「そいつは、レイドの弟子さね。訳あって押し付けられてこっちも困っているのさ」

 

レイド。

その名前を聞いて剣神はフハッと笑いなるほどなぁとどこか、納得したようだった。ガキンと剣を弾かれ腹に脚を食らう。

 

とはいえ、直前で左手を差し込み自ら後ろに飛んだので見た目ほど衝撃はない。

 

戦闘続行可能だったのだが、レイダさんにやめなと言われたので渋々、剣を鞘に収め、イゾルテさんの横に戻ると仕切り直しとばかりに剣神と水神が挨拶を交わす。

 

そこから、鍛えてほしいと言う弟子の名前が「エリス」。

 

レイダさんも弟子を育てさせたいという名目をガルさんに伝えた。

 

そこから、弟子同士で手合わせをする事と相成った。

ニナさんがエリスを呼びに行ってる間にイゾルテさんに声をかけられた。

 

なぜ、あんな真似をしたのかと。

 

身体が勝手に動いたと言ったらマジかコイツと言う顔をされた。

 

美人さんのドン引き顔は良いものだ。

 

エリスを連れてきたニナさん。

エリスさんはどうやら、兄と居た人であることが分かった。

 

名前を聞いても同じ人物だとは思ってなかったので少々、面を食らった。

 

こちらに気付いたのか、真っ先に声をかけられた。

レイモンドじゃない!そこから軽く会話というか一方的にまくし立てられる。

 

記憶は戻ったのかと聞かれたので、ボレアス家にいた頃の記憶なら思い出したと言った。

 

そう。ねぇ。ルーデウスについてだけど今は何をやってるか分かる?とエリスにまくし立てられた。

 

今の兄はラノア魔法大学に居て、冒険者としては泥沼の二つ名で恐れられていると話すと嬉しそうにやっぱりルーデウスは凄いわね。と自分で納得していた。

 

僕のことも聞かれたので答えた。剣帝の男に師事し、今は水神レイダのもとで水神流を教えてもらっている途中だと答える。

 

そこから、僕とエリスが会話の続きを始めようかとなった時、ニナさんに注意され、エリスは渋々と言った感じでレイダさんに挨拶をした。

 

レイダさんはエリスに何かを感じ取ったのか剣神に言う。

水神流はこの子には無理だと。

ガルさんは承知の上だ。技を体験させてやってくれればいい。

 

なぜかと聞いたレイダさんに、ガルさんは言う。

オルステッドを倒したいのだということを。

 

オルステッド。

この名前を聞いて真っ先に思い浮かぶのは、七大列強二位龍神という羅列だ。

 

会ったことはないがこの世界における最強であることは事実。僕も、斬ってみたいとは思っている。

 

レイダさんもまた、ニヤリと笑いガルさんにこう言った。

 

「なるほどねぇ。だったらライバルってことさね。なぁ、レイモンド?」

 

ガルさんもだろうなと言う感じで僕を見ている。龍神と相対した経験あるレイダさんからして僕は限りなく一に近い確率で勝てると太鼓判は押されている

 

会話を続けて。

弟子と弟子の戦いをやることになった。

エリスとニナの相手はイゾルテさんがやるようである。

 

僕はその後、ニナ、エリス、イゾルテさんの三人を相手にすることになった。なんでと思ったが、レイダさんにそれぐらいなら訳ないだろと挑発された。

 

出来るわ。

今更、剣聖二人と水王一人に苦戦する僕じゃない。

 

 

一番最初にイゾルテさんが行ったのは水神流の十八番である口撃である。試合開始前の軽い拳だ。

 

「師匠に言われて仕方なく相手をしてあげますけど……聖級ごときで私を圧倒できるなどとは、思わないでくださいね」

 

そのやっすい挑発は、ニナさんとエリスにとっては燃えやすい火種となってしまったようだ。

 

 

始まった。

最初起こったのはエリスによる殺意の満ちた連撃。

それをイゾルテさんは平然と受け流しカウンターを入れていく。僕に出会う前から、殺意の持った攻撃には完璧に対処できていたのでここまでは想定内だ。

 

そして、エリスによる光の太刀も難なく捌く。

うん。見え見えの攻撃ほど受け流しカウンターを入れやすいものだ。

 

水神流を相手にするときは、いかに自身を律し制御するかが重要なのだ。

 

無論、エリスの攻撃が軽い訳もない。

ギレーヌの稽古を思い出しながら、彼女に迫るほどの力と俊敏性だと僕は思った。

 

ただ、読みやすいし沸点の低いエリスの攻撃は水神流にとっては良いカモだと言うだけの話だ。

 

三十分後。

 

エリスはその場に倒れ込み立てなくなった。

息はあるが身体が無理だと言っているのだろう。

荒く酸素を吸っている。

 

ということで、イゾルテさんの勝ちと相成った。

 

次は、ニナさんとイゾルテさんだ。

今度のニナさんは殺気を持たない光の太刀を使用してきた。

 

僕に会う前の、慢心ありのイゾルテさんなら、なす術もなくここで倒れていただろう。

 

だが、殺気の無い光の太刀すらもイゾルテさんは対処する。

 

ニナさんは四十五分程度で倒れた。

健闘はした方だと思う。

 

そこから、二時間置いて休憩を挟み僕と三人で開始することになった。

 

間の二時間の休憩で、ギレーヌ、北帝オーベールさんに話しかけ試合をしてもらったりした。

 

とても学びのある時間をもらったと思う。

 

二時間後、再度集まったのだが一人知らない顔がいた。後に分かることだが、ジノ・ブリッツという男らしい。

 

そこから、ニナさん、エリス、イゾルテさんの三人対僕が始まった。

 

「水神流水王、剣神流剣王、北神流北王、レイモンド・グレイラット。お相手させていただきます」

 

最初に動いたのはやはりと言うべきか、エリスだった。剣神流の十八番、光の太刀だ。

 

僕は片手でそれを受け止め、はじき返え………そうと思ったが木刀にヒビが入ったことを確認したので受け流すことにした。

 

受け流しによって、崩れた体勢の腹に蹴りをねじ込みそのままの勢いで飛んでいくエリス。だが、すぐに身を翻し壁を足場に着地し床へと降りる。

 

中々にやる。確かあの壁を足場にする動きは北帝オーベールさんがやっていたものだ。

 

そう思っていると、次に向かってきたのはニナさんだ。殺気のない光の太刀。無論、それは見えている。

 

向かってくる反動を活かして上段より勢いよく振り下ろされる刃の部分に完璧に合わせて上へ木刀を跳ね飛ばした。

 

エリスよりは遥かに軽かったので、ひび割れた木刀でも無事に跳ね飛ばすことが出来た。

 

は?

 

と言うニナさんを無視しながら腹に脚をねじ込ませようと思ったがイゾルテさんに割り込まれ阻止される。

 

図らずも、ニナを助けるイゾルテさんに伊達にアナタに稽古をつけられているわけではありませんのでと言われた。

 

そこから、エリスが合流する。

 

イゾルテさんはこれまで、僕に稽古をつけられた経験を彼女らに共有。

 

三人共に僕を倒すという利害の一致が起こったのだ。

 

そこから、連携とは言えぬまでもそれっぽい形で剣を向けてくる三人の攻撃を受け流し、避け、受け止め、カウンターを続ける。

 

チラリと二人の神の名を持つ人間の表情を見れば、ガルさんは心の底から面白そうに、レイダさんは埒外の化け物を見るかのような瞳でこっちを見ていた。

 

ジノ・ブリッツを見ると何と言うべきか、興味が無さそうな無機質な視線をこっちに向けていた。

 

何と言うか、分からない奴である。

多分だが、そこまで戦いが好きじゃないことを直感として感じれた。なんでここにいんだろ。

 

そんなことを考えながら二十分後には三人が地面に伏して立てなくなったので僕の勝ちと相成った。

 

 

明日から、剣神に稽古をつけて貰えることに。

それとなぜか、ジノ・ブリッツに剣を教えることになった。

 

イゾルテさん、ニナさん、エリスは三人で合同訓練を行い切磋琢磨させる方向になった。

 

どうやら、イゾルテさんが二人に僕から学んだことを共有するとかなんとか。

 

イゾルテさんに利点はあるのかと思ったが水神であるレイダさんと剣神であるガルさんが決めたことなので口を挟むことはしないことにした。

 

そういえば、ノルンとアイシャは無事に兄の下へたどり着けたのだろうか。

 

まぁ、魔大陸からエリスと兄を送り届けた実績の持つルイジェルドさんが居るで心配はしてないが。

 

いや、結構してるな。

気になるなぁ、手紙とか送ろうにも宛先が分からない。

 

取り敢えずは、自分の事について考える事にしよう。




蛇足
レイドの評価。
ガルはレイドを「同類」として認識している部分が強く、レイダは「実力は認めるが関わりたくない」寄りです。ちなみに、北神アレックスは実力者だと聞いているだけ。アレキサンダーは一回斬られた事があり、唯一他の北神流たちとは違うと認めてたりする。

それと、ギレーヌさん→ギレーヌ、パウロさん→パウロから二人称が変更されたのは、記憶を思い出したからと言う意図的な感じです。

ちなみに、タグに追加したキャラがヒロインになります。
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