多くのヴィルヘルムスハーフェン校とダートマス校で交流がされている中、セレナとアレクサンドラも話していた。
「いやはや、やられました」
「汝も海洋学校に来ておったとはな」
「ええ、これでも王族の血筋を持っていますから」
セレナはそう言い、軽く胸を張る。
彼女はその家名から分かる通り、イギリス王室の血筋を遠縁に持つ少女であった。年齢はアレクサンドラと同じだ。
「しかし、まだ艦艇に乗って日も経っておらぬだろうに…」
「ふふふっ、ダートマス校は中等教育の際に学生艦に乗り込むカリキュラムがあるんです」
「ああ、なるほど…」
そこでイギリスの海洋学校のカリキュラムを聞いて納得をすると、何処となくお国柄を感じ取っていた。
「どうですか?海の上は」
「最高だ。余も嬉しい限りよ」
彼女はそう言い、満面の笑みを見せていた。
「良いですね。私も晴れてヴァンガードの艦長ですよ」
「お互いに健闘をしあった仲ではないか」
「ふふっ。ええ、あの煙幕にはすっかりこちらも騙されてしまいました」
彼女はそう言い、試合でアーダルベルトが展開していたあの黒い煙幕の事を話す。するとアレクサンドラは言った。
「実を言うと、煙幕はあの時切れていた。もう少し汝等が接近してこなければ負けていたのは我々であっただろう」
「…そうでしたか」
そこで少し目を伏せて彼女は笑った。これも時の運というものかと思った。
「ところで…」
そして彼女は隣を横目に見た。
「これ、どうにかできませんか?」
セレナはそこで自分の副長を見た。
「あら、今回の試合はあなた方はライムジュースが足りていなかったのではありませんくて?」
「疲れている時などは我が艦のザワークラウトなどいかがです?絶品ですわよ?」
「いえいえ、生憎私共は至近距離での撃ち合いなど想定しておりませんでしたもので。それに、ザワークラウトを召し上がるなんてご迷惑をかけてしまいますわ」
そこで彼女達は目元を暗くして罵り合いを行っていた。エーリカとアンネリーが口撃を行うと、アナスタシアは平然と応戦して『二対一でも勝てないんですか?』と言外に意味を込めて煽り散らかしていた。
「余に解決を求めるな。セレナ」
「えぇ…」
英国人の最も美味しい肉である皮肉を目の当たりにしながら彼女は呆れていた。きっとこれは永遠に終わらない罵り合いとなる。
「しかし、あのご活躍でしたら褒章も貴女が獲るかと思ったのですが…」
「あの時の艦隊指揮はシュペーの艦長だ。アレだけの活躍をしたのだからの」
「…」
その時、セレナは彼女を見て理解したようにフッと笑った。
「…なるほど、スイーツの無料
「ふふっ、中々やるようなってきたでは無いか。えぇ?」
アレクサンドラはそこでセレナを見て自分の知っている頃からの腕前の上達を見て感心していた。
「来年は遠洋実習だ。余は日本に行きたいだけなのだ」
「ほぅ、何故ですか?」
そこでセレナが首を傾げると、彼女は少し恥ずかしそうにしてから言う。
「やはり聖地巡礼はしなければ無かろう?」
「ふふふっ、なるほど」
そこでセレナは目の前の少女が大の日本のアニメファンである事を思い出す。日本語の原文で漫画を読んでいる方から中々の玄人であり、尚且つ話せるのだから強い。
韻を踏んだり、同音異義語や読み方が多数ある言葉などで度々我々を発狂させる日本語だが、セレナは昔から日本の文化、こと芸術を好むアレクサンドラは彼女に数少ない趣味の一つだと知っていた。
「如何でしょうか?久しぶりに大お祖母様に御招待をされたのですが…」
「ふむ、しかし余はこれから特別実習で帰国後に訓練があるのでな。すまんが今年は…」
「ああ、いえいえ。それなら仕方ありませんね…」
その時、セレナは一瞬悲しげにしたが、特別実習がカリキュラムに組まれていると言うのなら無理強いはできなかった。
「だがまたあの場所で鴨を撃ちたいものだ」
「ええ、貴女の腕前は最高ですからね。私も腕を上げたのですよ?」
「ほう、楽しみにしておるぞ?」
そこで不敵に彼女は笑みを浮かべた。すると、
「あれ、セレナ様?」
そこで談笑していた二人を見てブリジットが話しかけてきた。アレクサンドラと話していたセレナに少し珍しがったのだ。
「その方はお友達ですか?」
相手は王室関係者であるためにブリジットも少し言葉を丁寧にして話してくると、セレナは頷く。
「ええ、私の狩猟の友達よ」
「まさかこんな場所で会うとは思わなかったがの」
軽く笑ってアレクサンドラは言うと、ブリジットは驚いた様子で彼女を見た。
「え?じゃあ貴女は…」
「うむ、其方の予想通りだとも」
「えっ…!?」
「…なんてこった」
そこでブリジットとキャリーは驚いた様子となった。すると先んじてアレクサンドラは言った。
「ふふっ、そう心配することでも無い。余の言は気軽にザーシャと呼び給え」
「…ふふっ、ではそのように呼ばせてもらうわね」
「うむ。その方が余も嬉しい限りだ」
アレクサンドラもブリジットに笑顔で頷くと、聞いてたキャリーはその内心で震えていた。
その後、ダートマス校とヴィルヘルムスハーフェン校は海上基地にて数日間の共同講義をすることとなった。理由は今回の親善試合で双方共に修理作業を行う必要があり、そのために暫く留まらなければならないからだった。
「ほう、その帽子はそのような理由で…」
アレクサンドラは使われた帽子を見ながら頷く。
テアはあの親善試合の後に、彼女の噂に聞くブルーマーメイドの母親の部下であったというマイヤーからこの帽子を託されたらしい。
「日本に届けよとはまた…」
「六年も前から用意していたことらしい」
テアの隣でミーナが補足で説明を入れてくれる。彼女は驚きを隠せない様子であり、そんなに昔から娘がシュペーに乗り込むことや、日本に来るであろうという確信を持っていた事に驚く。
「日本で実習を行う教育艦は選ばれし艦艇…ふふっ、これは良い勝負となりそうであるの」
「お?望むところだぞ、ザーシャ」
エーリカとアンネリーは別件でここには居なかった為、ミーナとアレクサンドラは不敵に笑い合っていた。彼女達は良き同級生であると共に良きライバルなのだ。これからの航海を前に彼女達はお互いに譲らない精神を持ち合わせていた。
「あ!ザーシャ〜♪テアちゃ〜ん」
そこで軽く手を振ってブリジットが話しかけてきた。その側にはキャリーとセレナも居た。
「今日はよろしくお願いしますね」
「ああ、楽しみにしている」
セレナはそこで話しかけると、アレクサンドラも頷いていた。
「夜は親睦を兼ねた社交会…ですか」
「なんか緊張しちゃう」
その予定を前に通信員のマリア・シュニーヴィントは少し畏まった様子で呟いた。
「安心なさい。たかが学生の催しですわよ?」
「主催者が王族関係者というだけですわ」
「それが緊張するんですよ!」
彼女は言うと、聞いていたアーダルベルトの乗組員達は呆れた目線を向けていた。
その夜に親善試合に参加した生徒達全員が海上基地にて社交界に足を運んでいた。
やはりと言うべきか、ビスマルククラスはキング・ジョージ5世クラスとは距離を置いており、遠巻きにお互いに恨み節をぶつけ合っていた。
「これは…白ワインか?」
「ゼクトだ。余の家の農場で作られているものを持ってきた」
会場ではドイツワインの提供もされており、ドイツ管轄の海上基地であるためにドイツの国法が適応され、ダートマス校の生徒達は一足先に酒が飲める事に喜びながらジョッキやグラスを手に持った。
「できれば新酒を出したかったのだが、生憎と時期が合わなくてな」
「いや、十分美味いぞ」
ミーナはそう言い、強いキレのある
「鋭い後味ですね」
「でもコレくらいの方が料理に合っていて美味しいかも」
アンネリーとエーリカもそのワインを飲みながらそんな感想を述べていた。
「アレックス」
「?」
そこで彼女しか呼ばない渾名で呼ばれて振り返ると、今回の社交界の主催者のセレナが片手にグラスを持っていた。
「ありがとう、こっちでは酒類の用意ができなくてね」
「何の何の、コレくらいはお安い御用よ」
アレクサンドラはそう言ってグラスを傾ける。
「二人は知り合いなのか?」
そこでミーナが前々から気になっていた事を聞いた。
「ええ、アレックスは私と昔からの仲なのですよ?」
「そ、そうなのか…」
ミーナはそこで王族関係者と知り合いな様子のアレクサンドラに、彼女の家はどんな家なんだと苦笑をするとセレナが言った。
「まあ何せこの方はホーエンツォレルン家の御令嬢で有らせられますからね。はははっ」
「「えっ…!!?」」
「「「っ!?」」」
その瞬間、ミーナとテアは目を見開いて驚愕し、アレクサンドラ達はギョッと目を開いた。そんな彼女達の反応にセレナは驚いてしまう。
「…あれ、もしかして言ってなかったんですか?」
そこでセレナはアレクサンドラを見ると、彼女は頷いた。するとセレナはやらかした顔をした。
「しまったなぁ…あっ、今のは聞かなかったことにしてもらえますか?」
「…あ、あぁ…」
ミーナはそこでセレナに言われると頷くしかなかった。
「ザーシャ、今のは…?」
「…まあ、デビュタントを終えた来年になったら話そうと思っていたのだがな…」
そこで彼女は少し誤魔化すようにこめかみを人差し指でかいて話す。
「余の真名はアレクサンドリーネ・フリーデリケ・ヴィクトリア・フォン・
「「っ!!!」」
その家名を聞き、二人は目を見開いて驚く。
「余の家は曽祖母、アレクサンドリーネ・フォン・プロイセンから始まる系譜の末裔だ」
彼女はそう話し、名前を聞いたミーナ達はそこで驚きはしたが、同時に色々と辻褄が合った気がした。
「…なるほど、ケーニヒスベルクに集まる理由はホーエンツォレルン家だからか」
「そうだ」
「通りで貴族みたいだと思った訳だ…」
「そうさ。こっちは元王族だぞ?」
彼女はそう話すと、隣でアンネリーが言う。
「ちなみに、ザーシャはデビュタントと同時に本家への養子入りが決定しております」
「え?それって…」
「はい、ホーエンツォレルン家の当主継承候補第三位に繰り上げされることとなります」
淡々と彼女は話すと、聞いていたミーナ達は頭の中が宇宙猫になって困惑していた。