リンチェ達イタリア人のメンタルブレイクノルマを達成し、阿鼻叫喚をさせたアレクサンドラ達。
「でもあなた達には悪いわね。海賊問題もまだ時間がかかりそうなの」
「そうですか…」
そこでリンゴルもアレクサンドラのやり方にドン引きしつつも、テアに申し訳なさげに答える。
テアも改めてブルーマーメイドから事情を聞いて少し残念そうにし、学校に連絡をしなければならないのかとため息を吐く。
「よければ何らかの措置がとられるよう、我々の方から学校側に連絡をしておきましょう」
「ありがとうございます」
「艦長御二方の名前は?」
そこでテアはアレクサンドラを一瞥すると、テアは半眼で見てきたのでアレクサンドラは次にリンチェ乗組員を見て威圧目的で言うかと腹を括る。
「テア・クロイツェルです」
「…アレクサンドリーネ・フリーデリケ・ヴィクトリア・フォン・プロイセンです」
「っ!!」
そこでリンゴルは驚いてアレクサンドラを見ていた。
「なんと…貴女が」
「失礼。これでも学籍は来年まで変える予定はありませんので」
「…」
リンゴル達ブルーマーメイド隊員はアレクサンドラを前に目を丸くさせて驚いていた。
「え?え?」
「どう言うこと…?」
そんな彼女達の反応に首を傾げるアンネッタ達。するとそんな彼女達にエーリカが言った。
「あの旗を見なさい、イタリア人」
そこで彼女はアーダルベルトの全部マストを見上げさせると、そこで艦艇の最も高い場所に掲げられた旗を見た。
「何あれ?」
「ちょっと!あれホーエンツォレルン家の紋章ですよ!!」
「?」
その旗を前に首を傾げると、その家名を聞いて知っている生徒達はざわつき始めた。
「鎮まれ!殿下の御前だぞ!!」
するとエーリカが一喝をして黙らせていた。その様子を見てレターナが言う。
「やっぱスゲェや。マイン・カイザー」
「え?」
そこでミーナは困惑気味に彼女を見た。
「何それ」
「アーダルベルトではみんな、ザーシャをそう呼んでいるんだってさ」
そこで艦長の交流から公私に渡って中の良いシュペーとアーダルベルトは、王室の血筋を持つアレクサンドラの新しい情報を知ることとなった。
その傍でリンゴルはテアに聞いていた。
「ところで貴女、もしかしてマリア・クロイツェルさんの娘さん?」
「え?」
テアは唐突に母親の話が出てきたことに驚いて見上げてしまう。
「はい…私の母です」
彼女は頷くと、ウルズラは納得しつつ驚いた。
「本当に?昔、貴女のお母さんに大変世話になったのよ。今でも頭が上がらないわ」
「っ!!」
その時、ウルズラの言葉にテアは驚く。
「しかしこんな場所で娘さんにお会いできるなんて」
しかしウルズラは気にした様子もなく、テアを見てやや嬉しそうにもしていた。
「もしよければだけど…」
「?」
そこでリンゴルはテアを見ながら提案をしてきた。
「我々の護衛付き、と言う条件で特別にこの海域を渡らせてあげましょうか?」
「「「えっ!!」」」
「マジですか!?」
その提案にアンネッタを見ていた隊員が驚いた様子で見た。
「ええ、調査の結果、海賊は夕方から夜にかけて出没することがわかっているの。昼間のうちに通れば問題ないと思うわ」
「「「おーっ」」」
そして驚くミーナ達。
「それに、クロイツェルの娘と王族関係者が居るとなれば無下に出来ないわ」
「っ!」
「…」
その時、僅かにテアとアレクサンドラの眉が動く。
「ずるいぞ!何だそれ!贔屓だ!!」
「はいはい、わかったわ。貴女達もついてきなさい」
するとそんなリンゴルの対応に不満げに見上げてさけんがアンネッタに、リンゴルもため息まじりに許可を出す。
そんな特別対応を前にミーナ達は口々に言う。
「艦長のお母さんすごーい!」
「流石だな」
「お母さんのおかげだな」
彼女達の反応を聞き、テアはそのまま静かにその場を後にしてしまう。
「流石はマイン・カイザー」
「ありがとうございます」
「…はぁ」
その様子を見て彼女はほろ苦く笑う。
「偉大な親を持つと言うのは、苦労するな…」
「…ええ、名家というのはそこに存在するだけで家の歴史が積み重なるものです」
そこでアンネリーが同情をするように話しかけてきた。
「我が家も、動乱後のドイツ革命で王位を追われた家ですので」
「…恨むか?」
「いいえ、元より混乱を嫌って最後のバイエルン王はハンガリーに逃げました。今更、私は個人的に恨むことはありませんよ」
アンネリーはそう言い、もはや遠い昔の話となってしまった家柄の話をした。
「家は?」
「まあ、多少は。貴女が元ドイツ皇帝の家系。しかも直系になることが分かると、遠巻きに言われましたね」
「…苦労をかけるな」
「いえいえ、準備校からの親友を今更裏切れと言われても出来ませんよ」
彼女はそう言った後に一拍置く。
「それに、私は個人的に貴女を崇拝していますので」
「?」
アレクサンドラは首を傾げると、アンネリーは言う。
「私は家のことが常に付き纏いました。ですから外界と隔絶される海洋学校に入った。そこで話しかけてきたのは貴女だった」
「…」
そこでアレクサンドラは最初に彼女と出会った時のことを思い出す。
「貴女は私の家を知っても、バイエルンの王族関係者だと知っても、変わらずに接した。それが私にとっては印象的でしたので」
そう言い、アンネリーはアレクサンドラを見る。
「たとえ皇帝の家でも、そうでなくても、貴女は変わらない。その真の強さは憧れていますよ?」
「…そうか」
そこで彼女の内心を知り、アレクサンドラは少し嬉しそうに微笑んで言う。
「…何か景気付けに食べるか」
「いいですね。イタリアで生牡蠣でも食べたいと思っていたんです」
生牡蠣と聞き、イタリア人の料理への情熱を思い出して彼女は呟く。
「…行くか。皆も連れて」
「いいですね。出港前に食べましょう」
アンネリーは頷くと、彼女達は他の艦橋要員を誘ってマルタ島のレストランに突撃していった。
翌日、出港準備を整えてマルタ島の港で二隻の改インディペンデンス級が舫を外す準備を行う。
「改インディペンデンス級、『スキアーヴィ』『トーナ』!!出港準備整いました!!」
「よろしい、指示あるまで待機せよ」
リンゴルは隊員達から報告を受けて頷く。
「あとは学生艦たちか…」
「失礼します!」
そこで岸壁にミーナとローザが現れる。
「シュペー副長のヴィルヘルミーナ!」
「記録員のローザです!」
敬礼をしながら彼女達は報告する。
「連絡が遅れて申し訳ありません。シュペーも出港準備が完了しました」
「分かりました。指示があるまで待機をお願いします」
「はい!」
そこでミーナとローザの登場に、リンゴルは首を傾げた。
「ところでテア艦長は?姿が見えないが…」
「艦長は体調がすぐれないようなので…」
ミーナはそう報告し、テアがどこから拾ったのか風邪を引いてしまったことを伝えた。
「そうか、それなら仕方ないな。もう少し話せればよかったのだが…」
そこでリンゴルは少し残念そうにしており、ミーナはそんな彼女の反応を見て、むしろテアが風邪をひいてくれていて良かったかもしれないと思ってしまった。
「まあ、艦長とは見えない疲労が溜まるものだ。君たちも気にかけてやるのだぞ?」
リンゴルはそう言った時、岸壁にガラガラ声が響く。
「くはぁ〜、ずみまぜん~おぐれまじだ~」
その正体は副艦長に肩を担がれたアンネッタであった。
「すみません。ここ数ヶ月の蓄積疲労が…」
「いや、本当は昨日バカ騒ぎをしたせいッス」
「だから言うなって!」
しかし副官の暴露にアンネッタは怒鳴って返した。
「あれは別物だ」
「ハァ…わかっています」
リンゴルとミーナは呆れたような、分かりきっていたような、そんな冷めた視線を送った。
「ちょっとそこ!!なに残念そうな顔をしているの!?」
アンネッタはそんな二人に叫んだ。
「でも、これでようやくマルタともおさらばだ!ありがとうな♪」
「馴れ馴れしいな。こっちは大迷惑だったんだぞ」
そんな相変わらず調子の良さげなアンネッタにミーナは恨みも交えた冷めた視線を送り続けた。
「あとはアーダルベルトだけか…」
リンゴルはそこで最後の一隻を待つと、そこでミーナの横からエーリカが現れる。
「遅れて申し訳ありません」
「ぬおっ!?」
「え?!」
そこで足音も気配もなく現れたエーリカにミーナ達は目を見開いて驚愕をしてしまった。
「プリンツ・アーダルベルト。出港準備完了いたしました」
「…そちらの艦長も見当たらないようだが…?」
リンゴルが聞くと、エーリカはその訳を話す。
「申し訳ありません。現在艦長以下、艦橋要員が私を除いて食中毒になりまして…」
「「えっ!?」」
ミーナ達はエーリカから聞いた話に驚愕をした。
「どうも昨日食べた生牡蠣に全員当たってしまいました様子でして…」
「「あぁ…」」
確か昨日の昼間にマルタ島のレストランにアレクサンドラの奢りで飛び出して行ったなと言うのを思い出す。
「私は別の料理を取っていたので無事でした」
「…ザーシャも
「完全な事故かと。今後は牡蠣禁止令を出しますわ」
「是非そうしてくれ。艦橋要員が壊滅など目も当てられん…」
眉間に皺を寄せてミーナは言うと、食中毒に倒れたアレクサンドラ達に黙祷を捧げた。
「あはははっ、お姫様も食中毒になるんだ」
「ザーシャは少なくともお前みたいに迷惑はかけない」
ミーナはそう断言をしてアンネッタに言った。
「まだ怒ってんの?ほんと、悪かったってば…」
そこで上目遣いで目を潤わせて彼女は言うと、少しだけミーナは申し訳なさが勝った。
「むっ…反省しても変わらないぞ」
そこでアンネッタはミーナに近づくと、そのまま彼女の胸元を見た。
「やっぱ発育いいよね♪触っていい?」
「…」( *`ω´)
その瞬間、彼女はキレた。
「許さん…」
「落ち着いてミーナさん!!」
「はなせ…!!」
カッと怒りのボルテージが上昇し、咄嗟にローザに羽交い締めにされてしまうミーナ。
「ダメだって」
「残念っす」
そこで許されなかったことにアンネッタ達は残念がっていた。
「胸と言ったら君もそうだよね〜♪」
「ふふふ、自殺をしたいのであれば喜んでお手伝いいたしましょうか?」
目元を暗くして糸目に彼女は言うと、アンネッタは藪を突いて熊を出した恐怖を感じ取って思わず距離をとってしまった。
そんなやりとりを見てリンゴルはやや呆れつつも、活発な学生らしい若さを感じ取っていた。
「オホン…とりあえず、日の出と共に出航の指示を出すから待機していなさい」
彼女はそう言うと、エーリカ達は解散し、ミーナ達は残ってテアの事を質問していた。