「左舷に三機、右舷に二機!残りは貨物船の救助に向かえ!海賊船をここで取り押さえるぞ!!」
リンゴルは襲撃をされていた貨物船に接近をしてスキッパーも多数発艦させていた。
「アレは…」
その中で医務室で窓の外で見えた謎の艦影を見て嫌な予感を感じた。その直後、その艦影から気泡を確認した。
「っ!拙い…!!」
その直後、彼女はベッドから飛び出した。
「カイザー、まだ寝てないと…」
「構わん、艦橋に連絡!回線繋げ!!」
ハイルヴィヒに怒鳴りつけると、その気迫に彼女は驚きながら艦橋につながる受話器を取る。
「エーリカ!九時方向に魚雷だ!」
『えっ…?!』
そこで言われたエーリカは困惑すると、アレクサンドラは指示をする。
『フローラ!』
『…っ!!魚雷音接近!方位三〇〇!感二!残りはシュペーに向かってる!』
すぐに彼女は新型の探信儀を用いて魚雷接近を感知すると、大慌てで旋回を行なって魚雷は直前で爆発を起こして船体を大きく揺らした。
「時限信管!?」
『深度が深い…深度維持装置が不良の証拠だ』
そこで先ほどまで航行していた場所で爆発を確認すると、エーリカは驚き、その水柱の高さを見てアレクサンドラは即座に判断する。
同様にシュペー近辺でも二発の水柱を確認する。
「
すぐに回復していたエルフリントが言い、爆発した魚雷を見る。
「おい!潜水艦はどうした!!」
『ソナーで見つけましたが沈降。追跡できません!!』
「敵は仮装巡洋艦じゃないのか?!」
艦橋ではバタバタと魚雷攻撃に大騒ぎになっていると、エーリカは歯噛みする。
「艦種が見えなかったのは痛いですね。諸元がわからない…」
「それならUボートⅦ型だ」
そこで艦橋にアレクサンドラが制帽を被って上がってきた。基本的に彼女は船内では重いと言ってコートを外していたので、パジャマの上から直接制帽を被っていた。
「両舷にバラストタンク。アレは間違いない」
「ザーシャ、大丈夫なの?」
エーリカは不安げに聞くと、彼女は腹を摩る。
「少し下痢なだけだ。それより確認しろ、なぜ海賊が潜水艦を持っている」
「す、すぐに照会をかけます!!」
マグナレータはそこでリンゴルに問い合わせを行った。
『なるほど…それは去年、一般人の青年の手によって盗まれた艦かもしれない』
幸いにもすぐに彼女は過去の事例と辻褄が合った。その返答にアレクサンドラ達は驚く。
『練習艦として寿命を迎えて廃棄が決まっていた潜水艦だ』
『じゃアレも海賊の仲間…!』
そこでミーナが歯噛みをしていた。
現在、ドイツの海洋学校の教育艦で使用されているのは主にⅩⅩⅠ型。Ⅶ型は予備役艦以外で今は使用されていなかった。
「現在、
リンゴルはそう言うと、シュペーや艦隊の中で一瞬ざわつく。
「あの…どのように戦うのですか?」
そこでマグナレータはアンネリーから受け取ったタブレットを前に伝える。
「UボートⅦ型は左最大で十四本の魚雷を発射可能。今は四本放ったので最大で十本魚雷を持っています。おまけに我々は
「リンチェには機雷がありますが、浮遊機雷なので海の中に潜航している潜水艦には当然届きません」
「対潜装備はあるにはあるが…夜間は使えないぞ?」
そこでマニュアルにデカデカと禁止事項に記されていた危険行為を思い出す。まだ確立した運用方法が確立していないから仕方ない部分はあるのだが…。
「事実上、手詰まりか…」
アレクサンドラが言うと、話を聞いていたリンゴルはしばし考える。
「フゥ…そうだな、無理は出来ん」
『!!』
その決断にテア達は驚いていた。
「「スキアーヴィ」にも交戦を止め、至急離脱するよう伝えろ」
「いいんですか〜?やっと捕まえるチャンスが来たのに…」
「またチャンスは巡ってくる」
彼女はそう言うと、無線の手を取った。
「不安にさせてすまなかった」
『『待ってください』』
その時、リンゴルが続きを言う前にテアとアレクサンドラの口が合わさった。一瞬、ハモったことに二人は驚きつつもテアが最初に言う。
『目の前の海賊を見逃すと言うことですか?』
「テア君か…その通りだ。学生艦を連れて危険を冒すことはできない」
リンゴルは言うと、次にアレクサンドラが言う。
『余の艦には対潜装備がある。普段は昼間しか使えないが…』
そこで彼女は艦橋の無線で受話器を取っており、その先で乗組員の一人が言う。
『やらせてください。艦長』
その声の主は航空科のパイロット、ハンネ=ウルリヒ・ルーデルだ。彼女はやけにイキイキと意気込んでおり、その様子を見てアレクサンドラは苦笑気味に表情に微笑みを作ってからリンゴルに言う。
「こちらとしてもやってみたいことがあります。やらせてください」
『それに、一つ提案ですが対潜装備なしでもなんとかなる方法があります』
『…なに?』
そこでテアからの提案にリンゴル達は驚いて反応をした。
二人の提案を受けると、すぐに行動に移されることとなる。
「なんで私が…」
そう文句をこぼしながらアンネッタは機雷を落としていく。元々港湾封鎖などで機雷を一〇〇発積載可能なレオーネ級航洋艦はポイポイと洋上に機雷を敷設していく。
「思惑通りに行くのか…」
「時間稼ぎにはなるんじゃないでしょうか?」
そこでトーナの高性能ソナーで探知した場所に機雷を落とすと、そこでその様子を双眼鏡でリンゴルは見ていた。
「機雷、敷設完了しました」
「よし…」
そこでアレクサンドラはわずかに嫌な予感を感じつつも、頷いて洋上を見る。
「三番主砲を除いた全砲門発射用意。弾種榴弾!」
彼女は指示をすると、全ての火砲が旋回を行い水面に照準を合わせる。
「砲撃はシュペーに合わせろ」
「了解」
ハイデマリーは敬礼をして頷くと、無線が入った。
『こちらシュペー、アーダルベルト。準備はいいか?』
「こちらアーダルベルト。いつでも構わん」
そこで二隻は同じ目標に照準を合わせると、テアが砲撃の指示を行う。
『全砲門、機雷を撃て!』
そこで砲撃が行われると、アーダルベルトも砲撃を行う。
その砲弾は水面に着弾を行うと、一斉に水面下で時限信管の榴弾が起爆して、その圧力で機雷にも誘爆をする。
「オー、水柱すげぇ!主砲の一発で連鎖していく!」
「ヒュー」
「発艦用意!」
その中で甲板後端では、赤帯の中心の白煙に大きく目立つ蛍光塗料で『H』と塗られた飛行甲板で整備班兼補給班が走り回っていた。
「ぶっつけ本番よ!事故るんじゃないわよ」
「おう、任されて!私を誰だと思っていて!!?」
そこでハイジに言われてハンネは言うと、そこで
「一番点火!二番点火!」
そこで爆撃手としてエーディト・ハルトマンが乗り込むと、胴体に専用の爆雷を搭載して翼の回転速度を上げていく。
「離れろ!離陸できるぞ!」
「
そこで敬礼をして整備員のステファニー・ゴールデンバウムは言うと、深緑色に塗装されていた機体は蛍光塗料が高速回転から円を描くと、その後に甲板から距離をとって離陸を始めた。
「ドラッヘの離陸を確認!」
「砲撃続行。リンチェに機雷を敷設するように言え」
アレクサンドラは指示をすると、エーリカが言う。
「これで出てくると思いますか?」
「相手は素人と言う。どのように魚雷を仕入れたかは定かではないが、艦橋が船体が丸見えになるまで浮上した状態で魚雷を撃った時点でタカがしれている」
アレクサンドラはそう言い、相手の腕前を推察していく。
「魚雷の時限信管を同時にしていた時点で、我々が気がついて回避する可能性を考えていなかった。これは素人のやり方だ」
彼女はそう話すと、海域に飛行するドラッヘを見る。
「困難な夜間発艦をよくやってくれた」
「乗っているのはハンナとエーディトです。我々が止めたとて、勝手にパイロット席に乗り込みそうで怖いですよ」
「そうとも言えるな…」
腕前はピカイチなのだが、いかんせん脳みそが空に支配された飛行馬鹿達だ。その両名が乗り込んでいるのだからどうしようもなかった。
「…うっかり潜水艦沈めないかな」
「それが出来そうだから怖いんですよね…」
艦橋に立ってアレクサンドラはそんな不安をエーリカと共有すると、彼女は途端に腹に違和感を感じた。
「っ!(マズい!!)」
急激にグルルと音を立てた腹に危険度が急上昇をすると、彼女はエーリカに言う。
「エーリカ、敵が浮上したら三七mm機関砲でバラストタンクに穴を開けておけ」
「は、はい!」
「すまない…後は頼んだ」
そこで彼女は大慌てで最寄りのトイレまで全速で走って行った。
「あーあー」
「でも何も見えない海中で、これだけの爆発となると…」
「恐ろしくてたまりませんね」
艦橋で飛び出して行ったアレクサンドラに苦笑しつつもそう話すと、その直後に海域に到着をしたドラッヘが無線で伝える。
「目標海域到着」
「
そこで照準器を覗き込んでいたエーディトがボタンを押すと、航空機用の爆雷が投下されて目標地点に到着をすると着水をして海中を少し進んだ爆雷は潜水してやり過ごそうとしていた潜水艦の直上で起爆した。
するとその爆雷の爆発が決め手となり、バラストタンクに圧搾空気が入れられて海面に大きな影が浮き上がって水面を割って出てきた。
「潜水艦を視認!」
「機関砲、バラストタンクに発射!」
「了解」
ニヤッと笑ってハイデマリーは艦橋脇の対空機関砲の照準を浮上した潜水艦に向ける。
「沈めないでよ」
「お任せあれ。砲術長ほどじゃないですけど、これでも腕はいいんですから」
エーリカの忠告に彼女はそう答えると、三七mm機関砲を浮上した潜水艦の大きくはみ出たバラストタンクに向けて発射した。
「!!アーダルベルト発砲!」
「潜水艦に撃っているのか!?」
「いや、バラストタンクに穴を開けているだけだ」
驚愕する彼女達にテアはすぐにそれがバラストタンクに穴を開けて二度と潜水できないようにするための措置であると理解する。
潜水艦はその性質上、鯨と衝突しても沈む可能性すらある脆弱な艦種。少しでも船体に穴が開けば潜水したまま帰ってこれないなんて言う恐ろしい話もある。
「それよりも副長、ブルマーに伝言を頼む」
テアは辛そうにしつつも、ミーナに介抱をされながらそう言った。