そしてテアの母親を探して食堂に到着をする。
「はいお待ち、横須賀女子特製カレー!外国人のお嬢ちゃん達にはサービスで大盛りね!!」
するとそこでアレクサンドラとテアは三連装砲を模した白米と飾り付けがされていた。
「ほう、これは得をした気分だ」
そこでアレクサンドラはモリモリとスプーンを使ってカレーを食べ始めていく。その横でテアはカレーを前にムスッとして小柄扱いをされた事や母親がいなかった事にに不満げな表情を浮かべていた。
「しかし…カッツヒェンの母君はここにも居なかったようだな…」
「探している方はいらっしゃらなかったですね…(カッツヒェン?)」
知名はアレクサンドラの呼び方に渾名なのだと理解すると、どうしてそんな渾名なのかに首を傾げる。
「うむ…もどかしい、あと少しなんじゃが…」
「本当に風見鶏のようなお方ですわね…」
ミーナとアンネリーもこの状況にもやっとした感情で吐露していた。
「はぁ、会議後の予定は聞いていないから手詰まりだ」
「お昼を抜いてもいけませんから、これを食べて気を取り直しましょう」
ミーナはそう言うと、スプーンでカレーを掬って餌付けを始めた。
「わっ?えっ…?」
その仕草に知名は顔を少し赤らめて驚いていた。
「どうした?」
「い、いえ…」
その当たり前のように行われた所作に知名は慌てて否定すると、その隣でアレクサンドラ達が耳打ちをした。
「「あれは違うからね?」」
「あ、はい…」
息ぴったりに言われ、知名は自分の常識が間違っていなかったことに安堵してカレーを食べ進める。
そんな中で知名はアレクサンドラの膝の上で寝ているエリザベートを見た。
「しかし、すごく人懐っこい猫ですね」
「うむ、余の親友から贈られたものでな。エリザベートと言う」
「(余?)」
知名はそこでアレクサンドラの一人称にミーナの広島弁と同様に違和感を覚える。
「触っても良いですか?」
「うむ。耳の裏などおすすめだぞ?」
そこでもえかが撫でると、綺麗に毎日ブラッシングとトリミングをされているふわふわとした毛並みに生まれた育ちの高貴さを彼女は感じ取っていた。
その後、食堂でカレーを食べ終えてから彼女達は校舎に座り込んで悩ませていた。
「んー、しかし、なんも手掛かりがないのはキツイな」
「そもそも学園内にいるのかも分からないからな」
ミーナとテアは悩ませていた。
「あの」
すると知名がやや恐れ多く聞いた。
「今更なんですけど、電話とかできないんですか?」
そこ知名が聞いた質問にテアは首を横に振って答える。
「あの人は個人で携帯を持っていない。連絡を寄越す時も手紙だ」
「SIMカードを入れ替えるのが面倒臭いのでしょうか?」
「さあ?」
勝手にアンネリーがこの風のようにフラフラと姿を掴み損ねてばかりの状況にため息混じりに溢した。
「しかし、この後の行動を考えるには証拠が足りんしな…」
そこでアレクサンドラも手詰まり感を醸し出している時。
「はっはははっは!!」
「「「「「!!?」」」」」
その声にその場にいた全員が驚き、露骨にミーナとアンネリーは露骨に嫌な顔をする。
「この声は…」
「チッ、こっち忙しいってのに…」
露骨に嫌な顔をして、アンネリーに至っては殺意すら向けつつあるその雰囲気。
「あら?あらあらあら、見たことある顔が並んでいると思ったらあなた達?」
そこでいつものかって知ったる声をこの極東でも聞くかと全員がその方を見る。
「こんなところで会うなんて奇遇ねぇ」
「クローナ…ビアンカとザスキアも…」
そこでいつものビスマルクトリオが現れると、知名は首を傾げる。
「えっと、探してる方ってあの人…?」
「「断じて違う」」
息ぴったりでミーナとアンネリーは否定する。
「なんでお前らがここにいるんだ」
「たまたまよ、たまたま」
「んなわけあるか!」
ミーナはそう言って怒鳴り、アンネリーは半眼で言う。
「シュペーとアーダルベルトの姿を見ないとは不届者め!」
「初手で禁止カード出さないでくださいよ」
そこでビアンカが思わずアンネリーにツッコミを入れてからアレクサンドラを見た。
「あはははは!」
そして言われたクローナは笑ってからテアを見た。
「悪いが私は今機嫌が悪いんだ。絡んでくると言うなら容赦しな…」
「あら!怖い!機嫌悪いんですって!」
その時のクローナは大層立派な笑みを見せており、そのことに全員がイラッときた。
「お前らぁ〜!!」
「決闘の申し出か?喜んで受けるぞ」
そこでアレクサンドラが一歩出て下げていたレイピアの柄を握る。
「もしかしてー、ママと喧嘩したのかしら〜?」
「!?」
その瞬間、一転してミーナ達は彼女の言葉に驚いた。
「お子ちゃまはねえ、母親を大事にしなくちゃ。ブルマーのコネが使えなくなっちゃうわよ」
「なぜそれを知っている?!」
するとビアンカが訳を話す。
「さっきクロイツェル艦長そっくりの方とすれ違ったからよ」
「どこで!!?」
その切羽詰まった雰囲気にビアンカは困惑しつつ教えてくれた。
「フン、中央広場よ。ねえザスキア?」
その直後、脇目も振らずにミーナ達は走り出していく。
「急ぎましょう」
「ああ」
「このままだと間に合わん」
「走って、ザーシャ」
そして彼女達に道案内として知名もついて行く。
「え?」
そんなあまりにも雑な対応をされてビアンカは逆に困惑してしまった。
「初めてお前に感謝するぞ、クローナ!」
「…」
すると去り際にミーナの放った一言にクローナも困惑して見送った。
「とうとう頭いかれたかしら?」
らしくない対応をされ、彼女はどう言うことだ?と首を傾げていた。
そして駆け出した五名は目的地に着く。
「ここが中央広場です!」
「…ッ!」
走って飛び出した彼女達は中央広場を見る。
「いない…」
しかしそこは無人で、ブルーマーメイド隊員すらいなかった。
「余はこっちを、アンネリーは反対を」
「畏まりました」
「エリザベート」
「ミャウ」
そこでアレクサンドラとアンネリー、エリザベートは中央広場を中心に探索を行うが、それらしき人影は見当たらなかった。
「一体どこにいけば会えるんだ…」
そこでテアはため息をついて座り込んでしまった。
「あの…すみません。私そろそろ帰らないと…」
「あっ、そうだな」
「付き合わせてすまなかった」
時計の時刻を確認して知名は戦線離脱を伝えると、ここまで付き合ってくれたことにミーナとアレクサンドラは頭を下げた。
「大丈夫ですよきっと!」
すると知名は言った。
「諦めなければきっと会えます!…私の友人だったらこう言うと思います」
そんな彼女の言葉にどこか勇気付けられたミーナ達は言う。
「いや、感謝する」
「うむ、ド感謝する」
ミーナも此処まで案内を手伝ってくれた知名に最大の感謝をすると、相変わらずの広島弁で彼女を苦笑させる。
「ああそうだ。ついでに連絡先を聞いても良いか?」
「あ、うん。良いよ」
その際にアレクサンドラはそう言い知名と連絡先の交換をしれっとしていた。
「艦長、次はどこを…」
「シュペーに戻るぞ」
「えっ?」
そこで人気のなかった中央広場を手にテアは広場のベンチに座り込んで言った。
「今回も縁がなかったということだ。これ以上はザーシャ達にも悪い」
彼女はそう言い、岸壁まで歩き出す。
「ちょっと待ってください!」
ミーナは帰ろうとするテアを静止させる。しかし彼女はそれを振り切ってシュペーが停泊している岸壁まで向かう。
「まだ時間があります!ここで諦めては…」
彼女はそう言った時、ふとテアの足が止まった。
「えっ……」
そして困惑気味に彼女は岸壁に写っていた影を辿って顔を上げた。
波の音が夕日に消える中、その女性は話しかけてきた。
「待っていたわよ。テア」
するとそこではブルーマーメイドの制服を纏った、テアにとてもよく似た顔立ちの女性が微笑んで立っていた。一目で彼女がテアの肉親であると窺えた。
「…母上、どうしてそこに…?」
「(テアのお母さん!?)」
「(うわっ、本当にそっくり)」
「(遺伝子感じますね)」
そのことに三人は思わず驚いて二人を見比べてしまう。
「シュペーがあったから、もしかしたらって思ってね」
テアの母、マリア・クロイツェルはそこで和かに微笑みかけてきた。
「その子達は?」
「ああ、シュペーの副長の…」
「ヴィルヘルミーナです」
そこでマリアを前に少し緊張気味にミーナは答えると、次にアレクサンドラ達を見る。
「プリンツ・アーダルベルト艦長、アレクサンドリーネ・フリーデリケ・ヴィクトリア・フォン・プロイセン」
「同じく、書記のアンネリー・フォン・ヴィッテルスバッハです」
その名前を書き、マリアは一瞬驚いた。
噂でドイツ皇帝の家系の者が海洋学校に入学したと言うのは話で聞いていたが、まさか自分の娘の友人だったとは思ってもいなかった。おまけにバイエルン公国の王族関係者もいると言うのは意外も意外だった。
そんな愉快な友人達を前にマリアはテアを見る。
「テアがいつもお世話になっているわね。テアも…」
そこで一瞬マリアは停止した。
「…何年ぶりかしら?」
「二年と六ヶ月です」
その一言で真面目そうな雰囲気から一転、少し抜けているような雰囲気を持ち合わせているんだなと見ていて感じた。するとマリアは気を取り直して言う。
「そうそう、そうだったわね。見ないうちに大きく
…なってないわ?どうして!?」
その一言がテアにあった燻りに火を放つ。
「まぁ、元気なら…」
「ムッ、よくそんなことが言えるな!?」
そこでテアは目を大きく見開き、カッと激昂してマリアに叫ぶ。
「前に会った時だって、一日も経たずに出航するし!!」
「ええ?拗ねているの?」
「拗ねてないっ!!」
そんな親子のやりとりを見てミーナ達は同じことを思う。
「(((凄い、テアが子供みたい…)))」
年相応…いや、見た目相応な反応を見せている彼女に三人は微笑ましげに見てしまう。
「私だって寂しかったわ。週一で手紙を送っても一通も返信はこないし」
「えっ?そうなんですか?」
そこで意外にも母親らしいことをしているじゃないかと思って感心した。
「最初は返していたが、送付先に母上が居たた試しがなかった」
しかしテアの話を聞いて再び評価は急降下する。
「そ、そうだったかな?あはははは…」
そのことを指摘され、心当たりしかなかったマリアは少し誤魔化すように言う。
「まあでも、私たちは親子だから絆がばっちり…」
「そんなわけがない!」
そんなマリアにテアは声を荒げて否定した。その強い否定にミーナ達も驚く。
「…ずっと…私は寂しかった」
そして彼女は目元に涙を浮かべ、拳を振るわせるほど強く握る。
「認めたくはなかったが…、ブルマーになったのもあなたのことも褒められても素直に喜べなかったのも、母親らしいことを一つもしてくれないあなたが傍にいてくれない当てつけだ」
彼女はそう言い、この航海で積み上がっていた本心を吐露していく。
「それを素直に認められることが出来たのは…」
そして次に彼女は両脇に立っていた親友達を見る。
「ミーナやザーシャ、大勢の友人達のおかげだ」
面と向かって言われ、ミーナは驚きアレクサンドラも少し嬉しくなる。
「動機はなんであれ、私が子供の頃に憧れたブルマーの道を私は歩んでいる。そして、皆と共に歩めていることを私は誇りに思う!」
彼女はそう話すと、マリアに近づく。
「…これを貴女に返す」
「艦長帽…」
それはドイツを出る前にマイヤーから受け取った艦長帽だ。
「あなたがこれを私に届けさせた理由はこれだろう?」
そう言い彼女は艦長帽を反転させると、そこでは艦長帽の裏に無数の乗員のサインやシュペーの落書きがされていた。
「私はあなたに負けない艦長になってみせる!!」
そしてその帽子を実母に叩きつけるように返しながら言う。
「私は、あなたを超える」
実子から母親への宣戦布告。その強い言葉を聞いたマリアはフッと笑う。
「…よく言った」
そして『もう立派な大人だな』と娘の飛躍した成長ぶりを前に一人の母親として泣きたくもなる。
「大きくなったね」
しかし宣戦布告をされた身として、ここで泣くわけにはいかない。
それが大人として、ブルーマーメイド隊員として、一人の母親としての矜持であった。
「…ミーナさん、アンネリーさん、アレクサンドラさん。私はテアの傍に居てやれない」
そしてマリアはミーナ達を見る。
「…だから私の分まで、テアの事をよろしく頼むわね」
「「「はいっ!!」」」
託された者としての矜持に答えるように三人は実に強く答えた。