Reichs Adler   作:Aa_おにぎり

43 / 45
アニメ本編
#43


四月八日 〇四:〇〇

猿島フロート 港湾地区

 

航洋艦の叛乱の一報が入った翌朝、まだ陽も登っていないような時間帯。

 

「出港!微速前進!」

 

慌ただしく乗組員が搭乗し、錨を揚げてアーダルベルトは猿島フロートを出港していく。

 

「航海長。湾外に出次第、最大戦速で西之島新島に急行せよ」

「了解。西之島新島に向かう最短コースを策定させます」

 

汽笛も上げずに慌ただしく出港をしたアーダルベルト。その船内では困惑の色合いを強く見せていた。

 

「武蔵からの砲撃に、航洋艦の叛乱…」

「何が起こっているんだ…?」

「さぁ?余も動向の把握ができておらん」

 

そこで彼女達はこの一夜で仕入れられた情報を何とかまとめていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

始まりは学生艦叛乱の一報を聞いた数時間後の事だった。

 

「シュペーと連絡が取れない?」

 

出港準備の最中にアンネリーからの報告に首を傾げた。するとアンネリーも困惑気味に頷いた。

 

「はい…全ての周波数帯で連絡を試みましたが、いずれも返答がありませんでした」

 

アンネリーからの報告にアレクサンドラも意味が分からない様子だった。

 

「ビスマルクは?」

「…一応、そちらは連絡がつきました」

 

そこでアレクサンドラが聞くと、アンネリーは嫌々ながらも連絡が取れたハワイに向かっている途中のビスマルクに連絡を取った。

 

『は?豆戦艦?知らないわよ』

 

そこで返ってきたのは相変わらずな様子のクローナだった。

 

「西之島新島に向かった後は見ていないか?」

『さあ?私は知らないわよ』

「…そうか、すまなかった」

『ちょっと、何が起こって』ガチャ『ツーー…』

 

そこで相手の話を聞かずに通信を切ると、アレクサンドラはアンネリーに言う。

 

「着拒して」

「畏まりました」

 

そこでクローナからの連絡を着信拒否すると、その後の鬼電を全て自動的に遮断してから海図室で彼女は困惑していた。

 

「ビスマルクがシュペーを最後に見たのはこの場所だそうだ」

「相変わらずちょっかいかけてたんですね…」

 

もはや天丼のようなやり取りにヘルミーナも半分感心した様子でシュペーの航跡を見ていた。

 

「シュペーとのビーコンが切れたのはこの先ですね」

「…西之島新島か」

「今回の横須賀校の海洋実習の集合先です。例の叛乱を起こした航洋艦もこの近海で教員艦に魚雷攻撃を行っています」

 

昼間に航洋艦の叛乱の一報を受け、宗谷真雪校長からの出港準備要請により、暖機運転を完了させていたアーダルベルト。

 

「航空科には洋上で合流するように通達して」

「了解しました」

『艦長、広域通信が届きました!』

「読め」

 

通信員のマリアがインカムを通して連絡をした。

 

『昨晩二〇:〇〇時頃、西之島新島沖を航行中の日本船籍の貨物船が付近を航行中の特大型直教艦『武蔵』からの砲撃を受け、損傷した模様』

「何だと?」

「武蔵の砲撃ですって?!」

 

それは耳を疑う連絡だった。

 

「現在、砲撃を受けた貨物船は横須賀港に退避中。なお砲撃の連絡は以降確認されていません」

 

マリアは淡々と報告を行うと、そこで海図室でアレクサンドラは困惑気味に西之島新島を中心に海図を広げていた。

 

「武蔵の砲撃?」

「では武蔵も叛乱を…?」

「いや、武蔵の砲撃は昨日の二〇時、晴風の叛乱時刻は九時だ…叛乱を起こすにしては時間差があるのではないか?」

 

アレクサンドラは一連の情報では全く持って理解ができないと頭を抱える。あまりにも仕入れた情報は少なすぎた。

 

「しかし、これで武蔵と晴風が共謀している可能性が高いですね」

「そうだな…シュペーとの連絡も途絶していると言うし…」

「一体どうしたのでしょうか?」

 

海図を前に彼女達はピンを刺したシュペーを模した模型を前に首を傾げると、ヘルミーナは言った。

 

「…まさか叛乱に共謀を?」

「阿呆、カッツヒェン達がその様な蛮勇をすると思うか?」

 

しかしすぐにアレクサンドラは否定すると、ヘルミーナもテア達のことは昨日見送ったばかりであったので分かっていた。

 

「そもそも彼女達は全くと言っていいくらい横須賀校の生徒と関わりがないのよ?どこでそんな叛乱なんて話をするのよ」

「では、乗組員の叛乱?」

「あの結束力で?ビスマルクならともかく、あり得ないわよ」

 

アンネリーはヘルミーナとそんな推察をしていると、操舵艦橋に立っていたエーリカが連絡を入れてきた。

 

『艦長、各部出港準備完了しました』

「了解、いつでも出港できるように」

『はっ!』

 

エーリカに命令をすると、次にマリアから連絡が入った。

 

『艦長、横須賀校の学校長から呼び出しです』

「呼び出し?」

「何でしょうか?」

 

出港準備を行っていた中での呼び出しにアンネリー達は首を傾げた。

 

「…すぐに向かうと答えろ」

 

しかし相手が相手なので無碍にすると言うこともなく、彼女は返信を行うとインカムを使ってエーリカに伝えた。

 

「エーリカ、すまないが呼び出しを受けた。艦の事は任せたぞ」

『承知しました』

 

そこでアレクサンドラは艦を降りると、そのまま迎えに来た彼女の秘書でもある老松の案内で校長室に入る。

 

「アレクサンドリーネ・フォン・プロイセン。入ります」

 

そこで校長室に真っ直ぐ通された彼女は、そこで早速真雪と面会をする。

 

「出港準備中に申し訳ないわね」

「いえ、我がプリンツ・アーダルベルトの乗組員は優秀ですので、いつでも出港可能です」

 

そこで真雪に出港準備完了の報告をしながら校長室で挨拶もせずに近づく。

 

「航洋艦の叛乱の話は?」

「聞いております。武蔵からの砲撃も」

 

彼女は言うと真雪は頷いた。そこまで知っていると言うのであれば話は早かった。

 

「このままでは、本格的に晴風は叛乱とみなされてしまう」

「はい。事態は着々と深刻さを増しています」

 

そこでアレクサンドラは双方に自体の収集をするべきであると目線で理解すると、新たに情報共有をするべきであると判断した。

 

「宗谷校長。実は晴風の叛乱の三時間ほど前より、アドミラル・グラーフ・シュペーとも通信が途絶しております」

「何ですって?」

 

その連絡に真雪は信じられない様子でアレクサンドラを見た。

 

「まだ報告前でしたが…晴風の叛乱の一報を受けた後、同じく西之島新島近海に到着をした同艦に連絡を試みましたが、いずれの周波数帯を用いても返答がありませんでした」

「…」

 

彼女からの連絡に真雪は思わず表情が強張る。

 

「現状、通信が途絶した艦艇は晴風、武蔵、アドミラル・シュペーです」

「ええ、何も学生艦よ」

「…反政府的思想の乗組員の可能性はありませんか?」

「いいえ、そう言った思想は面接試験で排除されるわ。それに、まだ彼女達は乗り込んで一日も経っていない乗組員達よ」

 

真雪はそう答え、入学式の翌日に叛乱を起こすと言う行動に違和感を感じていた。無論それとてアレクサンドラは感じていた。

 

「プロイセン艦長、貴女に頼み事をしても宜しいかしら?」

「…それは命令ですか?」

 

その問いに真雪は首を横に振る。つまりは個人的な頼み事ということになる。命令書も無い、記録が残される事もない、完全なるイリーガルな要請だ。

 

「このままでは、晴風は十分な証拠も無く叛乱罪にかけられてしまう」

「…」

「そうなる前に晴風を拿捕し、この猿島フロートまで連れ帰って欲しい」

 

それは一学園の校長として、教育の自由と学校自治を取り仕切る者としての意地だった。

 

「貴女達には救援の為に西之島新島まで行かせるわ」

「…分かりました」

 

命令書を事実上の偽造をするとまで言い出し、当該海域で親友の乗るシュペーが失踪したことも考慮してからアレクサンドラはその命令に承諾をした。

 

「一切の命令を受諾します」

 

アレクサンドラの返答を聞き、真雪はその返答に安堵した様子で彼女に言う。

 

「頼むわね」

「はっ!」

 

そして彼女は直ぐに校長の名前で命令書を書き上げると、翌朝に出港する手筈を整えた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

そして猿島フロートを出港したアーダルベルトは、湾外に出る前にドラッヘの回収を行う。

 

「オーラーイ、オーラーイ」

 

マーシャラーが誘導灯を灯して着艦誘導を行うと、その後ろの防空指揮所で見ていた航空管制官が誘導を行う。

 

『ドラグーン2、高度八メートル。そのまま着艦しろ』

『ドラグーン2、了解。着艦を進める』

 

捜索・救難型の機体が着艦を行うと、その背面では先に着艦した輸送型の機体が起重機に吊り下げられて艦内中央の格納庫に動かされていた。

 

「気を付けろ〜」

「艦載機はいつでも飛ばせるようにしておいて!」

 

先の改修で強化された起重機は、後部甲板から船体中央の格納庫まで十分にクレーンが移動できるように改修が施されていた。

 

「コリブリは?」

「常備の二機、丸ごと持ってきました」

 

艦橋でエリーミルから報告を受けると、アレクサンドラはそこでコーヒーを飲む。

 

「しかし晴風の拿捕とは…」

「驚き、ですね。まだ武蔵もいる、のに」

 

そこでエルフリントとマリーも驚いた様子で今回の非公式な命令を前に驚く。

 

「どうやら、国土保全委員会の方は晴風が今回の叛乱の首謀者と思い込んでいるらしい」

「…普通、叛乱の首謀者であれば経験者の多いシュペーだと考えるのでは?」

 

そこで自分で言ってても思う部分がある様子でモニカが言った。

一連の叛乱行為にシュペーも加担している最悪の事態を鑑みた話だが、そんな懸念にアレクサンドラは肩をすくめた。

 

「さあな、余にはお偉い様方の考えなど分かぬものよ。まあ、このシュペーの通信途絶が届いているかも分からぬが…」

 

そう彼女は言うと、艦橋要員の失笑を誘った。

 

「え?あんなに日本の役人を緊張させたのにですか?」

「ブルーマーメイド隊員達も顔引き攣らせてましたよ」

 

彼女達はそう言い、紹介される側が緊張すると言う何とも滑稽とも思われる光景を思い出す。すると無線で連絡が入った。

 

『管制長、艦載機収容完了しました』

「了解」

 

その報告を受けて直ぐにアレクサンドラは指示を出した。

 

「航海長、進路二四〇。最大戦速で海域に迎え」

「はっ!」

 

その司令にエーリカが驚いた。

 

「失礼ながら、何故伊豆諸島を離れる海域に?」

「先回りだ。叛乱を起こしたと言うのなら、彼女達は本国に向けて北上する」

「…なるほど、そこで待ち構えて拿捕ですか」

 

エーリカは海図を思い出して、そこが西之島新島から本土に向かう途中で待ち構えられる形の絶好の場所だ。

 

「なるほど。直線距離で来るなら、鳥島沖合で探索した方が良さそうですね」

「電探員に航空管制官も使用し、万全の監視網を敷くぞ」

「了解しました」

 

アレクサンドラの思惑を理解し、エーリカは承諾をすると敬礼で答えた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。