...冗談です、感想等ありがとうございます。
舞台の主役が学生ですので、どうしても権力を持った大人の悪い例がストーリー上に出てきますよね。
やはり、ロリコニアを建国してもらうしか...
迎えた若獅子タッグマッチトーナメントの本選。
スタジアムの収容する人数が満員なのはもちろんのこと、スタジアムの外でも中継の映像が大画面で映し出されており、観光客や予選で敗北した武闘家達がこぞって良い位置を取ろうとしている。
映像は世界中で生放送されており、世界各地でも大会の行方は注目されていた。
「皆様、大変長らくお待たせしました!タッグマッチトーナメント、本選開始でございます!」
「「「「ワアァァァーーーー!!!!」」」」
観客の歓声でスタジアムは震えている。
「ん~いよいよであるなぁ!待ちわびたぞ」
「はい、全ては
「これ以上ない大舞台ではないか...ぞくぞくしてくるな」
1ーS集団の前に直立する紋白の傍にクラウディオが控えている。
いつもならヒュームの定位置だが、今日に限ってその場にいなかった。
「私、この七浜で執事をしています田尻耕と申します。地元ゆえのゲストということで、トーナメント本選の実況をさせて頂くことになりました...最後までお付き合いのほど、よろしくお願いします」
「さて、解説は引き続き皆のアイドルこと川神百代と」
「西の雄、天神館は西方十勇士の石田がお送りする」
「解説補佐が欲しいと思ってな。今大会に参戦していないのが意外だったので、急遽スカウトしたぞ...お前も出場してれば、予選は突破していただろうに」
「ふんっ。万全の状態でないのに出場するのは、俺の矜持が許さなくてな...とはいえ、他の十勇士も何人か本選に残っている。出世街道を歩む俺に解説を頼むのは、賢明な判断だと言えよう」
石田は前回の東西交流戦での消耗が激しく、もちろん今大会が発表されてからコンディションを整えることに注力していたが、納得する水準まで仕上げることができず出場を断念した。
あの敗戦の夜に盟友と交わした約束もあり、出場しない選択を取った悔しさも認めることができるようになっていた。
口や態度は飄々とした様子だが、リングを見つめる眼はギラギラとしており、内に秘める闘志は消えることなく燃え続けていることが百代にも伝わっていた。
「言葉とは裏腹に、闘志が隠しきれていない解説補佐の紹介でした。って事で、はい田尻さん。進行どうぞー」
「はい、解説のお二人もどうぞよろしく頼みます。続いて、試合の流れ弾から観客の皆さんを守る男達の紹介です。予選と同じく、強さの壁を超えた4人の男達!」
「ほいほい。川神院総代の鉄心じゃ、ヨロシクの」
「川神院師範代ルーだヨ、皆さん今日も愉しんでネ」
「天神館館長、鍋島だ。観客はただ、目の前の試合を楽しめば良い」
「...名乗るようなもんじゃねぇけどよ。ま、給金分はしっかり働きますわ」
一人一人が軍隊に匹敵する戦力を持つ達人である。
この4名が同じ場所で2日連続の稼働をするのは、何気にこれが初めてのことであった。
「彼等は試合中の選手達にアクシデントが起こった時も、すぐに駆けつけてくれる素晴らしいスタッフです」
ーーー九鬼財閥本部でも、今大会の様子は中継で映し出されていた。
「英雄め、直に戦うとは...いつまで経ってもやんちゃだ」
「これはこれは、局様も巨大モニターで観戦ですか」
「マープル。そうか、お前は義経達が出るものな」
「...はい。プラン発案者として、その戦いぶりを見届けませんと」
(ま、結果はほとんど分かっているけどねぇ。全く、紋様にも困ったものだ)
「さぁ、次代を担う若き獅子達の咆哮を聞きたいかーーっ!!」
「「「「うおぉぉぉぉーーーー!!!!」」」」
地響きのように歓声が広がり、この場のボルテージが最高潮に高まっている。
「それは私も同じ気持ちでございます!さて、皆様お待ちかね...トーナメントを戦う選ばれし16チームの入場です!」
どこからともなくファンファーレの音が鳴り響き、入場口から白いスモークが噴出された。
「英雄再臨。天下五弓を従えて、今宵新たなる伝説を作るのか!?源義経&椎名京の源氏紅蓮隊!!」
「その名に恥じぬよう、精一杯頑張るぞ!」
「文字通り援護射撃あるのみ」
「筋骨隆々こそが、起源にして頂点となるのか!?長宗我部宗男と島津岳人の400万パワーズ!!」
「俺の強さと四国の素晴らしさを知らしめるのだ!」
「俺様に惚れた女がいたら、いつでも連絡待ってます!」
「どちらも名家、完成された格闘術で栄光を掴め!黛由紀江と武蔵小杉のザ・プレミアムズ!!」
「この絢爛な場こそ、プレミアムな私に相応しい!」
「お、お友達、ぼっ、ぼしゅつ...募集中です」
「圧倒的なまでのその実力、後は優勝までその牙城を守るのみ!蒼井雷&葉桜清楚のチーム雷公!!」
「・・・・・・・」
(雷君、今日は朝からずっと精神統一してるなぁ。そこまでの相手が、この対戦相手の中にいるってこと...だよね)
「予選は全て不戦勝、何でもアリなルールでこいつらは怖いぞ!福本育郎と鉢屋壱助の無敵童貞軍!!」
「童貞が持つ未知なるパワー、お見せしよう」
「写真を撮りつつ試合も勝つ!俺にはできるのさ」
「正体不明だが、参加資格を満たしているのは確認済。その名はミステリータッグ!!一体何者なんだっ!」
全身を白いフードとマントを纏った二人が現れると、待っていたとばかりに雷は片目を開き視線を向ける。
同時に図体の大きい方からピンポイントで殺気が飛んで来ており、向こうもその気であることを確信する。
(...それで良い)
「軍人こそ最強、優勝なんてイージーオペレーション!マルギッテとクリスの大江戸シスターズが登場だッ!!」
「自分とマルさんが組めば、それはもう凄いんだぞ!」
「最初から眼帯を外した私とお嬢様のコンビに、死角はない!」
「でかあぁい!胸が!ド迫力だからこその力強さ!武蔵坊弁慶と板垣辰子のデス・ミッショネルズだ!!」
「よろしく。名前の元ネタは想像の通りです」
「眠いけど頑張るよぅ...Zzz」
「自分達の強さを証明する時がきた!不死川心と榊原小雪のKKインパルスだっ!!」
「ヒュホホ、誰だろうと投げまくってやるのじゃ!」
「僕達のアツーい戦いはこれからだーっ」
「自分を試すため、世界を動かす男が大会にやってきた!九鬼英雄と井上準のフラッシュエンペラーズ!!」
「フハハハ!九鬼だろうと遠慮する必要はないぞ、かかってこい!」
「いやちょっとは遠慮して欲しいぜ...守るこっちも大変なんだから」
「川神のSMクラブからNO.1女王が下僕と共に上陸だ。板垣亜巴とクッキー2のアーミー&ドッグ!!」
「人稼ぎできるチャンス...食らいつくまでさ。ねぇ、豚」
「くっ...公衆の面前でマゾ呼ばわりされるとは」
「街の闇で磨いた喧嘩技と川神流の薙刀が奇跡のコラボ。川神一子と源忠勝のチャレンジャーズだぁ!!」
「オーッス!ガンガン勝って名を上げたいわね」
「俺は一子のサポート、やれるだけの事をやるさ」
「大筒に磨きをかけて参上、大会に嵐を呼ぶコンビ!大友焔と風間翔一のファイヤーストームだぁっ!!」
「西方十勇士、大友ぞ!この名をよく覚えておけ」
「風は俺に味方する...やってやるぜ!」
「この瞬間だけ執事ではなく獲物を狙う凶暴な虎に変貌!武田小十郎とステイシーのワイルドタイガーだ!!」
「ルァアア!!揚羽様ぁ!頑張りますっ!!」
「フフフ。大佐、お久しぶりじゃないか」
「私達は強いんじゃない、最強なんだ。そこんとこ4649!羽黒黒子と板垣天使の地獄殺法コンビ!!」
「万雷系の拍手系が気持ちい系!頑張る系!」
「おーい、ウチの名前は省略して天でいい、天で!!」
「相手への対策は完璧だ!粘りもあるぞ!松永燕と直江大和の知性チームだっ!!」
「はーい!仲良く楽しく、一生懸命頑張りまーす」
「タッグの勝利に、少しでも貢献したいと思います」
「以上、出場する16組のチーム名と出場者の紹介でした!」
「これで全部か...1つ怪しいコンビがいるのが、いいのか?」
「まぁこういう展開には、お約束なんじゃないか」
実際に観客も特に盛り下がることなく、出場チームの紹介中は歓声が一切絶えることはなかった。
「皆さん、参加者の法則をお気づきになったでしょうか。そう、ほとんどが川神周辺の人間達なのです!」
(データが取りにくい外国人の強者は事前に闇討ちしていったから、それも当然)
鉢屋が仕掛けた罠で脱落した外国人の数々であった。
「まさかここまで川神色に染まるとは...情けねぇな」
「年齢制限も原因じゃよ。世界でも名を馳せてる格闘家の皆さんは、大抵20代後半以降だしのう」
(まぁある意味狙い通りじゃわい。四天王の選出基準は、国内の若い格闘家だからのぅ。腰を据えて選べるぞい)
「予選で外国人同士が潰し合っていたのも大きい。ムエタイとボクシングとか、ダブルKOだったしな」
「そうやって強者が勝手にやり合ってくれて、結果勝ち残る運も実力のウチだな。それだけの激運を持つ者が、本選に残っている」
「はーくしょんっ!」
風間が思いっきりくしゃみをしていた。
「...そう考えると、厄介なパラメータだ。運というものは」
残念ながら本選に勝ち残ることのできなかった西方十勇士達も、スタジアムの観客として足を運んでいた。
「はーっ、まさかウチらがただの観客になるとはな」
「しかたがない、あいてがつよすぎた」
「こうなれば残った十勇士に優勝して欲しいが...」
「優勝するには、中々に厳しい戦いであろうな。...特にチーム雷公。某達全員で戦ったとて、あの男には敵わないだろう」
「ま、結果がどうであれ。ウチらのできることは応援あるのみ、ちゅーことや!」
「さぁ!これが!!本選で戦う出場者達のトーナメント表だぁ!!!」
出されたトーナメントを確認する。
チーム雷公は右下の第二シードポジションになっていながら、一戦目はワイルドタイガー。そして、二戦目の準々決勝にフラッシュエンペラーズとミステリータッグの勝ち上がった方と戦うトーナメントになっている。
(...見事なまでに九鬼で固められたブロックだ。まぁ隠す必要もない、か)
仮に勝ち上がったとして、大番狂わせが起きなければ準決勝であたるのは源氏紅蓮隊か大江戸シスターズ。決勝までいくと、予定通りならばあのチーム。
マープルから事前に聞いていた思惑通りのトーナメント表になっているという訳である。
「さて、選手の皆様には対戦相手を確認して作戦を考えたり準備をする時間も確保されております。一度、控室へお戻り下さい...本戦が始まるまで、観客の皆様にはお待たせしている間の余興として、鉄心さんや鍋島さんの拳舞などをご覧にいれましょう」
「はぁー...仁王と言われた俺が、余興で使われるとはな」
「ぼやくなぼやくな。九鬼から金出るじゃろ」
控え室の空気は、わりと和気あいあいとしていた。
「あずみ、ステイシー、雷。3人とも元気そうだな」
「大佐もおかわりなく!何よりですっ☆」
「ははは、相変わらずロックなヒゲだぜ」
「お久しぶりです。こんな所で集合するとは、流石に思いもしませんでしたが」
「なんだ?変な組み合わせに何故かブラザーが混じって和気あいあいとしてんな」
「あずみとステイシーは傭兵時代、同じ部隊に所属していたそうだ。雷は同じ戦場で仲間として何度も戦ってるとな...しばらくは、思い出を語らせてやろうではないか」
英雄の言葉を聞き、他にも気になって聞き耳を立てていた出場者も納得した様子で各々が本選の準備に意識を切り替える。
「戦場を駆け回った私達が、こぞって従者になるとはな」
「逝っちまったダニーやグレッグがコレ知ったら笑うな...あの、血と硝煙の日々...を、う...うぅ」
「あっ、フラッシュバック...」
「こればかりはいつまで経っても治らんな」
「...少し休んでいろ。俺達の試合も、トーナメント上は最後だから時間はある」
「むっ、もうそろそろ本選開始か。終わったら、この面子で久々に酒でも飲みに行くとしよう」
「良いですねっ、店は抑えておきますよ☆...今夜はたっぷりとお酒を楽しみましょうね、ラ・イ・さ・ん?」
「...お手柔らかに頼む」
(丁度良く回避できるな...使えるものは何でも使わなければ)
マープルからの贈り物を地獄の酒場から逃げ出す口実にも使ってやると、心に決める雷であった。
1回戦の第1試合が始まった。
今戦っているのは知性チームと地獄殺法コンビだが、勝負はあっという間に決着したようでーーー
「ごらぁーっっ!しばき倒してやるぜぃぃ!」
先手必勝とばかりに天使と羽黒はそれぞれのターゲットを目掛けて突撃するが...
「よっと、良い攻撃だけど...隙だらけだよっん!!」
「ぐわぁぁぁーーー!!!」
「そんなのあり系ーーー!?」
燕の拳が天使の急所を抉るように撃ち抜くと、直線上に居た大和に突進していた羽黒を巻き込み、そのまま場外へ両者ノックダウンする。
「本当は粘って激戦に持ち込みたかったんだろうけど、ごめんね?」
「流石ですね、助かりました!」
「そこまで!勝者・知性チーム!!」
計算された一撃で鮮やかに勝利を納める納豆小町に、応援に駆けつけていたファン達もサイリウムを振り回してた。
「さぁて、ヌルヌルにしてやるぜお前等」
長宗我部が液体を浴びるために樽を掲げる。
「油断したな長宗我部。地獄絵図を見せてやろう」
鉢屋が指をパチっと鳴らした刹那、長宗我部の持っていた樽が大爆発を起こした。
「なっ!おい長宗我部、大丈夫かよ!」
「ふっ、お前等本人を試合前に狙っていたのは囮だ。本命はその樽への細工よ、任務完了」
これにて試合終了かと思ったが、審判から判定の宣言が出ない。
振り返ってみると、煙の中から人影が現れた。
「ま...だ...終わってない...だろう..が。俺は...ちょっと...休んで...るから...よ、行け島津...」
「...おう!てめぇらブッ飛ばしてやるぜ!」
憤怒の表情で二人に対し猛突進するガクト。
ヨンパチはもちろんのこと、鉢屋でもガクトのパワーをぶつけられては大ダメージは免れない。
「おおい!どうするんだよ!」
「お主は後ろで避難しているがいい。むん!」
鉢屋がクナイを急所目掛けて的確に投げ込むが...
「モモ先輩のパンチに比べたらおせぇな!覚悟しろ、この野郎ーーーっ!」
岳人はそれを悠々と掴む芸当を見せた。
そのまま鉢屋に向けて拳を振り上げた時ーーー
「それまで!勝者、無敵童貞軍!」
「なっ!?どういう事っすか!」
「長宗我部を見てみろガクト」
「...?...!!こ、こいつ立ったまま...」
「ニヤけた顔だろう。既に気絶しているんだ」
「味方の勝利を確信して気が緩んだな」
「惜しい、実に惜しかった400万パワーズ!」
惜しみない賞賛と拍手が長宗我部と岳人に向けられた。
「な、なんつーか、俺達悪者の流れだなぁ」
「我等が歩むは冥府魔道...覚悟の上よ」
「続く第3試合、チャレンジャーズVSデス・ミッショネルズ!」
「弁慶は勿論だけど、同じくらいパワーのありそうな人にも注意ね!」
「(あの青髪の女、街の危険区域で見かけたことがあるな)...気をつけろよ、一子」
「悪いけど、主達が見てるんでね。本気でいくよ」
「天ちゃんも負けちゃったしねぇ、頑張るよぉ~」
「かっかっか、辰子め。わりとヤル気だしてるみたいだな」
目をかけてる弟子の姿に、釈迦堂が少し笑顔を見せる。
「それではいざ尋常に!ファイッ!!」
「そおいっ!!!」
「!?わあぁーーー!!!」
開幕と同時に弁慶の力任せの振り回した攻撃が繰り出され、瞬時にガードした薙刀ごと一子を吹き飛ばした。
「一子っ!!」
このままでは場外に叩きつけられると、身を持って忠勝が止めに入る。
何とか場外にならず持ちこたえるも、立ち上がる頃には左右から突進する二人の影を確認した。
「「ダブルラリアット!!」」
「(くっ、回避も間に合わない...こうなったら)一子っ、受け身を取れよっ!!」
目の前の彼女だけは助けると、片方の手で力任せに突き飛ばした。
「たっちゃん!?」
紙一重で攻撃範囲から押し出された一子。
忠勝はそのまま二つの影に押し込まれ、声を上げることもできずその場に沈んだ。
「決まったっ!もの凄いツープラトンだ、これは立てる訳がない!勝者、デス・ミッショネルズ!!」
戦闘不能になり気絶した状態の忠勝の元へ審判が駆け寄り診察する。
「骨には異常ないの、冷やせばすぐに治るわい」
「とはいえ、安静に休ませないとネ。一子!付き添いを頼むヨ」
「大きな怪我はないのね?よ、よかった~。...やっぱり、もっともっと強くならないと」
担架に乗せて、ルーと二人でスタジアムにある医務室まで運んでいく。
映像は勝った二人を中心に映しているため、大多数は一子が今まで以上に悔しそうな表情をしていることに気付かない。
(この敗戦が、一子の成長のきっかけになることを願うばかりじゃわい)
「わーい、やったやった~」
「相方を助けるべく自分にできることを遂行する。対戦相手ながら、良い武士だったね」
「第4試合は、川神学園に所属する生徒達による戦いです!ザ・プレミアムズ対KKインパルス!」
「にょほほ、剣聖黛の娘か。此方の初戦の相手として、不足はないのう」
「...う~ん、まずいねぇ。あの子、私達よりも強くねー?」
余裕を見せる心とは対象的に、小雪は相手の戦力を冷静に分析していた。
「では、小杉さん。後ろでサポートを頼みます」
「分かってるわ。でも何かあれば、すぐに参戦するわよ」
昨日の予選では、小杉の勇み足のせいで危うく負け試合になるところを何とか黛が凌いだ場面があった。
むやみやたらに前へ出てはいけないとようやく小杉が学習したこともあり、思いの外このチームの弱点が補強されている。
「では第5試合、いざ尋常に...勝負ッッ!!」
「此方の柔道を味わせてやるのじゃ!」
開始の合図と同時に、不死川は掴みの構えで突撃する。
反対に小杉は後方へ大きく下がっているため、必然的に狙いは刀を構えている黛の方になる。
(一振りを交わして懐に入ってしまえば、後は投げ落とすだけよの!)
どのタイミングで来ても回避の動きができるよう注意を持った上で接近する。
しかし、黛は刀を構えたままその場を動く気配がない。
「カウンター狙いか、柔道相手にそれは悪手じゃ!」
「!!心、今仕掛けちゃ、、」
こちらの出方を伺っている今がチャンスと、大外刈するために足を掛けようとした瞬間ーーー
「...今です、黛流一閃!」
予備動作を見せることなく、目にも止まらぬ素早い一振りが不死川を襲う。
「!!しまっ、にょわあぁーーー!!!」
回避も間に合わず、そのまま吹き飛ばされて戦闘不能となった。
「そこまで!鮮やかな刀捌きによって勝負あり!勝者はザ・プレミアムズ!!」
「あーあ、だから言ったのに~」
本来は相手の攻撃を交わして心が柔道を仕掛けて体勢を崩した時に、後ろから小雪の蹴り技による強襲でKOする算段だったが、まんまと誘い込まれた心がカウンターを食らってしまった。
「やったわね、黛さん!」
(あれが黛流ネ。今の一振りを見ただけデ、尋常じゃない努力を積み上げていることが伝わったヨ)
見事な剣術を披露したまゆっちに対して、スタジアムの観客も万雷の拍手だ。
「あ、ありがとうございます。次も、が、頑張ります」
「さぁ、皆様お待たせしました!続いての試合は、源氏紅蓮隊VSアーミー&ドッグ!!」
スタジアムが待ってましたとばかりに歓声で揺れる。
世間の関心を一身に集める義経の武力を、この目で見るために世界中から集まっているのだ。
「...むーっ、クッキー相手はやりづらいな」
「確かに。巨額の資金を投じて作られたのなら尚更...」
「椎名京よ!クッキーの修理パーツは用意してある故、遠慮せず攻撃して良いぞ、フハハハ!」
観客席から、マイクを通して紋白のよく通る声が響いた。
マゾ豚に成り下った機械を、更生するチャンスである。
「聞いての通りだ二人とも、全力で来るがいい。下手に手加減など、我のプライドが許さぬ」
「いっぱしの口をきくじゃないか犬」
「は...はい、出過ぎた真似をしてしまいました...」
「既にプライドは破壊されているような」
「それでは第5回戦も張り切ってレディーー、ゴーッ!!」
その後の試合は、下馬評の通り一方的な展開となっていた。
アタッカーとして義経が隙を与えまいと斬り込み、後方から弓兵の京が狙撃して支援する協力な組み合わせに防戦一方で翻弄されてしまう。
「ちっ...なんだいこいつら、まるで攻める隙が無い。このままじゃジリ貧だね...犬、なんか手段あるかい」
「超高々度からのクッキーダイナミックならばあるいは」
「よし、それいけ!暫くは一人で持ちこたえられる」
「承知した!今、私は天に昇る...グウッ!?」
急スピードで上昇するクッキー2を、下から鋭い矢が突き刺した。
「隙だらけだよクッキー。駄目だよ、上昇中でも下を見ないと」
「あ、あの位置から...じょ、上空の私を射抜くとは...しかも、急所パーツを的確に...フ、流石いつも磨いてくれているだけ...ある」
浮力を失ったクッキー2は為すすべもなくスタジアムの中央に撃墜する。
目に見えてパーツが破損し、そのまま戦闘不能となった。
「クリティカルヒーット!流石は天下五弓の弓技だ、勝者は源氏紅蓮隊!!」
「流石だ椎名さん!素晴らしい精度だった!」
「...ちっ、負けたか。まぁ、辰が残ってるしいいか」
「続いて第6試合、大江戸シスターズとファイヤーストームの戦いだ!!」
「さて、破損したクッキーからもらったバーニアパーツを...」
「!危ない、風間よ!」
「Hasenjagd!!」
先の試合で損傷したクッキーのパーツを使って上空に飛ぶつもりだったが、最初から眼帯を外しているマルギッテからトンファーの急襲を受け、何とか大友の筒で相殺する。
「うわぁっと!マルギッテ、最初から本気じゃねぇか!」
「こりゃ、お前さんの言う作戦は使えないぞ。何か隙を見せれば、即座に狩られてしまう」
マルギッテが即座に下がったため少し間はできたが、開始の初期位置よりも両者のチーム間の距離は縮まっている。
「貴方達には悪いですが、油断なく仕留めます」
「流石マルさん!私も応戦するぞ」
いつも以上に好戦的なマルギッテとその後ろでレイピアを構えているクリスが対峙しているため、今上空に飛ぼうものならその瞬間不時着させられるのは間違いないだろう。
「ならば、その身に食らうがいい!国崩しぃぃ!!」
瞬時に判断を切り替え、大筒から焼夷弾を連続で発射するがーーー
「ふっ、そうくるのは分かっている!...お嬢様!」
「あぁ、マルさん!」
迫りくる焼夷弾を交わし、クリスはマルギッテの肩を足場に上へ跳躍する。
国崩しを撃った反動で大友は動けないため、このままでは勢いを乗せたレイピアの鋭い突きを食らってしまう。
「!こうなったら、このパーツでダイナミックアタックを...!」
「それも読んでいると知りなさい、お嬢様の晴れ舞台は邪魔させません!」
バーニアパーツを使って自らの身体で強力なタックルを仕掛けようとする風間を、トンファーを的確に投げつけてパーツと風間を引き剥がすことに成功する。
「!し、しまった!!」
「はあぁぁぁーーー!!!」
「ぐわあぁぁぁ!!!」
そのままクリスによる斬撃の雨を受け、大友は戦闘不能となった。
「そこまで!勝者、大江戸シスターズ!!流石のコンビネーションでした」
「やりましたね、お嬢様!」
「マルさんのおかげだ、次も強敵だが必ず勝つぞ!」
「ちっくしょ~、パーツを使うことばかり考えすぎたか...」
策士策に溺れるといった内容であった。
とはいえ、重火器使いが武道家に接近されてしまった時点で勝負はついていたのだろう。
続く第7試合では、今まで以上に一方的な展開となっている。
「ホワッちゃあああーーー!!!」
「くらいーーやがれーーっ!!!」
「あーっと、2人の攻撃が全然ききません!」
相手に対してどんな攻撃をしても、その度にいなされては初期位置に弾き飛ばされる流れを繰り返されていた。
「なんだこいつらは...一体何者なのだ」
「...では、そろそろ正体を見せてやろう」
「あーっと、ついにマントを脱ぎ捨てたァア!」
「フハハハハ!九鬼揚羽、降臨である!」
「正体を明かしていなかったとはいえ。失礼いたしました、英雄様」
「なんと!その正体は、九鬼揚羽とヒューム・ヘルシングのタッグでした!!」
「やっぱりな。気でそうだと思ったよ」
「いやいや、出場制限に引っかかるだろう」
「川神学園の学生であれば出られるんだ。あの人は1ーSに所属しているから、それでだな」
「そして我は、そもそも年齢制限に引っ掛かっておらぬ!」
「姉上、なぜこのような大会に!?」
まさか自分の姉が出ているとは一切思っておらず、英雄は理由を尋ねる。
「ひとつは、大会に不穏な者が出場していないか中から見張るため。これは問題なかったがな」
「もう一つは?」
「お前に無理をさせないためだ。ここで負けてもらう」
「そ、それだけのために?」
「英雄。お前は予選で立派に戦い抜いた。その勇姿、我や九鬼の関係者は確かに見たぞ...その腕でこれ以上無理する事は無い、もう休め」
「あ、姉上に何の権利があってそのような!」
「我はお前の姉なんだ、可愛い弟が心配で何が悪い」
「え!?あ...あ、それ、それは嬉しいですが」
「これ以上心配をかけさせるな、いいからもう休め!」
「..........わ、分かりました。姉上」
自分より間違いなく武力が上であり、英雄にとっては父親以上に頼りになる存在である。
こちらの身を案じて自ら出場して止めに来たと言われてしまえば、揚羽の提案を受け入れることしかできなかった。
「まったく、お前も紋もやんちゃだからな」
「姉上.....」
「僕お姉ちゃん大好きーってか!姉、ちゃんとしようよってか!」
「...うるさいぞ」
「いやからかってないぜ。家族ってのはいいもんだからな」
「...準」
「なァ...お兄ちゃん」
せっかくの感動に水を差され、英雄はこれ以上なく冷ややかな目を井上に対して向けていた。
「...ヒューム。こいつだ、紋を変な目で見てるのは」
「ほう。画面端に叩きつけてやろうか」
「へ、へへへ変な目じゃないっての!ただ一緒にお風呂に入ったりしたいだけだ!それがいかんのですか!!」
「いかんのですよ?」
「いかんのであるな」
公衆の面前でも、平常運転を続ける井上であった。
「いつだって理解されないなぁ、俺。...ブラザーよ、後は頼んだぞ。俺の屍を超えていけ...!」
「制・裁」
目にも止まらぬヒュームの蹴りを受け、そのままスタジアムの外へ吹き飛んでいった。
「こんな決着もあるのか!7回戦目はミステリータッグの勝利!!」
「フハハハ、案ずるな皆の者。我々は、次の
「もう一組、敗退させる必要がありましてね。...そちらは、私の管轄ですので」
「ふむ。小十郎のチームが上がってくるならば、我としても嬉しいことであるが...」
「フフフ。それならば、私がこの場にいる必要はありませんよ。揚羽様」
「なるほど。やたら九鬼のチームが右下のブロックに集まっていると思えば、こういうことだったんですね」
「そうみたいだね。ま、よかったよん。普通にヒュームさん達が決勝まで上がってきたら、流石に勝ち目がないからね」
(ふむふむ。憶測の域は出ないけど、彼は九鬼の派閥争いみたいなのに巻き込まれているってことだ。なら、決勝までは上がってこないか。...内容はめちゃ気になるけど)
控室でモニターの中継を見てしっかりと他チームの動向を確認する知性チーム。
そんな彼女らを、物陰から隠れて罠を仕掛けるタイミングを見計らっている者が一人。
(隙はあるが、どうもこちらの出方を誘っているような危なさを感じる。やはりここは、試合開始と同時に仕掛ける他あるまい。...奴の試合も気になる故、ここは撤退する)
次の対戦相手である無敵童貞軍の鉢屋である。
ひっそりと物陰から撤退すると、燕は先程まで彼が潜んでいた場所を一瞬ちらっと確認し、微笑んでモニターに目線を戻した。
「さぁ、皆様。これが第1回戦最後の対戦となります!第8試合、ワイルドタイガーVSチーム雷公!!」
「ファック!お前と一発目に当たるのだけは嫌だったってのに、ウチらの運が圧倒的最下位なことを証明してどうするってんだよ」
「厳しい勝負ですが、胸を借りるつもりで挑ませて頂きます!...はぁぁーーー!!!揚羽様ぁぁ!!見ててくださぁーーい!!」
始まる前から萎えた表情を見せるステイシーとは対象的に、先程まさかの登場をした自らの主に良い姿を見せるべく小十郎は気合十分といった様子だった。
「うるさいわ阿呆が!目の前の相手に集中せんか!大体何だそのサングラスは!」
「す、すみません揚羽様ぁぁ!!」
すかさず揚羽から叱責を受ける小十郎であった。
いつも九鬼本社で見る光景であるが、違いとしては対策として彼等がサングラスをつけていることであろうか。
ーーーしかし。昨日はサングラスをつけていた葉桜清楚が、今日は試合開始前になってもつけていなかった。
「お前達には悪いが、序列零番から指名を受けているんでな...試運転に付き合ってもらおう」
腰に下げたホルスターから、昨日の予選で見せたライフルとは違う小型銃を取り出す。
雷が手に構えた瞬間、突き刺すようなビリビリとした気が小十郎とステイシーにも伝わった。
「!こ、これは。...雷さんが本気だ、あ...く、訓練場の時のト、トラウマが」
「おい、しっかりしろよ小十郎。私が言うのも何だが、フラッシュバックは終わってからにしろ」
「は、はい!...ヨシッ!」
気合を入れるべく両手で自分の頬を叩き、何とかメンタルは持ち直したようだ。
「両者準備が整ったようです。それでは、レディ~~ファァイト!!」
「よっしゃ、いくぜ!ロックン・ロー...」
開始と同時に両手で銃を構えて弾を連発しようとしたステイシーだったがーーー
「フラメクの雷」
ーーー雷のトリガーを引くスピードの方が早かった。
「ぐはあぁぁーーー!!!揚羽様ぁぁーーー!!!」
充填された雷気が小十郎の方へ一身に稲妻となって襲いかかり、予選で見せていた閃光を警戒していた小十郎は不意の一撃として食らってしまう。
「開幕から大技が出ましたぁ!!これには為すすべもなく戦闘不能だ!勝者はチーム雷公!!」
(実践でも問題なく発動できる、この威力ならば問題はない...さて)
試合開始前からこちらに殺気を突き刺している件の人物に視線を向ける。
初めて合った時と同じように獰猛な、それでいて血湧き肉躍る戦いを前に歓喜の表情をしていた。
(ふっ。だが、それは俺も同じか)
沸き上がるスタジアムの歓声を背に、控え室へ戻るべく歩き始める。
リング端で待機をしていた清楚と合流すると、彼女の表情から何か考えているようだ。
(な、なんだろう。他の皆もそうだけど、特に雷君の試合を見ていると...身体の奥から何かが反応している...ような...はっ!そ、それよりも、今は次の試合を応援しなきゃ)
そんな清楚の胸中を察しているのか、雷は隣で目を瞑りながらうんうん唸っている彼女に話しかけることはせず、さり気なくエスコートするに留めた。
(後は、この道をただ進むのみ。...約束を守るため)
九鬼の思惑によって敷かれたレールは、未だ外れることなく進んでいるように見える。
しかし、それは虚像なのかもしれない。
決戦の刻は間もなく訪れる。