決戦の舞台は、川神の地に所在する工場地帯。
この場所で、東と西が互いの誇りとかけて戦いに臨む。
「軟弱な東の連中め!西国武士の気骨を見よっ!」
大友の持つ改造大筒が装填を完了し、川神学園の学生達に狙いを定めた。
「大友家秘伝・国崩しぃぃぃ!!!」
轟音が辺りに鳴り響く。
無数の焼夷弾が、夜の工場を爆発と同時に紅に染め上げた。
「うむ、大・火・力!これぞ西方十勇士の実力ぞ!」
敵陣に命中しても気を抜くことはなく、その筒にはすぐに次の弾が装填されていた。
「うわぁっと!なんて広範囲な技、何十人脱落したの?」
爆炎の中から、紙一重で回避に成功した川神一子が飛び出して来た。
「というか、そこのアナタ!ちょっとやりすぎじゃないの!?」
「東西交流戦とはいえ、あくまで戦!この程度でわめくな。...ま、いってしまえば、これはロケット花火を相手に向けて撃つ行為の発展系よ。何ら問題はない!」
「いやいや、その行為自体がけっこう問題!」
「ははは、まっこと板東武者は軟弱よ!花火でこのように遊んだことがなかったのだろうな!」
「うぬぬ、西の武士娘は豪快ね!でも、倒してみせる!」
川神一子が、自分の得物である薙刀を頭上に掲げた。
大友への距離を測り、狙いを定める。
「大口はこの遠距離を詰めてから言えぃ!」
大友の挑発に、一子の足がジリリと動いた。
一子の速度なら瞬く間に、相手までの約9メートルの距離を縮められる。
だが、大筒の使い手はそうはさせない。
火器使いは、そう易々と近距離を得意とする相手を近づけてはならないのだから。
「国崩しでりゃあああぁぁぁ!!」
再度、奥義を撃ち込んできた。
瞬発力のある一子は、銃口の角度から弾道を想定して跳ぶ。
「あっぶなーーーい!!!」
なんとか回避に専念して反撃の機会を伺いつつダメージを最小限に抑えていた。
ーーーそして、この派手な爆炎を東の陣地の高台で見下ろしている男が2人いる。
「明らかに東の旗色が悪い。西方十勇士のせいだ」
そう語るのは、川神学園2年生の直江大和。
「軍師」という呼び名の通り頭脳明晰で頭の回転も速く、参謀役として周りから信頼されている男だ。
今は見晴らしの良い場所から、この東西交流戦の趨勢を見極めている。
「各個撃破で、十勇士を潰していくしかないですね」
もう一人は、同じ川神学園の2年生の葵冬馬。
その名字の通り葵紋病院の院長の息子であり、卓越した頭脳とその甘いルックスから女子の人気も高い。
大和は2-F所属だが、冬馬は2-Sという川神学園の特進科に所属しており、そんなエリート集団が集まる2-Sの軍師役を任されている。
普段の学園生活において2-Fと2-Sの両クラスは犬猿の仲であるが、この東西交流戦では互いに協力して戦線の指揮を取っている。
「それにしても、まさか一対一になって俺達が最終日を迎えることになるなんて...姉さんがいる3年生は問題ないと思ったけど、1年生は呆気なかったなぁ」
東西交流戦の第一夜、1年生の部から始まった。
「プッレーミアムなこの武蔵小杉こそ大将に相応しい!」
トップになるのは私しかいないという理由で、川神学園の1年生は武蔵小杉が総大将になっていた。
「あ、あの。私はどうすれば...?」
「顔怖っ!...確か剣聖の娘の黛さん。じゃあ、敵陣に攻め込んで大将を倒してきちゃって」
「分かりました、頑張って首級をあげてきます」
「友達大量ゲットチャーンス!バーニングだ、まゆっち」
父親に剣聖の黛大成を持つ黛由紀江が、単独(with松風)で敵陣に向かう。
後は、彼女が勝ち鬨を上げるまで待つだけの簡単なお仕事だったが...
「さて、私自身もプレミアムに出撃するわ!」
総大将であるにも関わらず、彼女自らも戦場に赴いてしまった。
その結果...
「集団戦法とは卑怯なハグォーー!!」
一年生ながら、鍛えられた天神館の集団に囲まれて為すすべもなくやられてしまった。
「天神館の敵将発見。一気に斬り込みますよ、松風」
「おう。さぁ新番組まゆっち無双のはじまりはじまりっ!」
「皆に引かれないか怖いですが、いきます!...あれ、敵が勝ち鬨をあげている?」
「もう終わったのかよ...オラ達はじまってすらいねぇんだぜ」
「友達100人への道のりは遥か険しいですね...」
一瞬で片がつき、得意の剣術を披露することもなく終わってしまった。
開始から僅か10分程の出来事であった。
天神館がリーチをかけた第二夜、三年生の部。
「ワクワクしてきたぞ、スキップスキップ~」
緊張感など微塵もない様子で、闘争を求めて敵陣へスキップしながら向かっている武神こと川神百代。
やっていることは武蔵小杉と同じだが、道中は一切急襲されることはなかった。
気の集まりから敵が一箇所に集結していることは分かっているため、そちらへ歩みを進めていると天神館の大将らしき人物が演説をしていた。
「敵はあの武神ぞ!倒した人間を、ラーメンにして食べてしまうという逸話を持っている凶戦士だ!不退転の覚悟で臨め!」
「ふ...凄い噂の伝わり方だな。これは相手も必死だろう」
そう口にするのは、言霊部の部長である3年生の京極彦一。
彼に武としての戦闘力はないが、百代がどのような動きをするのか興味があって共に前線へついてきている。
実際に、天神館3年生は武神を恐れて大勢の助っ人を連れてきていた。
百代は倒せる相手が増えたと、これを快諾済みである。
「文字通り、一丸となって立ち向かう。いくぞ!天・神・合・体!」
その言葉を合図に、一人一人が合体を始めどんどん大きく成っていく。
「ほう。3年生全員が1つになり、巨大な生き物のように...」
「凄いな天神館、それ妙技だぞ。練習大変だったろう」
全ての生徒が合体を終えた時には、工場の建物を軽く超える程の大きさになっていた。
傍から見ると、一人の強靭な巨人がまさに工場を破壊せんとしているかのようだ。
強靭な巨人。李が喜びそうなフレーズである。
「ハハハ!鰯の群とて、集まれば鮫も近寄れぬもの!さぁ、川神百代。圧倒的な数の暴力に屈するがいい!」
巨人が右腕を上げて、攻撃の構えを取る。
いくら壁越えの達人でも、あの巨体から放たれる攻撃を受けたらひとたまりもないだろう。
だが、百代はまるで新しいおもちゃを与えられたかのように嬉しそうに笑っていた。
「いいぞいいぞ。的がでかいと嬉しくなっちゃうな...さてと」
構えを取った百代の両手に、凄まじい気のエネルギーが集まっていく。
溜めが完了すると、両手首を合わせて手のひらを開き、体の前方に構えてその極太なエネルギー砲を発射した。
「川神流、星殺しぃぃぃぃ!!!!」
巨人の繰り出した右腕が星殺しのエネルギー砲と衝突した瞬間、衝撃波が工場地帯に暴風を巻き起こす。
そして、次々と巨人から天神館の生徒が剥がれ落ちていった。
荒れ狂う風がおさまった頃には巨人は消滅しており、代わりに天神館の陣地には西の兵達による山が積み上げられていた。
「あ~、スッキリした。ユミ、残敵掃討よろしく」
「な、なんという桁外れの力。これが...武神、か」
「相手が悪すぎたで候。あれは鮫ではなく、天災で候」
圧倒的すぎて、味方からも自然災害扱いされていた。
こうして第二夜は、武神による一方的な制圧で幕を下ろした。
一対一で迎えた日曜の最終夜。2年生の部である。
「今は、クラス同士で対立している場合ではないぞ!1年生達の敗北を見ていたであろう」
開戦前に、出場するニ年生の前に総大将である九鬼英雄が語りかける。
「天神館を、バラバラに戦って勝てる相手だと侮るなよ!...学舎の名を高めるか、辱めるか!選べ、お前達!」
九鬼のカリスマを受け継いでいる英雄の言葉だ。
彼の力の篭もった演説は、川神学園の学生達の心を一つにしていく。
「...F組と手を組むのは嫌じゃが、敗北はもっと嫌じゃ」
「私達は力と体を合わせて、西と戦いましょう」
「体は合わせないが、分かったぜ!共同戦線だ!」
ここに、2年生が奇跡的な団結をした。
「ま、昨日の敵は今日の友という言葉もあるしな」
「西の荒くれ侍どもを、手玉にとってやるのじゃ!」
「お祭りのはじまりだーっ!」
2年生の主力は、F組の無頼軍とS組の優等生軍。
そうなると、F組に所属している武神の義妹である川神一子も前線に出る訳だが...
「一子殿が戦うのであれば、我が守るが道理!」
「道理じゃねぇよ、いいから大将は奥にいろ!」
大将でありながら前線に出ようとする英雄に、一子と同じF組の源忠勝がツッコミを入れる。
一子は苦笑いを浮かべつつも、義姉と同じように天神館と戦えることをワクワクしているようだ。
「大将に守られては戦士として物笑いだわ。先陣は任せて、大将らしくデンと構えててね九鬼クン!」
「...なんという勇壮さ!まさしくあなたは戦女神だ。戦士が戦士であるように、我も大将らしく振る舞おう」
一子からの言葉に感動した英雄は、大人しく自陣の奥へ向かっていった。
「英雄が言う事を聞いてくれるので助かりますよ」
「これも、共同戦線の面白さってやつだよね」
「そんじゃ、ご機嫌な指示を頼むぜ!」
ウキウキした表情で、軍師達に指示を問う人物が風間翔一。
彼は、直江大和や川神一子などが属する「風間ファミリー」のリーダーだ。
第二夜で無双した川神百代も、このファミリーの一員である。
「まずは部隊編成。FとS混じりますが、仲良く頼みます」
「ところで葵に井上。お前達、親御さんが大怪我したんだって?大丈夫なのか?」
「...こんな言い方は誤解されるかもしれませんが、怪我をして良かったと思っています。おかけで色々と運気が好転してきました」
2人とも、むしろ雲が晴れたような顔だった。
「そうだな。命には別状ねーわけだし。今までは忙しいのはわかるけど、アンタら大丈夫なの?って感じだったからな...色んな意味で。これを機に静養しつつ、自分を見直して欲しいね」
「?なるほどね、忙しすぎたのかな。まぁ、大丈夫そうならなによりだ」
九鬼による川神掃除によって、彼らの運命を変えていた。
事情を知らない大和は、親が大怪我したはずなのに嬉しそうな彼らに違和感を覚えるも、今は目先の交流戦だということで気持ちを切り替えていく。
そうして、月下で互いの誇りを賭けた東西交流戦の最終勝負がはじまった。
現在の戦局はどうかというと。
腕自慢のぶつかり合いで負傷者が続出していた。
大和の見立てだと、残存兵力は天神館が100、こっちは50。
押されているのは西の手練れのせいだ。
だが、こちらも得意場所に配置した男達が奮戦している。
戦局の流れは徐々に東へと傾いている。
「ははっ、工場は面白いな!アスレチックだぜ!」
「おのれ、すばしっこい奴じゃけぇのう!」
風間は足場の悪さを気にせず飛燕のように舞い、相手を蹴り倒していく。
「立体的な戦闘を意識しろ!常に高い位置をとれ!」
「やりよるわ!負けてられんぜよ!」
忠勝は高低差を利用して敵を押し込んでいる。
「ここから先は男という壁があるぜ。通せねぇな!」
「ぬぐぅ。東にも、骨のある男がいるタイ!」
島津岳人は狭い道で囲まれないようにして、敵を防ぐ。
ご自慢のパワーを使って、天神館の兵達を吹き飛ばしていた。
川神百代に普段から殴られているだけあって、肉体の防御力も鍛えられていたのがここにきて功を奏した。
「なんだぁ~?西の侍といってもこの程度か?そんなんじゃあ、俺の鍛え上げた筋肉の前では無力だぜ!」
「ほう。中々見どころのある男が東にもいるじゃねえか」
「!てめぇ、なにモンだ?」
敵を蹴散らしていた岳人の元へ、それ以上に鍛えられた肉体を持つ男が現れた。
「教えてやろう。西方十勇士が一人、四国が誇る長宗我部宗男とは俺のことだ!」
「いや知らねえよ!」
ぬるりと現れ、西方十勇士を名乗る人物。
だが、彼の鍛え上げられた身体は本物であり、普段から鍛えている岳人から見ても相当な手練れであることがわかる。
事前に大和からは警戒する者達ということで、西方十勇士にどんな面子がいるのかはざっくりとは聞いていたが...
(大和の読みではこっちには来ないはずだったが...まあ良い!見た所同じパワータイプだし、こいつを倒せば俺にも念願のモテ期がくるぞおぉ~)
「ふむ。ここで使いたくはなかったが、出し惜しみしている場合ではないからな」
そう言うと、長宗我部は工場に置いてあったオイル缶を上から被った。
「うぉいっ!!何やってんだお前!」
「フフフ。これが俺の得意技、オイルレスリングよ!さぁ、ヌルヌルになりながら、互いの肉体をぶつけ合うとしよう!」
(やばいヤツじゃねえか...大和、負けたらここに俺様を配置したお前を恨むぜ!)
唐突にオイルを被った目の前の男にドン引きしながらも、覚悟を決めて同じように上半身裸になる。
夜の工場僻地にて、鍛えた男同士のレスリングが幕を開けた。
軍師である直江大和に、この交流戦が始まるまで出来た事と言えば、情報収集と戦闘ステージの入念な下見ぐらいだった。
勝利の仕込みが全然出来ていないのを大和は悔やんだ。
得意の寝返り工作でも相手に仕込んでおきたかった所だが、知り合いという知り合いも天神館にはおらず、特に手を打つことができなかった。
とにかく、今出来ることを一つ一つやっていくしかない。
目には目を歯には歯を。再配置は完了した、ここから反撃開始である。
「逃げるしか能がないのか、東の腰抜けは!西国武士ならば、体が焼けようと攻撃は止めぬ!」
「くっ、ああまで言われて...でも、我慢!」
回避に専念する一子を、遥か後方から"弓兵"が狙っていた。
「中々粘っているようだが...美の化身、毛利の三連矢で仕留めてやろう。一本の矢は避けられても、三本同時に放てば回避不能。まして、それが美しい国崩しを避けた後なら尚更だ」
再び、大友が広範囲殲滅奥義を炸裂させた。
「今だ!エレガントな西方十勇士の技、ご馳走してやろう」
回避直後の一子に向け、三つの魔弾は放たれた。
その矢が一子に命中しようとした刹那ーーー
気合が込められた別の矢が、魔弾を薙ぎ払った。
(弓兵なら、こっちにも優秀なのがいるわよ)
にやりと笑う一子の遥か後方、工場の屋上にて。
「しょーもない」
同じく風間ファミリーである椎名京は強弓を引いて、瞬時に毛利に狙いを定めていた。
天下五弓の二人が、夜の工場を舞台に直接対決する。
「ふっ、この距離で華麗なる私を狙撃するつもりか」
(と、凡夫ならば油断するだろうが。妖艶な私は違うぞ)
毛利はその場で迎え撃つ構えを取る。
(...遠距離相手に一度でも視線を外せば、何をしてくるかわからないからね)
つい先日、為すすべもなくボコボコにされた時に得た教訓だった。
視線を外すことなく弓を構えつつ、毛利の目に映ったものは。
「!矢の先端に爆薬をつけたのか。だが、この美しい狙撃で相殺してしまえば問題ない」
京から放たれた爆矢は、すかさず毛利の放つ三連矢とぶつかり空中で爆発した。
「!敵も中々やるね。未来の夫からの情報だと、そこの障害物に隠れてくれると思ったのに」
二度の狙撃で互いに相手の実力を把握した二人。
(一子の護衛もしなきゃいけないし、思ったよりハードな現場だね。だけど、大和のためにも頑張らないと!)
「ふむ...この位置では少々分が悪い。ここは美しく一時撤退するとしようか」
「?自陣に引いていったの?...それはそれで厄介な。放置すると、他の生徒がやられるかもだし」
うーんと次の一手を考えると、鋭い殺気を感じて瞬時にその方向へ弓を引く。
その判断は合っており、毛利は一度撤退したフリをして、少し離れた場所から魔弾を放っていた。
照準を瞬時に合わせた京だったが...
「ぐぅっ、一つ仕留めきれなかった...!」
2つの矢は薙ぎ払っていたが、3番目の矢のみワンテンポ遅れて放たれており、そのまま京の左腕に命中した。
「ふふふ、先ほど処理された時と同じようにはいかないさ。...さて、私の美技で酔いしれて眠れ!」
油断なく次の三連矢を京に向かい放つ。
片方の腕を負傷した京に残された道は。
(爆薬は装着済み。...チャンスは一度だけ)
迫りくる矢を前に京は背中を向けた。
「ふむ、諦めたのかい?」
矢がその背中に到達する瞬間、京は後ろで弓を構えたまま勢いよくこちらを向いた。
「!なっ、私に悟られないように後ろで構えていたというのか!?」
「夫への愛があるからこそ、為せる技だっ!椎名流弓術、爆矢!!」
京の弓が放たれた瞬間に、三連矢が彼女を襲い掛かるが、毛利の足場に京の狙いすました爆矢が命中する。
「ぐはあぁぁ!!!美しいこの私があぁあぁぁアアアァァーー!!」
「中々の強敵だったけど...ちゃんと倒したよ、大和。あとでご褒美もらわないと...っっ」
しかし、三連矢をその身にくらった京もこれ以上の戦闘は無理でありその場に倒れ込んだ。
天下五弓の初対戦は、引き分けで決着した。
「おっ、敵ながらナイスパンチラ、ゲットだぜ!」
福本育郎は戦場でハプニング写真を求め駆け回っていた。
彼の頭は、交流戦に勝つことより魍魎の宴で捧げる写真しか考えていなかった。
「おい猿、売れセンの俺を写すなら、撮影料がいるぞ」
「ひいっ、なんか強そうな奴が出てきたぞ!?」
「俺は西方十勇士、龍造寺。人気ユニットエグゾエルのメンバーだ」
「あ、そういえばニュース番組の司会で見た...っ!」
見ると、彼の後ろには負傷した川神学園の生徒達が倒れていた。
これには流石の福本も、パンチラから目の前の男に意識を切り替えざるを得ない。
「ふ、俺は女ならば誰でも飛びつくほどのハンサム。好みを言うならそうだな、彼氏持ちの女がいい。...西で500人食った、東の女も食い散らかしてやるさ」
「な、なんてヤロウだ...!」
東の女達に貞操の危機が迫っていたその時だった。
「イケメン見っけ!ポッコベーン!!!」
羽黒がとんでもない勢いで、龍造寺にタックルを仕掛けてくる。
「うおっと!何だこのブサイクな女は!」
1ヶ月間で鍛えられた回避センサーのおかげか、何とか紙一重でタックルを避けることに成功する。
「ちっ。この一撃で沈めて、さくっと食べてやろうと思ったのに」
「...おいおい、川神学園にはこんな女もいるのかよ。さっさとこいつを倒して別の女を口説きに行くとしよう」
「じゅるり...絶対に食い散らかしてやる」
(何かよくわからねえけど、羽黒頑張れ!)
川神学園の貞操を守る戦いが、今始まった。
大友と一子の戦いは、未だに決着がつかずに続いていた。
国崩しの威力によって、彼女らの周囲は硝煙で満ちている。
「...そろそろ相手は弾切れを?」
「一言教えてやるぞ東の!この大友に弾切れはない!」
新しい弾の束を担いだ兵士が、大友の後方から現れた。
「ガーン!せっかく弾切れ狙ってたのに!」
「たわけ!補給線を築いておく、戦の初歩と知れい!...まぁ、全てあいつから叩き込まれたことだが」
「その兵站を破壊するのも、戦の初歩と知りなさい」
「南蛮人!どこから湧いてでてきた!」
硝煙の中から、軍服のような制服を来たマルギッテが現れた。
東の軍師達から要請を受け、クリスの部隊から一時離脱して一子の助太刀に来たという訳だ。
「クリスお嬢様の部隊が、お前の後方を撹乱中だ。もう弾はそれが最後と知りなさい」
「笑止!言うた通り、大友に弾切れはないのだ!」
大友が、工場の床を指さす。
「こんな事もあろうかと、各地に弾薬は隠して保管済み。伊達や酔狂で場所を選んでいるわけではないのだ!」
「...なるほど。だが、お前を倒せば同じこと!」
口角をあげて武器を構える。
「トンファーか、近距離武器で大友は倒せぬ!」
マルギッテは、そのまま大友めがけて獣のように跳躍した。
「愚かな、対空国崩しを食らうがいい!!」
筒を発射しなければ跳んできたマルギッテにやられるので、大友としては標的に狙いを定めて射つしかない。
敵の行動を誘導した猟犬はトンファーの1つを...
「トンファーシュート!!」
絶妙のコントロールで大筒の銃口に投げ入れた。
「!しまっ...」
大筒は発射口にトンファーが詰まったせいで爆発した。
「...トンファーを外したら私の負けでしたが、私がこよなく愛する武器を外すわけがない!」
「っ!まだよマル!!」
一子がマルギッテに飛びつき、押し倒した。
倒れた二人の頭上を、大筒弾が轟音をあげて飛んでいく。
「なに...?」
「大友家、秘伝...国...崩し...!!」
大友は、腕に大きなダメージを負いながらも、その傷を己の足や歯でフォローしながら筒を撃ってきた。
「決して攻撃を止めない気骨、見事だ...!」
マルギッテが迷い無く、一気に間合いを詰める。
腕を使えない大友は、次弾発射が遅れてしまった。
「トンファーアームストローク!!」
「無念だぁぁぁっ!!!」
そのまま大友はマルギッテに吹き飛ばされていった。
西国武士の執念は、あと一歩及ばず振り払われてしまった。
「なんか、すっかり相手をとられた気分だわ」
「大火力の敵を足止めしていただけで、十分と思いなさい。私はお嬢様と合流する、お前も前線へ行きなさい」
「望む所よ!敵将1人ぐらいは倒さないと!」
一子が前線に元気良く出陣して行った。
「さて、私もクリスお嬢様のところへ...?」
硝煙で分かりづらかったが、こちらへ向かってくる人影を発見する。
(あの花火師の補給兵か?...こいつも無力化してからクリスお嬢様のところへ...っ!)
煙が晴れて視認した人間を見て、警戒レベルを上げた。
銀髪の人物が、短剣を持って既にこちらへ構えていたからだ。
重心の使い方からも、相手が相当の手練れであることを確認する。
(あの銀髪にその構え方、どこかで見たことあるような?...来るっ!)
それ以上は思考する時間も与えられず、件の男はこちらへ突っ込んで来た。
繰り出された短剣の攻撃をなんとかトンファーで受け流す。
「(!速い、それにとんでもない力だっ)ぐっ、まさかこんな生徒が天神館にいたとは!...念のため、トンファーを回収しておいて正解でしたね」
軍人としての本能が、目の前の人物に対して警鈴を鳴らしている。
初めて川神百代と相対した時と同じような悪寒を感じるが、躊躇うことなくリミッターを解除する。
「"Hasenjagd!"...眼帯を外した私は、先程とは別人と思いなさい」
「..."野ウサギ狩り"、だろう?久しぶりだな、猟犬」
「!あなた、まさか..."雷狼"ですか!?」
先ほどは煙で良く見えなかったが、月下に照らされて再度確認すると、かつて戦場で共にしたアメリカ軍の男であることを確信する。
特徴的な銀髪に、重心が全くブレない体の使い方。
一番得意であるはずの銃を持っていないことに疑問を感じるが...
「久しいですね、ライ。見た所、最後に会った時よりかなり強くなっているようです。...だが、私もそれ以上に成長しているっ!!」
猟犬としての本能に従い、普段の学園生活では出すことのない出力で目の前の男に迫る。
勝ち越しされている男に、かつてのリベンジを果たさんとトンファーを振るう。
だがーーー
「甘いな、マルギッテ。さっきの戦闘で、その愛武器はとっくにガタがきている」
大筒の銃口で爆発されたトンファーは、僅かに亀裂が出来ていた。
それを雷が見逃す訳もなく、的確なナイフ捌きでトンファーの急所を切り裂く。
「ぐっ!まさか、トンファーをナイフで切り裂くとは!?」
片方のトンファーは使えなくなることで手数が減り、マルギッテの防御と攻撃は格段に下がる。
愛武器を破壊され、機動力の落ちた猟犬に雷の猛攻は耐えられない。
「がっ!」
そのまま、流れるようにナイフの柄で決定打を喰らってしまった。
「悪いが、後が控えているんでな。...次は、"川神学園"で会おう」
(あぁ...クリスお嬢様、お許しください...っ)
東の自陣へ向かっていく足音を聞きながら、マルギッテはその場で意識を失った。
その頃、クリス率いる先方隊は敵陣奥深くまで斬りこんでいた。
(?今、マルさんから呼びかけられたような...気のせいだろうか?)
「大した統率能力だクリス!さすが軍人の娘だぜ」
向かう敵をクリスの的確な指示で返り討ちにし、全部隊で一番速く敵陣地を侵略していた。
そんなクリスを2-Sの井上準が副将としてサポートしているので、部隊としての完成度も高い。
並の学生では、そのままやられてしまうだろう。
「ん。お前も副将として奮迅の働き、感謝しているぞ」
(敵の本陣も近い。マルさんのことは気になるが、気を引き締めて征くぞ!)
そう心の中で決意を固めていると、何やら素早い集団がこちらへ接近していることを確認する。
「せいほうじゅうゆうし、あまごさんじょう!」
十勇士が一人、尼子の部隊が突撃してくる。
尼子と名乗る隊長らしき人物は、見た所かなり幼い顔をしているが...
「敵本隊は目前というのに、ここで敵とはな」
「クリス!先に行け!ここは俺が引き受けた」
井上はクリスの横に立ち、尼子達を前に構えた。
「お前...」
「ちょっとはカッコつけさせろよ」
「...分かった、借りておくぞ」
クリスは頷き、部隊を引き連れてさらに奥へと推し進んでいった。
「なんだこのたこ、わたしとやるきか!?」
「一見ショタだけど...俺には分かるぜお約束が。実は女の子なんだろ?そうに決まってるっ!」
暴走モードが始まってしまった。
小雪がいれば的確なツッコミを入れて目を覚ましてくれるが、ここは準一人である。
「っ!?...わたしは、おとこだーー!」
「いいねぇお約束だねぇ、可愛いよマジ天使」
絵面とセリフを見ると、防犯ブザーを押してすぐに逃げた方がいいだろう。
「でも、可愛いだけに、それだけに、こんな戦いに駆り立てられて、なんて、可哀想な、おおおっ...あぁぁんまりだぁぁぁぁーーっ!!」
「なんだこの気持ち悪いハゲは!消えろ!」
一人で語り出したと思いきや今度は泣き叫んでいる準に、屈強な尼子の兵隊達が襲いかかる。
「てめぇらは邪魔だぁぁぁぁ!芯竜~~~拳!!!」
「どれほどの破壊力だこの男ぉぉぉ!!!」
尼子兵は井上の拳撃で吹き飛ばされた。
「ロリが絡んだ戦闘空間では、俺の能力は3倍になる」
こうなった準は、もう誰にも止められなかった。
「えっ、じ、じまんのへいたいが...」
「もう君は戦わなくていいんだ、俺が保護してやる」
「く、くるな!つめできりきざむぞ!」
「兄たまと呼ぶがいい。さぁ風呂で汚れ落とそう、な!」
井上準は、あらんかぎりの慈愛をこめて背後から尼子を抱きしめた。
「うわぁぁぁ、きもちわるいよおぉぉぉ!!」
(こういうのはお約束だからなぁ。さてと、どれどれ...っ!?)
抱擁からすぐに、何かに気づいた様子でさっと尼子から離れる準。
「こ、この余計な感触!お前本当に♂なのか!!」
「あ、あたりまえだ、わたしはりっぱなおとこだ!」
「...お前にはガッカリだよ」
「え?」
「俺はショタじゃねぇ、そんな間違った性癖はもたねぇ!」
準は尼子に手刀を浴びせてそのまま眠らせた。
(くそっ、おくのてがつかえれば...むねん)
実は尼子には奥の手があったが、今回は使えなかった。
だが、今回の尼子達の敗因は変態と遭遇した時の対処法を学んでいなかったことだろう。
川神の地では、至るところに変態がリポップするのだから。
川神学園の自陣最奥部。
ここは、大将の英雄達以外にも負傷した生徒達が避難する場所になっていた。
「聞け負傷兵達よ。今、我が校の勇者達の活躍で半分以上の敵将を打ち破り戦線は膠着した!...お前たちは、西の連中にやられたままでいいのか?雪辱を期す好機ぞ、征ける者は征き武勲をあげよ!!」
「よし、俺は征ってくるぞ。自分のために」
「武士の血を引いているんだもの、負けないわ」
英雄の檄により、次々と負傷兵が復活し戦線へ。
これにより、東西交流戦最終局の盤面は完全に膠着した。
...その敵陣を観察していた忍が一人。
(されど勝敗は、敵の頭をとること。なれば、奇襲あるのみ)
上空から、英雄めがけてその忍が急降下してきた。
英雄はその存在に気付いたが、全く動じなかった。
「鉢屋か!1人で来るなんて、西の乱破は頭悪いのか?」
急降下してきた影を、あずみが迎撃し蹴り飛ばす。
「うぬは風魔か!ふん、だまし討ちこそ忍者の十八番よ。単独の方が奇襲に向く。数が欲しければ...これ、この通り」
影分身した鉢屋を見ても動揺することなく、英雄は指令を出す。
「あずみ、さっさと片付けろよ」
「了解しました、英雄様ぁぁぁぁ!!!」
5つに分身した鉢屋を、あずみが一瞬で切り捨てた。
「っ!?全部残像?」
「本体はうぬの後ろよ!もらったぞ!」
鉢屋は、あずみを後ろから取り押さえ、地を蹴った。
「ちっ、飯綱か!」
2人の影は遥か天を目指す昇龍となり、やがて竜は空で大きく反転し、流星となった。
「源流が同じと言われる風魔と鉢屋よ、この技の恐ろしさは知っていよう!」
飯綱落としとは、つまるところ空中バックドロップだ。
このまま地面に叩きつけられれば、その先は敗北が待っている。
(英雄様が見てるんだ、負けられねぇな!)
「自刃すれば我も貫けるが、四肢を封じられ何も出来まい...」
「いや、お前の負けだぜ鉢屋!」
あずみが自らの奥歯をガチリと噛み鳴らすと、そのまま空中で鉢屋もろとも爆裂した。
「自爆とは!だが、火力が足らんかったな!!」
「あたいが死んだら元も子もねぇだろ!」
「うぬ、脱皮ーーー!?」
爆発と共にメイド服は爆散しており、今のあずみは水着姿であった。
そのまま鉢屋の後ろを押さえると。
「逝っちまいなーーー!!!」
「ぬぐわっ!!」
形勢逆転とばかりに、カウンターで飯綱落としを鉢屋にお見舞いした。
あずみの戦闘経験は九鬼の専属従者だけあって、この交流戦に参加している面子の中では"2番目"に多い。
窮地を脱するためのいざという手法は、いくつもその身体に仕込んであるという訳だ。
「へっ、爆発ぐらいで手を離すようじゃヌルいぜ。...お騒がせしましたっ、英雄様!」
「うむ、警護の役目大義。なかなかに似合うな、その水着は」
「きゃるーん☆幸せにございます英雄様ぁぁ!」
ちなみにその水着選びには雷も付き合わされている。
奇襲を返り討ちにして、自陣も活気づいてきた。
だが、一息つく間もなく次の脅威が迫る。
「ヤキ、いれたるーーーーっ!!」
「て、敵襲...ぐわぁーーーっ!」
「宇喜多隊!敵本陣に一番乗りで報奨金アップやー!」
鍋島から、一番最初に敵本陣へ乗り込んだ部隊には報酬をやると宣言されていた。
金に目がない宇喜多は、やる気満々に本陣へ乗り込んでいった。
「ほう、強引に突っ込んでくる部隊がいるとはな!」
余裕たっぷりの表情で、宇喜多を迎える英雄。
「あんたが九鬼英雄やな?よっしゃ!敵総大将に、一騎打ち申し込んだるわ!!」
「たわけ、総大将として軽々しく相手はしてやれぬ」
「だったら全員ぶちのめすまでや!」
「退屈していた所じゃ、此方が遊んでやろう」
「フハハ、不死川か。好きにするがいい」
前線に参戦することなく、優雅に戦局を眺めていた名家不死川の娘が名乗り出た。
「なんや、上品なのがでてきたな。金もってそうや~ん?まさに打ち出の小槌や!」
「でかい獲物じゃのう、隙の大きそうな奴じゃ」
「確かに隙はでかいけどな。ウチ、ハイパーハンマーって技もってるねんで!ちょっとやそっとどつかれたぐらいじゃ、全く動じないで攻撃ができるっちゅー技や!戦闘ゲーム好きなら知っとる名前やろ!」
「ヒュホホ。技の解説、丁寧にご苦労じゃったなぁ」
「解説料金は、後で請求書を送ったるさかい。ほな、いっくでぇええ!!!」
ハンマーを振りかざし、宇喜多が心に突撃する。
「此方の得意技も教えてやろう、それは...」
不死川心も、宇喜多に向かって勢いよく駆け出した。
「柔道なのじゃーーー!!!!!」
宇喜多の勢いを利用して、その巨体を地面に叩きつけた。
衝撃がそのまま乗っかるカウンターのため、いかに頑丈な宇喜多でも一撃で意識を持ってかれてしまった。
稽古は十分にしたはずだったが、金に目がくらんでしまった末路である。
「いっぽーん!敵将、此方が討ち取ったのじゃー!!」
「ああいう手合いは投げに弱い。相性が良かったな!」
「まぁそういう運も、実力に含まれてますからね」
「素直に此方を褒めぬかーーー!!!」
その時、気配なく1人の男が近くで様子を見ていた。...が、その場にいる誰も気づいていなかった。
十勇士の二人を立て続けに討ち取ったことで浮ついていたのだろうか。
ーーー否。あずみの気配探知を持ってしても、気付くことのできない実力者だったのだ。
「それではヒュームの奴にまた怒られるぞ」
「!?」
嫌な予感に従って瞬時に構えると、とてつもない速さの短剣があずみの短剣とぶつかり合う。
衝撃で、周囲の川上学園の生徒が若干名吹き飛ばされていた。
「っ、雷!?てめえ、まさか西側かっ!」
「制服を見ればわかるだろう。さて、稽古の時間だ」
「(あのババアどもの指令か?)...はっ、とうとう忠実な狼になっちまったのか?」
「時間稼ぎは後で聞いてやる」
「!?...ぐわぁぁっっ!!!」
そのまま短剣で押し切られ、姿勢を崩したところを蹴りで画面外の屋根に吹き飛ばされる。
「あずみっ!...まさか雷が相手になるとは、流石の我もこの状況は想定していなかったぞ!」
「安心しろ、英雄。残りのターゲットはあずみだけだ」
大将に用はないと言わんばかりに、吹き飛ばした同僚の方向へ目線をやる。
その様子に、合点がいった様子で英雄が頷く。
「西で動いているとは聞いていたが、よもや天神館の生徒になっていたとはな。...何か理由があるのだろう?」
「この交流戦で自ずとわかる。...決着がつくまで、大将らしく振舞ってみせろ、英雄」
短いやり取りを終わらせ、意識を戻したであろうあずみの元へ跳躍する。
僅か数十秒の出来事で呆気にとられる川神学園だったがーーー
「て、敵襲ーー!!天神館の大将と思われし人物が...ぐわあぁぁーー!!」
立て直す暇も与えられぬまま、最大の窮地が訪れるのであった。
(よし、十勇士を抑えつつ順調に敵陣を撃破できているな)
大和は戦局を見ながら、狙い通りに進んでいることに一安心する。
「...ん、電話か」
表示名を見ると、敵陣の最前線に向かっていたはずのクリスからであった。
「大和。今、敵最前線にいるんだが...敵の大将がどこにもいないぞ!?」
(さっき、一子からも見つからないって連絡が来てたな)
「やっぱりか。そもそも、敵大将の目撃情報も出てこないんだよな」
未だ見つからない敵大将について思案をしていると、本陣が何やら騒がしくなってきた。
目線を向けると。
「んっ?...っ!まずいっ!クリス、急いで本拠地に戻ってきて!」
「まさか、敵が攻めてきたのか!?」
「そのまさかだ、敵の大将らしき人物が直接乗り込んできた!」
「なんという勇ましさ!敵ながらやるじゃないか...分かった、すぐに戻る!!」
「頼んだ!っと、そういえばマルさんとは合流したか?クリスの元へ向かったはずなんだが」
(あの人の実力は本物だ。クリスと一緒に駆けつけてくれれば、一気に状況をひっくり返せる!)
「連絡はもちろんしたんだが、繋がらないんだ!...ただ、さっきマルさんがリミッターを解除した動きは感じたから、どこかで戦闘していると思う!」
「...なら仕方がないか。ついででも大丈夫だから、途中で探しつつ戻ってきて!」
「了解した!」
電話を切ると、大和もファミリーに連絡を取りつつ英雄のいるところへ向かっていく。
「大和君。この動きは読めましたか?」
「いや、これは読めない。前情報だと、敵大将は隠れて時間稼ぎをするタイプだと思っていた。...そもそも、うちの1年生と3年生の大将が全員戦場へ出ていたのに対して、天神館の大将はどっちも自陣の奥で構えていたしな」
「私もです。まさか、大将自ら攻めてくるタイプとは」
「ここで言っても仕方がない。ひとまず、葵の方でも腕の立つ奴を招集しておいてくれ!」
「えぇ、今まさに進めていますよ。あの場に行ってもできることはそう多くないですが...私達も体を張りましょうか」
東西交流戦の最終場面に上がる舞台の役者が揃っていく。
後は幕が上がるのを待つのみだ。