七星天の導くままに〜幼馴染の妹が魔法少女をやってるらしい〜 作:Ziz555
仕事が忙しくて本編の更新が少し時間かかりそうなので、パッと書ける外伝を代わりにおいておきますね……。
時系列は適当なタイミングの、短めの話となっております。
「なあなあ!高町!」
——ある日の学校、その昼休みの出来事だった。
なのはの通う私立聖祥大附属小学校は共学であり、勿論なのはのクラスメートにも男子達は存在する。
普段は男子は男子で、女子は女子のグループが存在する以上、なのはは小学校で進んで男子達と会話する機会というものはさほど多くなかった。
なのはと仲の良いアリサが男子顔負けの気の強さをしており、すずかもすずかでクラスメートすべての男子より足が速いなどの理由もあるのだろうが。
しかしこの日は珍しい事に、なのはの席へと数人の男子達が集まっていた。
「どうしたの?」
別に男子達と仲が悪いと言うこともないし、なのはの身近には子供っぽい側面を持つ男性が1名ほど存在しているため、慣れた様子で用件を聞いてみると——。
「たまに迎えに来るあの人!誰なんだよ?」
「迎えに来る人?」
「そう!あの——」
「——スッゲェカッコいい人!!!!」
なのはの頭が混乱した。
自分を学校まで迎えに来てくれる人、その候補は概ね2人しかおらず、この点に絞るのであれば実質1人となるのだが。そこに“カッコいい人”という条件が加わった瞬間、なのはの脳は問の答えを見失った。
目の前の男子の瞳を見れば、それは憧れの人を見るかのようにキラキラと輝いており、余程その“カッコいい人”について知りたいように見える。それ程までに印象がつくほどの“カッコいい人”など、なのはは知らなかった。
「え、ええっと……ごめん。ちょっと分からないかも」
「アレってなのはの兄ちゃん?確か兄ちゃんがいるって言ってたよな」
「お兄ちゃん?……うん。いる、けど……」
なのはの兄、高町恭也は確かになのはを迎えに来たことはある。しかし、それは本当に数えるほどの回数だけであり、クラスの男子がここまで広く彼のことを知っているとは考えにくかった。
「居るだろ!よく校門に!」
その言葉を聞いてなのははとても嫌な予感がした。
「——目に傷があって!かっちょいいライダージャケットとグローブしてる人!」
ゴン。と大きな音がした。
「うわっ!?いきなりどうしたんだよ!?」
「ううん……別に、なんでもないの……」
なのはが思い切り頭を机に叩きつけた音だった。
——見られてた……!!!!
なのははその名前を聞いた瞬間、顔から火が出る思いをした。ちらちらと脳裏をよぎっていた嫌な予感の的中に、胃が締め上げられるような感覚もする。
小城明日斗。アストさん。それは確かに、よくなのはを迎えに来てくれるお兄さんであり、なのはにとってのヒーローだ。
どんなピンチにも必ず駆けつけてくれるし、なのはの為なら例え火の中水の中。天地が裂ける次元震や魔法が使えなくなる虚数空間すら突っ切って現れる憧れの人。
なの、だが。
……その左手にはとある事情から人様には見せられない物が埋まっており、それを隠すために彼は常に左手に指抜きグローブを着用している。
健康診断などはその点に理解のある時空管理局が協力をしてくれているので何とかごまかしごまかし生活を続けていられるのだが、問題はその様相にあった。
そう。“指抜きグローブ”だ。あの妙に奇抜で珍妙な服装。いやまあ、何らかの目的があって装着している以上、無意味ではないというのはなのはも理解しているところではあるのだが。
しかし、その着用が
当のアスト本人も最初は気にしていた様子だったが、むしろ最近は一周回ってそれを活かした
——見ているコッチが恥ずかしくなるからやめて欲しかったの……!
……
なのはは見慣れているから忘れてしまう瞬間もあるが、小城明日斗の容姿はタレントもかくやと思うほどに整っており、街ゆく女性は彼の姿に振り返らずにはいられないと言うほどの絶世の美男子だ。
但し、彼のファッション趣味というわけではないが、前髪の半分は白く染まっているし、右目には大きく傷はあるは瞳は赤いわであまりにも浮世離れしている為にあまり声をかけられることはないのだが。
しかし、今回の件に関してはその“浮世離れ”がひどく裏目に出る結果となった様だった。
それをクラスメートに見られていたという事実はなのはに非常に重いボディーブローとなり突き刺さっていた。
あまりの衝撃とダメージに、なのはは学習机に突っ伏したまま男子と会話を続ける事にした。目を合わせられる自信がなかったからだ。
「アストさんの事……だと思う」
「アストさんって言うのか!あの人!」
うおおおおお!と男子たちから興奮の声が上がる。
どうやら彼らはアストの格好に嫌悪は示していないらしく、妙に興奮した様子の彼らになのはは少しの安堵を感じた。
それがきっかけとなり、ようやくチラリとなのはが視線を向けると——、間近へと迫った男子たちの顔がそこにはあった。
「ふぇっ!?!?」
「なあなあ、アストさんって普段何してるんだ!?」
「何か秘密があったりしないの!?」
「バイク!バイク持ってたりしない!?」
「カードゲームとかさ!」
「ちょ、ちょちょちょっ……と!待って待って待って!」
凄まじい熱気と距離感に、なのはは思わず大きく椅子を引き——。
「あっ……わっ、わわっ!?」
椅子の後ろ足が床につかえて、そこを支点に大きく後へバランスが崩れる。
子供の体は特に重心が頭に寄っているものだから、そのままぐらりと後方へなのはの身体が引き寄せられた。
倒れる——その直前に、なのはの背中へ手が伸びた。
「よっ……と」
「アリサちゃん……!」
いつの間にか背後へと付いていたアリサが倒れそうになるなのはの背を押さえ、ゆっくりとその椅子を元の位置へと戻す。
ニコリとなのはへ笑ったアリサは、そのまま男子たちのほうを見た。
「アンタたち!!いい加減にしなさい!!なのはがケガしたらどーするつもりよ!!」
「ヤッベ!!アリサがバーニングした!!」
「バーニング・バニングスだ!!」
「だぁぁれがバーニングよ!私の名前はアリサ・
「逃げろーー!!」
激怒したアリサの気迫に負けた男子達は蜘蛛の子を散らすようになのはの席から離れていくが、当然その程度で彼女の怒りの
「逃がすかぁ!すずか!手を貸しなさい!」
「えぇ……私も……?」
「ずるいぞバーニング!月村はズルだろ!」
「なんとでも言いなさい!」
うがー!と吠えながら走り去る男子をアリサは追撃に走り、そんなアリサと呆然とした様子のなのはを見比べてから、すずかはひと言なのはに謝罪してからアリサの後を追いかけた。おそらく、頭に血がのぼったアリサを諌める為だろう。
「あ、あははは……」
ドタバタと音を立てて過ぎ去っていく嵐に、なのはは思わず苦笑をこぼした。
——とりあえず……アストさんには格好をなんとかしてもらおうかな。
なんて、そんな事を遠い目で考えていた。
男子「うわぁぁぁ!バーニングフィンガーだぁぁ!」
男子「ヒートエンドされる!!」
等という悲鳴が聞こえてきたとか聞こえてこなかったとか。