七星天の導くままに〜幼馴染の妹が魔法少女をやってるらしい〜 作:Ziz555
大変長らくお待たせしましたァん!
「ディバイン……!」
『Shoot』
「フォトンランサー!!」
『Fire』
——星が輝く夜空を舞台に、桜色の魔力光と金色の魔力光が激しくぶつかり合って火花を散らす。
海鳴温泉、温泉街の近くで森林浴が楽しめると人気の散歩道のその奥で2人の少女が衝突していた。
両者の目的はジュエルシード。黒の魔法少女が見つけ、その発動を感じ取った白の魔法少女が彼女の前に立ちはだかった。
最初から戦闘が起きた訳では無い。
時はわずかに遡り、黒の魔法少女がジュエルシードを封印する場に立ち会った時。白の魔法少女——高町なのはは問いかけた。
「どうして、ジュエルシードを集めているの?」
ジュエルシードが危険な宝石であること、それを知りながらも収集に勤しむには何らかの理由があるはずだとなのはは考えていた。
「それはあなたも同じことでしょう」
だが、その疑問は黒の魔法少女からなのはへ向けられるモノでもある。
「ジュエルシードをユーノ君に返す為。だれも……誰も、ジュエルシードで傷つけさせたくないから」
なのはは本心で応えた。
「あなたは?あなたの理由も聞かせて?」
「……話した所で、意味はない」
「そんなことないよ!!」
物憂げに、寂しげで、悲しそうな。そんな凍えそうな瞳をしている黒の魔法少女になのはは拳を握りしめる。
「もしかしたら、私もあなたの力になれるかもしれないから、ユーノ君だって、必要ならジュエルシードを貸してくれるかもしれない!」
「……」
「だからお願い、あなたの話を聞かせてほしいの……!」
——なのはの脳裏をよぎるのは、昼間アリサと交わした言葉。
あんな思いは……もう、したくないから。
だからせめて、話をちゃんと聞かせてほしくて。
けれど。
「そんな甘ったれの言う事を聞く必要はない!!」
突如として割り込んだのは、黒の魔法少女の使い魔であるオレンジ色の体毛を持つオオカミ。
ユーノがその横槍を防ぎ、牙と爪を受け止める。
そんな使い魔の声で完全な敵対の姿勢をとった黒の魔法少女に対して、なのはは戦いを避けられぬことを悟っていた。
「あなたの持ってるジュエルシード。渡してもらう」
「……え?」
「賭けて。ジュエルシードを、1つずつ」
「なのは!ダメだ!この子達……強い!」
突然の提案。使い魔——熟練の魔導師が生み出せる魔力を持った生命体——を生み出せる程の相手は、魔法を手にしてまだ日の浅いなのはには荷が重いとユーノがそれを引き止める。
だが。
「いいよ」
なのはは向けられた黒い斧に対するように、魔法の杖を手に構えた。
「なのは!」
「勝ったらお話……聞かせてもらうね」
「話……?」
「“甘ったれ”じゃない事、わかってくれたら……話を聞いてくれるよね」
「…………」
黒い魔法少女の沈黙。静かに天へと昇る両者。
——対峙は、2度目。こうなる事は、なのはもなんとなく分かっていた。
だから、ユーノにもアストにも告げずに、レイジングハートと2人で必死に努力を重ねた。
戦い方も、魔法の技術も、それに合わせた身体の使い方も。寝る間を惜しんで、とにかく、必死で。
……それが結局。アリサの心を傷つけていたと気づいたけれど。それでも。
——目の前の
もう——アストさんに助けられるだけの“なのちゃん”は嫌だから。
「レイジングハート!お願い!」
『Divine buster』
「……バルディッシュ!!」
『Yes sir』
2人の少女がぶつかり合う。互いの想いを魔力に乗せて。
片方は、届くはずが無いと、目の前の敵を撃ち払うために。
片方は、届いて欲しいと、目の前の少女を救う為に。
夜空を魔法の光が照らす。
譲れぬ気持ちは、確かに同じだった。
両者の戦いは正面からの撃ち合いだった。
なのはの形成する弾幕に対して、黒い魔法少女はその合間をかいくぐるようにして鋭い攻撃を繰り出している。
白の衣装を纏うなのはと、黒い衣装を纏う彼女の戦い方は対照的だった。
魔法で足場を固め、多数生成した魔力弾を浴びせかけるように放つなのはは、黒の魔法少女から放たれた鋭い一撃を的確にプロテクションで受け止める。
対する黒の魔法少女は、機動力によりなのはの弾幕を掻い潜りながら鋭い一撃をなのはへ向けて放つ。
一進一退の攻防にも見える戦闘。その最中、黒の魔法少女はわずかに顔を顰める。
——この子、強くなってる。
初めてなのはと対峙したのは数日前の事。その時の彼女は回避も防御も疎かで、攻撃もやたら滅多に撃つだけで回避も容易だった。
しかし数日、たった数日だ。
その間に腕を上げたなのはの攻撃は、確かに黒の魔法少女に迫っていた。
「レイジングハート、行けるよね!」
『
「じゃ、それまでに勝とう!」
『
黒の魔法少女に負けたあの日以降、なのははひたすらに訓練を繰り返していた。
撃ち落とされて気絶した後、自らを襲った黒の魔法少女を撃退したのは明日斗だと聞いたなのはが感じたのは、一種の焦燥感。
そして、同時に——明日斗はなのはの敵に容赦がない。
きっと、恐らく。なのはの力が黒の魔法少女に届いていないと明日斗が判断したのなら、明日斗は彼女への情けも配慮も持たず排除することを選ぶだろう。それが、
それでは——護られているだけでは、誰も救えない。
「だから、私は——!!」
——強くなると決めたんだ。強くなりたいと思ったんだ。私のやりたいことを貫く為に!
「レイジングハートが力を貸してくれたから、私は!!」
『Divine buster』
寝る間も惜しみ、レイジングハートの指導を受けた。飛び方も、撃ち方も、魔法のコントロールや……自分に合った戦い方も。全部、全部、必要なものは——全部!
「シュート!!!!」
桜色の光線がレイジングハートの先端より放たれた。収束されたなのはの魔力の奔流は、牽制の魔力弾により回避行動を制限された黒の魔法少女へと迫る。
包囲、誘導から放たれた本命の一撃。なのはの適性——砲戦と呼ばれるその戦い方の王道たる戦法には確かな効果が見込まれていた。なのはが秘めていた膨大な魔力量を惜しげもなく消費したその戦法は、並の魔導師では真似もできない強引で強力なものだった。
——だが。
「バルディッシュ」
『Protection』
黒の魔法少女はそれを容易くいなしてみせた。
直線的な砲撃に対し、防御魔法を斜めに構えて砲撃から逸れるように身体を捩る。
弾幕と砲撃のわずかな隙間へその身を滑り込ませるように直進し、包囲と砲撃を掻い潜る。
「そんな……っ!」
渾身の連携をいとも容易く突破されたなのはの動きと思考が、一瞬止まった。
そんな隙を、彼女が見逃す筈がなかった。
「サイスフォーム」
『Get set』
黒の戦斧の先端が開き、金色の刃を形作った鎌へと変形する。硬直していたなのはに対し、距離を詰めるのは一瞬もあれば十分だった。
なのはは刃を防ぐ為に杖を立てるが、鎌の刃はその防御を躱してその首筋へ突き立てられた。
「……っ」
『Put out』
「レイジングハート……!?」
主の危機に対し、何よりも早く判断を下したのはレイジングハートだった。
交戦の前に交わした約束通り、格納領域の中からジュエルシードの内の1つを放出する。それはなのはの指示ではなく、レイジングハート自身がなのはの身を守るための最善の策と判断したからだ。
「……主想いの、いいデバイスだ」
『Capture』
放出されたジュエルシードを回収した黒の魔法少女は、形成していた魔力刃を収め、戦斧をゆっくりと下ろした。
なのはの完敗だった。それも、2度目。
「……あなたはもう、戦わない方がいい」
「え……?」
敗北の衝撃に、その場で呆然としていたなのはに対して、黒の魔法少女が静かに言葉をかける。
「貴方には他に戦ってくれる人がいる。その人に戦いは任せて、ジュエルシードからは手を引いた方がいい」
確かに、なのはの成長には目を見張るものがあったが——所詮は付け焼き刃。戦いの経験を持たない以上、いくら魔力、魔法に関する才があれど……
たった一度交戦しただけの、光の弓を持つ青年。黒の魔法少女が尤も警戒しているのは——明日斗だった。
「それは——」
「俺の事かい、嬢ちゃん」
少女達の足元。地面から聞こえた声に、なのはは目を丸くし、黒の魔法少女は戦斧を構える。
そこに立っていたのは、コンビニのビニール袋を片手に生活感あふれる立ち姿で両者を見上げる青年、小城明日斗だった。
「お前は、あの時の……!」
「なんだ、やるのか?俺はどっちでもいいぜ」
ビニール袋を腕にかけたまま両手を広げ、肩をすくめてみせた明日斗に対して、黒の魔法少女は警戒を解かない。しかし、明日斗は戦斧を向けられてなお、無手はおろか——その両手をズボンのポケットへと突っ込んだ。
そんな彼の隣に、なのはがゆっくりと降り立った。
「アストさん、私……」
震える声。揺れた瞳で見上げられ——、明日斗は大凡すべてを理解した。
どうして、なのはが最近寝不足なのか。とか、そういうことを含めて——全部。
「私ね——わわっ!?」
「よく頑張ったなー、なのちゃん!」
何かを言いかけたなのはは、明日斗に頭を右手で掴まれて荒く撫でつけられる。
力任せに頭を撫でられ髪がぐしゃぐしゃになりながらも、けれどそこには不思議な温かさがあり、なのはは嫌な気持ちはしなかった。
「なのちゃん」
右手がなのはの頭から離れ、彼女が崩れた髪を手櫛で直していると、明日斗に名前を呼ばれて視線を上げる。
「自分でやりたいんだな?」
穏やかな笑みで、明日斗がそう問いかけていた。
その声と、彼の笑顔を見て。なのはの胸に浮かんでいた暗い思いや、重い悩みがすっと消えてなくなった。
だから、なのはは——。
「——うん」
——強く、真っ直ぐな思いで、彼に応えた。
そんななのはの姿に満足そうに頷いて、明日斗は再び空を見上げた。
視線の先に映るのは、月明かりを反射して煌めく金色の髪を持つ少女。
武器を構えて警戒を解かない少女に対し、男は静かに戯けたように肩をすくめた。
「今日は遅いし、お開きにしようぜ。お嬢ちゃん」
「……」
「ジュエルシード集め。譲る気はないんだろ?なら——」
そうして彼は、左手に着けたグローブの下を彼女へ見せて——不敵に笑う。
「——ジュエル、シード」
「俺達は必ず、また会える」
驚愕に染まる黒の魔法少女に対し、明日斗はニヤリとした笑みを崩さず彼女を見上げていた。
「これ以上やって寝不足になってもしょーもないしさ。ここの森にあったろう1つも、なのちゃんが渡しただろう1つもくれてやるから。また今度、な?」
「……また、今度」
ひらひらと左腕を振る明日斗に、黒の魔法少女はゆっくりと構えを解いた。
“
その言葉を何度も、何度も、小さく口にしながら。
「……それじゃあ、私は——」
「おっと、待った」
「……何?」
踵を返した黒の魔法少女を呼び止めたのは明日斗であり、彼は歯を見せて笑っていた。
「俺の名前は、小城明日斗。アストでいいぜ」
「……あっ、わ!私は高町なのはって言うの!」
「後……ここには居ないけどフェレットもどきがユーノだな」
「…………」
突然の名乗り。まるで先ほどまで戦っていたのがウソのような、もっと親しい相手に向けるような、これから親しくなる相手に向けるような。そんな言葉。
「お前の名前を教えてくれよ、お嬢ちゃん。又会う時に名前がわかんないってのも、不便だろ?」
敵意も、悪意もない。ともすれば平和ボケした、甘ったれた間抜けなその物言いに、少女呆気にとられ、だからだろうか。
「……フェイト」
黒の魔法少女——フェイトは、自然と名前を口にした。
「フェイト・テスタロッサ。狼は私の使い魔のアルフ」
「フェイトちゃんにアルフね。りょーかい」
覚えとくわ。と、ゆっくり深くうなずいたアストは、左手にグローブをはめ直し、隣のなのはへバリアジャケットの解除を促す。
そうして、改めてフェイトを見あげた2人は手のひらを振る。
「またね、フェイトちゃん。……次は負けないよ」
「えっと……」
「気をつけて帰れよ、フェイトちゃん」
「
そんな彼らの別れの言葉に、フェイトは——喉に何かがつかえた様にぎこちなく口元と左手をモゾモゾと動かして。けれど、何もできずに踵を返し、アルフを呼びつけてそのまま夜空の彼方へ——消えていった。
アストの存在でなのはの成長と覚悟が少しだけ早い模様。
……え?改変要素が少ないって?
ご安心ください、あの頃の定番要素はちゃんとこれから押さえていきます。(一部)白髪イケメンオッドアイの女好きチャランポランチート主人公のアストを信じてくださいって!!
ちなみに転生者にしなかったのはシンプル私が転生者書くの苦手だからですね。