七星天の導くままに〜幼馴染の妹が魔法少女をやってるらしい〜   作:Ziz555

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 タイトルはノリで付けてます。



第二話 放て神弓!過去を越え、戦え明日斗!

 

 

 ——夕日に暮れる公園に、1人の幼子が佇んでいた。

 ——その出会いは、憎いアイツの不甲斐ない頼み事から始まった。

 ——面倒事を押し付けられたと、最初は苛立ちを募らせていたけれど。

 ——暗く沈んだその顔を見て、なんだか放っておけなくて。

 ——初めて思った、誰かを笑わせたいなんて。

 ——だから、俺は。

 

 

 

 


 

 

 

 

「フェレットォ?」

 

 嫌な気配を感じた夜の翌々日。いつもの様に学校終わりのなのちゃんに呼び出され、高町家へ向かった俺を待ち受けていたのは、1匹の細っちょい毛玉だった。

 リビングでテーブルを挟むように座った俺となのちゃんの丁度中央ぐらいの場所で、“ソレ”は静かに鎮座していた。

 

「うん、ユーノくん」

「ユーノ?」

「この子の名前だよ」

 

 昨日の放課後、なのちゃん達には塾の用事があるからとの事で、俺は俺で大学の友人と共にバイト先に顔を出しており、なのちゃんとは丸一日程会わずに過ごしていた。

 何やら昨日の夜には事故まであった様子で……、なのちゃんが無事であった事に安堵はした。

 が、会わない間に妙な拾い物をしていたなのちゃんに、俺は妙に嫌な感じを覚えた。

 昨日の夜の古傷の疼きも、妙に印象的だったからだろうか。

 

「……リードに繋がれてるわけでも無いのに、妙に大人しいなぁ、コイツ」

「キ、キュ……!」

「あ!あー!ユーノくん、とっても賢い子だから!全然逃げたりしないの!ほら、ユーノ君、お手!!」

「キュッ!!」

 

 やけに慌てた様子で俺に事情を説明したなのちゃんは、そのままフェレット——ユーノくんへと右手を差し出し。ユーノくんとやらはそれに素直に両手を乗せた。

 芸を既に仕込まれているのか、それとも本当にやけに賢い個体なのか……。

 

「飼い主は?」

「居ないみたいで、家でしばらく預かることになったの。だから、アストさんにも会わせておきたくて」

「成る程ねェ」

 

 用心もなしにケージから出しっぱなしと言うのはいささかいただけない光景ではあるが。なのちゃんの言う通り、どうやらコイツはやたらと賢い様で、この場から逃げ出す素振りも一切見せない。

 興味本位で指を差し向けてやると、鼻先をこちらへ近づけてスンスンと息を鳴らして様子を窺っていた。

 

「世話はなのちゃんが?」

「うん。私が飼いたいって言ったから」

「ほー。そりゃ偉い。ちゃんと面倒見るんだぞ」

「えへへへ…………」

 

 動物の世話というのが教育に良いのかは知らないが、少なくとも悪い刺激になるとは思えない。なにより、なのちゃんが自ら進んで“やりたい”と興味を示す事は案外少ない。

 多分、士郎さんや恭也がコイツの飼育に反対しなかったのも、それが大きな理由だろう。

 

「良かったな、ユーノ。お前の飼い主は優しい優しい女の子だぞ〜」

「キュ」

「もしその白くて細い可憐な指先を噛んだりしてみろ?」

「キュ?」

「俺がお前を絞める」

「キュッ!?!?!?」

「ちょっと!アストさん!!」

 

 ユーノの前で笑顔のままで握り拳を作ってみせると、俺の威嚇に恐れをなしたのかユーノはその身を竦めてなのはの方へと逃げ出した。

 

「ユーノくん怖がってるでしょ!」

「でもなのちゃん、どれだけ賢いとしてもコイツは獣だ。そんなヤツに傷でもつけられたら俺は絶対コイツを許さん」

「ユーノくんはそんな事しないもん!」

 

 ユーノを庇ってこちらを睨むなのちゃんに、俺は思わず天を仰いだ。

 

「なのちゃんが……俺を叱ってる……」

「ユーノくんを驚かしたからでしょ」

「立派になったなぁ……」

「……そっち?」

 

 なのちゃんが俺の事を慕ってくれているのは知っているが、だからと言って何でもかんでも俺の言うことばかりを聞くというのは当然好ましい関係ではない。あまり普段は見せないその素振りに、俺はなのちゃんの確かな成長を感じてその感動を噛み締める。良かった……この子は大きく育ってます……。

 

「何勝手に人の妹の成長に感動してるんだ、気持ち悪いぞ、アスト」

「あァん?」

 

 感動の場面(?)に無粋な横槍が聞こえ、俺はイラつきを隠そうともせず振り返りながら声の主を睨みつけた。

 

「“お邪魔してます”。ぐらい言ったらどうだ?アスト」

「邪魔してんのはテメーだぜ、恭也」

 

 いつの間にやら大学を終えて帰宅したらしい、()()()()()()顔の良い幼馴染のふてぶてしい物言いに異議を唱える。俺となのちゃんの大事な会話を何ぶった斬ってくれてるんだコノ辻斬り野郎は。

 

「お兄ちゃん」

「ただいま、なのは。アストを呼んでたんだな」

「うん。……駄目だった?」

「いや、良いよ。コイツの調子はいつもの事だ」

「俺の会話をたたっ斬るテメーの調子も変わらねえしなァ?」

「アストさん……」

 

 なんだかなのちゃんが呆れている気がしないでもないが。それでも俺の腹の虫は収まるところを知らないのだから仕方がない。この朴念仁は昔っから俺が女の子と話していると絶妙なタイミングで現れて話題をかっさらって行くのだから、全くもって始末に負えない。しかもそれでやたらと女にモテるのだから、心の底から気に食わない。

 

「なんだ、文句があるなら道場に来るか?」

「上等。テメェの方こそ——……と言いたい所だが」

「……ああ、そうだな」

 

 いつの間にか椅子から上げていた腰を、俺は静かにその場へ下ろす。

 

「チッ。とっとと失せろ。忍さんとデートなりなんなりして来いよ」

「お前に言われるまでもない」

 

 そっぽを向けてひらひらと手を振ってやると、恭也の方からこの場を離れていくのが足音でわかった。

 昔のように喧嘩へすぐに移らないのは、互いに結果は目に見えているからで。今の俺では……勝負にすらなりはしないのだから。

 昔なら、高町家にある剣術道場ですぐに決闘をおっ始めていた俺達だった。奴の剣技と、俺の弓術。切磋琢磨とはまさにこの事と言える関係だったのだろうが——。

 

「……アストさん」

「いいの、なのちゃん。いつも言ってるだろ」

 

 右眼に残る古傷をどこか悲しげに見つめるなのちゃんに、俺は笑って答えを返す。

 

「男の傷は勲章なんだ。俺はこの傷に誇りはあっても、悔いは1つもありゃしないって」

「でも」

「良いんだよ、別に。なのちゃんが元気なら俺にとってはそれが一番なんだから」

 

 確かに。俺はこの傷で多くの物を失った。

 けれど、それ以上の物を確かにキミに貰っているから。惜しいだなんて思った事は1度もない。

 喧嘩をしなくなったからと言って、恭也と仲が……悪いのは変わらないし。別に白黒はっきりつけようって執着が俺とアイツの間にあるという訳でもない。

 こんな“力”なんかより。俺はよっぽど、君の笑顔が欲しいのだから。

 

「少し歩こう、なのちゃん」

 

 思い悩んだ様子のなのちゃんに声をかけて席を立つ。

 

「外の空気を吸いたくなったんだ」

 

 歩けば少しは気が晴れる。そういうものだからさ。

 

 

 

 


 

 

 

 アストさんに連れられて、私とユーノくんはお散歩をする事になりました。

 アストさんはユーノくんに少し何かを感じていたみたいだけれど、ユーノくんの話し声には気づかなかったみたいで。

 

『なのはが僕に会わせたかった人って、この人なんだよね?』

『うん。……でも、ユーノくんの声は聞こえてないみたいだね』

 

 ユーノ君から貰った“魔法”の力で秘密のお話をしながら、私達はアストさんの後ろを歩いていました。

 この秘密のお話は魔法の力を使える私達にしか聞こえない電話みたいなものらしくて、声に出さなくてもお話ができるから、アストさんは私たちのお話に気づいていません。

 

 ——アストさんは昔から、私にとってのヒーローだった。

 

 いつでも私の傍にいて、どんな時にも必ず助けてくれる人。

 いつも笑って、カッコよくて、私の——大好きな、憧れの人。

 

 ユーノ君の声を聞いた時、私が思わず駆け出したのは、アストさんならそうするかなって思ったところも少しはあって。

 昨日の夜、ジュエルシードと呼ばれる不思議な宝石の力で生まれた怪物に襲われて。ユーノ君の言うとおりに手にした魔法の力で戦った時。本当は、心の何処かでアストさんが助けてくれる事を待っていた。

 

 けれど、あの夜。アストさんは私の前に現れなくて。

 

 ……もしかしたらって、思ってた。たまたま、ユーノ君の声が聞こえてなかっただけなのかなって、そんなふうに思っていた。

 

 けれど。

 

『……僕の方からも何度か話しかけてみたけれど、やっぱりアストさんに魔法の才能は無いみたいだ』

『そう、なんだ……』

 

 ——アストさんに魔法の力は存在しない。

 

 それがわかって、私の心のなかにあったのは落ち込む気持ちと……少しの決意。

 

『なら、アストさんが巻き込まれないようにする為にも、私が頑張らなくっちゃ』

 

 ジュエルシードの怪物に対抗できるのは、魔法の力を持っている私とユーノ君の2人だけ。ユーノ君1人にジュエルシード集めを任せる訳にも行かないし、コレが私にしか出来ないことで。アストさんを護る事が出来るなら、今度は、私が——。

 

「ありゃ、今日はおやっさんも居ないのか」

 

 アストさんのそんな声に意識が引き戻されると、私達はいつの間にか神社の境内にいました。

 この神社は神事の際に神弓を射る役割としてアストさんがお手伝いをしていた場所で、弓を射れ無くなったアストさんだけど、神主さんとは結構仲良くしているみたいです。

 ユーノ君と秘密のお話をしながら歩いていると、目の前のことに気が回らなくなっちゃうのは少し危ないかも……。

 

「ちょっと奥まで様子見てくるわ、なのちゃんはここで待ってて」

「はーい」

 

 神主さんを探しに本殿の裏へと進んでいくアストさんを見送って、私は鳥居の前の石段に腰を下ろして街を見下ろす事にしました。

 長い石段を登った先にあるこの神社は、隠れた名所みたいな場所になっていて、私とアストさんのお出かけの時には度々こうしてお邪魔しています。神主さんがいる時には一緒にお茶を貰ったりして——。

 

 

 

 瞬間。何とも言えない嫌な気配がしました。

 

 

 

「ユーノ君!今のって——!」

「ああ、ジュエルシードが発動した、しかもかなり近い……!」

 

 身の毛のよだつような危機感と、今ならはっきりとわかる魔力の気配に、私とユーノ君は身構えました。確かに、すごく近くから気配はして。まるですぐそばで起きたような——。

 

「逃げろ!なのは!!!!」

 

 突如聞こえたアストさんの叫び声は、神社の奥の森の方から。

 直後、突き飛ばされるようにしてアストさんが同じ方向から現れました。

 

「アストさん!?」

「チッ……!なんだ、この化物は!?」

 

 アストさんは身体が空中にありながらもその場で大きく手足を振って姿勢を整え、私の近くに着地しました。

 その左手には、神事の時に使っていた筈の弓が握られていて、腰には矢筒が備えられていました。

 

『えっ!?うぇぇっ!?い、今!いいい今!アストさんすごい動きしなかった!?』

『ユーノ君、コレって……!』

『ああ、ジュエルシードの力……じゃなくって!えぇ!?なのは、それよりおかしい事あったよね!?』

「神社を護る狛犬、って面じゃねェよな……、おやっさん、妙な祠でも壊したってか?」

 

 アストさんを追って現れたのはイヌの姿をした怪物。ジュエルシードの力で暴走してしまった生き物であることは間違いありません。

 牙をむき出しにして唸り声を上げる怪物から私を護るようにアストさんは立ちはだかります。

 

「アストさん……!」

「俺は大丈夫だなのちゃん。いいから、ここから早く逃げろ」

 

 左手で構えた弓に、右手で矢筒から取り出した矢を番えながら警戒をするアストさんは、私の方を見ずに逃げるように促します。けれど、私の頭は別の事でいっぱいでした。

 

 ——ど、どうしよう……!アストさんを護るって決めたけど、魔法の力を見せても良いのかな……!?

 

 

 

 


 

 

 

 ——なんなんだ、この化物は。

 

 俺の感想はとにかくそれ1つだった。

 右眼の傷が熱く疼いて、嫌な予感とプレッシャーから咄嗟に神社の神弓を取った直後。突然現れたのが今の眼の前にいるイヌの化け物だった。

 

 奇々怪々な出来事は高校時代にあの馬鹿(恭也)といくらか経験した(たち)ではあるが——こういう(たぐ)いは見たことが無い。

 

 手に取ることも久しぶりな筈の御神弓は、妙に俺の左手に馴染む。右の手で番える矢も、吸い付くように弦に備わる。

 

 ——大丈夫だ。身体はまだ、覚えてる。

 

 心と狙いを研ぎ澄まし、番えた弓矢へ心意を乗せる。

 

 

 

 視界ばかりが、歪んで見えた。

 

 

 

「——この距離程度、片目で十分当てられる!!」

 

 ぼやけて歪むぐらいなら、思い切って右眼を瞑り、平たい視界で矢を放つ。

 パン、と乾いた音が鳴り。風切り音を引きながら、鋭い一矢が飛び出した。

 

 

 

 ドスリと鈍い音がして、その一撃が怪物の右眼に突き刺さる。

 

 

 

 怪物はうめき声を上げ、大きく悶えてその身を捩った。

 

「なんだ……案外鈍ってないもんだな……!」

 

 命の危機を肌で感じ取りながら、けれど自然と俺の口は笑みを浮かべているのがはっきりわかった。





 恭也と明日斗の過去話は皆さんのご想像にお任せしますね!!!!
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