七星天の導くままに〜幼馴染の妹が魔法少女をやってるらしい〜 作:Ziz555
実は最新話書くたびに“前話の次回予告”を書いているので、この更新が終わったら今までの後書きに足してきますね。
なのちゃんが熱を出した。
理由は単純明快で、ジュエルシード集めを少し頑張りすぎたのだ。
昼は学校、夕方と夜はジュエルシード集めのために街を奔走。しかも、慣れない魔法の力を使いながらともなれば……そりゃあ無理がたたるのも仕方がない。
幸い今日は日曜日、学校は行かずにゆっくり休める訳で。疲労から来る熱だろうから1日ゆっくり休めば明日にはまた回復してる筈だと、朝から俺が高町家に出向き、彼女をベッドに押し込んだ。
気がつけば速いもんで、ユーノと出会って1週間足らずですでに集めたジュエルシードは合計5つ。ユーノ曰く、コレは正直異常なペースとの事で、1日休んだ所でお釣りが来る程だとも言う。
結局神社の1件以降は俺が戦う必要もなく、なのちゃんがキッチリ1人で決着をつけているのだから、本当になのちゃんには魔法の才能があるらしい。あと、兄貴によく似た“戦いのセンス”も。
そんなこんなで、なのちゃんは今日はお休み!とはなったが、悲しいかな、実は1つの約束が今日の予定になっていた。
なのちゃんのお父さん、高町士郎さん……今の俺からすれば雇い主でもある翠屋店主の彼は、
「——なのちゃんのかわりに、2人と一緒に応援してきてくれってな」
「アンタがなのはの代わりになるわけないでしょ!このアンポンタン!」
出合い頭早々に赤みのかかった金髪のチビから罵倒を貰う。うーん、やっぱりいつも通り。
「まあまあアリサちゃん……、せっかく来てくれたんだから」
「すずかはホントにそれでもいいの!?」
ギャーギャー騒ぐ金髪のチビと、それを諌めるおしとやかな少女。2人の少女——金髪のチビも
因みに、すずかとは別の縁で少し前から知り合いだったりするのだが。それはまた少しだけ別のお話。
「なのはちゃんは大丈夫そうですか?」
「うん。まあ、なんか疲れたみたいでね。コイツを飼うのにテンパり過ぎたんじゃないかな」
「キ、キュー」
そう言いながら、俺の右肩に乗せたユーノの鼻先を左手でつつく。ユーノが近くにいるとジュエルシードの1件が気になるだろうと思い、俺が強引に連れ出してきたのだ。
「ユーノくんも来てたんだ」
「リードも無しに右肩って……アンタ他所の家のフェレットをどう躾けたのよ」
「フッ、コレも俺の溢れ出るカリスマ性の為せる技……」
「キッッショ」
養豚場の豚を見るような目で俺を見上げるアリサに対し、肩をすくめて首を振る。
「良いのかなお嬢様、俺に楯突くって事は。今日は俺の手にあるユーノに触れることが出来なくなるという事なんだぜ……」
「なっ……!ひ、卑怯な!」
「フフフハハハハハ……!何とでも言うがいい小娘!コレが大人の策謀よ!」
「く、くぅぅぅぅ……!アンポンタンのクセに……!」
「アリサちゃん……アストさん……」
歯を食いしばって悔しがるアリサを見下ろし、高らかに笑うのは最高に気持ちがいい。ふははは、コレが大人の余裕と言うもんだ。
「コラー静かにしろー。外野がうるさいぞー」
「「はーい」」
「私まで……」
「キュー……」
フザケていたら士郎さんに軽く諌められたので、俺とアリサはそそくさとベンチに腰を下ろすのだった。
悪いなユーノ、俺は念話ができないからお前が何言いたいかさっぱり分からん。
試合は接戦の末、翠屋JFCが見事勝利を収めた。
流石は士郎さんの指導というべきか、戦術はともかくとして基礎的な体幹や運動神経において翠屋JFCの方が相手を1枚上回っていた様に見える。最終的にはその地力が出たからこその勝利と言うべきか。
“御神流”は、やっぱり伊達じゃない。
チラリと向けた俺の視線に気がついたのか、士郎さんはコチラを振り返ってから微笑んだ。
言われなくても、アンタの指導は守ってるよ。座禅の教えだけだがな。
その後、士郎さんは試合の結果を称えるためにJFCのメンバーを飯のために翠屋へと招待し、すずかとアリサも翠屋で飯を済ませる運びとなった。
店主が率いるチームを持て成すとなれば、雇われの俺がボサッと見ているわけにもいかない。働き始めてまだ日の浅い俺ではあるが、士郎さんと共に厨房に立ち、幼い戦士たちの武勲を
「このパンケーキ美味いぞ!」
「マジで!?翠屋の新メニューかな!?」
「すげぇ!サクっとしてるのに中ふわふわだ〜!!」
「フッ、何を隠そう。俺はパンケーキを焼く天才……!」
「明日斗くん、妙なことが得意だね……」
——なんて他愛のないやり取りがあったりしたが。それはそれ、これはこれ。
束の間の宴が終わり、JFCは解散。迎えの来たすずかとアリサを見送って、この後の予定を持たぬ俺とユーノは再び神社へ足を運ぶ事とした。
「面白そうなスポーツでしたね」
「サッカーか?まあ、メジャーで人気なスポーツだしな」
「アストさんは何かスポーツを?あんなに動けるならどんなスポーツでも大活躍できそうですが……」
日曜日だが人の少ない通りを歩きながら、俺はユーノと言葉を交わす。しゃべるフェレットを見られるわけには行かないから、周囲の気配には慎重になりながら。
「俺はそーいうもんには興味が無いんでね。“眼”もやられてるし、やる気がない」
「あ、そっか……ごめんなさい」
「いいよ。眼が逝く前は弓道をやってたけどな」
「弓道?……アストさん、弓を使うの凄くお上手でしたよね」
まあ、アレは弓道って言うよりは“殺人弓術”なんだろうが……。
「“御神流”に感化されたからな」
「……この前も言ってましたけど、その“御神流”って一体……?」
「士郎さんと恭也の流派。まあ、世間的にはあんまり大っぴらにすべきもんでもない技術だよ」
「地球にもそういう物が……」
「まあな、だから
——突如。右眼の傷が熱く疼いた。
進めていた歩みを止めて、俺は街の方へと振り返る。
「……アストさん!」
「ジュエルシードか」
「はい!……って、アレ?なんでわかったんですか?」
「さぁな。カンだよ。カン。……何でもいいから案内してくれ、場所がわからん」
「わ、わかりました!」
肩から飛び降りたユーノを追って、俺は街を駆ける。
なのはが動けない今、最悪自分が戦うこともあるだろうと考えて、ユーノに伝えて自宅に寄って弓と矢だけを取っ掴んで現場へ向かうことにした。
そうしてしばらく街を駆け抜けていると——視界の先に、緑の影がちらりと映る。
栄えた街並みの向こうに見える、“ビルより高い樹木”のモニュメントなんて、海鳴の街には存在しない。
「こっちだ、ユーノ」
「え?ジュエルシードの反応は——」
「弓を射るなら高台なんだよ」
近くのビルを見渡して、最も高そうなビルへと駆け込んで——そのまま一息に屋上まで駆け上がった。
非常階段を経由して、封鎖されたビルの屋上に無理やり上がり込むと、今回の事件の全貌がようやくそこで明らかとなった。
「コレは——!」
海鳴の街を覆うのは、巨大な樹木。鉄とコンクリートのジャングルを今にも飲み込まんとする大樹がそこかしこから生えていた。
「……規模がデカいな」
「多分。人間がジュエルシードを発動させたんだと思います。……強い意志と願いを持って触れた時が、一番ジュエルシードが強力なエネルギーを発生させるので……」
「……」
左眼を凝らして見れば、所々でコンクリートを引き裂いて根が広がる場もあり、それらは今も着々と海鳴の街を侵食している。
「なのはを起こさないと……!このままじゃ街が!!」
「ユーノ。ジュエルシードの封印にはレイジングハートが必要なのか?」
「え?……一応、僕1人でもできなくは無いけど……こんな状況じゃあ、流石に……」
「できるんだな?」
ただ1つ、事の可否だけを問い返すと、ユーノはその目を丸くして静かに頷いた。
返事を耳で聞きながら、俺は弓を取り出して弦を巻きつけ、弓の具合を確かめる。
「矢に術式を付与することは」
「できる……と思う、けど。それで封印するには発動中のジュエルシードの核に直接ぶつけ——まさか!」
「当てれば良いんだろ」
強く張った弦を弾くと、ビィンと心地よい音が鳴る。使う機会がなくとも、手入れをしていた甲斐はあった様だった。
「この距離から矢で狙うつもり!?」
「目算400m以内。弓の射程距離内だ」
ギリギリ限界の射程距離だが……“当てるだけ”なら問題ない。俺が狙撃の支度を着々と進めていると、ユーノが突然前へと飛び込んできた。
「無茶だ!」
「なら今から戻ってなのちゃん起こしに行ってみるか?下手すりゃ死ぬぞ、誰か」
「だからといってそんな無謀をする意味があるとは——」
「ん」
ユーノの言葉を遮って、幹の一つを指差した。大体目算200m。細く伸びた枝の先に1つの風船が絡まっていた。
「あんなの見せて何を……」
ユーノが言い終わるより先に、俺が一矢を放つ。
放った弓矢は風に流されながらも直進し——風船を突き破った。
「…………うそ」
「信じろ、俺を」
——正直、今のが当たるのかさえ賭けだった。こんな距離での超長距離狙撃、5年以上前に一度放ったきりで、眼をやる前からすらそうそう放っちゃいない。
だが、それでも。この一矢を当てなければなのちゃんを護れないというのなら——。
「——俺の一矢は必ず当たる」
そう断言する。そうでなければ——
俺の放った宣言にユーノが固唾を飲むのがわかった。疑いと、驚きと——期待の交じる眼差しが俺へ向けられていた。
「で、でも……ここからじゃどこに核があるかなんて」
「ビル正面から1時の方向、東に5分」
「時間……?」
「角度の話だ」
そもそも、“標的”が分かっていなければ距離の話などしない。
「ええっと……流石に距離が遠すぎて僕のエリアサーチじゃできないから……」
ユーノがそんな言葉を呟くとその右目のあたりに魔法陣が展開され、それを覗き込む仕草をして俺の示した方角を見る。
つまりそれは、“視覚”を補助する魔法を使っているということで。
「……あった!確かにアレは核だ!一体どうやって……」
「核から中心に変化が起こるとするなら、被害を見れば大体見当つくんだよ。……それよりだ、ユーノ」
「な——うわぁっ!?」
“核”の発見に驚くユーノを右手で掴み、俺の目線へ持ち上げた。突然背後から掴まれたことに驚いたのか、右手のなかでもぞもぞと動き回るが、握りつぶさない程度に身体を持ってユーノへ真正面から視線を合わせた。
「今の魔法、他人に使えるか?」
「え?今のって……」
「視覚の強化ができるんだな、お前は」
——ただの望遠ならば、俺の期待は露と消えるが。
「えっと……」
こういう時の俺の運は——
「一、応……」
——ハズさない。
「皆中だ、ユーノ」
「か。かい……ちゅう?」
ビルの上で、俺は静かに構えを作る。
息を整え、心に凪を作り出す。研ぎ澄まされた意識の中、世界の色が失せていた。音が遠く取り残されて、時の流れが引き伸ばされてゆく。
そうして再び——極限の集中が俺以外の全てを置き去りにする。
ジュエルシードの怪物へこの矢を放つのは2度目。だが、此度は大きな違いが1つある。
——俺は右の肩にユーノを乗せて。ユーノは俺に魔法をかける。
もっと正確に言うならば、
——世界のブレが、消え去った。
風無く。
音無く。
色無く。
迷いも乱れも——欠片たりとて俺の世界には存在しない。
——我が放つは神成る一矢。万物貫く迅速の流星。
御神の流れの一部を汲んだ、俺が唯一名付けた弓術。絶対なる信頼を置く秘奥の一射。
「——
大きくしなる弓から放たれた、鋭い一矢が天を割く。
——寸分の狂いもなく、俺の放った弓はジュエルシードの核を射抜いて、
「ほ……本当に……当てちゃった……」
残心をする俺の耳元で、ユーノの呆けた声が聞こえた。
矢が当たる光景は、俺にとっては見慣れた景色に過ぎないが。
「なんだ、結構綺麗だな。魔法って」
ユーノの封印魔法がジュエルシードの力と溶け合い、無数の淡い光を放ち世界へ消えていく
チートタグに恥じない活躍だァ……。
〜次回予告〜
見たか!俺の最終奥義、一矢神速!!コレで多少はなのちゃんだって楽ができるようになるな。
なーんてそんなことを考えてたら、なんかラッキー♪発動前のジュエルシードを拾っちまった!
回収一つが楽にできたな、と思ってたのに。コイツは一体どういう事だ!?
七星天の導くままに、次回!
『七星の導き!その輝きは誰の手に(前編)』
……って前後編かよ!
※7/21追記