七星天の導くままに〜幼馴染の妹が魔法少女をやってるらしい〜 作:Ziz555
また前後編になっちゃった☆
黒い魔法少女の襲撃を退けて数日の時が経っていた。
巨大化した子猫に取り付いていたジュエルシードはユーノが封印を施し、気絶していたなのちゃんもあの後すぐに目が覚めた。魔法の衝撃で気を失っていただけで、そこまで大きなダメージにはならずに済んでいたらしい。
怪しまれない為にも子猫とユーノを連れてすぐにすずか達の待つテラスへ戻りはしたが……。どことなく上の空な調子のなのちゃんを見て、アリサが俺を強く睨みつけていた辺り、何やら勘付かれたらしい。
しかし、だからといって具体的な追及も無く。その日は予定通り夕方頃には解散し……、恭也となのちゃんに無理を言ってしばらくユーノを俺が預かることにした。
左手のジュエルシードの封印処理についてや、俺自身は念話ができないこともある為、俺のジュエルシードが暴走した時の緊急連絡手段という訳だ。
何かと風雲急を告げる展開に、ともかく1つでも答えを見つけようと連日意見を交わす俺とユーノだったが——。
「結局、“今は何もわからない”って事が分かっただけだったな」
「本当にね……」
居間のちゃぶ台を
くすんだ金色の髪と翡翠の眼を持つ、異国情緒——この場合は
彼の名前は
そう、あの
魔法の力を説明するなりの都合でなのちゃんの傍に居る間はフェレットの姿を取っていたそうだが、今の人間の少年の姿をしており、こちらが彼本来の姿らしい。
「唯一判明した事実が、お前の本当の姿ってのがなー」
「あはは……、アストはそれもあまり驚かなかったけどね」
「そりゃな」
別に、見てればなんとなくわかる話だ。
「フェレットの身体つきで付く
“魔法”があるなら、それでいくらでも姿形が変えられると言うのは、ジュエルシードの怪物達で実例を何度も見ているのだ、何もそこは今更疑問にもならない。
「……アスト、本当に頭良いよね」
「お前まで俺がバカみてーだって言うのか?」
「違う違う!そういうんじゃなくて!」
赤みがかった金髪で翡翠の眼の少女が全力で俺を罵倒する姿を思い出す。俺は金髪緑目に前世で迫害でもしたのかよ。
「結局、あの後成果は無し。数日前までポコポコ見つかってたジュエルシード集めも数日成果0で難航中」
「なのはもこの前負けたのが気になってるのか、なんだかずいぶん思い込んでる様子だし……僕が念話を送っても応えてくれない時もあるんだよね」
「なのちゃんが?」
何か考えている様子は俺も見て取れていたが——、結局俺がなのちゃんと会うのは放課後のジュエルシード集めの時ばかりで、常に彼女の傍に居てやれるという訳でもない。
その点、いつでも念話の飛ばせる……というのもプライバシー的にどーなんだと思わないでもないが、ともかくユーノの方が接している時間が多い分、事情は彼のほうが聡いだろう。
「……あまり気落ちしてないといいんだけど」
「そうだなぁ……」
なのちゃんは昔からの何かと1人で抱え込みがちな性格をしている。他人に頼るのが下手というか、迷惑をかけたがらないと言うか。
——結局、俺は未だになのちゃんの傷を癒せている訳ではないと突きつけられた気がした。
「まあ、だったらせめて俺らが勝手に背負い込んでるもの奪って背負ってやるしかないな?」
「もう……強引だよね、アスト」
「そんぐらいガツガツいこうぜ。待ってるだけはどーにも性にあわねぇんだ」
それに。
「弓が無くてもどこでも戦えるようになったしな」
左手のジュエルシードから、光の弓を形成し——。
「わー!わーー!!わーーーーっ!!アスト!しまって!しまってそれ!!」
「え?」
——慌てふためくユーノに止められ、弓を霧散させた。
弓を消した俺をみて、大きくため息をついたユーノは、浮かせていた腰を下ろして胸をなでおろす。
「こ、怖い事するなぁ……、突然……」
「コレが?」
展開される光の弓。
「だからっ!!やめてってば!!」
「えー」
何をそんなに焦っているのかと思いながら、俺は左手の弓に目を向ける。
「でもコレ便利なんだぜ、ほら。弓のサイズも形も自由自在でさ」
「怖い怖い怖い怖い!!だから早くしまってって!!」
俺の思うがままにサイズを変化させる光の弓は、和弓の基本的なサイズから、さらに大きなバリスタサイズ、クロスボウ程度から果ては弦を弾けそうにもないサイズまでぐにゃぐにゃと形を変えて輝きを放つ。
当然、光なので重さもなく、ちゃぶ台や床に当たってもそれらを壊すことなく突き抜けてくれる。あら便利〜♪
「ア!ス!ト!!!!」
「はいはい、姑かよオメーはよぉー」
ユーノが本気で脳の血管切れそうになっていたので弓をしまってあげた。俺は優しいなぁ。
「アストはジュエルシードの危険性を分かってないの……?暴走したらどうするつもりなのさ」
「お前、普段歩く時に常に“足の置き方間違えて捻挫したらどうしよう”とか考えんのかよ」
「そんな!レベルの!話じゃ!無い!!!!」
凄まじい形相で俺を睨むユーノくん。君そんな顔できるんだねぇ。
「あぁ……もう……本当に……全く……訳がわからないよ……」
それは多分お前じゃなくて白い獣のセリフだな。
「ジュエルシードが肉体に融合してるのに安定している状態なんて、見たこともないし……。封印の施されていない状態じゃなかったのか……?いや、だとしたらあんな力が使える筈は……」
「なのちゃんだって赤い宝石から杖とか衣装とか出してるだろ?アレと何が違うんだ」
「全然違うよ……」
なんだか疲れ切った様子のユーノは、ちらりとこちらを見てから頭を振った。
「いい、アスト。なのはのレイジングハートは“デバイス”と言って、魔導士が魔法を使う為のプログラムが保存された端末なんだ」
「つまり、生体電気で動く携帯電話か」
「なんでその理解力の速さがあるのにジュエルシードに対しては無頓着なんだい????」
「だから、お前は指先を——」
「あー、もういいから」
ユーノはシッシッと手を払って俺の言葉を遮る。こいつ、年上に対して失礼すぎないか?
「アストの左手に埋まっているジュエルシードは、デバイスみたいにプログラムが保存されているという訳ではないんだ。……僕達には解析しきれない動作回路はあるみたいだけど、基本的には“ただのエネルギーの結晶体”なんだよ」
「デバイスが携帯電話なら、コレは固形状のニトログリセリンって感じか?」
「ニトログリセリン?」
「床に落としたりするだけでドカンする爆発物」
「じゃあさっき自分が何をしていたか分かったよね????」
「だからお前は——」
「身体が爆発物でできてる人なんて居ないよ!!」
ユーノが俺に対して、ジュエルシードという物体が如何にデリケートな危険物なのかを伝えんとしているという事は十分に声と表情で理解はできたものの。左手に件のそれが埋め込まれている俺からすると、どうにもその説明を呑み込めずにいた。
「でも、事実として今俺の左手にある“コレ”は非活性なんだろ?」
「……そうなんだよね」
俺の左手に埋め込まれた蒼い宝石は、現在部屋の光を反射するばかりで、それそのものは淡い輝きすら放っていない。ただの透き通る石ころだと言われれば納得してしまう程度に。
「アストの例えはおかしいけど、そのジュエルシードは封印……と言うよりは、デバイスの待機状態に近いんだと思う」
「まあ、俺が任意で起動できるわけだしな」
左手のジュエルシードは俺が動かそうとしない限りは大人しく沈黙を保ったままだ。
「起動して見せなくていいからね」
「しねーよ。うるせぇもん」
「全く……」
呆れ果てたように腕を組むユーノはそのままアレやコレやと小言を言い始めた。彼にとって俺の言動が理解できないと言うのはわかる。しかし、実際問題として俺はこのジュエルシードの力を使う事に不安を何も感じていないのだ。
料理をする時に包丁を握るとする。肉や野菜を切るための道具であるその鉄の板は、使い方を間違えば己の身を傷つける凶器になる訳で、よほど腑抜けていない限りは使うときにいくらかの緊張を伴って然るべきだ。
それは弓を構える時の俺も同じで、弓を構えて放つ時には慣れとは別の緊張がある。ジュエルシードの弓矢を番える時にも感じる緊張だ。
だが、この緊張感を俺は
歩くだとか、物を手で持つだとか、それぐらいの感覚でしか無いのだ。
「——アスト、アスト?」
「ん?」
ユーノに名前を呼ばれ、いつの間にか俺の視線が左手の宝石に向けられていた事に気がついた。
「僕の話、聞いてた?」
「ん?ああ、今日の夕飯はカレーだな、オッケー」
「ほんと?僕あの料理おいしくて好きなんだよねー……じゃなくて!!」
「わーってるよ。コレまで通り、普段はちゃんと普通の弓とお前の封印魔法で戦うって」
俺だって万が一、いや。億が一にも俺の起こしたジュエルシードでなのちゃんが傷つくなんて事は防ぎたい。
「あ、そーだユーノ」
「何、アスト」
とりあえずの結論が出た所で——、俺はたまたま思い出した話を振った。
「次の連休、温泉行くからよろしく」
「うん、わかった。……温泉?」
高町家、毎年のゴールデンウィーク恒例行事。1泊2日の温泉旅行に、俺も招待されていると言う話だ。
数日後、温泉旅行の約束の日。俺は士郎さんと約束した集合場所へと荷物を持って訪れた。
和気あいあいと話しながら、車へ荷物を積み終えると、旅館へ向かうための車へそれぞれが乗り込んでゆく。
参加するメンバーは高町家の面々に、月村さん家の忍とすずかちゃんにメイド御一行。ユーノと俺と——。
「アンタはコッチ」
「あ?」
——予定にない3台目の車。そこから降りてきた1人のちんちくりんに呼び止められ、俺は振り返った。
「なんだよアリサ、何か用か?」
高町家温泉旅行御一行、最後の1人。バニングス家から1人参加のアリサが両手を組んで俺を見ていた。
「アンタも来るなら狭いでしょ、お父さんに頼んでドライバーとクルマを用意してもらったから、あんたはコッチ」
「え?でもお前がそっち乗るなら士郎さんの車の席が——」
「アンタはいつから
……車の割振りは、士郎さんの運転する車に乗る恭也を除いた高町家と、なのちゃんのお友達。忍の車に恭也と月村家御一行。恭也とすずかを入れ替えたのなら、確かに高町家と月村家の車内構成。と言うか恭也は実質“月村”だ。
そして、俺の名前は
「……余りもの組、って事?」
「減らず口も大概にしなさい。余所者なのよ、
フンと鼻を鳴らしてそっぽを向くアリサの車は、普段の送迎に使われている黒い高級外車ではなく、4人乗りの小さな自家用車だった。運転手を除けば乗れて3人。3台並んで温泉旅行へ向かう事をアリサなりに配慮しているらしい。
ユーノは既になのちゃんへと渡したし——。
「……ま、お邪魔するとしますかね」
腕を組んだまま、静かに俺を睨みつけるアリサの意図を汲み取って、俺は車へ乗り込む事とした。
そんなに熱の籠もった視線で誘われたなら——断るのは男じゃない。
「なのちゃん」
「ん?アストさんも早くコッチに——」
「ワリィ、俺アリサん所の車で行くわ」
「えーーーーーーッ!?私の隣は!?」
「ユーノでも置いといてくれ」
「嘘でしょ!?アリサちゃん!?」
「悪いわねなのは、コイツちょっと借りるわよ」
「えぇぇぇぇぇ!?」
「まあまあ、たまには良いんじゃない、なのはちゃん」
名残惜しそうに俺の方をなのちゃんが見ているが——済まない。今回ばかりはその視線を裏切る俺を許してほしい。今度何でもしてあげるから……。
と、そんな事を考えながら俺はアリサの待つ車へと乗り込んだ。
そうして全員が車に乗り込んだ事を確認したのか、士郎さんの車がウインカーをチラつかせてから先導を開始する。
いよいよ楽しい楽しい温泉旅行へ出発だ!……と、笑って言いたいところだったが……。
「ずいぶん厳かな空気じゃないか。犯罪者でも護送中か?」
「幼女趣味の変態なら乗っているかもね」
「おー怖い。所でソイツは誰の話だ?」
「私の口からは恐ろしくて言えないわ」
運転席とは仕切りで区切られ、妙な防音の仕様が施されている。眺めのいいはずの景色は、前方からは望めなさそうだ。なんでこんな車があるのかね。全く。
「話を聞こうじゃない、アスト」
俺の隣に座る、妙に気の強い女の威圧的な声が響いた。まるで、尋問でも始めるかのような空気に、唯一外を感じられるドアの窓へと視線を逃がす。どうやら窓は開かないらしい。
燃えるような熱意を持ったレディと密室2人きり。最高に滾るシチュエーションだ。
最も——
「なのはは一体……何をしているのかしら」
——相手がこの
アリサさんの自己主張が作者激しくて困惑しています。