(前に投稿してた奴を少し作り直して再投稿です。なのでストーリーが若干違うかもしれません)
…私は昔から恵まれてなかった
家庭も…学校も……
私の名前は郡千景、高知出身だけどすぐに関東に家の都合で引っ越してるから物心が着いた頃には関東の人間として馴染んでたわね
周りからは寡黙で内向的な性格って言われてたけど、母親が不倫等をしてたってこともあっていじめの対象に、毎日毎日嫌ってほど妬まれ、虐められてた。
でもある日そんな私に救いの手を差し伸べてくれた子がいた……結城友奈さんだった
『こらー!その娘をイジメないで!嫌がってるでしょ!!』
彼女は私の複雑な家庭事情を聞いても気にする素振りもなく、むしろ私は悪くないと言って寄り添ってくれた。
対照的に明るくて活発、だからよく振り回されたりしてたけど…なんでか嫌って感情はなかった……むしろこんな楽しい思いは初めてだったかも…
結城さんと知り合ってからはいじめられることも一気に減って、彼女の友達とも知り合って遊ぶようになってからは楽しい日々が続いてた。
そんなある日彼女の提案で、結城さんの母親とドライブに出かけることになったんだけど…その時に乗ったのが白黒のパンダカラー AE86だった。
元々結城さんの母親は物凄く活躍してたモータースポーツのドライバーだったみたいで、彼女もその関係で車が小さい頃から大好きだったみたい。
私は全然興味なかったんだけど、あの娘が熱心に語りかけてくるから気づいたら車の知識が詳しくなったの(汗)
でもそんな日々を過ごすのが一番楽しかった、家族と居るよりも……
けど…そんな日々は長くは続かなかった
小学校卒業と共に横浜へ引っ越したんだけど、それから一ヶ月後にがお父さん自宅に放火しお母さんと心中。原因は不倫が決め手とは言われてたけど、本当の原因は分からずじまい。
普通に考えれば親を亡くした私は哀れまれるはず…なんだけど、むしろそれによって下火になっていたいじめ問題が再発。
むしろ小学時代より自由度が聞く中学時代も相まって酷い状態に発展…、気付けばもう1人の自分が囁きかける等の幻覚や幻聴が現れたり被害妄想が酷くなって、言わば統合失調症のような状態に陥り精神を病んでいったの。
でも助けてくれる人は誰もいない…そんな状況でどんどん追い込まれていって…、その結果中2の時に虐めを行っていた生徒に対し暴行をしてしまった。
教育委員会や警察はいじめを黙認していた学校側に問題があった事ということで、私の虐めに対す暴行は正当防衛として認められて、罪に問われることはなかった。
けどそれによって学校での孤立が加速
中学卒業後は進学せず両親の遺産を売却し作った金と保険金を持って誰も管理していない廃工場でひっそりと暮らすことにしたの。
お金以外何もかも失った…、そんな私だったけど1つだけ失わずに済んだものがあったの。
それはお父さんが乗っていたカスタムツートン(ダークルビーレッドパール/ブリリアントブラック)のマツダRX-7 FD3Sって呼ばれるスポーツカー。
一軒家が全焼した際に一緒に外装が燃えて、お父さんが持ってた車ってことで最初は鉄くずとして処理するつもりだったんだけど…
ふとエンジンルームを開けた時に奇跡的に生きていたエンジンをみて何処となくシンパシーを感じたの
「この子(FD)も私と同じ」そう思った私は独学でこのFDを走れる状態にするためにオーバーホールを中学卒業後に始めることに。
当然誰の手も借りない状態での作業だったから色々と大変だったけど、オーバーホール&チューンを進め作業開始から9ヵ月後に完成。
その後は1人で走れる時間を見つけてはトライアンドエラーを繰り返しながら、気付けば深夜の峠を走るようになったの。
この時間だけは誰にも邪魔されない、自分のありのままの姿が出せる…そんな思いで1人夜の峠を毎日走っていた。
今日も…私はいつものように1人を求めて暗闇の峠へと走っていく…
椿ライン。それは神奈川県ある県道75号湯河原箱根仙石原線が正式名称であり、神奈川県の湯河原と箱根を結ぶ全線2車線の峠道、椿の花が多く植栽されていることでも知られている。
2月から4月にかけてツバキが見頃となる観光道路としても有名であり、その時期には非常に多くの観光客で賑わいを見せることも…
それ以外にも日中はそれなりの車が行き交う場所としても知られるが、そんな峠道も真夜中ということもあって街灯や月明かり以外は辺り一帯暗闇に包まれていた。
そんな誰一人、一台いない静まり返った峠道に児玉するようにエキゾーストサウンドが響き渡っていく。
ゴァァァァァ!!
するととあるコーナーの奥からヘッドライトの光が現れたと思ったら、影から飛び出すようにそのライトの主でもある赤色のNSXが勢いよく飛び出してきた。
リアのデカいウィングが特徴的な本車は、心臓部であるVTECエンジン(C30A型 V6 3.0 L DOHC ベルト駆動 )を唸らせ、280 馬力のエンジンを咆哮しながらストレートを爆速。
コーナーが差し掛かるとフルブレーキングでテールランプを光らせながら減速すると、それでも勢いを落としてないと錯覚させながら飛び込むように突っ込んだ。
ギャァァァ!!
ウォンウォン!!
そんなNSXのステアリングを握る北条豪は、リアタイヤの状態を探りながらも慣れた手つきでステアリングを操りながら、時折迫るコーナーに対してはヒールアンドトゥで減速をしながら鋭いコーナリングを発揮していく。
「……」
ゴァァァァァ
神奈川三大勢力とも言われるサイドワインダーでヒルクライムを担当し、かつては兄の北条凛と共に「富士の北条兄弟」と呼ばれ、富士スピードウェイの走行会では名の知れた存在とされていた。
クールで理論派の凛に対し、己の感性と集中力の高さで勝負する天才肌のドライバーという何処となく高橋兄弟と似た境遇の持ち主と言ってもいいだろう。
今でこそ兄の凛とは訳あって絶縁状態だが、それでもその高い実力は健在であり、椿ラインなどのホームコースではそのへんの走り屋を近づけない高いドライビングスキルを発揮していた。
そんなことを話している間にもヒルクライムを愛車であるNSXで攻めていた豪だったが、ふと腕時計に目をやるともうこんな時間か…とそんなことを呟く。
ギャァァァ
「…もうこんな時間か」
既に時刻は日付が変わる少し前の時間であり、思ってたよりもかなり走り込んでいたらしい。タイヤやガソリンもかなり使ったため、そろそろ切り上げて帰るか…そう思いながらエンジンのクールダウンのためにペースダウンをした豪だったが…
ー思ってたよりもかなり夢中で走り込んでたな…、そろそろきり上げるか…、ガソリンもそうだがタイヤも少しタレ気味だしな…ー
ふと背後から光が差し込んできたため、バックミラーに視線を向けると先ほどまでいなかったはずの車がヘッドライトの光でこちらを照らしながら姿を現した。
いつの間に…そんなことを思っている間にも、その姿を現した車はVTECエンジンにも負けないエキゾーストサウンドを響かせながら一気に開いていた距離を詰めていく。
ギャァァァ!!
ーん…?(チラッ)いつの間に…、さっきまではいなかったはず……ー
そもそもこんな車…いやこの時間帯はそこまで同業者は走っていないため追い抜いてはいないし、すれ違ってもない。おまけにペースダウンをしたのはついさっき、それまでは八割のペースで走っていたため、普通に考えれば並の走り屋はまず追いつけないはず。
…ということはこの車は自分の走っていたペースよりも更に速いスピードで椿ラインのダウンヒルを駆け巡っていたということであり、この時点で普通ではないことは彼も察していた。
ー…そもそも今日は追い抜いていないどころかすれ違ってすらない…、それにペースダウンしたのはついさっき…。…ってことはコイツは俺よりも速いスピードでこのダウンヒルを走ってたってことか…?ー
しかしその間にもあれだけ開いていた車間を一気に詰めた後続車は、まるでペースダウンした豪のNSXに対して遅いと言わんばかりのオーラで煽り倒すように張り付いていた。
だがそのお陰でぱっと見だが車の特徴を把握することが可能となり、豪はヘッドライトの形からして相手がリトラクタブルタイプであることに気づく。
ー……ったく、まるで遅いからどけって言わんばかりのオーラだ…。だがお陰でざっとだが相手はリトラクタブルのヘッドライトってことは割れそうだな…ー
それと同時に自身の操るNSXの自慢の心臓部ともいえるVTECサウンドに負けず、ピストンエンジンにはない独特な高音域の滑らかなサウンドが耳に飛び込むと、ロータリー系のエンジンを搭載した車だということも分かった。
ー…それに俺のNSXのVTECサウンドに負けないこのピストンエンジンにはない独特な高音域の滑らかなサウンド…恐らくだが相手はロータリーエンジンを載せた車…ー
もちろん峠の走り屋が好む上にロータリーエンジンを載せた市販車となればかなり限られるもので、豪は相手はマツダのRX-7のFD3SかFC3Sのどちらかであると踏んだらしい。
ー…それに峠の走り屋が好むとなれば…、かなり絞られるぜ…。恐らく後ろの奴はFDかFCのどっちか…それしか考えられない…ー
一体誰なのかはわからないがあまり見かけないタイプの車なので余所者なのはほぼ間違いないなく、もちろんそうなれば地元の走り屋が負けるなど絶対にあってはならないことなのは確か。
当然譲る気もない豪はシフトアップしてギアを3速に叩き込むと、アクセルを一気に踏み込み、NSXの心臓部でもあるVTECサウンドを咆哮させながら一気に加速。
後続を振り切らんと言わんばかりにペースを上げながら、暗闇に包まれた椿ラインのダウンヒルを疾走していく。
ー誰なのかはわからないが…、少なくとも地元の奴じゃねぇ…。なら譲る選択肢はあり得ないだろ…!直ぐにバックミラーから消してやるぜ!ー
ゴクン!!
ゴァァァァァ!!
もちろん後ろの車も負けじまいとロータリーサウンドを咆哮させながら、ワンテンポ遅れる形で加速しつつ振り切ろうとするNSXに追いすがるように暗闇のダウンヒルへとこちらも突入する。
その間にも先にコーナーに差し掛かった豪はヒールアンドトゥで3速から2速へギアを叩き込みながら、フルブレーキングをしつつステアリングを切り込む。
リアのタイヤを鳴らしながらも若干の滑らせ気味のグリップで無難に立ち上がると、まるでロケットエンジンが積んでいるかのような瞬発力で加速さるように立ち上がった。
ーっ…!!ー
ゴクン
ウォンウォン
ギャァァァ
流石は神奈川の三代勢力とも言われるサイドワインダーでヒルクライム担当をやっていることだけはあるといえる実力であり、普通に考えれば並の…いや余所者であろう後続車は確実に追いつくことは出来ない。
コーナー2つ、もしくはどんなに踏ん張っても3つでバックミラーから消えるだろう…そう踏んでいた豪であったが…
ー相手が誰が知らないが…、喧嘩売った運が悪かったな…!サイドワインダーのヒルクライム担当を舐めるんじゃねぇぞ…!コーナー2つ抜けりゃバックミラーから…ー
…がその目論見はバックミラーに映っている光景を目撃したことであっさりと崩れ去ってしまう。なんとそこには振り切る予定であったはずの後続車がまるで何事もなかったかのように、先ほどと同じように張り付いていたのだ。
流石にこれは想定外だったようで、豪はあり得ないと言わんばかりの表情でいつになく冷や汗を流しながら焦りの雰囲気を顕にしていく。
ー…なっ!?バカな…!振り切れてないだと……!!?冗談じゃねーだろ…!あり得ない…!!ー
ゴァァァァァ
だがそんな混乱なぞ知るかと言わんばかりにとある右のRのキツイコーナーに差し掛かった途端、後ろに張り付いていた後続車はラインを変更しつつ、開いていたアウト側からねじ込む。
もちろん豪もそれには気づいていたが、その時点ではラインを塞ぐことは不可能であるため、もはや後の祭りと言わざる終えないだろう。
ギャァァァ!!
クイッ
ーなっ!?ここでアウトからだと…!!クソっ!そこにいられちゃラインは塞げない…っ!!ー
だがすんなりと譲るはずもなく豪は負けじまいと2台並走した状態で右コーナーへと侵入。
ラインが通常よりも制約されているため思うような飛び込みはできていないが、それでも限られたラインで鋭い突っ込みでコーナーを通過していく。
ークソっ!ラインが制約されて…!!だがここで引き下がれるってんだよ…!!NSXのコーナリングを舐めるんじゃねぇ…!!ー
ギャァァァ!!
ゴフッ!!
同時に相手の車を確認しようと視線を左に向けた豪だったが、視線に映り込んだカスタムツートン(ダークルビーレッドパール/ブリリアントブラック)の流麗なデザインにリトラクタブルのヘッドライトを目の当たりにした瞬間、ハッとした表情を浮かべた。
ー……っ…!そういや並んだってことは相手の車種が割れるよな…!一体どんな奴が……なっ…!?あの流線型のボディはまさか…!ー
マツダRX-7 FD3S。ロータリーエンジンを量産し続けたマツダの技術の結晶とも言えるピュアスポーツカーであり、その美しい流線型のデザインと高い運動性能から走り屋達の間では人気の高い車種とも言える。
1308ccの水冷2ローター・シーケンシャルツインターボ「13B-REW」は小型・軽量で高回転までスムーズに回る特性を持ち、重量バランスに優れたFRでもある本車は、ダイレクトな操作感と、鋭いハンドリング性能を実現していた。
もちろんメリットばかりではなくロータリーエンジンはピーキーな特性上メンテナンスはかなり費用がかかり、燃費も無視出来ないほど。
なので誰でも乗ることが出来ないため、本車に乗っている走り屋は金銭面に余裕があることがほとんど…。
もちろんこの走り屋の聖地とも言える神奈川エリアも例外ではなく、FDに乗っているドライバーはかなり限られる上にテクニックもそれなりにあるため、豪クラスの走り屋ならすぐに判別出来るのだが…
…どうやらこのFDは表情から察するに初めて見るようで、同時に只者ではないオーラを感じ取っているようだ。
ーなっ…FDだと…!?何者だこいつ…!ここいらじゃ知らない走り屋d…いやまて…なんだこのオーラは…?ー
ギャァァァ
しかしその間にも横に並んだFDは圧倒的なコーナリングスピードでタイヤなどがヘタれて苦しいNSXを呆気なくオーバーテイクすると、まるで生き急いでいるかのようなスピードで次のコーナーへと飛び込む。
それに遅れる形で豪のNSXもコーナーに飛び込んで立ち上がったものの、その頃にはFDの姿はまるで神隠しに遭ったかのように何処にもなく、ただ暗闇にロータリーサウンドが響き渡るだけであった。
ギャァァァ
ゴァァァァァ!!
「…っ!」
ー速い…!?……っ振り切られたか……、この俺が呆気なく……まるで神隠しにあったみたいだ…ー
それから少し経った頃、椿ラインの麓近くにある箱根海賊船箱根港バス駐車場に見慣れた赤色のウィングをつけたNSXが止まっており、近くには愛車に寄りかかる豪の姿が。
何やら真剣な表情で考えているようだが、もちろんその理由は自分を呆気なくぶっちぎったあのカスタムツートンのFDだ。
ー…にしても何者だ…あのFD、この俺が椿ラインで呆気なく……ー
だが今まで見たことがないカラーのFDなので最初こそ余所者かと思ったもののラインをしっかり把握していることから、それはあり得ないという結論に至る。
しかしそれと同時に彼はあのFDの走りに引っ掛かる事があるようで、なんとも言えないような表情を浮かべながら空を見上げていく。
ー…余所者?…いやあの走りはこの峠を熟知した奴の走り方……だがあんな奴俺の知る限り…、…だがそれよりも…ー
確かにかなりのスキルをあのFDのドライバーは持っていることには間違いない、なんせ神奈川エリアの三大勢力として知られるサイドワインダーの1人である自分を呆気なく千切ったのだ。
が同時にその走らせ方はかなり無謀な物のようにも感じたようで、まるで誰にも会わないようにする為に上りも下りも飛ばしているようにも感じたらしい。
ー…確かにあのFDは物凄い奴だ…、だが俺から言わせてみればあの走り方は無謀と言ってもいい…。まるで誰にも会いたくないような…ー
まるで“アイツ”と同じ位の死にたがりだな…そんなことを呟きながら、まだ星空の残る暗闇の夜空を見上げていくのであった。
「――まるで“アイツ”と同じ位の死にたがり…だな」