冴えない中年平社員、見た技と異能をコピーして企業代理戦で成り上がる 作:パラレル・ゲーマー
榊原陣・設定データ
基本プロフィール
氏名:榊原陣(さかきばら・じん)
年齢:三十三歳
身長:百八十センチ
体重:八十二キロ
職業:総合格闘技ジム所属・トレーナー兼現役選手
所属:ネクサス・マッチング登録ファイター
能力者コードネーム:《返し屋》
登録評価:Tier4上位相当
能力者分類:修練型因果律改変者
保有能力:《身体能力強化》《無拍子》《蓄撃》
競技歴:総合格闘技十二年
戦闘類型:圧力型ストライカー・カウンターファイター
得意領域:能力者MMA、金網際の攻防、打撃へのカウンター、対人戦
物腰は穏やかで、人当たりもいい。
試合前にも対戦相手へ礼儀正しく接し、安易な挑発や威圧を行わない。
一方で、自分が長い修練の末に完成させた戦闘スタイルには、絶対的な自信を持っている。
相手の強力な打撃を見ても恐れず、
「ぜひ一発、受けてみたい」
と純粋に考えるのは、相手を侮っているからではない。
その打撃を受け、その威力を理解し、自分の《蓄撃》によってさらに強い反撃へ変えられるという、自身の技術と能力への確信によるもの。
敗北した際には言い訳をせず、自分がどのように誘導され、どの判断を利用されたかまで冷静に認めるスポーツマン気質の人物である。
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修練型因果律改変者
榊原は、生まれつき複数の異能を持っていたわけではない。
長年にわたって総合格闘技を学び、
打撃を当てる。
相手の攻撃を防ぐ。
タックルを切る。
金網際で体勢を入れ替える。
攻撃を受けた直後に反撃する。
といったMMAの基本動作を、何万回と反復してきた。
その過程で、
> もっと速く、正確に身体を動かしたい。
> 攻撃の開始を相手に悟られたくない。
> 相手の攻撃を受けても、より強い一撃を返したい。
という本人の強烈な目的意識と反復行動が、少しずつ現実の因果律へ干渉し始めた。
最初に発現したのは《身体能力強化》。
続いて、攻撃動作の初動を認識させない《無拍子》。
最後に、受けた衝撃を自分の反撃へ利用する《蓄撃》が発現した。
八咫烏では、榊原のように長年の修練と特定の技術体系への執着によって能力が段階的に形成された者を、
> 修練型因果律改変者
と分類している。
榊原は、その中でも非常に典型的な例である。
能力が先に存在し、その能力に合う戦い方を後から学んだのではない。
先にMMAという完成された技術体系があり、その技術を強化するための能力が、必要に応じて後から生えてきたタイプ。
そのため、三つの能力はそれぞれ独立しているように見えて、実際には榊原のMMAを成立させるための一つのシステムとして機能している。
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能力一
《身体能力強化》Tier4
基本情報
本人使用名称:《身体能力強化》
八咫烏登録名称:《身体能力強化》
評価:Tier4
形式:全身強化型・修練連動型
榊原の、
筋力
速度
反応速度
瞬発力
耐久力
姿勢制御
平衡感覚
を総合的に強化する。
単純に腕力や脚力だけを上げ、力任せに相手を殴るための能力ではない。
榊原は《身体能力強化》を、長年かけて身につけたMMAの技術を、より高い精度と出力で実行するために使用している。
ジャブの戻し。
ローキック後の姿勢回復。
タックルへのスプロール。
金網際での踏ん張り。
組み手の差し合い。
打撃を受ける瞬間の筋肉の緊張。
カウンターを返すための踏み込み。
こうした一つ一つの格闘動作が、《身体能力強化》によって底上げされる。
榊原は身体能力だけで戦っているのではない。
元々高いMMA技術を持つ人間が、その技術を強化された肉体で実行している。
そのため、同じTier4の《身体能力強化》を持つだけの未経験者とは、実戦能力に大きな差が生まれる。
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能力二
《無拍子》Tier4
基本情報
本人使用名称:《無拍子》
八咫烏登録分類:認識阻害・幻惑系因果律改変
評価:Tier4
形式:単一対象・単一動作認識阻害型
自分が行う攻撃動作から、相手が初動を判断するために必要な予備動作だけを、一瞬だけ認識できなくする能力。
対象となるのは、
肩の動き
腰の回転
呼吸の変化
重心移動
足裏の踏み込み
筋肉の緊張
視線の移動
など。
攻撃そのものを透明にする能力ではない。
榊原の姿が消えるわけでも、拳や蹴りの軌道が見えなくなるわけでもない。
また、榊原自身の動作速度が上昇する能力でもない。
相手の視界には、榊原の拳も脚も通常どおり映っている。
しかし、その動作が、
「攻撃の開始である」
と脳内で意味のある情報へ変換されるまでの認識が、一瞬だけ遅れる。
結果として、相手は攻撃が見えているにもかかわらず、防御や回避の開始が間に合わなくなる。
無拍子のルール
一度に隠せるのは、一つの動作の初動だけ。
右ストレートへ使用した場合、その直後に続ける左フックやローキックまで自動的に隠れるわけではない。
複数の攻撃へ連続使用することは可能だが、短時間に繰り返すほど集中力を消耗し、認識阻害の精度が低下する。
小さく無駄のない動作ほど、高い効果を発揮する。
ジャブ、ローキック、短い右ストレート、タックルの踏み込みなどとは非常に相性がいい。
反対に、大きく振りかぶる打撃や、身体全体を長時間動かす大技は、予備動作の全てを完全には隠せない。
組み技の最中は効果が低下する。
相手と身体が接触している場合、視覚的な予備動作を隠しても、
腕にかかる圧力
重心の変化
筋肉の緊張
足の位置
といった触覚情報から、次の行動を推測されやすいためである。
複数人を同時に相手にする状況でも、正しく機能しにくい。
基本的に、一回の発動で強く阻害できるのは一人の認識だけ。
一人の初動認識を遅らせても、別方向から見ている相手には通常どおり動作を観測される。
複数人へ同時に使用しようとすれば、一人あたりの阻害精度が大幅に低下する。
Tier4の認識阻害能力であるため、万能ではない。
格上の因果律改変者。
高度な予知能力者。
自動防御能力の使用者。
視覚以外の感覚で戦う能力者。
広範囲を常時把握する知覚系能力者。
認識阻害へ耐性を持つ精神系能力者。
などには、十分な効果を発揮できない可能性が高い。
戦闘での運用
榊原のジャブ、ローキック、右ストレート、タックルは、通常の格闘家が攻撃の起点として見る、
肩
腰
重心
踏み込み
の変化がほとんど認識できない。
さらに榊原自身が《身体能力強化》を使用しているため、相手が攻撃を認識した時点では、すでに拳や脚が目前へ迫っている。
佐伯直人は、それまで、
> 技が出る前の起こりを見る。
ことで、格闘経験の不足を補ってきた。
《無拍子》は、その起こり自体を認識させない。
そのため、直人の観察型戦法へ真正面から突き刺さる、極めて相性の悪い能力だった。
ただし、《無拍子》が消すのは、あくまで動作の開始を判断するための情報だけ。
相手が攻撃を見てから反応するのではなく、
> 次に来る攻撃を事前に予測し、先に防御動作を始める。
ことで対応することは可能。
直人は榊原へ右ストレートを選ばせ、拳が動く前からガードを戻しておくことで、《無拍子》を攻略した。
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能力三
《蓄撃》Tier4
基本情報
本人使用名称:《蓄撃》
八咫烏登録分類:エネルギー保存系・補助防御型因果律改変
評価:Tier4
形式:運動エネルギー一時保存・再付与型
外部から受けた運動エネルギーの一部を、榊原の体内へ一時的に保存する能力。
主に、
拳
蹴り
膝蹴り
肘打ち
武器による打撃
身体同士の衝突
などの衝撃を受けた時に発動する。
受けた打撃の運動エネルギーのうち、およそ二割から三割程度を保存できる。
残りの衝撃は通常どおり榊原の肉体へ届くため、ダメージを完全に無効化する能力ではない。
強すぎる攻撃を無防備に受ければ、蓄積する前に骨折や内臓損傷を起こす可能性もある。
榊原は《身体能力強化》によって耐久力と姿勢制御を高め、ガードや受け身によって本来のダメージを軽減した上で、《蓄撃》へ衝撃の一部を保存している。
蓄撃のルール
保存できるエネルギー量には上限がある。
上限を超える衝撃を受けても、それ以上は保存できない。
保存できなかった分は、そのままダメージとして肉体へ通る。
蓄積したエネルギーは、榊原が放出を選択した次の有効な攻撃動作へ上乗せされる。
現在の榊原は、右ストレート、左フック、ローキック、膝蹴りなどの打撃へ放出する運用を最も得意としている。
厳密には、打撃専用の能力ではない。
本質は、
> 受けた運動エネルギーを一時的に保存し、自分の一回の運動へ再付与する。
という因果律改変である。
そのため理論上は、
タックル
突進
投げ技
押し込み
跳躍
武器を振る動作
などへ蓄積分を上乗せすることも可能。
ただし、榊原は長年打撃への放出を中心に修練してきたため、打撃以外へ使用した場合は変換効率と制御精度が低下する。
十秒前後、新しい衝撃を受けず、放出も行わなかった場合、保存されたエネルギーは少しずつ減衰を始める。
長時間持ち越したり、試合前に大量のエネルギーを蓄えておくことはできない。
一度放出した直後には、ごく短い再使用不能時間が発生する。
その数秒間は、新しい打撃を受けてもエネルギーを保存できない。
佐伯直人は、この放出直後の空白へ二発目の前蹴りを叩き込むことで、《蓄撃》による吸収を封じた。
蓄積効率の低い攻撃
組みつきによって継続的に加えられる圧力。
絞め技。
関節技。
ゆっくりと押し込む力。
体重を乗せ続ける抑え込み。
などは、瞬間的な運動エネルギーではないため、ほとんど保存できない。
転倒の衝撃や、自分から床や壁を殴ってエネルギーを作る行為も、保存効率が低い。
《蓄撃》は外部から自分へ向かって加えられた衝撃に対して最も高い効率を発揮する。
戦闘での運用
榊原は、相手の打撃をあえてガードの上から受ける。
受けた衝撃の一部を《蓄撃》へ保存。
直後に、自身の《身体能力強化》による打撃力と、保存した運動エネルギーを重ねたカウンターを返す。
相手から見れば、
> 自分が強く攻撃するほど、次に返ってくる反撃が強くなる。
という状況になる。
その心理的圧力によって、相手は全力で攻撃することをためらい、手数を減らしてしまう。
榊原は、手を出せなくなった相手へ《無拍子》を使った打撃を当て、一方的に削っていく。
《蓄撃》は名称だけを見れば攻撃能力に思えるが、本質的には補助防御型能力である。
相手の攻撃を完全に無効化するわけではないものの、受けた衝撃の一部を別の形へ逃がし、同時に自分の反撃資源へ変換している。
エネルギー保存量に上限があるとはいえ、
防御
攻撃力増加
カウンター強化
相手への心理的圧力
を一つの能力で成立させる、Tier4としては攻守に優れた能力である。
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三能力を統合した戦闘スタイル
榊原の戦闘スタイルは、三つの能力を単純に順番に使用するものではない。
《身体能力強化》によって、MMAの技術と肉体性能を底上げする。
《蓄撃》によって、相手の強い打撃を受けること自体を反撃準備へ変える。
《無拍子》によって、蓄積した力を乗せたカウンターの開始を認識させない。
この三段構造によって成立している。
相手が攻撃する。
榊原がガードで受ける。
衝撃の一部を《蓄撃》へ保存する。
相手は強い反撃を恐れて防御へ回る。
榊原が《無拍子》を使い、認識しづらいカウンターを返す。
蓄積した力と身体能力強化が重なった打撃が、反応の遅れた相手へ直撃する。
攻撃すれば、より強い攻撃が返ってくる。
攻撃しなければ、《無拍子》による見えない初動の打撃で削られる。
組み技へ逃げても、榊原は長年MMAを学んでおり、タックル防御や金網際の攻防にも優れている。
能力だけではなく、高い格闘技術が三能力の隙間を埋めていることが、榊原の最大の強みである。
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能力の弱点
《無拍子》と《蓄撃》は、どちらも強力だが万能ではない。
榊原の主な弱点は、
複数人との同時戦闘。
遠距離からの広範囲攻撃。
継続的な拘束。
絞め技や関節技。
認識に頼らない自動防御。
攻撃を事前に確定させた予測行動。
蓄撃の保存上限を超える一撃。
蓄撃放出直後の再使用不能時間。
無拍子の連続使用による精度低下。
である。
特に、榊原の戦闘スタイルは、
> 相手が打撃を使って正面から戦う。
ことを前提として最適化されている。
多数の使役体。
罠。
毒。
遠隔攻撃。
地形破壊。
広範囲の環境操作。
などを使用する相手とは、相性が悪い。
能力者MMAのような、一対一の近接戦闘では極めて強い。
反対に、何が起こるか分からない異界探索や集団戦では、Tier4上位の評価ほど安定した戦果を出せるとは限らない。
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Tier4複数能力持ちについて
能力者業界において、Tier4能力を複数持っていること自体は、それほど珍しくない。
一つの武術。
一つの職業。
一つの作業。
一つの目的。
を長期間繰り返している因果律改変者には、その行動を補助する新しい能力が、修練の延長として追加発現する場合がある。
榊原の、
《身体能力強化》
《無拍子》
《蓄撃》
も、その典型例である。
ただし、
> 複数の能力を持っていること。
と、
> 複数の能力を同時に正確に制御できること。
は別の問題。
Tier4能力者が戦闘中に安定して並列使用できる能力は、多くても三つ程度。
三能力を同時に扱う場合、
出力低下。
発動タイミングのズレ。
対象指定の誤り。
集中力の急激な消耗。
一方の能力による、もう一方の能力への干渉。
などが起こりやすい。
榊原は、
《身体能力強化》を常時維持しながら、
必要な瞬間だけ《無拍子》を使用し、
《蓄撃》の保存と放出を管理する、
という形で負荷を分散している。
三つの能力を持つこと自体は珍しくない。
しかし、それらをMMAの一連の動作へ組み込み、高い精度で実戦運用できる点は、榊原本人の長年の修練によるもの。
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佐伯直人との違い
外部から見れば、佐伯直人も榊原と同じ、
> 複数のTier4能力を使い分ける修練型能力者
に見える可能性がある。
しかし、実態は大きく異なる。
榊原の三能力は、すべて本人のMMA修練から派生した近い系統の能力である。
互いに用途が明確で、戦闘スタイルの中で使用する順番も固定されている。
対して直人は、
身体強化。
視覚強化。
認識阻害。
運動エネルギー保存。
質量操作。
収納能力。
複数系統の格闘技能。
など、本来なら互いに関連しない能力と技能を、その場で組み替えて使用する。
さらに榊原戦の決着では、
《身体能力強化》
《動体視の魔眼》
《蓄撃》
《無拍子》
《身体能力強化特化前蹴り》
を、わずかな時間の中で連続して重ね合わせている。
通常のTier4能力者であれば、三つ程度の能力を同時に扱うだけでも、精度や出力へ大きな負荷がかかる。
直人は、異なる術者、異なる系統、異なる発現原理を持つ能力を、目立った相互干渉もなく並列運用している。
複数能力を持つことは、能力者業界では珍しくない。
だが、
> 本来つながりのない多数の異能を、必要な順番で瞬時に組み合わせられる。
という直人の運用能力は、明確な例外である。
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佐伯直人との相性
榊原は、直人の観察型戦法へ真正面から刺さる対戦相手だった。
直人は、それまで相手の、
呼吸。
肩。
腰。
重心。
視線。
能力発動の起点。
を観察し、次の行動を判断していた。
《無拍子》は、その判断材料を消す。
《蓄撃》は、観察のために軽い攻撃を重ねる直人へ、攻撃すること自体のリスクを与える。
さらに純粋なMMA技術でも榊原が上回っていたため、直人が能力をコピーできたとしても、単純な技術勝負では勝てない相手だった。
直人が勝利できたのは、榊原の能力を上回る出力を手に入れたからではない。
榊原が最も得意とする、
> 攻撃を受け、《蓄撃》し、《無拍子》の右ストレートを返す。
という完成された型を、あえて何度も成功させた。
その成功体験によって、最後にも同じ行動を選ばせた。
榊原の必殺技を崩すのではなく、榊原自身に必殺技を使わせ、その直後の空白へ自分の必殺技を叩き込んだ。
この戦いは、直人がコピーした能力の数ではなく、
> 相手へ何を選ばせるか。
という戦術によって勝利した試合である。
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総合評価
榊原陣は、Tier4上位相当の近接戦闘特化型能力者。
保有する三能力はいずれも単独では決定的な万能能力ではない。
しかし、長年のMMA修練によって、
《身体能力強化》による基礎性能。
《蓄撃》による攻防一体の圧力。
《無拍子》によるカウンターの命中補助。
を一つの完成された戦闘システムへ統合している。
能力者MMAや、一対一の徒手格闘では極めて強力。
一方で、多人数戦、遠距離戦、広範囲攻撃、継続拘束、認識に依存しない能力には弱点を抱える。
能力そのものの珍しさではなく、
> 複数のTier4能力を、長年鍛えた一つの格闘体系へ完全に組み込んでいる。
ことが、榊原陣というファイターの本当の強さである。