冴えない中年平社員、見た技と異能をコピーして企業代理戦で成り上がる 作:パラレル・ゲーマー
青柳迅・設定データ
基本プロフィール
氏名:青柳迅(あおやぎ・じん)
年齢:二十九歳
身長:百七十六センチ
体重:七十二キロ
能力者コードネーム:《浮芯》
能力者分類:修練型因果律改変者
登録評価:Tier4上位相当
保有能力:《身体能力強化》《重心転写》
格闘経歴:体操、パルクール、キックボクシング
戦闘類型:変則機動型ストライカー
得意領域:立体機動、回避、姿勢制御、軌道変化、リング環境の利用
青柳迅は、体操とパルクールによって高度な姿勢制御能力を身につけた後、キックボクシングを学んだ修練者である。
相手と正面から打ち合うよりも、通常では成立しない姿勢、角度、移動軌道を利用して攻撃をかわし、死角から反撃することを得意とする。
能力が先にあり、それに合わせて戦い方を作った能力者ではない。
長年にわたって、
より速く身体を切り返す。
空中でも姿勢を制御する。
不安定な体勢からでも転倒しない。
通常では届かない角度へ身体を運ぶ。
という修練を続けた結果、その目的へ沿う形で《身体能力強化》と《重心転写》が発現した。
能力と格闘技術の境界が曖昧な、典型的な修練型因果律改変者である。
◆
能力一
《身体能力強化》Tier4
青柳の筋力、瞬発力、反応速度、柔軟性、平衡感覚、関節の制御能力を総合的に強化する。
青柳の場合、単純な筋力や打撃力よりも、
瞬間的な加速。
姿勢の切り替え。
跳躍後の身体制御。
不安定な体勢からの復帰。
着地時の衝撃吸収。
関節可動域の拡大。
などへ出力が重点的に振り分けられている。
同じ《身体能力強化》でも、真壁剛志のような重量級修練者とは運用方向が大きく異なる。
青柳は強化された身体能力を利用して力任せに相手を倒すのではなく、《重心転写》によって作り出した異常な姿勢と移動を、肉体的に成立させるために使っている。
《重心転写》だけを使用しても、通常の人体では急激な姿勢変化や軌道修正へ耐えられない。
青柳の戦闘スタイルは、《身体能力強化》による肉体制御を土台として初めて成立する。
◆
能力二
《重心転写》Tier4
本人使用名称:《重心転写》
正式分類:疑似質量付与型・姿勢制御系因果律改変能力
評価:Tier4
名称上は、自分の肉体の重心位置を任意の場所へ移動させる能力とされている。
しかし、実際に青柳の重心そのものが肉体の外へ移動しているわけではない。
本質は、青柳が指定した空間上の一点へ、一時的な疑似質量を付与する能力である。
因果律へ干渉し、
> 青柳迅の身体には、その位置に重心が存在している。
と現実側へ誤認させる。
現実は、その誤った前提へ合わせるため、青柳の姿勢、落下方向、加速方向、回転軸を強引に補正する。
青柳本人や周囲の観測者からは、肉体の重心が本来あり得ない位置へ移動したように見える。
実際には、
疑似質量の付与。
肉体との因果的な接続。
姿勢と運動方向の強制補正。
という複数の処理によって、重心移動に似た現象を再現している。
《ライブラリ》も、観測した現象を直人が理解しやすい形へ整理し、《重心転写》として登録した。
◆
重心転写のルール
操作できるのは、自分の身体へ接続された疑似重心だけ。
他人の重心を直接動かすことはできない。
疑似重心を設定できる範囲は、肉体から最大五十センチ前後。
一度に設定できる疑似重心は一つだけ。
一回の転写時間は、一秒前後。
疑似重心を維持している間、肉体はその位置を基準として姿勢や運動方向を補正される。
地上だけでなく、空中でも使用可能。
疑似重心を前方へ置けば、予備動作の少ない急加速が可能。
後方へ置けば、蹴りや突進後の反動を打ち消しやすくなる。
左右へ置けば、転倒寸前の姿勢を維持したり、通常では不可能な角度へ身体を倒したりできる。
空中へ置けば、跳躍や落下の軌道を途中で変更できる。
ただし、疑似質量は実際の肉体重量を増加させるものではない。
打撃そのものの質量が増えるわけではなく、加速方向と身体の押し込み方が変わるだけである。
連続使用すると、視覚、三半規管、筋肉から得られる身体感覚と、能力によって補正された運動方向が一致しなくなる。
その結果、
眩暈。
吐き気。
視点の揺れ。
距離感覚の混乱。
足運びの遅れ。
などが発生する。
また、疑似重心をどこへ置いても、実際に地面と接触して身体を支えている軸足や接地点まで消えるわけではない。
能力の仕組みを理解した相手には、その接地点を狙われる可能性がある。
◆
格闘スタイル
青柳は、相手の攻撃を硬いガードで受け止めるタイプではない。
相手の攻撃が届く直前に自分の身体を大きく傾け、打撃軌道から外す。
通常なら転倒する角度でも、疑似重心を軸足上へ残すことで姿勢を維持する。
拳や腕の下を、地面と平行に近い姿勢で潜り抜ける。
蹴りの途中で疑似重心を移動させ、引き戻しの速度や蹴りの角度を変える。
空中で疑似重心を移し、跳躍軌道を途中で変更する。
ロープの弾力、床の沈み込み、相手の肩や腕なども足場として利用する。
青柳の動きは、一般的な格闘家が持つ、
人間はこの姿勢からこの方向へしか動けない。
空中へ跳んだ後は軌道を変えられない。
身体をここまで傾ければ倒れる。
という予測を外す。
そのため、初見の相手は青柳の現在位置だけでなく、次にどこへ身体が動くかを正しく判断できない。
◆
強み
最大の強みは、初見時の予測困難性。
相手の格闘経験が豊富であるほど、人間の一般的な重心移動を前提として行動を読む。
青柳は、その常識を《重心転写》によって裏切る。
投げようとした瞬間に重さのかかる方向を変える。
後退している姿勢から前方へ急加速する。
跳躍後に空中で進行方向を変更する。
攻撃後の反動を疑似重心で相殺し、通常より早く次の動作へ移る。
これらの動きは、一度も体験していない相手にとって極めて対処しづらい。
また、青柳自身が体操、パルクール、キックボクシングを学んでいるため、能力を封じられても一定以上の戦闘能力を維持できる。
◆
弱点
《重心転写》は、極めて高い初見殺し性能を持つ。
しかし、一度体験して能力の仕組みを理解されると、対処法が明確になる能力でもある。
狙うべきなのは、青柳の上半身や見かけ上の重心ではない。
実際に地面へ接触している軸足。
姿勢を支えている接地点。
疑似重心を切り替える直前の踏み込み。
能力使用後に生じる視線の揺れ。
連続使用による平衡感覚の乱れ。
を狙えばよい。
特に、青柳の身体全体を密着状態で固定し、実際の肉体ごと持ち上げる組み技は有効。
重心の方向を変えても、肉体そのものを完全に抱え込まれれば、自由に移動することは難しい。
また、能力を多用させた後に長期戦へ持ち込まれると、青柳の精密な姿勢制御は徐々に崩れる。
初戦では圧倒的な変則性を発揮するが、再戦では相手も青柳の軸足、発動間隔、空中使用を警戒する。
そのため、同格の修練者へ二度続けて同じ勝ち方をすることは難しい。
◆
総合評価
青柳迅は、Tier4上位相当の変則機動型修練者。
《重心転写》は、単独で敵を攻撃したり、完全防御を成立させたりする能力ではない。
しかし、高度な身体能力、体操技術、パルクール、打撃技術と組み合わせることで、通常の格闘理論から外れた移動と攻撃を成立させる。
特に初見の相手には極めて強い。
一方で、能力の仕組みを理解されると、軸足、接地点、連続使用時の負荷という弱点が露出する。
青柳の真価は、《重心転写》そのものではなく、
> 相手が理解できない一度目のうちに、リング、ロープ、床、空中を利用して勝ち筋を完成させる。
能力にある。
◆
真壁剛志・設定データ
基本プロフィール
氏名:真壁剛志(まかべ・たけし)
年齢:三十七歳
身長:百八十八センチ
体重:百二キロ
能力者コードネーム:《鉄杭》
能力者分類:修練型因果律改変者
登録評価:Tier4上位相当
保有能力:《地鎮》
格闘経歴:グレコローマンレスリング、柔道、MMA
戦闘類型:圧力型グラップラー
得意領域:リング中央の制圧、クリンチ、投げ、押し込み、対打撃耐久
真壁剛志は、長年にわたってレスリング、柔道、MMAを修めた重量級の修練者である。
百キロを超える体格を持つが、単に巨体と腕力だけで戦う選手ではない。
相手の退路を少しずつ消す歩法。
リング中央を維持する位置取り。
相手の脇へ腕を差し込む技術。
腰と背筋を連動させた投げ。
打撃を受けながら前へ進む圧力。
など、重量級としての肉体を最大限に活かす技術を備えている。
修練を重ねる中で、
相手に押されても動かない。
打撃を受けても姿勢を崩さない。
投げる瞬間に全身の力を一つへまとめる。
リング中央を絶対に譲らない。
という本人の意識が、因果律改変能力《地鎮》として発現した。
◆
能力
《地鎮》Tier4
本人使用名称:《地鎮》
正式分類:身体能力強化系・下半身出力集中型因果律改変能力
評価:Tier4
真壁本人や格闘技業界では、《地鎮》という独立した能力名で呼ばれている。
しかし学術的には、《身体能力強化》の一種。
筋力、耐久力、姿勢制御、接地能力を強化し、その出力を、
足裏。
足首。
ふくらはぎ。
太腿。
臀部。
腰。
背筋。
へ集中させる。
その結果、真壁の肉体は、地面へ深く杭を打ち込んだように安定する。
相手の打撃や突進を受けても位置が動かない。
投げを仕掛けられても腰が浮かない。
クリンチ状態では、相手を押し返しながら自分の姿勢だけを維持する。
一度リング中央へ立てば、相手が真壁を物理的に移動させることは非常に難しい。
◆
身体能力強化との関係
因果律改変能力としての《身体能力強化》は、すべての術者が同じ原理で肉体を強化しているわけではない。
ある者は、筋肉の収縮効率を因果的に上昇させる。
ある者は、肉体が本来発揮できる出力制限を一時的に解除する。
ある者は、動作の結果だけを先に現実へ確定させる。
ある者は、外部から疑似的な運動エネルギーを付与する。
ある者は、肉体損傷が起きにくい因果へ書き換える。
同じ《身体能力強化》と呼ばれていても、その内部プロセスは術者ごとに異なる。
真壁の《地鎮》も、厳密には真壁固有の因果律改変プロセスによって成立している。
しかし、《ライブラリ》は名称や細かな発現原理をそのまま保存しない。
佐伯直人が、
> 肉体能力を高め、特定部位へ出力を集中する能力。
と理解したため、既存の《身体能力強化》と同じ能力として処理した。
その結果、《地鎮》は新規異能として登録されず、
《身体能力強化》の使用回数補充。
下半身出力集中。
足裏接地。
姿勢固定。
という運用情報として統合された。
これは真壁の《地鎮》が偽物という意味ではない。
《ライブラリ》が、異なる複数の因果律改変プロセスを、直人内部で使用可能な一つの《身体能力強化》へ再構成しているためである。
◆
地鎮のルール
強化出力の大部分を下半身と背筋へ集中する。
上半身の打撃速度や拳の威力へ回せる出力は、その分だけ低下する。
足裏が地面へ接触している時に最大効果を発揮する。
空中へ浮かされた場合、固定能力はほとんど機能しない。
地面が柔らかい、沈む、崩れる、滑るといった状況では安定性が低下する。
足場そのものが破壊された場合、姿勢固定を維持できない。
前後左右すべての力へ均等に耐えられるわけではなく、真壁が意識して踏ん張っている方向に最も強い。
予想外の方向から力を加えられると、一瞬だけ固定が遅れる。
長時間維持すると、下半身の筋肉、関節、腰へ大きな負担がかかる。
能力によってダメージそのものを無効化するわけではない。
動かないまま攻撃を受け続ければ、肉体内部には通常どおり損傷が蓄積する。
◆
格闘スタイル
真壁は、高速で相手を追い回す選手ではない。
リング中央へ立ち、相手の移動方向へ少しずつ身体を置く。
相手が右へ逃げれば、右側へ一歩進む。
左へ逃げれば、左側を巨体で塞ぐ。
急激な追跡ではなく、相手が使える空間を徐々に削る。
相手がロープ際へ追い込まれれば、打撃を受けながら前進。
クリンチへ持ち込み、両脇へ腕を差し入れる。
《地鎮》で自分の足元を固め、相手だけを持ち上げる。
打撃を避けるより、強化した前腕、腹部、脛で受け止めることを選ぶ。
一発の攻撃力よりも、
相手を逃がさない。
相手の攻撃で下がらない。
相手の体力を削る。
最後には必ず捕まえる。
という圧力を重視する。
真壁の強さは、能力によって動かなくなることではない。
> 相手が逃げる方向を技術で読み、最も踏ん張りやすい位置へ先回りする。
レスリングとMMAの経験にある。
◆
強み
最大の強みは、一対一の狭いリングにおける制圧力。
逃げる空間が限られているため、真壁は無理に素早く動く必要がない。
相手の退路を塞ぎながら前進し、ロープ際で組みつけばよい。
軽量級の打撃では真壁を後退させにくい。
強引に投げようとしても、《地鎮》で腰と下半身を固定される。
組み技に移行すれば、真壁自身がレスリングと柔道の熟練者。
相手は、
打撃で止められない。
押しても動かない。
組みつかれれば逃げられない。
という三重の圧力を受ける。
初見殺しに特化した能力ではないため、能力の仕組みを知られても戦闘能力が大きく低下しないことも強み。
《地鎮》の原理を理解していても、百キロを超える熟練グラップラーを実際に動かせるとは限らない。
◆
弱点
《地鎮》は、真壁と地面の接続が安定していることを前提とする。
リング中央の硬い床では非常に強い。
しかし、
ロープ際の沈み込む床。
濡れた地面。
砂。
泥。
瓦礫。
崩れる足場。
傾斜。
空中。
などでは、出力を地面へ正しく逃がせない。
また、真壁自身が想定していない方向へ急激に力を加えられると、足裏と下半身の強化を切り替えるまでにわずかな遅れが生じる。
青柳の《重心転写》のように、力がかかる方向を途中で変える能力とは相性が悪い。
さらに、下半身へ強化出力を集中するため、手数と速度に優れた相手から複数方向へ攻撃されると対応が遅れる。
多人数戦では、一方向を固めている間に別方向から攻撃される危険がある。
◆
青柳迅との初戦
初戦では、真壁が第一ラウンドを優勢に進めた。
青柳の打撃を受けながら前進し、リング中央を制圧。
ロープ際へ追い込み、クリンチと投げを狙った。
青柳の《重心転写》による投げ抜けを一度見た後は、見かけ上の重心を追うことをやめた。
青柳の軸足をローキックで狙い、腰と脚を同時に抱え、肉体全体を持ち上げることで能力を封じようとした。
これは《重心転写》への正しい対処だった。
真壁は試合中に、能力の弱点をほぼ見抜いている。
しかし最終ラウンドでは、青柳が真壁をリング中央からロープ際へ少しずつ誘導。
床の沈み込みによって《地鎮》の接地効率を下げた。
その状態で《重心転写》による飛び膝蹴りを押し込みへ利用され、初めて一歩後退。
ロープの反発へ左フックを合わせられ、TKO負けとなった。
◆
再戦評価
初戦の勝者は青柳迅。
しかし、青柳が真壁より明確に格上という結果ではない。
《重心転写》は、一度目の対戦で最も高い効果を発揮する能力。
真壁は初戦の途中ですでに、
軸足を狙う。
身体全体を抱える。
連続使用後の平衡感覚低下を攻める。
空中へ浮かせた後も反撃を止めない。
という対策を組み立てていた。
再戦では、真壁は最初から青柳の上半身の姿勢や見かけ上の重心へ惑わされない。
リング中央から不用意に動かず、ロープ際へ誘導されることも警戒する。
青柳が空中で能力を使うことも知っているため、投げ方や持ち上げ方も変える。
一方、青柳も初戦で真壁の《地鎮》の弱点を把握している。
柔らかい足場。
横方向からの力。
出力集中の切り替え。
上半身の速度不足。
を狙うことができる。
再戦では、
青柳が新しい軌道と誘導を用意できるか。
真壁が《重心転写》の発動を読んで捕まえられるか。
という、純粋な技術と戦術の勝負になる。
一度目は青柳の変則性が勝った。
二度目は、どちらが勝つか分からない。
十回戦えば一方が十勝するような実力差ではなく、互いの対策と当日の戦術によって勝敗が入れ替わる関係である。
◆
総合評価
真壁剛志は、Tier4上位相当の圧力型修練者。
《地鎮》は派手な必殺技ではなく、《身体能力強化》を真壁の体格、レスリング、柔道、MMAへ最適化した結果として成立した能力である。
特殊能力の珍しさでは青柳に劣る。
しかし、
能力の安定性。
格闘経験。
組み技。
耐久力。
リング中央の支配力。
では真壁が上回る。
青柳が相手の常識を崩して勝つ選手なら、真壁は相手の逃げ道を一つずつ潰して勝つ選手。
初戦ではリング環境まで利用した青柳に敗れたが、能力の仕組みを理解した再戦では、勝敗は白紙へ戻る。
◆
青柳迅と真壁剛志の対比
青柳迅は、相手が経験から身につけた常識を裏切る修練者。
真壁剛志は、経験と技術によって相手の選択肢を削る修練者。
青柳の《重心転写》は、現実へ疑似質量を認識させ、通常ではあり得ない姿勢と軌道を成立させる。
真壁の《地鎮》は、身体能力強化の出力を下半身へ集中し、通常では動かされるはずの肉体をその場へ留める。
一方は、動きの常識を誤魔化す。
一方は、動かないという結果を現実へ押し通す。
両者とも能力だけで戦っているのではない。
青柳には、体操、パルクール、キックボクシング。
真壁には、レスリング、柔道、MMA。
という長年の修練がある。
初戦では青柳が、能力とリング環境を組み合わせて勝利した。
しかし《重心転写》は、一度体験すれば対処法を考えられる能力である。
真壁も初戦の途中には、すでに軸足と実際の肉体を狙う攻略法へ到達していた。
二度目に戦えば、同じ結末になる保証はない。
それが、青柳迅と真壁剛志という二人の修練者の実力関係である。